探究学習

【解説あり】地域探究の事例6つを紹介

「地域探究」の事例が知りたい

探究学習の事例をお探しの先生へ。

2022年から本格的に始まる「探究学習」。地域探究をどうやって教えたらわからない・・・そういったお悩みをよくいただきます。

そこで本記事では「地域の探究学習事例」を調査してまとめました。

紹介する地域探究事例
・気仙沼の海をテーマに、多様な地域課題に触れる
・地域で暮らす人との対話から、生き方について考える
・大学との連携により探究の手法を学び、北海道農業の課題を考察する
・北海道の観光ビジネスを理論と実践で学ぶ
・礼文島の水産資源で新たな製品を生み出し、地域を活性化させる
・地元企業・農業団体と連携し、区の魅力を創生するオリジナルプランを提案!

テーマやねらい、実践のプロセスや結果なども掲載しています。授業の参考にぜひお使いください。

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地域の探究学習のポイント

地域の探究学習を設計するうえで重要なポイントは大きく2つ。

ペーパーテストと違い、成果だけでなく探究のプロセスも評価の対象になるのが探究学習です。探究のプロセスを評価する方法を決めておくことも重要です。

事例をご覧になる際も、これらのポイントを踏まえて見ていただく良いかと思います!

それでは、地域探究の事例を紹介していきます。

【解説あり】地域の探究学習事例6つを紹介

気仙沼の海をテーマに、多様な地域課題に触れる

テーマ地域課題の解決、地域貢献
学習期間1学年を通して行う
実施校宮城県気仙沼高校
対象学年1年生

学習のねらい

・地域の海を素材として、多様な地域課題を理解させる
・科学的探究の手法を身に付けさせると共に、批判的・科学的思考力、プレゼンテーション能力を中心としたコミュニケーション力を育成する。

課題・実施の流れなど

気仙沼の海に関わる研究テーマを班ごとに設定し、「フィールドワーク→グループ研究→発表」のサイクルを繰り返す。

4〜6月
感染症拡大による臨時休校期間だったため、論文ポスターの見方や統計などに関する動画を配信した。

6〜7月
防災や地域の課題に関する講演を聞き、研究テーマ決定に向けた準備を進める。
8〜9月:研究テーマを決定して班に分かれ、意見交換や研究計画書の作成を行う。

10月
フィールドワークを行い、市内の施設等(気仙沼市役所、病院や幼稚園)を見学する。

11月
中間発表を行い、ここまでの成果を報告する。生徒やアドバイザー(大学教員)からアドバイスを受ける。 12月:再びフィールドワークを行い、課題研究のテーマに関連する施設や大学での指導を受ける。

1月
学年発表会にてポスターセッションを行う。地域社会研究担当教員が審査をし、各テーマの領域から優秀賞・優良賞を1班ずつ選出する。

2月
資料やデータの整理を行う。

(テーマ例)「気仙沼の海に商業施設を作って利用できるか」「津波から海と陸の豊かさを守る強いまちをどうやってつくるか?」

結果

・フィールドワークや発表会は有意義だと感じた生徒の割合が特に高く、学校外で大人と会ったり実体験したりするダイレクトラーニングは生徒の関心が高い。

・発表に関しては、結論ありきでの論理構成、テーマと結論の矛盾など、内容面で改善すべき点が見られた。

ポイント

「フィールドワーク→グループ研究→発表」のサイクルが二回あるため、仮説の設定と検証を繰り返して地域の理解を深めることができます。フィールドワークの機会も複数ある分、地域の方々と触れる機会も豊富にあるため、地域課題をより身近に捉えられると期待できます。

また、テーマごとの班は3〜5人とコンパクトであるため、班内で密にコミュニケーションをとりながら研究することが可能です。

詳細:宮城県気仙沼高等学校ホームページ

地域で暮らす人との対話から、生き方について考える

テーマ地域交流、自己理解
学習期間1年次:「総合的な探究の時間」において30時間
2学次:「総合的な学習の時間」において27時間
実施校北海道札幌啓成高等学校
対象学年1~2年生

学習のねらい

・地域のアドバイザー(北海道大学や自治体など)や卒業生らとの対話を通し、生徒一人一人が自分のよさや可能性を認識する。

・あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら社会の変化を乗り越える。

・豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となる。

課題・実施の流れなど

地域機関や卒業生らと対話しながら、高校生活の目標やよりよく生きることについて探究する。

1年次
・宿泊研修:高校生活の目的、目標を設定する。
・教科「情報」:総合学習と教科学習を往還させながら、情報社会について探究する。夏休みには、各領域の識者が書いた文章を要約、反論する課題に取り組む。
・9月からの半年: 「人がよりよく生きるとはどういうことか」というテーマを個人で探究する。

2年次
・「自分で問いを立てる生徒」「教員のゼミに参加する生徒」「外部アドバイザーが設定する講座に参加する生徒」の3パターンに分かれて探究を行う。
・2月:全校生徒のポスターセッション「学術祭」を開催する。教育関係者や保護者なども来校し、生徒が多様な人々と対話することを可能にしている。

結果

・社会的経験と専門知識が豊富な外部アドバイザーや学生メンターらとの対話は、生徒の探究心、創造力、想像力に大きな刺激を与えた。

・生徒は、自分が認識できる世界の外に別の生き方や考え方があることを知り、将来の可能性や選択肢を広げている。

ポイント

地域機関と密に連携しながら、生徒と多様な人々との対話を実現した事例です。外部のアドバイザーは、北海道大学や自治体、企業やNPO法人が務めています。また、登録制で卒業生がメンターやファシリテーターとして授業に参加しており、探究活動の活性化に貢献しています。

地域探究というと「地域課題の解決」がテーマとして浮かびやすいですが、地域の多様な人々との対話を通して生徒の価値観を広げることも地域探究の一つです。

詳細:探究的な学習活動の実践事例集

大学との連携により探究の手法を学び、北海道農業の課題を考察する

テーマ地域課題の解決
学習期間1年間
実施校北海道登別明日中等教育学校
対象学年4回生(高校1年生)

学習のねらい

北海道の農業の課題や世界の食糧問題をテーマとした探究学習を通し、以下の力を育成することを目指した。

・グローバル・リーダーとして求められる「国際的な対話力」、「課題解決力」、「情報発信力」
・経済や環境、地域振興などについて多角的に考察する力

課題・実施の流れなど

・酪農学園大学と連携し、以下の活動を通して「仮説の立て方」と「研究手法」について学ぶ。

1.全体会
「農業と環境問題」など、7つのテーマに関するミニクイズにグループで話し合いながら解答する。クイズを通し、各テーマについて新たな気づきを得る。

2.分科会
テーマごとに分かれ、「課題発見」(テーマ決定)の手法をゼミ形式で学ぶ。ペアで課題や背景を分析する。分析した課題をグループ内で共有し、「ジグソー法」や「KJ法」を用いて、調査・解決のための具体的な方法を考える。グループごとに出された調査・解決方法について順位付けを行い、課題探究の方向性について話し合う。

・酪農学園大学との活動で身につけた情報収集力や整理・分析力を活用し、北海道の農業の課題や世界の食糧問題をテーマに探究学習を行う。4~5名のグループに分かれ、教員がアドバイザー(1グループ1教員)として論理の展開や研究の進め方についてアドバイスする。 成果の発表はポスターセッションにて行い、中学3年生や高校2年生にも発表を聞いてもらう。

・海外研修やイングリッシュキャンプ等を実施し、積極的にコミュニケーションを図る態度や英語で対話する表現力を育成する。

結果

・アンケートの以下の項目が学習後に上昇しており、「国際的な対話力」、「課題解決力」、「情報発信力」育成できたと考えられる(平成29年9月(4回生時)と平成31年2月(5回生時の比較)。

自分のふるさとや北海道について、日本語や英語で世界の人たちに紹介できる
40.0%→64.2%

データや情報をもとに自分の考えをまとめることができる
81.5%→91.8%

・「地域や世界の食糧問題」をテーマとした学習を通し、生徒が主体的に北海道農業の強みや弱みの分析を行い、北海道農業の方向性について考察することができた。

・生徒の主体的な活動を促すには、担当教員がアドバイザーに徹する必要があった。具体的には、生徒の考えを否定せずに、各自の課題を解決する環境を整えること等に留意した。

ポイント

酪農学園大学との連携により、しっかりと探究の手法を学んだ上で各自の活動をスタートさせています。自分で探究することに慣れていない生徒でも、探究の進め方を学ぶ機会を十分に取ることで、抵抗なく探究に取り組んでいくことができます。

また、先生方はアドバイザーに徹することで生徒の主体性を引き出しています。このことも、自分なりに北海道を説明できるという生徒の意識向上につながっているのではないでしょうか。

詳細:探究的な学習活動の実践事例集

北海道の観光ビジネスを理論と実践で学ぶ

テーマ地域経済
学習期間明記なし
実施校北海道札幌東商業高等学校
対象学年明記なし

学習のねらい

専門家による講義や区役所との連携を通し、以下の実現をねらいとした。
・観光ビジネスにおけるホスピタリティの概念と重要性を理解する。
・場面に応じた適切なビジネスマナーの実践力及びコミュニケーション能力を育成する。

課題・実施の流れなど

・科目「ビジネス基礎」:大学教授による、ホスピタリティをテーマとした講演を実施。

・科目「ビジネス英語」:観光関連産業および外国語についての体験活動を実施。

・科目「ビジネス経済応用」:航空業界のビジネスについての講演と調べ学習を実施。

・各専門分野の教授を招聘し、講演会を実施(北海商科大学との高大連携) 「北海道経済とアジア経済の結び付き」の講演を実施することにより、訪日外国人を対象とした観光ビジネスにおける経済効果を理解した。

・厚別区役所との連携:区役所主催の地域イベントにおいて英語、中国語、韓国語のチラシを作成した。チラシの作成により、訪日外国人へのイベント周知を図るとともに、生徒の外国語力を向上させた。

結果

・学習後のアンケートでは、生徒の96.1%が「ホスピタリティに対する理解が深まった」と回答した。

・職業能力に関する調査では、「言葉遣いやマナー、身だしなみ」が上位に位置し、「コミュニケーション能力」の意識が高まったことがわかった。

ポイント

多様な分野の専門家による講演の機会が多く、幅広いテーマの最先端の情報を得ることができます。豊富な情報をインプットすることで「もっと知りたい」という気持ちを喚起できると考えられます。

さらに、外国語でチラシを作成する経験をすることで、自分の語学力を実際に役立てられるのだという自信につながると期待できます。

詳細:探究的な学習活動の実践事例集

礼文島の水産資源で新たな製品を生み出し、地域を活性化させる

テーマ地域理解、地域振興
学習期間約40時間
実施校北海道礼文高等学校
対象学年明記なし

学習のねらい

科目「生活産業基礎」において、礼文島の地域性を生かした探究学習を通して、以下の実現を目指した。
・礼文島の地域振興に主体的に関わり、新たな価値を創造する力を育成する。
・より良い地域社会を実現しようとする態度を養う。

課題・実施の流れなど

礼文島の水産資源を活用したメニューや製品を開発し、地域の振興に携わる。

・漁業従事者からの講話:礼文島の水産資源と創作料理について学ぶ。
・礼文産の昆布を使用した出汁の風味を調べ、どのような食材と合わせて料理するのが良いか考察する。
・調理実習を通して、礼文産の昆布を利用したメニューづくりを行う。
・礼文産の昆布出汁と椎茸出汁は4:3の割合にするのが最も良いという研究結果をもとに、地元食材を使用したペペロンチーノ(うどん麺)を開発し、「シーフードコンクール」などの料理コンクールに出場する。

結果

・地域の水産資源を用いた新しい商品を開発するため、新たな視点で水産資源の活用を考えるなど、新しいものを創造するプロセスを学ぶことができた。

・以下のような生徒の声から、学習を通して地域の一員としての意識が明確になり、地域振興に貢献しようとする思いが高まったとわかる。

生徒の声

礼文産の昆布が持つ可能性を知ることができたので、礼文島を代表する新たな商品を開発し、この先も皆が住みたいと思える島にしていきたいと考えるようになった。

ポイント

地域資源のPRに携わることで地域への愛着を育み、地域貢献の意欲を高めている事例です。新製品を開発する中で、何気なく触れていた地域資源の新たな魅力を発見することができます。

また、外部のコンクールを活用することで目標が明確になり、生徒のモチベーションを高めています。

詳細:探究的な学習活動の実践事例集

地元企業・農業団体と連携し、区の魅力を創生するオリジナルプランを提案!

テーマ地域課題の解決、地域貢献、農業、マーケティング、商品開発
学習期間2022年4月〜2023年3月
実施校東京都立篠崎高等学校
対象学年2年生

学習のねらい

地元企業の課題解決を通じて、将来地域社会に貢献できる人材の育成を目指す

課題・実施の流れなど

地元企業(株式会社ポポラマーマ)、農業団体(江戸川区農業経営者クラブ)からテーマをもらい、生徒は興味のあるテーマを選んでグループで探究する。

生徒が取り組んでいる探究テーマ▼
地元企業(株式会社ポポラマーマ)からのテーマ
①生パスタを使った新メニュー開発
②時と場所を鑑みた広告宣伝アイディア
③食材ロスを減らすアイディア農業団体(江戸川区農業経営者クラブ)からのテーマ
④農家の人手不足を解消するためのアイディア
⑤小松菜のブランディングアイディア
⑥農のある風景を継続していくアイデイア

探究学習は、学期ごとに3つのフェーズに分かれています。

1学期:企業のテーマの背景を考える
5月 企業講演の実施:取り組むテーマの説明。
その後の授業で「デザイン思考」のフレームワークを活用し、テーマの背景についてグループで考える。
6月 途中発表会:テーマを分析して考えた、テーマの背景にある顧客のインサイト(深層心理)を発表。専門家の方にフィードバックをいただく。

2学期:企業のテーマを解決するプランを考える
12月 成果発表会:テーマの解決策を考えて発表

3学期:江戸川区の課題を解決するプランを考えよう
3月 最終発表会:オリジナルプランを考えて発表

結果

5月の企業講演では、企業の熱い思いに聞き入る様子が見られました。
途中発表会では、①~⑥のテーマごとに教室を分け、テーマについて詳しい企業や農業団体担当者を、専門家として配置。そのテーマを選んだグループが順番に発表し、専門家がフィードバックするという流れで行われました(2022年7月時点、実施中)。

ポイント

・現在進行形で企業や地元が抱えている活きた課題に取り組む
・企業からのリアルなフィードバックがもらえる
・発表機会が複数回あるため、探究サイクルを複数回まわせる
・地元の課題を学習することで、地域を深く知ることができる

詳細:東京都篠崎高校
地元企業と連携し、地域社会とつながる活動を(日本教育新聞)

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。