探究学習

【解説あり】キャリア・進路の探究学習事例5つを紹介

この記事ではキャリア・進路探究の事例を紹介します。

テーマやねらい、実践のプロセスや結果なども掲載しています。授業の参考にぜひお使いください。

今回ご紹介するのは以下の事例です。

キャリア・進路探究
1.ファームステイを通して自己の在り方・生き方を考える
2.島の課題を探究し、解決策を町議会に提案する
3.札幌に根ざした探究活動で、地域貢献や働くことについて学ぶ
4.イヨボヤプラン「世界一行きたくなる村上のつくりかた」プロジェクト
5.15年後の「私」 ポスターセッション

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【解説あり】キャリアの探究学習事例5つを紹介

1.ファームステイを通して自己の在り方・生き方を考える

テーマ自己理解、職業理解
学習期間4〜9月(全16回)
実施校広島県立安芸南高等学校
対象学年2年生

学習のねらい

北海道での研修旅行(ファームステイ)を軸に、以下の能力・態度の育成を目指した。

・意欲的に学び、創造するための資質や能力を育成する。具体的には、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」を養う。(これらの能力は、キャリア教育で育成すべきだとされる「基礎的・汎用的能力」に含まれる内容である。)

・主体的に自己の在り方・生き方を考えることで、心豊かで節度ある人間を育て、たくましく生きる態度を育てる。

課題・実施の流れなど

ファームステイを含む北海道での研修旅行を中核に据え、教科横断的に探究学習を行う。以下のように、事前準備(課題の設定)→ファームステイ→新聞のまとめ・発表の流れで実施する。

・研修先の北海道について知るとともに、比較対象として地元である広島についても整理を行う。北海道と広島の共通点や相違点を把握し、気候・地理的条件・経済等の関心を持ったテーマに沿って課題を設定する。

・設定した課題に関する情報を収集する。各教科では、北海道に関する学習を行う「北海道ウィーク」を設けることで生徒の関心を高め、各教科の学習とグループ調査との関連付けを図る。

・北海道でのファームステイを実施し、農業体験を行う。

・探究活動の成果を新聞にまとめる。クラス内で新聞を評価し合った後に、文化発表会及び実践発表会において、ポスターセッション形態で発表を行う。

結果

調べた内容に関する発表や相互評価を繰り返すことで、より正確な資料検索や効果的な発表方法を自ら工夫できるようになる。その結果、自己表現活動への意欲の高まりが期待できる。

ポイント

本事例は研修旅行という学校行事を活用しているため、修学旅行や校外学習等の行事も探究活動の機会として活かすことができるとわかります。

ファームステイでは、「働く」とはどのようなことかを生徒が体験的に学べるため、勤労観の育成が期待されます。県外で働く体験をすることは、他地域の特色を学んで地元と比較し、地元の産業や働き方を見つめ直すきっかけにもなります。

また、他地域に赴かなくとも、地元の農家や事業所と連携して職業体験の場を設けることもできるでしょう。

詳細:第 2 編 ― 第 5 章 学校における実践事例

2.島の課題を探究し、解決策を町議会に提案する

テーマ自己理解、地域貢献
学習期間高校3年間
実施校長崎県立北松西高等学校
対象学年1〜3年生

学習のねらい

・地域課題の探究活動を通し、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身につける。

・地域住民へのインタビューや町議会での提案を行うことで、探究の成果をまとめ、表現できるようにする。

・探究に主体的・共同的に取り組み、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う。

課題・実施の流れなど

地元の課題について探究し、最後には町議会にて課題の解決策を提案する。解決策の提案も担うため、生徒は当事者意識を持って以下の探究活動に取り組む。

1年次
地域に関する基礎的な知識を学び、研究する課題を設定する。課題の例には、「藻場の再生」「漁業の後継者問題」等が挙げられる。生徒のテーマに合わせて担当教員が割り振られる。

2年次
春季休業中に、研究課題に関わりの深い地域住民に対してインタビュー調査を行う。自分たちでインタビュー相手を決め、アポイントを取る。可能な限り自分たちで情報を集めておく、質問リストを準備すること、インタビュー後にお礼状を出すことなどが事前に指導される。

3年次
研究した課題についての論文を作成する。また、学習の成果に関する校内発表や、町議会での提案も行う。例えば「藻場の再生」について研究した班は、藻場の減少はウニなどによる食害が原因であると考え、ウニを磯から回収して養殖し、地域の特産品にすることを提案した。

結果

元々は島を働く場として捉えていない生徒がほとんどであったが、 将来島に戻りたいと考える生徒が増加した。このことから、島に対する当事者意識が高まり、生徒が自分のキャリアと島を結びつけて考えるようになったと言える。

ポイント

町議会での提案が探究活動の集大成として位置づけられています。行政の立場からフィードバックをもらうことで、生徒の考えた解決策が机上の議論で終わることなく、実現可能性まで深めて考察することができます。

また、島の一住民として地域課題の解決策を提案しなければならないため、生徒には島への当事者意識を持って活動に取り組むことが求められます。このため、島の課題を自分事として捉える姿勢が身につき、自分のキャリアと島を結びつけて考えられるようになっています。

詳細:“地域への思いを書き/語る”地域学習 : 北松西高校「地域探究」の実践分析を通して

3.札幌に根ざした探究活動で、地域貢献や働くことについて学ぶ

テーマ進路探究
学習期間35単位時間
実施校市立札幌大通高等学校
対象学年明記なし

学習のねらい

・主体的にキャリアプランを立て、社会人として自立できる。

・豊かな人間関係を築くことができる。

・地域創生の担い手として活躍できる人材となる。

課題・実施の流れなど

学校設定科目である「キャリア探究」において、学校外での学習プログラムが複数設定されている。

「アニマドーレ」
生産者と顧客をつなぐ食農教育体験。 販売体験・商品開発・広報・調理体験・大通高校農業体験を選んで学習する。

「TEDxSapporo」
広げる価値のあるアイディアを地域団体プレゼンテーションによって世界へ発信する。

「まちなかの職業体験」
小学生が地域の商店街で職業体験をするイベントの企画・運営。

結果

外部と連携した豊富な学びを通して、地域と繋がったり、貢献したりする体験を積むことで、生徒の自己肯定感が醸成された。

ポイント

科目の中で複数の探究活動に参加できるため、前の探究活動で得た学びを次の探究活動で活かすことができます。

また、探究活動を繰り返すことで、自分の関心が強い分野や得意とする分野をはっきりと意識できるようになり、希望する進路の明確化が期待できます。

詳細:市立札幌大通高等学校の取組事例

4.イヨボヤプラン「世界一行きたくなる村上のつくりかた」プロジェクト

テーマ事業所訪問、地域貢献
学習期間1〜2学期
実施校新潟県立村上高等学校
対象学年2年生

学習のねらい

グローカルな視点で地域に貢献する人材の育成をねらいとしている。そのために、キャリア形成力 、問いを立てる力と問題解決力 、人間力 、確かな学力を養う。

「イヨボヤ」は、村上で「鮭」を意味する言葉として使われている。鮭のように地元の村上に戻り、地域を発展させてほしいとの想いから「イヨボヤプラン」と名付けられている。

課題・実施の流れなど

4月:プロジェクトチーム結成
それぞれの生徒が「興味のあること・もの」を書き出し、似た分野に興味・関心を持った生徒たちでチームを結成する。

5月:フィールドワーク
地元企業、市役所、保育園など、チームで取材したい事業所を訪問する。事前に「取材方法ガイダンス」を実施し、地元新聞社の記者から質問の仕方や写真撮影の方法等を教わる。

7月:大学模擬講義、市長とのふれあいトーク
市の課題等について学び、今後の探究活動に向けたアドバイスを得る。

9月〜10月:情報の整理・まとめ、発表用のスライド作成
集めた情報を整理し、インターネットや街頭インタビュー等でさらなる情報収集を行う。

11月:発表
今までの探究活動の成果について、1班5分で発表を行う。

結果

・自分の考えをまとめ、発表することにおいて明らかな成長がみてとれた。

・ボランティアとして地域行事に参加する生徒が大幅に増えるなど、地域の一員であるという意識が高まった。

ポイント

事業所の訪問に止まらず、市長とのトークや街頭インタビューなど、学校外のコミュニティと関わる機会が豊富に用意されたプログラムとなっています。したがって、コミュニケーションのマナーやポイントをコンスタントに学ぶことができます。

また、活動を行う班は他クラスの生徒と組むため、休み時間等も活用しながら積極的にコミュニケーションの場を設ける必要があります。

以上のように、プロジェクトにはコミュニケーションの重要性を実感する場面が散りばめられており、対話的な学びの実現に繋がっています。

詳細:村高イヨボヤプラン

5.15年後の「私」 ポスターセッション

テーマ進路探究、自己理解
学習期間全18回
実施校和歌山県立桐蔭高等学校
対象学年1年生

学習のねらい

・15年後の自分の姿を考えることで、高校生の今、自らが何をすべきかに気づく。

課題・実施の流れなど

1~10回
・15年後の「私」をイメージし、15年間の経験を書いたポスターを作成する。順風満帆な道のりを描くのではなく、想定される挫折を必ず2つ記入するよう指導する。

・各クラスでポスターセッションを行う。聞き手が発表者に質問を投げかけることで、 発表者は考えをさらに言語化することができる。

11~18回
・相互評価を基に振り返りを行い、30歳の「私」の履歴書を作成する。

結果

・進路について考えるよりも目の前の学習が大切だと考えていた生徒も、将来を考えることで今すべきことが明確になったと実感し、将来設計の意義を理解できた。

・就きたい職業がまだ明確ではない生徒もいるが、職業に対する理想は持てるようになった。

ポイント

単に将来設計を行うのではなく、将来から逆算して今すべきことを考えるという意図がある授業です。

現在と将来との繋がりを意識することで、日頃の学習や課外活動の意義が明確になり、生徒の意欲向上が期待できます。

また、想定される挫折についても考えることで、理想と現実をすり合わせ、リアルな将来設計ができるよう促しています。

詳細:和歌山県立桐蔭高等学校 ホームページ

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。