探究学習

「理数探究」とは?理数探究基礎との違いや指導するポイントを解説

2018年に高等学校指導要領が改訂されたことで、新しく「理数探究」が設けられました。
正しく言えば「理数探究」と「理数探究基礎」の2科目があります。

理数探究は生徒自身が課題解決に取り組む性質上、答えが用意されていません。
そのため先生は、生徒に対する課題設定や取組に関してきめ細かなサポートが求められています。

この記事は、これから探究学習に関して理解を深めたい先生向けの記事です。
できる限りわかりやすく解説しますので、ぜひこれからの指導に役立ててください。

目次
理数探究とは
「理数探究」と「理数探究基礎」の違い
・単位数と履修方法の違い
・学習指導要領における目標の違い
・学習内容の違い
理数探究の流れ
・課題の設定
・課題解決に向けた学習
・分析・考察・推論
・成果の発表
理数探究の指導ポイント
・仮説と結果のフォローをする
・生徒のチャレンジ精神を養う
・自身の探究を振り返ってもらう
理数探究事例2選
・オランダの数学コンテストに挑む?!渋滞を数学で探究する
・水と石けんを使った表面張力についての探究学習
まとめ

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理数探究とは

理数探究とは理科や数学にまつわる課題の設定、解決をするために学習を進める科目です。

2022年入学者から開始される科目で、理数探究は総合的な探究の時間の履修の一部または全てに置き換えできるのが特徴です。

具体的には「ダンゴムシの交替制転向反応について」「金平糖の角の形成の数理モデルを作成」といった課題を生徒自身が自由に設定して、文献や実験を用いて調査・分析を行っていきます。

参考記事
>【理数探究】高校数学の探究学習事例5つを紹介
>【解説あり】高校物理の探究学習事例5つを紹介【理数探究】

「理数探究」と「理数探究基礎」の違い

理数探究には「理数探究」と「理数探究基礎」の2つがあり、それぞれ単位数や学習内容に違いがあることを知っておきましょう。

「理数探究」を行うための一通りの方法を学ぶのが「理数探究基礎」ですが、ほかにも異なる部分があります。

ここでは学習指導要領の内容に基づき、それぞれの違いについて見ていきましょう。

単位数と履修方法の違い

まず単位数の違いです。
標準単位数は理数探究基礎が1で、理数探究は2から5と決められています。

履修する順番は特に定められていませんが、学習の目標や内容は段階的に構成されているため、理数探究基礎を受けたのちに理数探究を履修するのが一般的です。

理数探究基礎は「総合的な探究の時間」で、ある程度の知識や能力が習得できていると判断できる場合には、そのまま理数探究を履修することができます。

履修に関しては、先生が生徒の学習ペースを見ながら適宜アドバイスを行いましょう。

学習指導要領における目標の違い

学習指導要領により、理数探究と理数探究基礎では学習の目標が明確に分けられています。

理数探究基礎では、「課題解決のための基本的な学習方法の習得」が目標です。
先述のとおり総合的な探究の時間と置き換えできることから、他の探究学習で必要とされる知識や技能が学べる内容となっています。

一方理数探究では、学ぶ事象について探究をするための必要な知識や技能を身につけるのが目標です。
生徒は自ら課題を設定し、観察や実験を行った上で探究の成果をまとめて他者に発表します。

生徒は理数探究基礎で学んだことを、理数探究で活用することができるのです。

学習内容の違い

理数探究とは理数探究基礎では、学習内容にも若干の違いがあります。

理数探究基礎では、検証可能な仮説の立て方や結果の記録方法についてを学びます。
例えば実験器具の使い方や表の活用、観察や実験、調査する方法などです。

探究学習はより内容が専門的で、理数探究基礎に比べ難しくなっています。
理数探究基礎の学習内容に加えて、課題解決のための方法や情報を整理して規則性や関係性を導き出す方法を学ばなければいけません。

理数探究の流れ

先生は理数探究をどのように進めていけば良いのかを理解しておけば、生徒への指導がスムーズです。

次は理数探究の具体的な流れについて見ていきましょう。

課題の設定

まず行うのが、理科や数学に基づいた課題の設定です。
高等学校学習指導要領では、自然事象や社会事象に関すること、数学的事象に関することなどを取り扱うべき内容として掲げています。

例えば「落下運動に関する探究」や「種子の発芽率に関する研究」などです。

先生が課題を与えるのではなく、あくまでも生徒自身が関心・興味を持った疑問で設定しなくてはいけません。

先生は生徒が決めた課題に対し「どのような方法で疑問を解消できるのか」「どのように調べていく計画なのか」といった疑問を投げかけて、じっくり考える機会を提供しましょう。

また理数探究では生徒の自由な発想を尊重してあげるのがポイントですが、先生は「その課題に再現性はあるのか」「限られた時間で進められるのか」などを見極める必要があります。

課題解決に向けた学習

生徒は自分たちで考えた課題をもとに仮説を立てて、探究学習を進めていきます。
理数探究では数学的・科学的な方法を用いて、仮説を検証するために観察や実験、調査を行っていくのが特徴です。

先生は限られた時間や環境のなかで、生徒がスムーズに探究学習を進められるようにサポートする必要があります。

たとえ調査に必要な器具が使えない状況であっても代わりとなるものを提案し、より精度の高い調査が行えるように指導しなくてはいけません。

分析・考察・推論

次に分析・考察・推論を行います。

この段階で、設定した仮説が本当に正しいのかどうかを検証しなければいけません。
もし立てた仮説が見当違いだった場合は、棄却して新しく課題を立てる必要があります。

ここでは予測した結果にならなかったからといって、探究を失敗と決めつける、結果にそぐわなかったデータを除外するといった行動を取らせないようにしましょう。

そして仮説を実証できるまで、何度も分析・考察・推論を繰り返し行うように指導することが大切です。

成果の発表

最後は理数探究によって得られた結果を他者に発表します。
ただ結果だけを伝えるのではなく、どのように課題設定を行ったのか、課題解決までの過程についても分かりやすく説明させるのがポイントです。

スライドやポスターなどを用いれば、より説得力の増す発表となるでしょう。

また報告書づくりも学習効果を高めるために必要です。
参考にした文献も記載するように指導し、次につながる新たな課題について考えてもらいましょう。

理数探究の指導ポイント

実際に「理数探究の指導をやろう!」と思っていても、どのような点を押さえれば良いかわからない先生も多いと思います。

ここでは理数探究での指導ポイントをまとめました。
それぞれのポイントを意識しながら指導すれば、生徒の学習効果が高まることでしょう。

ぜひ参考にしてみてください。

仮説と結果のフォローをする

先生は生徒が立てた仮説と得られた結果に対してフォローする必要があります。
科学的根拠に基づいて実証できたかどうかも一つひとつチェックしてあげましょう。

例えば得られた結果が仮説と結びつかないと悩む生徒がいれば、「グラフにするとわかりやすいのではないか?」「実験が正しくできていたのか?」といったフォローを入れるなどです。

そうすることで生徒自身に気づきが生まれ、違った視点から再度分析・考察・推論を組み立てることができます。

もし仮説を裏付ける分析ができた場合でも、根拠が不十分だったと感じるようであれば新たな検証計画を立てるよう提案しなくてはいけません。

生徒のチャレンジ精神を養う

先生は、生徒のチャレンジ精神を養うという視点を持って指導に当たりましょう。
答えを生徒自らが導き出す理数探究は試行錯誤を繰り返さなければならない難しい学習で、生徒のチャレンジ精神がなければ学習がなかなか進められないからです。

時として得られた情報が上手くまとめられず、自信をなくしてしまう生徒がいるかもしれません。
先生は生徒の様子を常に気にかけて、声かけや励ましをしてあげる必要があります。

もし実験の進め方がわからない、仮説の立て方がわからないという生徒がいれば、答えを言うのではなく進めやすいよう助言やサポートをしてあげましょう。

そうすることで生徒が積極的に粘り強く理数探究を進めてくれるようになります。

自身の探究を振り返ってもらう

探究を発表だけで終わらせず、しっかり振り返るように指導しましょう。
実際の理科・数学の世界では、正しいとされている研究成果が覆ることもあるからです。

課題を設定し仮説を立て、考察・分析を経て結果をまとめるという一連の学習を終えた生徒は、十分な満足感を得られているはずです。

しかしもう一度自身の探究の過程を振り返ってもらえば、良かった点だけでなく改善できる部分や難しかった部分が見えてくるでしょう。

振り返りは、発表をする側も聞く側も批判的な考えを持たせて、生徒同士で議論を交わさせるのがポイントです。
互いに指摘させあうことで、他者の指摘を受け入れ改善につなげようという生徒の柔軟性が培われます。

より効果の高い学習効果を与えるためには、探究学習の振り返りが必須です。

理数探究事例2選

オランダの数学コンテストに挑む?!渋滞を数学で探究する

テーマRMEアプローチ 国際数学コンテストの課題を通じた探究的な学習
実施校金沢大学附属高校

オランダで行われている国際数学コンテストの問題を使用した探究事例です。
現実社会の問題をテーマとすることで、生徒は学習を自分ごとと捉え、意欲的に取り組みやすくなります。
それだけではなく、日常の現象を数学的にとらえ定式化したり、数学的な視点から事象を解釈したりする力を身につけていくのではないでしょうか。
詳細:高校数学における探究的・協働的で教科横断的な学び

水と石けんを使った表面張力についての探究学習

テーマ「表面張力」「浮力」「親水基」「親油基」など
学習期間1日(2時間)
実施校神奈川県内の公立高校
対象学年2年生

神奈川県内の公立高校で行われた水と石けんを使った表面張力についての探究学習です。2時間程度で数学と理科の二つの観点から探究できるように計画・実施されました。

また、探究活動を効率的に行うために、タブレット端末を活用するBYOD(私物端末の利用)を取り入れ、生徒の考えや意見を共有できるような支援も行われ、学習の効率化にもつながりました。

詳細: 高等学校におけるBYODを活用した理数探究学習の実践と成果

上記事例の詳細と、より多くの事例をこちらの記事で紹介しています。合わせてお読みください。
【理数探究】高校数学の探究学習事例5つを紹介
【解説あり】高校物理の探究学習事例5つを紹介【理数探究】

まとめ

理数探究は答えがあらかじめ用意されているものではないので、生徒はもちろん指導する立場の先生も初めは戸惑いが多いかもしれません。

しかし今回ご紹介した指導のポイントを押さえておけば、生徒が途中で理数探究を嫌になってしまうということはなくなるでしょう。

何よりも生徒自らが主体的に学習を進めることが大切であり、先生は「生徒と一緒に興味・関心を持つ」というスタンスを持つことが大切です。

参考
>【付録1】【理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)
>【理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。