探究学習

探究を成功させる組織整備の実践事例6つ【指導体制・運営体制・研修】

探究を成功させるためには、生徒が探究に取り組みやすくなるような環境の整備が必要です。すなわち、学習計画作成から指導に至るまで生徒に円滑かつ精度の高い指導を提供できるように校内推進体制を整える必要があります。

この記事では、指導体制や実践を支える運営体制と教師のカリキュラム開発能力等を高めるための研究推進体制の主に2つの側面から、校内推進体制の実践事例を紹介します。

○目次
1.指導体制と運営体制の整備
(1) 生徒に対する指導体制【3事例】
事例1:学年教師が学級ごとの学習集団を分担して指導した例
事例2:学年教師が学級枠を外した学習講座を分担して指導した例
事例3 全教師が学年枠を外した学習講座を分担して指導した例
(2) 実践を支える運営体制 【2事例】
事例1:小規模校の運営組織の例
事例2:大規模校の運営組織の例
2.校内研修等の充実
事例:中・高が定期的に合同して行うワークショップ型研修の事例

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1.指導体制と運営体制の整備

(1) 生徒に対する指導体制【3事例】

まず、生徒に対する指導体制について、三つの事例を紹介します。
探究では、学級担任が自学級を直接指導するばかりではありません。そのような枠組みも学年の枠さえも超えて教職員全体で生徒全体を分担する指導体制や、学校外の専門家や行政を活用した探究も見られます。ここでは、これらの実践事例を紹介します。

事例1:学年教師が学級ごとの学習集団を分担して指導した例

<指導体制>
この事例では、指導に関しては学年教師が自分の学級を担当しながら、講義等には青年海外協力隊や大学教師、NPOの人材を活用しています。

<内容>
第2学年において「共生と平和のためにしなければならないこと」について単元を組み、学級を単位とした学習集団により学習活動を行いました。「共生と平和」についての講義には青年海外協力隊の方を、生徒の発表への評論にはNPOの方や大学教師を起用しています。

表1:A高校の具体的な実践例 文部科学省の資料より抜粋

事例2:学年教師が学級枠を外した学習講座を分担して指導した例

<指導体制>
この事例では、学級の枠を超え学年全体を学年担当の教師で指導しています。また、講義に関しては学外の専門家らと協力しながら進めています。
また、指導計画は、学年ごとの総合的な学習の時間の担当が作成した後、全教師により意見交換・調整が行われました。
<内容>
授業で干潟環境や生物の多様性などについて学習した後、科学館の学芸員や日本野鳥の会の会員、行政担当者や、大学教員、地域の人らによる現地調査や保全活動に参加しました。その後、その調査や活動による成果を探究成果としてまとめ、有識者らに発表し、論評を受けました。

表2:B高校の具体的な実践例 文部科学省の資料より抜粋

事例3:全教師が学年枠を外した学習講座を分担して指導した例

<指導体制>
探究テーマごとに全学年の縦割りでグループを作り、取り組んだ探究事例です。10の学習テーマごとに3-4名の教師が学年の枠を超えて集まり、学年ごとの総合的な学習の評価基準を共有しながら、それぞれ指導・評価しています。

<内容>
この高校では、少子高齢化が進む地域の課題について10のテーマに分けて学習しました。
それぞれ、縦割りグループで上の学年の生徒たちが先導を取り、調査から発表まで行いました。

表3:C高校の具体的な実践例 文部科学省の資料より抜粋

(2) 実践を支える運営体制 【2事例】

次に探究の実践を支える運営体制について、2事例を紹介します。
多くの学習活動は学内で推進組織が立ち上げられ、その中で連携して進められています。特に探究は、横断的・総合的学習が展開されるため、教師の専門性などを生かした取り組みが必要です。

事例1:小規模校の運営組織の例

こちらは小規模校の例です。まず課題としては以下のようなものがありました。

・教員数が少ないため、教師が複数の校務を担当しなくてはならない
・一人の教師によって学年の指導計画作成や外部講師との調整が行われており、教師の協働性を高めることができなかった

しかし、新校長着任により総合的な学習の時間については以下のように改善しました。

・研究主任をコーディネーターに任じる
・そのフォロワーとして「総合担当」を設ける

このような体制づくりを通じて、最終的には全員が役割と責任を持つようにした結果、教師同士が話し合う場面が増えるともに、全教員が学年・学級の壁を越え、それぞれの専門性を生かした運営が行われるようになりました。

事例2:大規模校の運営組織の例

全校21学級の大規模校の事例です。この高校では学年ごとに学習計画が作られていたため、以下のような課題がありました。

・全体計画との整合が意識されずに学習が行われていた
・異学年と合同した学習が計画されなかった

このような課題解決のため、「E-Time推進部」を新設し、時間割の空き時間を揃えて毎週一度の企画会議を行うよう改善しました。

上記課題を踏まえた主な改善点としては以下が挙げられます。

・学校全体で指導計画をたてるため、全体での協働や整合性を意識できる
・評価や指導の方法について各学年の経験からも検討ができ、より良い探究学習が見込まれる

他にも、学校全体のシステムについて検討できる機会が増えているため、総合的な学習の場面のみに限定されない改善点もあるでしょう。この取り組みの詳細は以下の表4を参考にしてください。

表4:E高校の取り組み 文部科学省の資料より抜粋

2.校内研修等の充実

次に校内研修等の充実について触れていきます。探究を充実させ、その目標を達成させる鍵を握るのは指導する教師のカリキュラム構想・開発等の力量です。また、生徒の多様な学習活動に柔軟に対応するためには、教職員全体の指導力向上を図る必要もあります。

研修を設定する際に注意したいポイントとしては、

・研修によってどのような指導力を身につけたいかについて目標を明確に設定する。
具体的な研修計画を決定する場合は、できる限り実践を進める教師の希望や必要感を生かした方法、内容等を選択する。
授業研究では、生徒が学習に取り組む姿を通して教師の指導について評価し、指導力の向上を図る。

しかし、研修へと移る前にまずは、『高等学校学習指導要領解説総合的な学習の時間編』 を参考に総合的な学習の時間の趣旨や内容等についての理解を教職員全体で確かにする必要があります。

上記のことを踏まえて研修計画を立てましょう。下には内容例と方法例が記載されています。

表5:校内研修の内容例 文部科学省の資料より抜粋


表6:校内研修の方法例 文部科学省の資料より抜粋

事例:中・高が定期的に合同して行うワークショップ型研修の事例

近年、設置者である自治体から近隣のG中学校との連携型中高一貫教育校の指定を受けた大都市の商業地域にある中規模校です。

そのような指定を受けながらも以下のような課題を抱えていました。

1. 中高の共通の理念で貫いた教育課程編成がうまく進まない
2. 教職員の交流が停滞している

このような課題を受け、

1.について中高一貫教育の重点的な目的を「6年間の連続性のある学力向上策の展開」に加え、「市民性の育成に向けた地域に関わる学習の推進」とし、
2.については中高校の研究主任、総合的な学習の時間コーディネーター、研究推進委員に、「総合的な学習の時間の単元作り」を内容とした中学校・高等学校の全教職員参加によるワークショップ型研修を設定しました。

このように、学校や教師の課題に合わせて適切な研修を設定しましょう。

まとめ

こちらでは、文部科学省の総合的な学習時間(探究学習)に関する資料の組織整備の実践事例について簡潔にまとめました。

生徒のより良い探究学習には、先生同士の協力が必要不可欠です。そして先生同士の協力には、学内のシステム整備や研修が必要になります。この記事、及び資料を参考に学校全体でより良い探究学習へ取り組んでみてください。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。