探究学習

「世界史探究」とは?世界史Bとの変更点や指導するポイントを解説

2018年に高等学校指導要領が改訂されたことで、世界史A・世界史Bが廃止され新たに「世界史探究」が設けられました。
世界史探究は、世界史Bをベースとした選択科目となっているのが特徴です。

探究学習自体は2022年からの導入が予定されていて、世界史探究についてもこれまでとは異なる指導方法が求められています。

指導する立場の先生は、本格的に開始される前に世界史探究について理解を深めたいと考えているのではないでしょうか。

この記事は、これから探究学習を担当する予定の先生に向けた記事です。
できる限りわかりやすく解説するので、ぜひこれからの指導に役立ててください。

目次
世界史探究とは
世界史探究の目標
・知識及び技能を習得する
・思考力、判断力、表現力を培う
・学びに向かう力、人間性を培う
・歴史を読み解く力を身につける
・情報活用能力を鍛える
世界史探究の指導ポイント
・生徒が興味の持てるように工夫をする
・地理と関連付けて学習してもらう
・博物館・資料館を活用してもらう
・客観的な資料を使うよう指導する
・「歴史総合」と関連づけて指導する
世界史探究の事例2選
・絵画の読み解きで時代をつかむ!〜17・18世紀のヨーロッパ〜
・世界史で考える明治維新
まとめ

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世界史探究とは

世界史探究は、世界の歴史に関する諸事象について地理的条件や日本の歴史、資料等を活用してまとめる学習です。

2022年度からは世界史と日本史を統合して近現代史を中心に学習する「歴史総合」が新たな必修科目となり、これまでの「世界史B」は「世界史探究」に変更されます。

生徒は社会科全体では1年次から2年次にかけて「歴史総合」と「地理総合」を必修科目とし、「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」から1科目を選択しなければいけません。

世界史Bは4単位でしたが、世界史探究は3単位という違いがあります。
そのほか、世界史探究は主題や問いを中心に構成された学習内容となっており「人物名や地名を丸暗記する」という従来の学習方法から一新されているのが特徴です。

つまりこれからは「歴史総合」と「世界史探究」により世界史を学ぶことになります。

世界史探究の目標

世界史探究には、学習を進める上での目標が設定されています。
いずれも共通して言えるのは、生徒の資質や能力を育てるということです。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

知識及び技能を習得する

一つ目の目標は知識と技能の習得です。
世界史探究では日本国内の歴史をベースに世界の歴史を学び、各時代の特徴を理解することを目的としています。

そして技能とは、様々な資料から歴史に関する情報を選び出して効果的にまとめる力のことです。
時として理解を深めるために、日本の歴史や地理に関する情報を組み合わせることもあります。

思考力、判断力、表現力を培う

二つ目が思考力、判断力、表現力を培うという目標です。
歴史探究で示す思考力、判断力、表現力とは、考察するための主題を考える力を指します。

具体的には、ある国の成り立ちについて主題を設定し、近隣諸国や古代の国家の形成過程について、その意味や意義について説明、表現等ができる、というような力のことです。

思考力、判断力、表現力は学力にも直結しており、世界史の正答率向上も期待されている能力です。

学びに向かう力、人間性を培う

三つ目の目標は、学びに向かう力と人間性の醸成です。

主体的に学びが得られる歴史探究を進めることで、生徒はやる気が高まり「もっと学びたい!」と強く感じるようになります。

従来の学習では、なぜ歴史を学ぶのかがわかりづらく「やらされている感」が拭えない要素がありました。
しかし歴史探究では、自分で決めた問いに向かって学習を進めるので、モチベーションを保ちながら学びを得られるようになります。

また世界史探究により意欲や自己肯定感といった人間力強化も期待されています。

歴史を読み解く力を身につける

四つ目の目標は、歴史を読み解く力を身につけるということです。

歴史探究における歴史の読み解きとは、現代世界との結び付けを意味します。
探究学習を通じて国、時期、年代、背景などあらゆる事象から類似点、相違点を考え、今の世界にどのような影響を及ぼしているのかを理解することが可能です。

例えば「過去と現代で共通する点は何があるか」「過去の歴史を踏まえ、これからの世界はどのような変遷をたどるか」という考えを巡らせられるようになります。

情報活用能力を鍛える

五つ目の目標は、情報活用力を鍛えるということです。
世界史探究で活用する情報は、新聞や雑誌、絵画や地図、写真等様々あります。

生徒は世界史探究でそれぞれの資料を必要に応じて比較検討する習慣が備わり、情報を上手に活用する力が身についていきます。

また「資料をまとめる際は、必ず引用や出典を記載する」といった情報の取り扱いについても学ぶことが可能です。

参考
>【徹底解説②】探究論文の具体的なフォーマットとは【表示方式編】

情報活用力は社会に出ても活かせる部分であり、学校教育の間に鍛えておくと良いと言われています。

世界史探究の指導ポイント

世界史探究の目標がわかっても、いざ指導において何を意識すれば良いのかポイントがわからない先生も多いと思います。

次に世界史探究を進めるときの指導ポイントについて見ていきましょう。

生徒が興味の持てるように工夫をする

世界史探究では、生徒が興味を持って取り組めるような工夫が必要です。
興味と関心が、生徒の学習意欲を高めてくれるからです。

先生は生徒の興味があることが何かを知り、探究学習で引き出してあげるようにしましょう。

一例ですが、紛争解決や平和に興味がある生徒なら「戦争の歴史」を、科学技術に興味がある生徒なら「科学の発展」を提案するなど興味・関心に触れるテーマを検討してみてはどうでしょうか。

興味があれば、世界史に苦手意識を持つ生徒でも歴史の枠組みや展開を理解できるようになります。

地理と関連付けて学習してもらう

「歴史総合」の科目は地理歴史科に属する科目です。
そのため世界史探究は地理と関連付けて学習してもらうことで、より理解を深めることが可能です。

例えば地理が理解できれば、国の領域を巡る問題や文化の特色について理解できるようになります。
また地理的感覚のある生徒は「今、学習しているのはどの地域なのか?」がはっきりして、その国についてイメージが湧きやすくなるでしょう。

指導の際は、地球儀や地図を積極的に活用してもらい、対象となる近隣諸国の地図を描けるような時間を設けてみるのもおすすめです。

さらにGIS(地理情報システム)や情報通信ネットワークのようなデジタル技術を用意すれば、学習を進めやすくなります。

博物館・資料館を活用してもらう

世界史探究では、博物館や資料館への調査・見学を促すようにしましょう。
博物館や資料館では、学校で調べる以上に多くの歴史的な情報が得られるからです。

場合によっては、その施設の専門家や関係諸機関と連絡を取って協力を仰ぐことができるかもしれません。

また博物館や資料館へ直接足を運び文献や資料に触れることで、情報を取り扱う大切さも理解できます。

今では収蔵品や文化資源をデジタル化して保存を行っているところも多く、インターネットから歴史資料に触れることもできます。見学する時間が確保できない場合は、こちらを生徒に提案しても良いでしょう。

客観的な資料を使うよう指導する

客観的な情報の入った資料を使うように指導することも大切です。
特に世界史では、戦争や宗教といった分野については主観的かつ扇動的な内容が盛り込まれている可能性があります。

インターネットを使えば簡単に情報が手に入りますが、信ぴょう性の怪しい情報に触れてしまうリスクも潜んでいます。先生は、生徒がそのような情報を用いて世界史探究を進めないように指導しなくてはいけません。

インターネットを使って調査をする場合は、主観的な情報が掲載されている個人サイトやブログを見るのではなく、企業や官公庁が出す一次情報を参考にするように促しましょう。

公正な資料に基づいて調査・研究を行うことで、生徒は多面的・多角的に世界史の理解を深めていけるのです。

参考
>メディアリテラシー教育参考サイト5選!この能力の必要性や探究学習との関わりも解説

「歴史総合」と関連付けて指導する

世界史探究は、歴史総合と関連付けて学習するように指導しましょう。
歴史総合で学んだ知識を、そのまま世界史探究に活かすことができるからです。

例えば歴史総合で中国やインドについて詳しく触れたのであれば、探究学習ではそれに関連付けて「アジアと日本における生産と流通」をテーマに取り上げると生徒の理解がスムーズになります。
もしくは同じ時代とテーマであれば、歴史総合と世界史探究で異なる課題を選んで学習することでも相乗効果が期待できるでしょう。

逆に関連付けが正しくできていなければ、歴史総合で取り上げなかった範囲を歴史探究で補うといった対応になってしまい、探究学習の本来の学習効果が得られなくなってしまう可能性も考えられます。

そのため先生は、歴史総合と歴史探究の双方についてきっちりと年間指導計画を立てておく必要があります。

世界史探究の事例2選

絵画の読み解きで時代をつかむ!〜17・18世紀のヨーロッパ〜

テーマ17~18世紀のヨーロッパの歴史
実施校大阪教育大学池田地区附属高校研究会

17~18世紀ヨーロッパ絵画を鑑賞し、生徒が主体的に探究することを目的とした事例です。評価は、絵画について世界史の背景を踏まえて説明する、というパフォーマンス課題で行われました。

絵画という、世界史より身近なものを通じて学習することで、世界史に対する自主的で探究的な学習を推進しました。
詳細:絵画の読み解きで時代をつかむ!〜17・18世紀のヨーロッパ〜

世界史で考える明治維新

テーマ世界史の視野から考える明治維新
学習期間1日(約50分)
実施校大阪教育大学附属高等学校
対象学年1年生

普仏戦争を目撃した明治維新期の人物になりきって、問いを立てる、日本に向けてコラムを書く、というパフォーマンス課題を行った事例です。
日本史と世界史を接続する内容である点、電子黒板を活用し、問いを共有することでより発展的な問いを教室全体でつくっている点、当時の人になりきってコラムを書くというパフォーマンス課題など、多くの特徴があります。
今回は約50分というコンパクトな時間設定で行っていますが、資料の充実度やテーマによって時間を変えたり、パフォーマンス課題を変えたりと様々な応用が可能な事例です。

詳細:多角的・多面的な視点を育てる授業を考える : 世界史で考える明治維新 ~小中高の歴史教育をつないで

上記の詳細事例と他の事例はこちらを参考にしてください
【解説あり】世界史探究の学習事例4つを紹介

まとめ

世界史探究は世界の文化や情勢について深く理解するために設けられた科目であり、これまでの暗記ベースだった学習方法とは大きく異なります。

生徒自身が考えを巡らせ結論を導く学習なので、先生は生徒が途中で行き詰ることのないよう資料の活用や理解の深め方についてサポートをすることが大切です。

今回ご紹介した指導のポイントを参考にして、探究学習がスタートすると同時に生徒が取り組みやすい学習環境を作ってみましょう。

参考リンク
>高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説|地理歴史編 平成 30年 7 月 (令和 3 年 8 月 一部改訂)|文部科学省
>高校新学習指導要領における「世界史探究」「日本史探究」とはどのような科目か – 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会 (ESIBLA)
>高校の授業に新しく加わる7つの探究学習科目とは? – 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会 (ESIBLA)
>「世界史探究」をどのように構想するか|大阪大学教授 桃木至朗

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。