探究学習

【解説あり】世界史探究の学習事例4つを紹介

 

「世界史探究」の事例が知りたい

探究学習の事例をお探しの先生へ。

2022年から本格的に始まる「探究学習」。世界史探究をどうやって教えたらわからない・・・そういったお悩みをよくいただきます。

そこで本記事では「世界史の探究学習事例」を調査してまとめました。

テーマやねらい、実践のプロセスや結果なども掲載しています。授業の参考にぜひお使いください。

*世界史探究はまだ事例が少なく、完全には探究学習といえないけれど、一部を変更すれば探究学習として、十分実施可能な例も取り上げています。その際は、そのポイントもお伝えしています。

世界史探究のポイント

世界史の探究学習を設計するうえで重要なポイントは大きく2つ。

・探究で何を学ぶのかを明確にする
・評価を明確にする

「総合的な探究の時間」が探究的な学びを身につけるのに主眼が置かれ、テーマや課題に自由度があるのに対し、教科の探究は、探究的な方法で「教科に関する知識や考え方」を身に付けることも期待されます。

探究を通じて、生徒が教科の知識や考え方を身に付けられるようにデザインしておく必要があります。

またペーパーテストと違い、成果だけでなく探究のプロセスも評価の対象になるのが探究学習です。探究のプロセスを評価する方法を決めておくことも重要です。

事例をご覧になる際も、これらのポイントを踏まえて見ていただく良いかと思います! それでは、世界史探究の事例を紹介していきます。

【解説あり】世界史探究の学習事例5つを紹介

1.貨幣について考える

貨幣をテーマとした探究学習事例です。イギリスの金本位制、アメリカの管理貨幣制、地域通貨などさまざまな貨幣制度をシミュレーションによって体験することを通じて「貨幣とは何か」を探究します。

テーマ 貨幣
実施校 広島大学附属高等学校

学習のねらい

・貨幣を事実や知識としてだけではなく、言説として扱い、生徒自身が貨幣を語る自分を認識しながら、貨幣についてメタ的に考察したり、教員やクラスメイトと対話したりする資質を探る。ねらいは以下の通り。

・お金には、多様な目的や価値観が結びつくことを語ることができる。
・自分がお金に結びつけていた歴史的価値観は、一つの価値観にすぎないことを自覚し語ることができる。
・お金にどのような価値観を結びつけるのかを判断し、自分自身のお金の使い方について、語ることができる。

課題・実施の流れなど

大きくこのような流れで進められました。

事前アンケート
学習前アンケートで生徒自身が貨幣をどう捉えているかを記述

自己評価
この学習の評価基準を示し、現時点での貨幣に対する認識を生徒が自己評価

金本位制を体験
イギリスの金本位制度におけるポンド金貨の使用についてシミュレーションを行い、使用の目的や結びつく価値観を分析

管理通貨制度を体験
アメリカの管理通貨制度におけるドル紙幣の使用についても同様に行う

地域通貨を体験
これまでの貨幣の働きと異なる地域通貨の使用を、シミュレーションで体験

貨幣について探究
この体験から「自分や他人が必要なことのために働きたい」という価値観の可能性や、自分自身の価値を貨幣以外に置くことができるかどうかを探究

評価
最後に生徒の自己評価、生徒同士で相互評価を行った

結果

・授業後のアンケートなどの結果、「授業を受けて、お金は国家、政府の目的や価値観の影響など、様々な影響をうけており、さらに自分という立場、国家という立場など、様々な視点から見ることが可能な存在だと考えられるようになった。」など、貨幣に対する考えの変化が見られた。

・生徒は、自己評価、相互評価を通じて、学習のメタ認知化を行い、資質の向上へつながった。

ポイント

貨幣という大きなテーマに対して、小単元が決められており、目標と評価形式が明確にされています。

今回のテーマは「貨幣」ですが、例えば「服飾」「戦争」など、他のテーマでも応用できる内容です。

また、評価を明らかにし、生徒を評価に参加させることで、学習効果が向上するという点も興味深い実践例です。

詳細:語用論的資質を探究する歴史授業における「学習としての評価」研究―世界史単元「貨幣について考える」を事例にして―

2.絵画の読み解きで時代をつかむ!〜17・18世紀のヨーロッパ〜

夜警(レンブラント)

17~18世紀ヨーロッパ絵画を鑑賞し、生徒が主体的に探究することを目的とした事例です。評価は、絵画について世界史の背景を踏まえて説明する、というパフォーマンス課題で行われました。

テーマ 17~18世紀のヨーロッパの歴史
実施校 大阪教育大学池田地区附属高校研究会

学習のねらい

・時代を読み、社会的事象の意味や意義を解釈する力を養い、自分の考えをもって判断し生きていく力を身につける(政治、経済、思想などが文化に対して与える影響)。

・様々な社会に様々な文化が存在することから、文化的多様性の尊重につながる多文化共生の精神を培う(文化と社会のしくみや人々の価値観等の密接な関連)。

・探究と調査のためのスキルをもち、自主的に学び生涯に渡って学ぶことを積極的に楽し む

使用された絵画資料
レンブラント「夜警 」「テュルブ博士の解剖学講義」
ルーヴェンス「レウキッポスの娘たちの略奪 」「キリスト昇架」
ベラスケス「薔薇色のドレスの王女」「白いドレスの王女)」
フラゴナール「ブランコ」 「読書をする女」

課題・実施の流れなど

生徒自身がキュレーターで、見学に来た高校1年生に絵画の説明をするという設定で、「名画鑑賞のしおり」を作るというパフォーマンス課題を行う。

鑑賞ポイントをわかりやすく示し、名画の魅力と世界史の繋がりを十分に伝えられる探究を行うことで、名画の理解とともに17~18世紀の歴史の理解を図るのがねらい。

1.課題の設定
グループで対話型鑑賞を行い、ふたつの絵画の特徴を抽出する(課題内容と評価基準を確認する)。

*対話型鑑賞・・・作品をグループで鑑賞して言語化し、対話をしながら多角的な視点で考えて、作品の見方を深めていく方法

2.情報の収集・整理・分析・取捨選択
必要な情報を収集し、絵画についてグループで議論する。絵画が書かれた時代や地域の状況を教科書や図録・ノートを見て整理したりなど。

3.表現
パフォーマンス課題に従って成果物を作成する。必要な情報を補充する。

4.共有
他グループ作成の「名画鑑賞のしおり」を見て様々な作品・画家と時代背景について学ぶ

5.振り返り
自分の学びを振り返り自己評価する

結果

グループで一つの課題を作成するため、分担・協働のあり方を学ぶことができました。

パフォーマンス課題に関しては、各グループ工夫して取り組み、抜け漏れが見られるところもありましたが、教員が想定しなかった絵画の解釈が見られるなど、美術教育の観点からも成果がありました。

ポイント

絵画という、世界史より身近なものを通じて学習することで、世界史に対する自主的で探究的な学習を推進しました。

対話型鑑賞用いて暗記科目からの脱却をねらいました。

教科の年間計画を大幅修正することなく取り組める授業時間数で設計された点も、多忙な先生方にとっては重要なポイントです。

詳細:絵画の読み解きで時代をつかむ!〜17・18世紀のヨーロッパ〜

3.世界史で考える明治維新

東京開化名勝京橋石造銀座通り両側煉化石商家盛栄之図(三代歌川広重:1874(明治7)年)

普仏戦争を目撃した明治維新期の人物になりきって、問いを立てる、日本に向けてコラムを書く、というパフォーマンス課題を行った事例です。

テーマ 世界史の視野から考える明治維新
学習期間 1日(約50分)
実施校 大阪教育大学附属高等学校
対象学年 1年生

学習のねらい

19世紀の欧米の社会や文化を、同時代の日本人はどのように評価し摂取したのか?様々な場面でなされた行動や意思決定をあらためて問い直し、生徒の未来での判断・意思決定の基礎力を養う歴史教育を模索する。

課題・実施の流れなど

世界で起こった出来事が日本の国家建設にどのような影響を与えたのかを探究。歴史の中でなされた日本人の意思決定に迫ることを通じて歴史的思考力を働かせることを目指しました。

導入(10分)
資料(武揚伝:榎本武揚ついて書かれた小説)を読む

展開1(17分)
渡航者の同行者になりきり、世界史の事件(普仏戦争)をどう見たか追体験。

普仏戦争に直面したパリの新旧政府の留学生の話を読んだりしながら、5W1Hマップを軸に問いたてをしながら情報を整理する。生徒の問いは電子黒板で全員に共有された。

実際に使われた「5W1Hマップ」

展開2(15分)
パフォーマンス課題として、当時のヨーロッパ渡航者として追体験したことをもとに当時の日本人に向けたコラムを考える

まとめ(6分)
現代の諸問題をどう自分は受け止め、批判し、判断するのか、という問いを投げかけて終わる

結果

生徒の問いを共有することで、さらに新しい問いを立てたり他の生徒が立てた問いに答えを考えたり、より発展的な考察に進めることができました。

歴史のつながりを知ったことをきっかけに、歴史に面白さを感じ、本から歴史を好きになったと報告する子も現れ、日本とヨーロッパを同時代のものとして捉える意欲的な授業となりました。

課題としては参考資料が一次資料ではなく小説である点。一次資料は少なく、また古語であり読解に時間がかかることから、今回はあえて小説を採用したとのことです。

ポイント

日本史と世界史を接続する内容である点、電子黒板を活用し、問いを共有することでより発展的な問いを教室全体でつくっている点、当時の人になりきってコラムを書くというパフォーマンス課題など、多くの特徴があります。

今回は約50分というコンパクトな時間設定で行っていますが、資料の充実度やテーマによって時間を変えたり、パフォーマンス課題を変えたりと様々な応用が可能な事例です。

詳細:多角的・多面的な視点を育てる授業を考える : 世界史で考える明治維新 ~小中高の歴史教育をつないで

4.セシル=ローズと帝国主義

アフリカ縦断政策を進めるセシル・ローズの風刺画
テーマ 帝国主義の成立と第一次世界大戦
実施校 広島県立安芸南高等学校

学習のねらい

ダイアモンドとデ=ビアス社そしてその創始者であるセシル=ローズを取り上げ、その経済活動・政治活動の分析を通じて「帝国主義」の時代について考えさせること。

課題・実施の流れなど

「セシル=ローズ」という典型的な「帝国主義者」を探究することを通じて「帝国主義の時代」についてイメージ豊かに捉えること、そして「帝国主義の時代」の最終的な帰結として「第一次世界大戦の勃発」という形で歴史の流れを把握できるよう試みました。

「導入」の部分で「ダイアモンドの結婚指輪を贈る」という身近な現象からデ=ビアス社について興味関心を抱かせます。

その上で「展開」の部分において生徒たちが主体的・意欲的に学習に取り組むことができるよう「導入」で触れた時代背景について「なぜ?」という発問を基本に問題解決的に探っていく形式をとりました。

また、当時の風刺画を用い、それを解読するという形で授業を展開しました。

結果

セシル・ローズの探究によって「企業のあくなき利益追求の姿勢が政府と結びついた時、他国への侵略やそのための戦争さえも辞さないという事態が発生する」という一般法則を浮かび上がらせることができました。

筆者は、今後の課題として、探究で見出した一般法則を用いて、さらに現代的な問題を分析・考察すること、を挙げています。

ポイント

「歴史的事実」「歴史用語」を覚えることに終始しがちな世界史ですが、「問い」を中心に探究的なアプローチを行うことで生徒にとっての生きた知識になることが示唆されます。

この事例は「世界史探究」として実施されたものではありませんが、「問い」だけを与えて個人またはグループで調査、議論する時間を取る、結果をまとめ、発表させるなどの工夫を行えば、より探究的な学習に発展させられる事例です。

また、指導細案に発問・想定される答え・生徒から引き出したい知識・留意事項が書かれ、丁寧に作成されていて、再現しやすい内容です(詳細リンク参照)。

詳細:人物を通して時代構造を探究する高等学校世界史授業構成