採用戦略

次世代の採用ペルソナ設計法

採用ペルソナをアップデートする。高校生の探究テーマから見る、次世代の価値観と興味関心

採用市場において「Z世代は価値観が違う」と言われ続けて数年が経ちました。しかし、多くの企業の採用ペルソナは、依然として「有名大学出身、コミュニケーション能力が高く、ストレス耐性がある人材」といった従来型のままです。本当にZ世代・α世代の価値観を理解し、採用戦略に反映できているでしょうか?

実は、高校生の探究学習で選ばれるテーマや取り組み方を分析すると、次世代の人材が持つ価値観や興味関心が明確に見えてきます。環境問題、ジェンダー平等、地域活性化、テクノロジーと倫理など、彼らが主体的に選ぶテーマには、企業が見落としがちな重要なメッセージが込められています。本記事では、全国の高校で行われている探究活動の傾向分析から、採用ペルソナをアップデートするための具体的な方法を解説します。

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従来の採用ペルソナが機能しなくなっている理由

まず、なぜ従来の採用ペルソナが機能しなくなっているのか、その背景を整理しましょう。

1. 価値観の根本的な変化
Z世代は「デジタルネイティブ」「ソーシャルネイティブ」と呼ばれ、生まれた時からインターネットとSNSが存在する環境で育ちました。彼らにとって、情報の透明性や企業の社会的責任は「あって当然」のものです。給与や福利厚生だけでなく、企業の存在意義や社会貢献活動を重視する傾向が顕著です。

2. キャリア観の多様化
終身雇用制度の崩壊を目の当たりにしてきたZ世代は、一つの企業に依存しないキャリア形成を志向します。副業・複業、フリーランス、起業など、多様な働き方を前提としたキャリアプランを持つ人材が増えています。

3. 情報収集手段の変化
就職活動の情報収集も、ナビサイトや企業説明会だけでなく、SNS、YouTube、口コミサイトなど多様化しています。企業の公式情報よりも、実際に働く社員の生の声や、第三者の評価を重視する傾向があります。

4. 「働く意味」への問い
コロナ禍を経験し、リモートワークが普及する中で、「なぜ働くのか」「どう生きたいのか」という本質的な問いに向き合う若者が増えています。単に「安定した企業に就職する」ことがゴールではなくなっているのです。

高校生の探究テーマから見える次世代の価値観

全国の高校で実施されている探究学習のテーマを分析すると、Z世代・α世代の価値観や関心事が鮮明に浮かび上がってきます。ここでは、特に多く選ばれるテーマカテゴリーと、そこから読み取れる価値観を詳しく見ていきましょう。

1. 環境・サステナビリティ(選択率:約35%)

最も多く選ばれるテーマが環境問題です。しかし、単に「地球温暖化」を扱うのではなく、以下のような具体的で身近なアプローチが特徴的です。

  • 「学校のエネルギー消費を可視化し、削減策を提案する」
  • 「地域の食品ロスを減らすマッチングアプリの開発」
  • 「ファストファッションの環境負荷と持続可能な消費行動」
  • 「マイクロプラスチックが地元の海洋生態系に与える影響」

読み取れる価値観:
環境問題を「自分ごと」として捉え、具体的なアクションにつなげようとする姿勢が見られます。企業に対しても、CSR活動の表面的なアピールではなく、ビジネスモデル自体のサステナビリティを求める傾向があります。

2. 社会的公正・多様性(選択率:約25%)

ジェンダー、LGBTQ+、障害者支援、教育格差など、社会的公正に関するテーマも人気です。

  • 「制服のジェンダーレス化が生徒の心理に与える影響」
  • 「発達障害を持つ生徒への学習支援ツールの開発」
  • 「外国人労働者の子どもたちへの日本語教育支援」
  • 「地方と都市部の教育格差を埋めるオンライン学習の可能性」

読み取れる価値観:
多様性を「理念」としてだけでなく、実際の課題解決につなげようとする実践的な姿勢があります。職場においても、形式的なダイバーシティ推進ではなく、本質的なインクルージョンを求めています。

3. テクノロジーと倫理(選択率:約20%)

AI、ビッグデータ、SNSなど、テクノロジーの発展に伴う倫理的課題に関心を持つ生徒も多くいます。

  • 「AIによる採用選考の公平性についての考察」
  • 「SNSがメンタルヘルスに与える影響と健全な利用方法」
  • 「個人情報保護とビジネス活用のバランス」
  • 「deepfakeがもたらす社会的影響と対策」

読み取れる価値観:
テクノロジーを無批判に受け入れるのではなく、その影響を多角的に考察する批判的思考力を持っています。企業に対しても、技術革新と倫理的配慮のバランスを重視します。

4. 地域活性化・ローカル課題(選択率:約15%)

グローバルな視点を持ちながらも、足元の地域課題に目を向ける生徒も少なくありません。

  • 「空き家を活用した地域コミュニティスペースの創出」
  • 「伝統工芸とデジタル技術を融合した新商品開発」
  • 「高齢化する農業の担い手問題へのICTソリューション」
  • 「地元商店街の活性化に向けたSNSマーケティング」

読み取れる価値観:
「Think globally, Act locally」の精神で、身近な課題から社会を変えようとする姿勢があります。大企業志向一辺倒ではなく、地域に根ざした仕事への関心も高まっています。

5. ウェルビーイング・メンタルヘルス(選択率:約5%)

コロナ禍を経て、心の健康や幸福について考える生徒も増えています。

  • 「学校でのストレス要因分析と改善提案」
  • 「マインドフルネスが学習効果に与える影響」
  • 「部活動における燃え尽き症候群の予防策」
  • 「孤独感を解消するピアサポートシステムの構築」

読み取れる価値観:
成果や効率だけでなく、心身の健康や幸福感を重視する傾向があります。職場においても、ワークライフバランスや心理的安全性を求めています。

探究活動の「取り組み方」から見える行動特性

テーマだけでなく、探究活動への取り組み方からも、次世代の行動特性が見えてきます。

1. コラボレーション重視

個人での探究よりもグループでの協働を好む傾向があります。しかも、単なる役割分担ではなく、多様な視点を統合して新しい価値を生み出すことに意欲的です。SlackやNotionなどのツールを自然に使いこなし、オンラインでの協働も得意です。

2. プロトタイピング思考

完璧を求めるよりも、「まずやってみる」「小さく始めて改善する」というアジャイルな思考を持っています。失敗を恐れず、むしろ失敗から学ぶことを重視する姿勢は、イノベーション創出に適しています。

3. データドリブンな意思決定

感覚や経験則だけでなく、データに基づいた客観的な分析を重視します。アンケート調査、統計分析、A/Bテストなど、科学的アプローチを自然に取り入れます。

4. ステークホルダー志向

自分たちの活動が誰にどんな影響を与えるかを常に意識しています。企業、行政、NPO、地域住民など、多様なステークホルダーの視点を考慮した提案を行います。

5. 情報発信力

探究の成果をSNSやYouTubeで発信することに抵抗がありません。むしろ、社会に向けて発信することで、より大きなインパクトを生み出そうとします。

採用ペルソナをアップデートする5つのステップ

ここまで見てきた次世代の価値観と行動特性を踏まえ、採用ペルソナをアップデートする具体的な方法を提案します。

ステップ1:従来のペルソナを棚卸しする

まず、現在使用している採用ペルソナを洗い出し、以下の観点でチェックしてみましょう。

  • 学歴や資格など、表面的なスペックに偏っていないか
  • 「素直」「協調性」など、抽象的な性格特性に頼っていないか
  • 自社の過去の成功モデルに固執していないか
  • 10年前と同じペルソナを使い続けていないか

特に注意すべきは、「優秀な人材」の定義が時代とともに変化していることです。かつては「指示を正確に実行できる」ことが重視されましたが、今は「自ら課題を発見し、解決策を提案できる」ことが求められています。

ステップ2:価値観マップを作成する

次世代が重視する価値観を、自社の事業や組織文化と照らし合わせてマッピングします。

価値観マップの作成方法:

  1. 縦軸に「社会的インパクト」、横軸に「個人の成長」を設定
  2. 自社の事業や職種が提供できる価値をプロット
  3. 次世代が重視する価値観(環境、多様性、地域貢献など)を重ね合わせる
  4. 重なる部分を「訴求ポイント」として明確化

例えば、製造業であれば「環境負荷の低い製品開発」「地域雇用の創出」、IT企業であれば「テクノロジーによる社会課題解決」「柔軟な働き方」などが訴求ポイントになるでしょう。

ステップ3:行動特性ベースのペルソナを設計する

学歴や資格ではなく、行動特性と思考パターンを軸にしたペルソナを設計します。

新しいペルソナの要素例:

  • 課題発見力:日常の違和感から本質的な問題を見出せる
  • 協働スタイル:多様な意見を統合し、新しい価値を生み出せる
  • 学習姿勢:失敗を恐れず、常に改善を続けられる
  • 発信力:自分の考えや成果を効果的に伝えられる
  • 倫理観:利益と社会的責任のバランスを考えられる

これらの要素を、自社の事業特性に合わせてカスタマイズし、具体的な行動例として記述します。

ステップ4:エビデンスベースの評価指標を設定する

新しいペルソナに基づいて、具体的で測定可能な評価指標を設定します。

評価指標の例:

  • 探究活動や課外活動での具体的な成果(What)
  • 課題解決のプロセスと思考の深さ(How)
  • 活動を通じて得た学びと自己成長(Learning)
  • 他者との協働経験と役割(Collaboration)
  • 社会的インパクトへの意識(Impact)

重要なのは、「○○大学出身」「TOEIC○○点」といった固定的な基準ではなく、思考力や行動力を評価できる動的な指標を設定することです。

ステップ5:採用プロセス全体を再設計する

新しいペルソナに合わせて、採用プロセス全体を見直します。

1. 情報発信の見直し

  • 企業の社会的価値や存在意義を明確に伝える
  • 実際に働く社員の声や、具体的なプロジェクト事例を紹介
  • 失敗から学んだエピソードも含め、リアルな姿を見せる

2. 選考方法の革新

  • 探究活動の成果プレゼンテーション
  • 実際の業務に近いケーススタディやワークショップ
  • グループディスカッションでの協働力評価
  • 社員との対話型面接

3. インターンシップの再定義

  • 単なる職場体験ではなく、実際のプロジェクトへの参画
  • 社会課題解決型のPBLプログラム
  • 他部署や他社との協働プロジェクト

採用ペルソナアップデートの成功事例

実際に採用ペルソナをアップデートし、成果を上げている企業の事例を紹介します。

事例1:大手製造業A社

従来のペルソナ:理系の有名大学出身、専門知識が豊富、真面目で堅実

新しいペルソナ:文理不問、社会課題への関心が高く、技術を使って世の中を良くしたいという意欲がある。失敗を恐れずチャレンジし、多様なメンバーと協働できる。

結果:応募者の多様性が向上し、イノベーティブなアイデアを持つ人材の採用に成功。入社後の定着率も15%向上。

事例2:IT企業B社

従来のペルソナ:プログラミングスキルが高い、論理的思考力がある、長時間労働に耐えられる

新しいペルソナ:技術力だけでなく、ユーザー視点で考えられる。社会的インパクトを重視し、ワークライフバランスを大切にしながら高い成果を出せる。

結果:女性エンジニアの応募が3倍に増加。多様な視点からの提案が増え、新サービスの開発スピードが向上。

事例3:金融機関C社

従来のペルソナ:経済・経営系の学部出身、数字に強い、規律を守れる

新しいペルソナ:金融の民主化や社会的包摂に関心がある。テクノロジーを活用した新しい金融サービスの可能性を探求できる。顧客の立場に立って考えられる。

結果:フィンテック人材の採用に成功し、若年層向けの新サービス開発が加速。顧客満足度も向上。

Study Valley TimeTactで次世代人材との接点を創る

採用ペルソナをアップデートしても、そもそも次世代の人材と出会えなければ意味がありません。従来の採用チャネルだけでは、価値観の合う人材にリーチすることは困難です。

Study Valley TimeTactは、全国の高校で行われている探究学習をサポートするプラットフォームとして、企業と次世代人材の新しい接点を創出します。

TimeTactが提供する価値:

1. 探究テーマのデータベース化
全国の高校生が取り組む探究テーマをデータベース化し、トレンド分析が可能。自社の事業領域に関心を持つ生徒の動向を把握できます。

2. 企業課題の提供プラットフォーム
企業が抱える実際の課題を、高校生の探究テーマとして提供。早期から自社への理解を深めてもらい、将来の採用候補者を育成できます。

3. 産学連携のマッチング
探究活動への協力を通じて、自然な形で高校生との接点を持てます。単なる企業PRではなく、教育貢献として価値ある関係を構築できます。

4. 長期的な人材パイプライン構築
高校時代から関わった生徒の成長を追跡し、大学進学後もつながりを維持。インターンシップや採用へとスムーズにつなげることができます。

さらに、TimeTactでは企業の採用ペルソナ設計をサポートするコンサルティングサービスも提供。探究活動のビッグデータを活用し、エビデンスに基づいたペルソナ設計を支援します。

まとめ:今こそ採用ペルソナの大転換を

高校生の探究テーマから見えてきた次世代の価値観は、企業に大きな変革を迫っています。環境への配慮、社会的公正、テクノロジーと倫理のバランス、地域への貢献、ウェルビーイング─これらは一過性のトレンドではなく、今後の社会を形作る基本的な価値観となるでしょう。

採用ペルソナをアップデートすることは、単に「良い人材を採用する」ためだけではありません。次世代の価値観を理解し、共に新しい価値を創造していくパートナーを見つけるための第一歩なのです。従来の固定観念にとらわれず、柔軟な発想で採用戦略を見直すことが、企業の持続的成長につながります。今こそ、採用ペルソナの大転換に踏み出す時です。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。