探究学習

高校古典の探究学習事例4つを紹介

「古典探究」の事例が知りたい

探究学習の事例をお探しの先生へ。

2022年から本格的に始まる「探究学習」。古典探究をどうやって教えたらわからない・・・そういったお悩みをよくいただきます。

そこで本記事では「古典の探究学習事例」を調査してまとめました。以下の4つの事例を紹介します。

1.清少納言への異なる評価を読んでその背景を探究する
2.絵画を利用して伊勢物語を理解する
3.古典の導入としての「十訓抄」と「平家物語」の探究的授業
4.土佐日記「帰京」を現代風にリライトして理解する

テーマやねらい、実践のプロセスや結果なども掲載しています。授業の参考にぜひお使いください。

古典探究のポイント

古典の探究学習を設計するうえで重要なポイントは大きく2つ。

・探究で何を学ぶのかを明確にする

・評価を明確にする

「総合的な探究の時間」が探究的な学びを身につけるのに主眼が置かれ、テーマや課題に自由度があるのに対し、教科の探究は、探究的な方法で「教科に関する知識や考え方」を身に付けることも期待されます。

探究を通じて、生徒が教科の知識や考え方を身に付けられるようにデザインしておく必要があります。 またペーパーテストと違い、成果だけでなく探究のプロセスも評価の対象になるのが探究学習です。探究のプロセスを評価する方法を決めておくことも重要です。

事例をご覧になる際も、これらのポイントを踏まえて見ていただく良いかと思います! それでは、古典探究の事例を紹介していきます。

【解説あり】古典の探究学習事例4つを紹介

1.清少納言への異なる評価を読んでその背景を探究する

「枕草子」で有名な平安時代の歌人・清少納言に対する、好意的な評価(『十訓抄』)と批判的な評価(『紫式部日記』)のテキストを読み、同じ人物に異なる評価が下された背景を探究した事例です。

テーマ 清少納言、紫式部、十訓抄、紫式部日記
学習期間 6時間
実施校 名古屋大学教育学部附属高等学校
対象学年 2年生

学習のねらい

1.多様な意見の質的な差について生徒たちが意識的になる
2.それらを関連づけて説明できる力をつけさせる
3.そうすることによって、古典文学への理解を深めさせる

課題・実施の流れなど

「十訓抄」と「紫式部日記」の清少納言評を読み比べて、その評価に差異が生じた要因について考えさせた。個別探究のあと、グループによる探究を行い、答えが一つに定まりにくい課題に対して、協働で解決を目指す授業を試みた。

1~4時間目
「十訓抄」と「紫式部日記」の読解

5時間目
「十訓抄」と「紫式部日記」で清少納言への評価が異なる要因について、1回目の個別探究を行い、個人で考えをまとめた。そのあとグループに分かれて話し合い、グループでの意見をまとめた。

6時間目(公開授業)
各グループの発表を行った。発表内容を板書し、関連付けや教員からの補足を行いながら、ポイント別に整理した。それをふまえて、最初の問い(評価が異なった要因)に対して2回目の個別探究の時間を取った。

結果

1回目と2回目の個別探究の回答を比較すると、1回目では複数の意見をただ羅列するにとどまるものが多かったのに対し、2回目では複数の意見を関連づけたものが増加した。

関連づけが行えた生徒は一部であったという点で課題はまだ残ったが、生徒たちに探究的思考の機会を与えられたといえるだろう。

清少納言と紫式部の「(1)社会的な対立」と、「(2)文学性の対立」を関連付けた回答例
(1)紫式部日記で清少納言が悪く言われているのは、やはり二人が(公家社会において)ライバルのような関係であったことが大元なのではないかと思う。嫌いだから、(2)紫式部は清少納言の感性が受け入れられない(清少納言が書いたというフィルターがかかってしまう)のではないかと感じた。

ポイント

グループによるディスカッションや、まとめ・発表も行われ、対話的で深い学びにつながったのではないでしょうか。

単純な古典の読解にとどまらず、有名なテキストにも様々な評価があることや、その背景にある時代状況や政治情勢などに気づくことで、古典への理解を深められた事例です。

詳細には、使われた教材やワークシート、カリキュラムの詳細、1回目と2回目の個別探究の回答結果の詳細などが掲載されています。

詳細:清少納言評を読み比べる : 高校二年生・古典(古文・漢文)の授業実践

2.絵画を利用して伊勢物語を理解する

図書資料を活用しながらグループで絵画資料を読み解き、「伊勢物語」を絵画の視点からも理解しようとした事例です。

テーマ 伊勢物語とその文化背景
学習期間 8時間
実施校 大阪教育大学附属高等学校
対象学年 第1学年

学習のねらい

古文作品の世界観を読み解くためにはその文化背景を理解する必要がある。そのため、図書資料を活用しながらグループで絵画資料を読み解くことで、生徒が古文作品に興味関心を抱きながら内容理解を進められる力をつけることを目指した。

「伊勢物語」の本文読解とそれに関する絵画資料を通じて内容理解と古文作品に親しむ姿勢を養う。

さまざまな資料から必要な情報を読み取り、その情報を言語化してまとめる活動に他者と協力して取り組む。

課題・実施の流れなど

第一次(4時間)
(1)「芥川」「筒井筒」の物語絵から物語のあらすじを想像する。次にクラス全体で語句や口語訳の確認を行い、最初に絵から抱いたイメージとの違いを整理する。

第二次(2時間)
(2)「芥川」「筒井筒」について複数の絵画を比較しながら、物語と絵画の情報を調べ、作品の解釈とその時代・文化背景をグループで討論する。パフォーマンス課題として、担当する作品についての情報や解釈を、議論を通じてまとめ、全体発表でのプレゼンテーションの準備をする。

第三次(2時間)
(3)全体発表。そしてそれを踏まえて、「伊勢物語」の文学作品としての意味合いや平安時代の男女のあり方について学習する。相互評価や振り返りシートの記入をする。

絵画の参考文献
山本登郎 「絵で読む伊勢物語」
俵屋宗達 「伊勢物語図屏風」

結果

絵を鑑賞して物語を予想するという新しい試みで、生徒は興味・関心高く取り組んだ。

生徒の感想には「絵だけでイメージした最初の授業から入ることで自分のイメージと違っているからこそ、どんな話なのだろうと調べる意欲も湧き、やっていてとても楽しかった」といったものが多く、本授業の目的通りに古文作品への興味関心を高められた生徒が多くいたようだった。

ポイント

絵画から入ることで親しみやすく、生徒の主体性を喚起する工夫がなされています。

また、生徒が自身で情報収集を行い、さらに班学習による「対話的な学び」と、それを「まとめ・発表」するという、探究学習のプロセスを踏んで、特に重要なアウトプットの機会も設けられている点も魅力です。

詳細には、学習計画表と評価基準表、各班のプレゼン内容の抜粋が載せられています。

詳細:絵画から物語の読みを深めるー『伊勢物語』とその文化的背景ー

3.古典の導入としての「十訓抄」と「平家物語」の探究的授業

「十訓抄」と「平家物語」を通じて、古典の基礎部分を学習しながら、班活動や登場人物へ手紙を書くことを通じて古典の世界に親しみを持ってもらおうとした事例です。

テーマ 十訓抄、平家物語、古文に親しむ
学習期間 20時間
実施校 広島県立安古市高等学校

学習のねらい

1.古文の音読ができるようにする
2.古文学習への興味・関心を喚起させる
3.古典作品への親しみを感じさせる
4.用言の活用について理解させる

課題・実施の流れなど

古典が苦手な生徒に、少しでも古典を読む楽しさを味わせ、古文を学習する意味について考えさせる。

「十訓抄」(10時間)
「安養の尼の小袖」(2時間)「大江山の歌」(2時間)「塞翁の故事」(2時間)
・短く区切りながら教員の後について音読
・重要古語の意味を調べる
・文の会話主・動作主を抑え、登場人物の人物像を捉える
・話の結末を予想する

古典文法の学習(4時間)
・歴史的仮名遣いや古典文法学習への導入を図り、プリントで学習する

「平家物語」(8時間)
「祇園精舎」(2.5時間)「忠度の都落ち」(2時間)「木曽の最期」(3時間)古典文法の学習(0.5時間)
・手引き(プリント資料)を活用しながら口語訳を完成し、内容を捉える。
・文中に登場する動詞の音便と係結びの法則を理解する
・口語訳付きの資料を配布。木曽義仲と今井四郎の会話や行動から二人の心情を考え、班で話し合いを行った。
・その話し合いを記録、教員はその記録を見て評価を行った
・各班の結論をプリントにまとめ、補足説明をして更なる内容理解を図った
・「平家物語」のまとめとして忠度、義仲、今井の中から好きな人物に当てて手紙を書き、その手紙をクラスごとの文集にまとめた

結果

まず、班学習を取り入れたことで、生徒が主体的に考える古文学習へと意識を転換させることができた。また、同様に班活動の同級生との対話を通じて文化背景を知り、「平家物語」の人物により感情移入できるようになり、結果的により深い作品の理解につながったといえるだろう。

生徒たち歴史的仮名遣いや文法といった古典の基礎知識において、導入としては十分な知識を得ることができた。

ポイント

歴史的仮名遣いや係り結びといった文法の学習に、探究学習を取り入れた例です。

探究学習の「情報の整理・分析」のプロセスを「義仲と今井四郎の心情を考える」という課題で行い、それを班学習によって対話的に行っているのが特徴です。

班学習によって対話的な学びの機会が生まれ、テキストを元に義仲と今井四郎の心情を考えさせることで探究学習の情報の整理・分析のステップを行っています。「まとめ・発表」にあたる、「手紙を書いて文集にする」というパフォーマンス課題も、ユニークな取り組みです。題材への興味・関心も含めた総合的な理解を確認し、評価できるでしょう。

詳細には班学習記録用紙や実際に授業で使用されたプリントや細かい指導内容などが掲載されています。

詳細:高校における古典入門の指導

4.土佐日記「帰京」を現代風にリライトして理解する

土佐日記の「帰京」を作者である紀貫之の視点に立って現代風にリライトした事例です。

テーマ 紀貫之、土佐日記、帰京、「帰京」のリライト実践
学習期間 3時間
実施校 愛知県渥美農業高等学校
対象学年 2年生

学習のねらい

土佐日記の内容と背景を理解し、古典作品の世界を自分の現代の生活と接合させる。

課題・実施の流れなど

古典作品の世界と自分の現代の生活を接合させ、自らの文脈で古典の価値を創作できる活動を用意することで、古典世界を自分の日常の言語生活や文化と結びつけて考えられるようにする。

(各1時間)
1. 土佐日記について知っていることを出し合う。「帰京」の内容を知る。

2.「帰京」を、(A)手書きの日記、(B)絵日記、(C)インスタグラム風、(D)自由形式のいずれかの書式を選び、リライトする。

3.教室を自由に歩き回り他人の作品を鑑賞する。
最後に、作品作りと作品鑑賞を通じて考えたことをワークシートにまとめる。

結果

活動中の様子としては、普段古典というジャンルだけで抵抗感を示すような生徒であっても、リライトをする中で本文や前時に示した現代語訳を読み直す姿が見られた。また、生徒の感想より、その内容に、より感情移入して自分のことのように考えることが容易になり、さらに続きを読みたいという姿勢が見られた。

「インスタや絵日記など日記が違うだけで、内容が違う気がする」とメディアの特性と伝わり方の違いについての感想を書いている生徒もいた。自らの言語活動を振り返り、普段の自己表現について考える機会としても有効性がありそうである。

ポイント

「現代メディアに適した形にリライトする」というパフォーマンス課題が特徴的な事例です。

単なる現代語への逐語訳と違い、作品の意味を一度抽象化し、整理して構築しなおすことが必要です。「絵日記」や「インスタ」形式ではビジュアルの表現も必要になります。これら、生徒に親しみのあるメディアを選択させることで古典作品を生徒自身の文脈でとらえることにつながり、より主体的で深い学びになりやすいのではないでしょうか。

詳細:古典学習入門期の高校生へ向けた授業に関する一考察―「日記文学」のリライトを通して―