探究学習

「教えない」ファシリテーションが探究学習成功のカギ

専門外のことを生徒に聞かれると答えられないのが正直、つらいんだよね。

忙しくて、生徒の探究テーマについて調べてあげる時間なんてないよ。

私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

この記事は探究学習における「ファシリテーションとはなにか」について具体的に解説します。

探究学習を進めようとする先生方から、よくこんなご相談をいただきます。ただでさえ仕事が多い先生にとって、テーマが多岐にわたる探究学習では、生徒からの質問に答えてあげられないことに悩んでいる先生がたくさんいらっしゃいます。

結論から言うと、探究学習に取り組む先生には「講師・リーダー」から「ファシリテーター」へという発想の転換が必要です。そうすることが、生徒のためにもなり、先生の負担を軽減することにもつながるということを知って頂きたいと思います。

この「ファシリテーション」が探究成功のカギと言ってもいいでしょう。

生徒の質問に専門家として回答する必要は必ずしもありません。その代わり、先生はファシリテーターとして生徒をサポートしてあげることが重要になります。ファシリテーションは生徒の話を聞き、背中を押して探究を前に進めるサポート役です。具体的には「傾聴」し、生徒に「問いかけ」を行うことによって生徒の思考を「リフレーミング(物事を違って視点で捉えなおすこと)」して、「内発的動機付け」を行うことです。

ファシリテーションを行うことで、生徒は探究を主体的に前に進め、より楽しめるようになります。しかも先生の負担は逆に減る場合があります。

そんなファシリテーションについて詳しく解説します。

この記事の内容
● 先生の果たす7つの役割
● ファシリテーションが探究学習に必要な2つの理由
・ 生徒が主体的に探究を進められるため
・ 先生の負担が減るため
● ファシリテーションの4ステップ
・ 傾聴
・ 問いかけ
・ リフレーミング
・ 思考の整理
・ ヒントを与える
・ 内発的動機付け
● どうしても専門知識が必要な場合

*探究学習についてお悩みの先生はStudy Valleyへご連絡ください。コンサルタントが現状をお伺いしアドバイスさせていただきます。相談料などは一切かかりません。

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先生の果たす7つの役割

一言で先生といっても、時と場合によって果たす役割はさまざまです。例えば以下の通り。

● リーダー・講師(一方向的に教える、指導する。伝統的な役割)
● コーチ(コーチングにより自発性を促す)
● ファシリテーター(傾聴し、意見を引き出す)
● カウンセラー(相談役)
● コメンテーター(必要に応じてコメントする)
● 観察者(観察するがコメントはしない)
● 不在者(その場から物理的にいなくなる)

これまでの教科一斉授業では「リーダー・講師」としての役割が主でした。探究学習では次の章で詳しく述べますが、生徒が主体的に探究を進めることが重要です。あらかじめ設定されている答えを持っている先生が、それを筋道を立てて教えるのではなく、生徒自らが主体的に答えを作っていくのが探究です。それには生徒の意見を引き出すファシリテーションこそ必要なのです。

時にはリーダー・講師になることも必要

ただ、時と場合に応じて「リーダー・講師」その他の役割を担う場合もあります。例えば、防災マップを作る地域探究があったとして、最初に地図の見方や災害の基本知識を講義するような場合などです。探究の過程で前へ進むヒントを与えるために必要に応じて講義を行うことも考えられます。例えば整理・分析がうまくいかないときに、具体的な整理・分析方法を紹介する講義を行うなどです。

探究学習にファシリテーション必要な2つの理由

ファシリテーションが探究学習に必要な理由は大きく二つ。「生徒が主体的に探究を進めるため」「先生の負担が減るため」です。

生徒が主体的に探究を進めるため

探究学習は「課題設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」のプロセスを、生徒自らが主体的に行っていくことが重要です。主体性が発揮できないと、自分事として取り組めない課題を設定してしまいモチベーションが湧かなかったり、先生の指示なしに動けなかったりということが起こります。

先生が「リーダー・講師」役に慣れてしまい、生徒も常に先生にその役割を期待するようになると、探究においても「指示待ち」「答え待ち」状態に陥ってしまう恐れがあります。

ファシリテーションは生徒を「傾聴」し「問いかけ」を行うことによって生徒の思考を「リフレーミング」し、「内発的動機付け」を行うことです。あくまで生徒自身が考え、行動できるように、背中を押すことが重要なのです。

このことは指導要領にもはっきり書かれています。

課題設定や解決方法を教師が必要以上に教え過ぎてしまうことによって,生徒が自ら学ぶことを妨げるような事例や,どのような活動をするのかということに目を向け過ぎるあまり,総合的な探究の時間を通して育成を目指す資質・能力が身に付いているのかが見えにくい事例も見られる。

生徒の学習状況に応じて教師が適切な指導を行うこととは,こうした反省に立って,各学校で定めた総合的な探究の時間の目標及び内容に基づいて,育成を目指す資質・能力が身に付いているのかを継続的に評価しながら,より質の高い資質・能力の育成に向けて自立的な学習が行われるよう,必要な手立てを講じることを意味している。

*太字強調は編集部
引用:第2節 内容の取扱いについての配慮事項(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)

ファシリテーションという言葉ではありませんが、「教え過ぎ」ないことや「生徒が自ら学ぶ」ことを促すことはまさにファシリテーションの役目です。

先生の負担が減るため

先生が原則、ファシリテーションに徹することで、先生が教えなければならい事は減り、負担が減ります。

探究学習の実施にあたり、現実として「先生が忙しい」という問題があります。探究学習のテーマの自由度を高くすると、生徒が選ぶテーマは多くの分野に及び、当然、先生の専門外のテーマが選ばれることも多くなります。

これらのテーマに関する生徒の質問すべてに先生が「答え」を与えることは不可能です。先生が生徒の個々の探究について詳しく理解し、知らないことを調べて「答え」を探すことは時間的に難しいことは自明ですよね。

そして、そもそも先生が「答え」を与えることが必要なのでしょうか。「答え」を与えるのは「講師・リーダー」といった、伝統的な教師の役割が果たすものです。
先ほど説明したように、探究は生徒が主体的に探究のサイクルをまわしていくことを目指します。したがって、先生の役割も「答え」を教えることから「答え」に近づけるようサポートするというファシリテーターへ変化するのです。そうすると必然的に先生の教える負担も減ることになるのです。

まとめると、探究学習という性質上、先生はファシリテーターとして関わることが求められるということ、そして、必然的に先生の負担も軽くなるということです。先生に必要なのはファシリテーションについて知ることです。

ファシリテーションの4ステップ

では、具体的にどうファシリテーションを行えば良いのでしょうか。4つのステップで説明します。

ざっくりいうと、生徒の話を「傾聴」し、「問いかけ」によって生徒の意見を引き出します。生徒の探究の進め方や考え方などに問題があった場合は、一緒に思考を整理したり、ヒントを与える事で、生徒の視点が変わり(リフレーミング)、問題が解決に向かいます。これは生徒が自分で考えたことなので、生徒の「内発的動機付け」が高まります。

1.傾聴

ファシリテーションを行うときは、生徒が探究のプロセスにおいて、何らかのつまづきや、違和感、困難を感じているときです。このようなときは、まず生徒の話を傾聴します。生徒は話しているうちに考えがまとまって、それだけで問題が解決する場合もあります。

2.問いかけ

さらに先生から「問いかけ」ることで問題の本質を明らかにします。悩んでいるということは、それだけ試行錯誤しているということです。悩んでいることを肯定し、決して尋問にならないよう、安心して話せる雰囲気を作ってあげてください。紙に書き出してもらってもいいでしょう。

問いかけ例
● どういうことで悩んでる?
● やりたいことはどんなこと?
● これまでやったことを書き出してみよう
● あと、何があればできると思う?何が足りないと思う?
● 誰に聞けば/どこを調べれば分かると思う?

3.リフレーミング

リフレーミングとは、物事を違った視点で捉えなおすことです。ファシリテーションでは問題の解決策がわからず悩んでいる生徒に対し、違った視点を持てるようにして解決へ導くのが一つの目的です。

指導要領にもこのことの重要性が書かれています。

生徒の主体性が発揮されている場面では,生徒が自ら変容していく姿を見守ることが大切である。また,生徒の取組が停滞したり迷ったりしている場面では,適切な指導が必要である。そのようにして,生徒のもつ潜在的な力が発揮されるような学習指導を行うことが大切である。

*太字強調は編集部
引用:第1節 学習指導の基本的な考え方(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)

「生徒のもつ潜在的な力が発揮されるような学習指導」を行い「生徒が自ら変容していく姿を見守る」ことは、先生がファシリテーターとして生徒に働きかけること、それによって起こるリフレーミングと対応してますね。

それでは、どのようにすればリフレ―ミングが起こるのか、2つの例を挙げて説明します。

思考の整理

まず必要なのは思考の整理です。人は悩んでいるとき、意外と何に悩んでいるのか自覚していないものです。「英語を勉強して転職したい!」と言っている人の多くは、実は英語で何かやりたいことがあるわけではなくて「居心地の悪い職場から抜け出したい!」と思っている、というようなパターンですね。

生徒も慣れない探究で頭がいっぱいで、先へ進むために何が必要か、冷静に考えられていない場合があります。先に挙げた問いかけなどを通じて思考を整理することで、何をすればいいか、自分で気づける場合があります。

ヒントを与える

探究には「①課題の設定」「②情報の収集」「③整理・分析」「④まとめ・表現」というプロセスがあります。それぞれに具体的な手法があり、それらを正しく組み合わせることで答えに近づいていくことができます。

しかしこのプロセスをうまく進められていない場合があります。例えば解決困難な大きすぎる課題設定をしているためにつまづいているとか、情報収集が不十分だとか、分析の方法を知らないためにうまく答えを作れていない、などといったパターンが考えられます。

そのような場合、いきなり「こうしたらいいよ」と指示するのではなく、なるべく「他にそれに関する情報がありそうなところはない?」「他の方法は試した?」など生徒自身が考えられる余地があるようようにヒントを出すことが望ましいです。「答えを与える」「指示を出す」ことは、最後の手段として取っておきます。

4.内発的動機付け

ここまでのファシリテーションの過程を経て、生徒が自分で問題を前に進めるきっかけをつかめれば、自然と「内発的動機付け」が起こります。

内発的動機とは、外発的動機と対比される概念で「自ら進んで、やりたい」と、自分の内面から動機づけが行われることを指します。外発的動機は逆に動機付けが外から行われる場合で、例としては「内申に響くからちゃんとやろう」「大学進学に有利だからやろう」というようなものです。自分で考えたことだからこそ、内発的動機付けにつながるのです。

どうしても専門知識が必要な場合

ファシリテーションがなぜ必要か、そして、具体的な進め方について問いかけ例などを紹介しながら具体的な4つのステップを解説してきました。

ここまでは、専門知識を教えられなくても、生徒自身が問題を解決できるようにサポートすることは可能だ、という前提で話を進めてきました。

しかし、探究が高度に進んでくると、どうしても専門知識がボトルネックになる場合もあります。専門家でしかできないアドバイスをどうしても与えてあげたい、切実にそのように感じるシーンも出てくると思います。

解決策は大きく2つ「学校全体で協力体制を作る」「外部の専門家に頼る」です。

学校全体で協力体制を作る

一人の先生が教科担当としてカバーできる範囲は限られています。担任の先生にしか質問できない状況だと、専門的なアドバイスをすることは難しいでしょう。しかし学校全体でみれば、相当な専門知を集めることができますよね。クラスを超えて学年で時間を決めて、質問できる枠を設ける、学年も超えて質問できる仕組みを作るなど、学校全体で協力体制を作れば全教科に対応できます。

外部の専門家に頼る

それでも難しい場合は、外部の専門家に頼る選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。先生が専門家同様の知識を身につけて対応することは、必ずしも現実的ではありません。

文科省が、公官庁系の組織で総合的な学習に対して支援体制を整えている組織をリスト化しているほか、学校教育への協力に積極的な企業や団体も多数存在します。探究テーマに精通した専門家から話を聞けるということは生徒のモチベーションアップにもつながります。

外部連携にはいくつかポイントがありますので、もし外部連携に興味がある先生はこちらの記事もあわせてお読みください。

まとめ

探究学習における先生の役割、ファシリテーションについて解説してきました。

● 先生の果たす7つの役割
● ファシリテーションが探究学習に必要な理由
● ファシリテーションの4ステップ
● どうしても専門知識が必要な場合

探究学習に取り組む先生には「講師・リーダー」から「ファシリテーター」へという発想の転換が必要です。そうすることが、生徒のためにもなり、先生の負担を軽減することにもつながるということを知っていただければ幸いです。


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代表:田中
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