面接で探究の「深さ」を測る5つの質問。「何をしたか」ではなく「何を学んだか」を問う
総合型選抜や学校推薦型選抜における面接で、生徒の探究活動をどう評価すればよいのか――。多くの大学入試担当者が抱える共通の悩みです。単なる活動内容の羅列を聞くだけでは、生徒の本質的な学びや成長を見極めることは困難です。本記事では、探究活動の「深さ」を適切に評価し、入学後も主体的に学び続ける人材を見抜くための5つの質問アプローチをご紹介します。これらの質問を通じて、表面的な成果ではなく、生徒の思考プロセスや学びの姿勢を明らかにする方法を解説していきます。

【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
また無料相談も可能です。些細なご相談やご質問、お見積りなど、お気軽にご相談ください。
なぜ今、探究活動の「深さ」が重要視されるのか
2022年度から本格導入された「総合的な探究の時間」により、高校生の探究活動は急速に広がりを見せています。しかし、その一方で、形式的な活動に終始し、深い学びに至っていないケースも少なくありません。文部科学省の調査によると、探究活動を実施している高校は98%に達していますが、その内容や質には大きな差があることが明らかになっています。
大学にとって重要なのは、「何をしたか」という活動の記録ではなく、「その活動を通じて何を学び、どう成長したか」という本質的な部分です。なぜなら、大学入学後の学びにおいて求められるのは、自ら問いを立て、仮説を検証し、新たな知見を生み出していく力だからです。
面接評価における3つの課題
- 活動内容の羅列に終始する生徒が多い:「○○について調査しました」「△△を作成しました」といった表面的な説明に留まる
- プロセスよりも成果を強調する傾向:賞の受賞や成果物の完成度ばかりをアピールし、試行錯誤の過程が見えない
- 他者との差別化が困難:類似したテーマや活動内容が多く、個々の生徒の独自性を見出しにくい
これらの課題を解決するためには、適切な質問設計によって生徒の思考の深さを引き出すことが不可欠です。
探究の「深さ」を測る5つの質問アプローチ
ここでは、面接において生徒の探究活動の質を適切に評価するための5つの質問アプローチを紹介します。これらの質問は、単に「何をしたか」を聞くのではなく、「なぜ」「どのように」「その結果何を学んだか」を引き出すことに重点を置いています。
質問1:「最初の問いから現在の問いまで、どのように変化しましたか?」
探究活動の本質は、問いの深化と進化にあります。最初に立てた問いが、調査や実験を通じてどのように変化したかを聞くことで、生徒の思考の柔軟性と探究の深まりを評価できます。
評価のポイント:
- 当初の問いの限界や不十分さに気づいているか
- 新たな発見に基づいて問いを修正・発展させているか
- 問いの変化に論理的な根拠があるか
期待される回答例:
「最初は『なぜ地域の商店街が衰退しているのか』という漠然とした問いでしたが、実際に商店主へのインタビューを重ねるうちに、問題の本質は単純な客数減少ではなく、世代間のコミュニケーション断絶にあることに気づきました。そこで問いを『商店街が地域の多世代交流の場として機能するためには何が必要か』に修正し、より具体的な解決策を探究するようになりました。」
質問2:「探究の過程で最も困難だった局面と、それをどう乗り越えましたか?」
探究活動において、困難や失敗は必然的に発生します。その際の対処法や思考プロセスを聞くことで、生徒の問題解決能力と粘り強さを評価できます。
評価のポイント:
- 困難の本質を的確に理解しているか
- 複数の解決策を検討したか
- 失敗から学びを得ているか
- 他者の協力を適切に求めたか
深い思考を示す回答の特徴:
単に「アンケートの回収率が低かった」という事実だけでなく、なぜ回収率が低かったのかを分析し、質問項目の改善、配布方法の工夫、対象者へのアプローチ方法の変更など、具体的な改善策を実行した経験を語れることが重要です。
質問3:「あなたの探究活動が、既存の研究や知見とどう関連していますか?」
高校生の探究活動であっても、既存の知識体系との接続は重要です。この質問により、生徒が自身の活動を広い文脈の中で位置づけられているかを評価できます。
評価のポイント:
- 関連する先行研究や理論を調査したか
- 自身の探究の独自性を認識しているか
- 学術的な視点を持って活動しているか
優れた回答が含む要素:
「環境問題に関する探究を進める中で、SDGsの目標12『つくる責任つかう責任』や、サーキュラーエコノミーの概念を学びました。特に、エレン・マッカーサー財団の報告書から着想を得て、地域レベルでの循環型社会モデルを考案しました。既存の大規模な取り組みとは異なり、高校生でも実践可能なマイクロレベルでの循環システムを提案できたことが、私の探究の独自性だと考えています。」
質問4:「探究活動を通じて、自分の考え方や価値観がどう変化しましたか?」
探究活動の真の価値は、生徒自身の内的な変化と成長にあります。この質問により、活動が単なる作業ではなく、深い学びにつながっていたかを評価できます。
評価のポイント:
- 具体的な変化を言語化できるか
- 変化の理由を説明できるか
- メタ認知能力があるか
- 今後の学びへの意欲が感じられるか
深い学びを示す回答例:
「以前は物事を単純な因果関係で捉えがちでしたが、地域の過疎化問題を探究する中で、複雑な要因が絡み合っていることを理解しました。経済、教育、インフラ、文化など、様々な側面から問題を見る必要があることを学び、物事を多角的に分析する習慣が身につきました。この経験は、大学でより専門的な研究を行う際の基礎になると確信しています。」
質問5:「もし時間とリソースに制限がなければ、この探究をどう発展させたいですか?」
この質問は、生徒の知的好奇心の広がりと深さを測る上で効果的です。現実的な制約を取り払った時に、どのような可能性を描けるかで、探究への情熱と将来性を評価できます。
評価のポイント:
- 探究テーマへの深い理解と愛着
- 学術的な発展可能性の認識
- 社会的インパクトへの意識
- 学際的な視点の有無
期待される思考の広がり:
単に「もっと多くのデータを集めたい」というレベルではなく、「異なる地域での比較研究」「長期的な追跡調査」「他分野の専門家との共同研究」「政策提言への発展」など、具体的かつ建設的な発展イメージを持っていることが重要です。
効果的な面接を実現するための実践的アドバイス
5つの質問アプローチを最大限活用するために、面接官が心がけるべきポイントを整理します。
1. オープンエンドな質問から始める
「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、生徒が自由に語れる質問設計が重要です。「どのように」「なぜ」「どう思いますか」といった問いかけを活用しましょう。
2. 沈黙を恐れない
深い思考には時間が必要です。生徒が考えている間の沈黙を許容し、じっくりと回答を引き出すことが大切です。
3. 具体例を求める
抽象的な説明に終始する場合は、「具体的な例を挙げてください」「その時の状況を詳しく教えてください」と促すことで、より深い理解が可能になります。
4. 評価基準の共有と標準化
複数の面接官で評価する場合は、事前に評価基準を明確にし、模擬面接などを通じて評価の標準化を図ることが重要です。
- 思考の深さ:表面的な理解に留まらず、本質を捉えているか
- 論理性:筋道立てて説明できているか
- 独自性:自分なりの視点や工夫があるか
- 成長性:失敗や困難から学ぶ姿勢があるか
- 発展性:今後の学びへの意欲と可能性が感じられるか
Study Valley TimeTactで実現する、探究評価の効率化と質の向上
ここまで紹介した5つの質問アプローチは、生徒の探究の深さを測る上で非常に有効ですが、限られた面接時間の中で全てを実施することは困難です。また、多数の受験生を評価する際の負担も無視できません。
Study Valley TimeTactは、これらの課題を解決し、より効果的な探究評価を実現するためのデジタルプラットフォームです。
TimeTactが提供する3つの価値
1. 探究プロセスの可視化
生徒の探究活動の全プロセスがデジタルポートフォリオとして記録されているため、面接前に詳細な活動履歴を確認できます。これにより、面接では本質的な質問に集中できます。
2. 評価の標準化と効率化
独自の評価ルーブリックとAI支援機能により、複数の評価者間でも一貫性のある評価が可能です。また、重要なポイントが自動的にハイライトされるため、評価時間を大幅に短縮できます。
3. 継続的な成長の追跡
入学前の探究活動から入学後の学びまで、一貫したプラットフォームで管理できるため、学生の成長を長期的に支援できます。
導入大学の声
「TimeTactを導入してから、面接での質問の質が格段に向上しました。事前に探究プロセスを把握できるため、より深い部分に切り込んだ対話が可能になりました。」(私立大学 入試課長)
「評価の客観性と効率性が両立できるようになりました。特に、複数キャンパスで同時に面接を行う際の評価基準の統一に大きく貢献しています。」(国立大学 アドミッションセンター)
まとめ:探究の本質を見極める面接評価の実現に向けて
面接で探究の「深さ」を適切に評価することは、単に優秀な学生を選抜するためだけではありません。生徒が高校で培った探究の姿勢を、大学でさらに発展させていける人材を見出すことが、真の目的です。
本記事で紹介した5つの質問アプローチは、その第一歩となるものです。「何をしたか」ではなく「何を学んだか」を問うことで、生徒の本質的な学びの深さと、将来の可能性を見極めることができます。
しかし、限られた時間と人的リソースの中で、全ての受験生に対して理想的な面接評価を行うことは容易ではありません。Study Valley TimeTactのようなデジタルツールを活用することで、評価の質を保ちながら効率化を図ることが可能になります。
探究活動を通じて成長した生徒たちが、大学でその力を存分に発揮し、さらなる高みを目指せるよう、私たち大学関係者も評価方法を進化させていく必要があります。本記事が、その一助となれば幸いです。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
また無料相談も可能です。些細なご相談やご質問、お見積りなど、お気軽にご相談ください。
【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。