STEAM Library

【インタビュー】Z会がプロデュースする学際的な学び

インタビュイー & インタビュワー

吉田圭一郎 (インタビュイー)

2017年株式会社栄光(Z会グループのグループ会社)新卒入社後、グループ内で幼児教育事業部門にて事業開発・幼児園運営、人事企画部門にて採用や人事戦略の立案に従事。
2020年度より、現部署にてZ会グループの公的案件、特に「1人1台端末環境」のGIGAスクール構想に向けた教育ICT・EdTechの推進を担当。STEAMライブラリーのコンテンツ開発を担当。

野本竜哉 (インタビュイー)

総合通信事業者での教育機関向けSE、IoT企画担当を経て、2017年から2021年3月まで株式会社Z会に所属。EdTechを活用したBtoC向けの教材やプログラミングの通信教育のマーケティング責任者に従事。
主に経済産業省「未来の教室」等、中央省庁との業務を中心にEdTechによる教育の拡張を模索、2020年からは経済産業省のSTEAMライブラリーのコンテンツ開発に携わった。

今回は、STEAMライブラリーのコンテンツ開発に携わるZ会にSTEAM教育についてインタビューしました。

身近な食べ物から培養肉まで

田中
田中
御社は防災と食育のコンテンツを制作しておられると思うのですが、このコンテンツを選んだきっかけや内容について教えてください。

吉田さん
吉田さん
防災・災害対応は現代の日本で生きる上で必須なテーマです。また、 食は 非常に馴染み深いテーマであると同時に、グローバルな問題と結びつきやすいので、最新の社会課題とその解決のヒントを同時に学べる「STEAMライブラリー」のテーマとして最適と考えています 。当社がこの2つのテーマに取り組む背景として、まず防災・災害対応に関しては、2017年に総務省の実証事業で「プログラミング×防災」というテーマに取り組んだこと、また本社のある静岡県は防災への意識や防災教育が進んでいるということもあります。食育に関しては2018年度から2019年度に文部科学省の「日本型教育の海外展開事業(EDU-Portニッポン)」 に採択されており、ベトナムで食育に関する実証事業を行っていました。そういった過去に取り組んできた事業の知見も今回の教材開発に生かしています。食育のコンテンツは大きく2つのパートからなっており、前半では、ベトナムでの事業の経験を元に「ベトナムの社会課題とは何なのか? 」や 、「日本における給食の仕組みやそれを支える栄養士の関わりはどのような点で優れているのか?」などを学ぶ内容です。後半は食にまつわる社会課題を最先端のテクノロジーで解決していく、FoodTechと呼ばれる領域を最先端の企業の事例や、それに込められた思いを学んでいくコンテンツになっています。 

田中
田中
最先端の事例とはどういうものでしょうか?

吉田さん
吉田さん
例えば「食肉」ですね。大豆ミートなど植物性(プラントベース)のタンパク質を材料として作るお肉です。もう一つは培養肉、細胞培養の技術を使ってお肉を作るというものです。 

田中
田中
次に防災・災害対応について防災と言えば先生方は避難訓練だけやっていればいいかなというのはあると思うのですが、防災外のことも含めてどのような力をつけることができるのでしょうか?

吉田さん
吉田さん
防災・災害対応はまさにSTEAMなものとして考えることができます。防災・災害対応の課題解決をすることで様々な教科が結びついていることを生徒に気付いてもらえます。例えば高校生が防災・災害対応について考える時、小学5年生で学習する「流れる水のはたらき」や、中学3年生の公民で学習する 行政の機能など、小中学生の間に色々な科目で学んできた知識を再構成してきて活かすことが必要なの です。STEAM教育の中でも言われている通り、教科ごとの学びだけではなくて、教科横断で学んだことを使っていくんだと実感していただけるのではないかと思います。 

田中
田中
いくつもの学問分野にまたがる学際的な内容ですね。食育になると大豆ミートや培養肉が最先端技術として取り上げられているようですが、生物の知識が無い先生でも教えられますか?それとも比較的、生物とか理科系の教科を教えている先生がやったほうが良いですか?

吉田さん
吉田さん
どちらの先生が教えても、生徒にメリットはあると思います。STEAMライブラリーのコンテンツで大切にしていることの一つに、「生徒がもっと学びたいと思った時にとことん突きつめられる」ということがあります。そのために、最先端技術として発展的な内容も準備しています。しかし、入り口は皆にとって身近な「食」というところで「そもそも今食べている食べ物はどういう素材で出来ているのか?」など、高度な専門性が必要な入り口ではなく、まずは身近なところからですね。「みんなが行くこともある コンビニのハンバーグも最近は大豆からできているものがあるんだよ」などの先生の問いかけにより、身近なワクワクから入っていって、学びたい児童生徒はどんどん専門的な領域に向かっていける構成にしてあります。 

田中
田中
児童生徒が質問したときに先生が何でも教えられるというのはスタンスではなく、「大豆ミートって言っても大豆をどうすりつぶして肉にしているんですか?」と言われても先生も分からないし、先生が答えるのではなく「疑問に思ったら調べてみようね」という答えでかまわないのでしょうか?

吉田さん
吉田さん
はい、そういうスタンスも大事だと思います。先生が誰しも生物について高度に知識を有するのは現実的ではないと思うので、外部の専門家の力を借りることも重要です。今回開発しているコンテンツでは大豆ミート、培養肉を実際に開発している企業にインタビューしていて、「大豆ミートはこういう風に出来ているんだよ」と解説してくれる動画を準備しています。先生は外部の専門家の知識を活かして、上手く組み合わせて授業で使っていただければと思います。 

野本さん
野本さん
教材そのものは指導案を全て付けるようにしています。それに沿ってやっていけば専門知識が無くても授業を進められるようになっています。また、映像をみた上で、「別の課題がこういう風にあって、みなさんで解決策になりそうなものをアウトプットしてみましょう」というように、高度な知識がなくても進められるアクティビティになっています。あとは心理的ハードルを下げるために身近なもので「某カップ麺の中に入っているお肉に植物代替肉が入っていることは知っている?」など、分かりやすいところから始めているので、STEAMライブラリーを見ている児童生徒だけでなく、先生・保護者にも「面白そうだな」と閲覧してもらい、自然と学べるような仕組みを意識しています。 

田中
田中
たしかにカップ麺の中に入っているお肉って何なんだろう?は取っつきやすいですね。食育や防災と言われても難しいですし、入り口にそういうものがあると良いですね。ありがとうございます。

学んだことを社会的課題解決に生かすのは楽しい!という経験が「学際的な感覚」をつくる

田中
田中
STEAM教育を通じて学際的に考える力や、知識の再構成・再構築の話もあったと思うのですが、こういう考え方や知識は吉田さんや野本さんはいつ頃身につけられましたか?私が学生の頃は完全に9教科が大事だよね、という感じで学際的な教育はありませんでした。

野本さん
野本さん
私は高校3年生ですね。多分、私は他の人たちと違っていて、高3の時にPDA(※ PDAとは、Personal Digital Assistantの略で、個人向けの情報端末の事。)を買ったんですよね。手のひらの上でプログラミングも書けるし自分で作ったものをここで動かすこともできるし、情報は海外のサイトに行けば転がっているから、プログラミングと英語を組み合わせたら最先端のことができるなと気付いたんです。今回STEAMライブラリーはタイミング良くGIGAスクールと絡んで小中学生が1人1台コンピューターを持った状態で学べますよね。なので恐らく自由に物を調べられるようになり、必然的に学際的な扉は開くんだと思っています。 

田中
田中
吉田さんはいかがでしょうか?

吉田さん
吉田さん
明確に自己認知できるようになったのは大学に入ってからだと思います。私は教育学部で一般教養などを学んで、それをさらに教育学の文脈で捉え直すということを学問としてやっていくことで「学際的な学びが大事なのだ」と大学1年生の時に気付きました。一方で私は年代として「総合的な学習の時間」が小学校で始められた最初の世代です。小学3年生の時のゴミ問題の課題解決や、小学4、5年生でバリアフリーについて考える学習をしました。それらは学際的な学びのファーストステップで、それが自分の中でも印象に残っていて、「学んだことを誰かのために、社会課題の解決のために生かすことは楽しい!」と思った記憶があります。つまり認識は大学生ですが、種は小学生の頃からあったかなと感じています。まさにそういう種がSTEAMライブラリーで生まれたらいいなと開発しながら思っています。
民間教育事業者として児童生徒の探究的な学びをサポートする時も、自分が児童生徒の時に「こんなことをやったな」など、自分の体験をイメージしながらいまの児童生徒の学びにも触れられているので、その原体験は貴重でした。

教育環境は昔よりも複雑になっている。指導することで、先生も学びを得られるコンテンツがあればなお良い

田中
田中
STEAMライブラリーについて、もっとこういう機能があれば学際的な学びが推進できるんじゃないか、というのはありますか?

野本さん
野本さん
いわゆる情報リテラシー、情報モラルというところがあるのではないかと、個人的には思っています。1人1台の環境で学ぶという気持ちのハードルは先生方も相当高いんじゃないでしょうか。自治体にもよりますが、先生よりも先に児童生徒に1人1台の端末が配られて、先生方の不安な声をよく聞きます。そこで、「デジタル・シティズンシップ教育」が必要になってくると思います。例えば学校の端末で延々とチャットをやるだけになったという事件が起きたときに、頭ごなしに「あれやっちゃダメ」「これやっちゃダメ」と大人が一方的にルールを決めるのではなく、児童生徒の意見や感じたことをベースに、彼ら自身にルールややり方を考えてもらうという教育です。
この「デジタル・シティズンシップ」を学べるコンテンツがあれば、先生方も子供たちに指導しながら学ぶことができるし、1人1台のメリットも活かせます。なにより、学際的な学びの入口として最適だと思います

田中
田中
デジタルうんぬんの前にベースとしてリテラシー、情報モラルを身につけられるようなガイダンス・コースがあっても良いんじゃないか?ということで良いですか。

野本さん
野本さん
そうですね、はい。 

田中
田中
確かにそれはありますね。課題としてあるのはGIGAスクール構想で配られている端末も個々でバラバラですし、学習ツールもバラバラなので、学校の先生からするとチュートリアルが無いと困るでしょうね。そこへSTEAMライブラリーも来ていっぱいいっぱいですね。

吉田さん
吉田さん
各コンテンツ開発事業者が作っているコンテンツについても同じことが言えると思っていて、先程 のお話にあった通り、これからの時代は全てを専門的に一人の先生が教えるのは知識の量や時代の変化のスピード的に難しいと思うんです。ですので、外部の力も利用しながら、先生方が上手く学んでいくことが大事ですね。防災・災害対応の教材を作っていても、「そもそもこれを先生が分かっていないと、教えることは難しいかもしれない」ということはたくさん出てきます。先生方も学び直しができて、児童生徒にとっても学びになるというものが必要になってくるのかなと、特に防災・災害対応などの文脈で感じます。 

田中
田中
ライブラリーを通じてじゃなくて良いんですけど、何かしら学校と社会がつながるみたいなツールがあっても良いのかなと僕も思っています。国がやるかどうかは別として、子供たちがSTEAM教育を通じて色々なものをアウトプットしていき、そのアウトプットを社会が評価したりできると良いですね。せっかく1人1台PC持っているのだから遠隔で子供たち同士でSTEAM教育できたら良いなと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました!

田中悠樹 (インタビュワー)

STEAMライブラリーのシステム構築事業者である株式会社 StudyValley代表取締役
2011年にゴールドマンサックス証券テクノロジー部に新卒入社。株式会社リクルートホールディングスでは海外のVCを担当。2020年に株式会社StudyValleyを設立。オンライン学習サービス「アンカー」や業務・学習支援ソフト「TimeTact」の開発や運営を行う。創業1年目でSTEAMライブラリーのシステム構築事業を受託。

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