STEAMライブラリー

【STEAM教育についてインタビュー】NPO法人クロスフィールズ 高橋 智也氏

インタビュイー

 

高橋 智也 様

STEAMライブラリーのコンテンツ事業者であるNPO法人クロスフィールズ 共感VRチーム統括。

新卒でエンジニアリング会社に就職。ミャンマーなどで発電プラントの建設プロジェクトに従事した後、2018年クロスフィールズに転職。プロジェクトマネージャーとして、企業の人材が新興国に飛び込み社会課題に挑む「留職」プログラムなどを担当。現在は共感VR事業の統括を務める。

NPO法人 クロスフィールズ
https://crossfields.jp/

 

 
 
 
経済産業省「未来の教室」が2021年2月末より公開を開始した「STEAMライブラリー」のコンテンツ事業者であるNPO法人クロスフィールズの高橋 智也氏に、教材の内容やSTEAM教育について取材させていただきました
 

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田中
田中
本日はよろしくお願いします! 始めに、御社のSTEAMライブラリーのコンテンツ(教材)について教えてください。

高橋氏
高橋氏
私たちのコンテンツは、360度動画を通じて社会課題やそれを解決しようとしている社会起業家を紹介する内容です。まずは課題に触れてもらい、構造が複雑で解決が難しいと知ってほしいと思っています。たとえば貧困を解決しようとしたとき、貧しい人々にお金を渡せば問題は解決するかというとそうじゃないし、プラスチックゴミの問題もプラスチックを無くせばいいかというとそれによって生活が豊かになっている側面もあるし…そういう課題解決の難しさやジレンマに向き合ってもらいたいです。その上で、この複雑な課題に取り組む社会起業家のメッセージや考え方を紹介し、生徒さんが「自分にもできるかもしれない」「将来こんなことをしてみたい」という気持ちをもってもらえるようなコンテンツにしたいです。

田中
田中
社会起業家ってどんな方なのでしょうか?先生方にとってはあまり身近じゃないかな、と思うので…。

高橋氏
高橋氏
一般的に、ビジネスの仕組みや事業を通じて社会課題を解決しようとする起業家の方々を「社会起業家」と呼んでいます。 例えば、グラミン銀行を創業したムハマド・ユヌスさんはマイクロファイナンスを通じて、銀行としての経営を行いながら、貧しい人達に金融サービスを届けることで貧困問題を解決しようとしています。

田中
田中
なるほど!社会課題っていうのはどんなものを指すのでしょうか?

高橋氏
高橋氏
一言で「社会課題」と言っても幅広いですし、社会起業家やNPO/NGOが取り組む課題もさまざまです。今回のSTEAMライブラリーでフォーカスしているのは、SDGs(Sustainable Development Goals)が掲げる17のゴールとも密接につながりのある、「貧困」「エネルギー」「海洋資源」「難民問題」などの現場で生じている社会課題です。授業では、こうした課題の現場をミクロレベルで疑似体験してもらうとともに、その課題に取り組む社会起業家を紹介しています。彼ら・彼女たちは革新的な方法で課題解決を成り立たせる方法を考え、実践しています。課題を解決するための方法には様々なことがあると実感してもらうことが大事だと思っています。

田中
田中
ありがとうございます。社会課題を解決する上で360度動画を利用するとよい理由を教えてください。

高橋氏
高橋氏
元々私たちは企業の人材を国内外の社会課題の現場に派遣する事業を運営しています。1泊〜1週間くらいの期間で現地に滞在しながら、社会課題の現場を五感で体感するとともに、現地で活動する社会起業家の方々とディスカッションするというものです。その経験をもっと幅広い方々に届けたいと思い、この共感VRの事業を始めました。 360度動画は好きな場面を何度も繰り返し見られるので、興味が湧いたことを調べられて探究心がくすぐられる、という特徴があります。また、ドキュメンタリー番組などの映像だと編集されているので、どうしても制作者側の意図が入ってきちゃうんですよね。360度動画では編集が全くないので、観る人の探究心を刺激できると思っています。

田中
田中
360度動画を利用者された方の声があったらお聞かせいただけますか。

高橋氏
高橋氏
「元々社会課題に対して抱いていたイメージと360度動画の中にある社会課題は違う」という風に、自分の認知バイアスを崩すのに効果的だ、という声をよく聞きます。情報って聞くだけだとすぐに忘れてしまいますが、自分でじっくり見て考えた後だと吸収が違ったり、新しい発見があったりするようです。 ただ、社会課題を360度動画で見ると色々な情報が溢れているし、私たちが解説しきれないような課題もたくさんあるので、きれいにまとめようとすると難しいという側面もあります。

田中
田中
思考は広がるけれども、広がりすぎてまとめるのが難しいんですね。

高橋氏
高橋氏
一般的なプラスチックゴミの問題って、「海に何万トンのプラスチックゴミが流れています」っていう風にきれいにまとめられちゃうんですけど、360度動画を見ると「こんなところにゴミがあるの?」とか思いがけないところに興味が湧いたりすることもありますね。

田中
田中
ありがとうございます。クロスフィールズさんのコンテンツに取り組む際に、先生方が準備するといいことや持っておくといいスタンスなどはありますか?

高橋氏
高橋氏
社会課題の捉え方や解決方法には正解がない、ということを先生自身も受け入れて頂くことかもしれません。生徒が何かを感じた時に正誤を評価するのではなく、「どうしてそう思ったのか」「じゃあこの先どうしたらいいか」を考えてもらうのが大事だと思っています。例えばプラスチックは環境に悪影響な部分もあるけれど、社会では必要でもあるので、なくした方が良いという子もいればプラスチックを使った方がいい、という子もいると思うんです。そういう時にどっちが正解かではなく、それぞれの意見を深堀っていって次のアクションを考えようとする姿勢が大事だと思います。 また、一部貧しい国や電気が通っていない地域で暮らす人々などセンシティブな情報も扱いますが、そしした暮らしを営む人たちが「かわいそう」「日本よりも遅れている」という一面的な捉え方を超えて、もっと多面的に捉えてもらえたら嬉しいです。10年後には石炭火力に頼らない方法で豊かな暮らしをしているかもしれないですし。「電気がない=かわいそう」っていう今までの方程式が成り立たないという視点を、先生にも面白がってもらえたらと思っています。「豊かさ」や「幸せ」の本質は何かを考えることが、SDGs「誰一人取り残さない開発・発展」を目指すにあたって大事だと思っています。

田中
田中
先生方に限らず、確かに「貧しい国=かわいそう」っていう考え方が凝り固まってしまっていますよね。凝り固まっているといえば、高校の先生方の目標も「○○大学に何名合格した」っていう進学率に凝り固まっている部分が大きいと思うんです。どうしてもそこを求められてしまうので…。その中でSTEAM教育に取り組むメリットや生徒につけさせられる力があったら教えていただきたいです。

高橋氏
高橋氏
僕の意見に寄ってしまうかもしれませんが……。最初、僕らのコンテンツの目標設定をする際に「生徒に社会課題に当事者意識をもち、アクションを起こしてもらう」という話が出たんです。ただ、実際に中学生が出来ることを考えたら「募金をする」「貧困の連鎖を起こしているファストファッションを買わない」となって。これは何か違う、という結論になりました。それより、社会課題は想像以上に複雑だと実感し、それらに取り組む社会起業家という人々の存在を知り、彼らが自分達の「当たり前」とは違う視点をもっているんだ、と認識してもらうことを目標にしました。そうすれば、生徒たちがもっと大きくなって自分が社会課題を解決したいと思った時に「そういえば社会起業家って人がいたな」「あの人達みたいに広い視点で考えれば、自分も解決できるかも知れない」っていうヒントになるかなと思ったんです。 何かを解決したいと感じたときに多角的・多面的な見方ができるというのは中高生の将来にとって、とてもいい武器になるのではと思っています。自分の信念をもって働き、それを発信できる人になるためには、テストの点数を取ることはツールにすぎず目的ではないんですよね。まぁ僕も受験戦争を経験した身ではありますが…(笑)

田中
田中
大学ではなく、中学や高校で学習した方がいい理由はありますか。

高橋氏
高橋氏
大学卒業後に入社した会社で、発展途上国のゴミ集積所をみる機会が多かったんです。危険なガスが出ていてすごい悪臭だし危険物が落ちているような場所なのに、子供が裸足でゴミを漁っている光景を見てきました。その中で、こういう社会問題を解決する方法はないかと考えたことが、今の仕事に繋がっています。自分の行動を変える実体験が人生のどこかであると思うのですが、そういうチャンスができるだけたくさんの人にあったらいいなと思うんです。僕自身、大学時代にバックパッカーとして海外に行った経験がすごく生きているので。ただ一方で、今はコロナ禍で海外などに行ける機会が閉ざされてしまってますよね。また、大学生はそれなりに自由に行動できるので、中高生に外の世界を知る機会を提供したいと考えました。教科学習のような目に見える短期的な学習効果は少ないと感じるかも知れませんが、視点を広げる良いきっかけになるので、ぜひ学校の先生に取り組んでいただけたら嬉しいです。

田中
田中
「メリットの方が大きいぞ!」ということですね!自分が高校生の時にこのコンテンツに出会っていたら、自分の人生ってどんな風に変わっていたと思いますか。

高橋氏
高橋氏
大筋は変わらない気はしています。ただ、僕の場合も学生時代に社会課題に触れることはなかったので、学生のうちに出会っていたら、違う進学先を選んだり得意な物理を使って自分にできることを考えたりしていたかもしれないです。

田中
田中
ありがとうございます!STEAMライブラリーにあるよいと思う機能があったら教えてください。

高橋氏
高橋氏
教育現場と制作側が意見交換を重ね、よりいいコンテンツをつくる機会があればいいと思ってます。タブレット端末を使って学校でトライアルをしたのですが、学生達って制作側の想定を超えた使い方や発想をするんですよね(笑)そういう学生相手だからこそ、新しい化学反応が生まれる気がしています。せっかくSTEAMライブラリーができたので、現場の方々が使いづらいものにはしたくないんです。不満やうまくいった点など、今後の展開に向けて、ぜひフィードバックをいただきたいです。

田中
田中
現場の反応や質問などを共有できるといいですよね。国が担うか民間が担うかみたいな議論はあるかもしれませんが、今後も検討していきたいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました!

 
 

田中悠樹 (インタビュワー)

「STEAMライブラリー」システム構築事業者である株式会社 StudyValleyの代表取締役
2011年にゴールドマンサックス証券テクノロジー部に新卒入社。株式会社リクルートホールディングスでは海外のVCを担当。2020年に株式会社StudyValleyを設立。オンライン学習サービス「アンカー」や業務・学習支援ソフト「TimeTact」の開発や運営を行う。創業1年目でSTEAMライブラリーのシステム構築事業を受託。

 
 
 
 

 

STEAMライブラリーとは

経済産業省「未来の教室」が運営する、STEAM教育を通じてSDGsに掲げられる社会課題の解決手法を学べるオンライン図書館

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代表:田中
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。