地元企業は最高の探究パートナー。地域を巻き込んだ探究学習プロジェクトの始め方
「うちの学校の周りには大企業なんてないから、産学連携なんて無理」そんな声をよく耳にします。しかし、実は地元の中小企業こそが、高校生の探究学習にとって最高のパートナーになり得るのです。地域に根ざした企業だからこそ提供できるリアルな学びの機会があり、生徒にとっても企業にとってもメリットのある関係を築くことができます。本記事では、地元企業を巻き込んだ探究学習プロジェクトを成功させるための具体的な方法をお伝えします。



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なぜ地元企業が探究学習の最高のパートナーなのか
大企業との連携に比べて、地元企業との連携には以下のような独自の強みがあります。
1. 物理的・心理的な距離の近さ
地元企業は学校から近い場所にあるため、生徒が実際に訪問しやすく、継続的な関わりが可能です。また、地域への愛着や貢献意識が強いため、高校生の教育に対して積極的に協力してくれる傾向があります。経営者や従業員の子どもが同じ学校に通っているケースも多く、より親身になって支援してくれます。
2. 意思決定の速さと柔軟性
中小企業は大企業に比べて意思決定が早く、高校側の要望に柔軟に対応できます。「こんなことをやってみたい」という生徒のアイデアに対して、すぐに「やってみよう」と言ってもらえる可能性が高いのです。また、経営者と直接話ができることも多く、企業の理念や思いを生で聞ける貴重な機会となります。
3. 地域課題への深い理解
地元企業は、その地域特有の課題や可能性を誰よりも理解しています。高齢化、人口減少、地場産業の衰退など、地域が抱える課題に日々向き合っている企業だからこそ、生徒に提供できるリアルな探究テーマがあります。
4. 生徒の将来に直結する学び
地元企業との連携は、生徒が将来地域で働く可能性を広げます。探究活動を通じて地元企業の魅力や可能性を知ることで、「この地域で働きたい」という思いが生まれ、地域の持続可能性にも貢献します。
地元企業との連携で陥りがちな3つの失敗パターン
しかし、地元企業との連携がすべてうまくいくわけではありません。以下のような失敗パターンに陥らないよう注意が必要です。
失敗パターン1:一方的な「お願い」関係
学校側が企業に対して一方的に協力を求めるだけでは、持続的な関係は築けません。「生徒の学びのために協力してください」という姿勢だけでは、企業側のメリットが見えず、負担感だけが残ってしまいます。
失敗パターン2:丸投げ型の連携
「企業さんにお任せします」という丸投げ型の連携も失敗の原因となります。企業側は教育の専門家ではないため、何をどう教えればよいか分からず、結果的に単なる会社見学や職業講話で終わってしまうことがあります。
失敗パターン3:単発イベントで終わる関係
1回きりの職場体験や講演会で終わってしまい、継続的な関係が築けないケースも多く見られます。これでは探究学習の深まりも期待できず、企業側も「協力したけれど、その後どうなったか分からない」という不満を抱えることになります。
地元企業を巻き込む5つのステップ
では、どのようにすれば地元企業と良好な関係を築き、効果的な探究学習プロジェクトを実現できるのでしょうか。以下の5つのステップで進めることをお勧めします。
ステップ1:地域の企業マップを作成する
まず、学校周辺にどのような企業があるのかを把握することから始めます。商工会議所や市役所の産業振興課などと連携し、以下の情報を収集します。
- 業種・業態別の企業リスト
- 各企業の特徴や強み
- 地域貢献活動の実績
- 経営者や担当者の連絡先
- 過去の学校との連携実績
この情報を基に、探究テーマごとに連携可能な企業をマッピングしていきます。
ステップ2:Win-Winの関係性を設計する
企業にとってのメリットを明確にし、双方にとって価値のある関係を設計することが重要です。企業側のメリットとしては以下のようなものが考えられます。
- 若者視点の新鮮なアイデア獲得:高校生ならではの発想が新商品開発やサービス改善のヒントになる
- 地域貢献活動としてのPR効果:CSR活動として対外的にアピールできる
- 将来の人材確保:地元の優秀な若者との早期接点づくり
- 社員のモチベーション向上:高校生に教えることで社員自身の成長にもつながる
ステップ3:小さな成功体験から始める
いきなり大規模なプロジェクトを始めるのではなく、まずは小さな取り組みから始めて信頼関係を築きます。例えば:
- 企業訪問・インタビュー(2時間程度)
- ミニ課題解決ワークショップ(半日程度)
- 1週間の探究プロジェクト
- 学期を通じた本格的な産学連携プロジェクト
段階的に関係を深めることで、お互いの理解が進み、より質の高い連携が可能になります。
ステップ4:学校と企業の橋渡し役を明確にする
連携を成功させるには、学校と企業の間に立って調整するコーディネーター役が不可欠です。この役割は以下のような人が担うことができます。
- 探究担当教員
- 地域連携コーディネーター
- PTA役員(企業経営者や従業員の保護者)
- 市町村の教育委員会職員
- 商工会議所の担当者
コーディネーターは、企業の負担を最小限に抑えながら、教育効果を最大化する調整を行います。
ステップ5:成果を可視化し、地域全体で共有する
プロジェクトの成果を地域全体で共有することで、次なる連携につながります。具体的には:
- 地域の広報誌やウェブサイトでの活動紹介
- 公開型の成果発表会の開催
- 地元メディアへの情報提供
- 商工会議所での事例発表
- SNSでの継続的な情報発信
地元企業との探究プロジェクト成功事例
事例1:地場産業の課題解決プロジェクト(石川県の高校)
石川県のある高校では、地元の伝統工芸品産業と連携し、「若者に伝統工芸品の魅力を伝えるには」というテーマで探究活動を実施しました。生徒たちは職人への取材、SNSを活用したPR戦略の提案、若者向け商品の企画などを行い、実際に企業が生徒のアイデアを採用。結果として、20代の顧客が前年比150%増加するという成果を生み出しました。
事例2:商店街活性化プロジェクト(静岡県の高校)
静岡県の高校では、シャッター街化が進む地元商店街の活性化をテーマに、商店主たちと協力して探究活動を展開。生徒たちは各店舗の魅力を発掘し、「高校生が作る商店街MAP」を制作。さらに、空き店舗を活用した期間限定の「高校生カフェ」を運営し、多くの来街者を呼び込むことに成功しました。
事例3:農業×ITプロジェクト(北海道の高校)
北海道の農業高校では、地元のIT企業と農家の協力を得て、「スマート農業」をテーマにした探究プロジェクトを実施。生徒たちがドローンやセンサーを活用した農作物の生育管理システムを提案し、実際に試験導入。収穫量の10%向上という具体的な成果を出し、地域の農業振興に貢献しました。
地域全体を巻き込むための仕組みづくり
個別の企業との連携から始めて、最終的には地域全体で高校生の探究学習を支える仕組みを作ることが理想です。そのための具体的な方法を紹介します。
1. 地域探究コンソーシアムの設立
学校、企業、行政、NPOなどが参加する「地域探究コンソーシアム」を設立し、組織的に探究学習を支援する体制を整えます。定期的な情報交換会や、企業同士のネットワーキングの場を設けることで、より多様な連携が生まれます。
2. 地域探究バンクの創設
企業が提供できる探究テーマや、受け入れ可能な生徒数、実施時期などをデータベース化した「地域探究バンク」を作成します。教員はこのデータベースを活用して、生徒の興味関心に合った連携先を効率的に見つけることができます。
3. 地域メンター制度の導入
企業の社員や地域の専門家が「探究メンター」として登録し、生徒の探究活動を継続的にサポートする制度を作ります。メンターは月1〜2回程度、放課後や休日に生徒の相談に乗り、専門的なアドバイスを提供します。
4. 探究学習支援基金の設立
地元企業や行政が出資して「探究学習支援基金」を設立し、交通費や材料費など、探究活動に必要な経費を支援します。これにより、経済的な理由で探究活動が制限されることを防ぎます。
Study Valley TimeTactで地域連携を加速させる
地元企業との探究連携を効果的に進めるためには、適切な情報管理とコミュニケーションツールが欠かせません。Study Valley TimeTactは、地域を巻き込んだ探究学習プロジェクトを以下の機能で強力にサポートします。
1. 企業情報データベース機能
連携可能な地元企業の情報を一元管理できます。業種、提供可能なテーマ、過去の連携実績、担当者情報などを登録し、教員間で共有することで、効率的なマッチングが可能になります。
2. プロジェクト進捗管理機能
複数の企業と同時進行するプロジェクトの進捗を可視化し、スケジュール管理を行えます。企業側も専用アカウントでログインし、生徒の活動状況を確認できるため、透明性の高い連携が実現します。
3. 成果物共有プラットフォーム
生徒が作成したレポートやプレゼンテーション資料を、企業担当者と簡単に共有できます。企業からのフィードバックもシステム上で行えるため、迅速なやり取りが可能です。
4. 地域ネットワーク構築支援
TimeTactを導入している他校との情報交換や、成功事例の共有が可能です。地域全体で探究学習のノウハウを蓄積し、より質の高い産学連携を実現できます。
5. 効果測定・分析機能
連携プロジェクトの教育効果を定量的に測定し、企業に対して具体的な成果をレポートできます。これにより、企業の継続的な協力を得やすくなります。
まとめ:地域の未来を共に創る探究学習へ
地元企業は、高校生の探究学習にとって最高のパートナーです。物理的な距離の近さ、意思決定の速さ、地域課題への深い理解など、大企業にはない強みを持っています。重要なのは、学校と企業がWin-Winの関係を築き、地域全体で高校生の学びを支える仕組みを作ることです。
小さな一歩から始めて、徐々に関係を深め、最終的には地域全体を巻き込んだ探究学習エコシステムを構築する。それが、地域の持続可能な発展にもつながります。Study Valley TimeTactは、そんな地域連携型の探究学習を技術面から全面的にサポートし、生徒・学校・企業・地域すべてにとって価値ある学びの実現に貢献します。
今こそ、地元企業と手を取り合い、地域の未来を担う若者たちの成長を共に支えていきましょう。


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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。