探究学習

教育の未来を考える_IE Universityの革新

 

スペインの首都マドリードにあるIE Business SchoolはMBAランキングのトップ10常連校であり、特に起業家精神と多様性において世界的に有名です。昨年から続くコロナ感染症以前からテクノロジーへ多大な投資を行い、学内にEd Tech開発チームまであり、日々新しい教育を研究開発しています。

IE Universityの在日代表、飯野様をお迎えし、これからの教育のあり方、コロナ禍におけるIEの対応、テクノロジーを活用した教育の未来についてお伺いします。

 

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プロフィール

 

飯野 香 様

IE University 日本オフィス代表

16年以上に渡り外資テクノロジー企業でオペレーション、サービスデリバリー、B2B営業、市場開拓、マーケティング等を経験後、2015年より現職。日本におけるIE Universityのブランド確立、企業幹部候補向けプログラムの提案、出願希望者への情報提供、卒業生コミュニティの高付加価値化を担う。

2008年IE Business School MBA卒業。イェール大学経営大学院Women’s Leadership Program修了。在日スペイン商工会議所 理事。 一般社団法人L&D協会アドバイザー。

 

コロナ禍における教育のニューノーマル

(渡辺)
本日はお忙しい中ありがとうございます。
IE University(以後、IE)が開発した“WOW ROOM“(*1)を拝見して、世界最先端の学ぶ環境はこれほどまでに進化しているのかと度肝を抜かされました。従来のオンライン授業を遥かに超えるクオリティでオンライン授業のイメージを変えるだけでなく、“WOW ROOM“は授業のあり方、学校のあり方を根本から覆す可能性を秘めていると感じました。

(飯野様)
“WOW ROOM”はIEが掲げる”Reinventing Higher Education”を体現するものです。我が校は以前より新しい教育の形を模索し実践してきました。“WOW ROOM”は現在は実証実験的に特別講義などの際に使用している遠隔授業用プラットフォームですが、従来のビデオ会議を使ったオンライン授業,とは全く異なり、対面授業のような感触があります。

例えば、教授と学生はアイコンタクトすることもできますし、表情認識技術を用いて学生の感情をリアルタイムで測り、教授はモニターで学生の細かい感情をを確認しながらよりエンゲージメントの高い授業を行なえます。このように、IEは教育におけるR&Dへの投資を継続しており、2020年にはヨーロッパ初のTech MBAを開始するなどテクノロジーを用いたイノベーション教育に積極的に取り組んでいます。

*1: WOW RoomはIE Business Schoolチャンネルにて紹介されています
https://www.youtube.com/watch?v=8MCXFW0BeFM

(渡辺)
コロナウイルス感染症の影響により、教育の現場も休校、またはオンライン授業へ切り替えとなる等多大な影響を受けていることと思います。IEの取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

(飯野様)
昨年より、教育だけでなく社会活動の全てがニューノーマルに適応せざるを得ない状況が世界全体で同時に発生しました。当然ながらスペインでも制限や規制が敷かれて、IEもその影響を受けました。

しかし、IEでは“WOW ROOM”だけでなく、20年前から提供してきたオンラインMBA(*2)を通じて遠隔教育の経験や知見が教授陣やスタッフに蓄積されていましたので、パンデミックが確認されてからわずか数日のうちに、7000人の学生が学ぶ3万コマ以上の全授業を速やかにオンラインへ移行できました。

暫定的にオンライン授業を選択する大学が多い中、IEは今後もこうした事態は起きうると考え、「未来の授業形態」としてLiquid Learningを立ち上げました。具体的には、パンデミックや何らかの事情でキャンパスに一時的にこれない学生も、まるで水のようにオンラインとオフラインの形態を行き来することができる新しいハイブリッドフォーマットです。2020年夏からは、既に対面授業をLiquid Learningの形態で再開しています。

*2: IEのオンラインMBAであるGlobal Online MBAは世界的なQS Online MBAランキングにおいて世界1位, Financial Times Online MBA Rankingで世界2位と世界トップレベルのOnline MBAプログラム
https://www.ie.edu/business-school/programs/mba/global-online-mba/

 

オンラインはもはや対面の代替ではない

(渡辺)
オンライン授業と対面授業の違いについてもう少し伺っても良いでしょうか?対面授業の制限は教わる生徒や学生だけでなく、教える側である教員の方々のハードルも格段に上がっただろうと想像します。

IEで実践されていることや知見については日本の学校教育へも活用できる点があるかと思いますので、よろしければそれらについて伺えればと存じます。

(飯野様)
対面授業は距離が近く対話がしやすいと思いますが、IEがこれまで取り組んできた中でオンラインには対面より優れた点があることがわかっています。その中で3つほどお伝えできればと思います。

1点目は学生の多様性です。
対面授業ではいくら国籍や業種が多様といっても、90分で矢継ぎ早に意見交換される中では、やはり積極的な性格の学生が多く発言する傾向があります。そこに例えば内気な学生の意見は反映されづらいのです。

一方オンライン授業では、数倍もの時間をかけ文章の形式で全員が議論に参加が義務付けられているため、国籍・業種に加えて性格の多様性も反映されます。IEはダイバーシティをコアバリューに掲げ、多様性を重視していますが、オンラインにより学生が多様性から得るベネフィットがさらに高まりました。

IEの授業はケースメソッドという学生同士のディスカッションを通じて学ぶスタイルですが、学生の多様化により、多様な経験や考えがディスカッションに挙がっています。

(渡辺)
5年前に私が在学していた当時のクラスにおいても世界中からオンライン授業に集まって講義を受けたり、グループ課題の発表をしていました。そのグループ課題に取り組むにあたり、まずどの国の時間帯でミーティングやるか?みたいなところから決めていました(笑)。

多様性に関しては、公認会計士のチームメイトが事業投資、ファイナンスが専門でエクセルを使ってモデリングを一瞬で終わらせてくれたり、自分の作ったパワーポイントへコンサルタントのチームメイトからアドバイスをもらいながら何度も直したのがなつかしい思い出です。このような他業界や違う専門性を体験することが成長につながりました。

(飯野様)
2つ目はオンライン化により、より深い議論が出来るという声が学生から届いています。
Global Online MBAでは”ONLINE FORUM”というプラットフォームを用いて、オンラインでありながら特定のテーマに沿ってディスカッションできる環境を整備しています。この”ONLINE FORUM”では全ての学生が自身の意見や考察を書き込むことが義務付けられ、他のクラスメートと書き込みと併せて活発なディスカッションが繰り広げられています。

対面授業では発言できる学生数や時間に制限がありましたが、この”ONLINE FORUM”は対面授業の90分よりも長い、数日間かけて議論を行います。一度他の学生から出た意見を繰り返すことは許されていないため、クラスメートの議論を読んでさらに新たな視点を展開していく必要があります。その為、非常に深いところまで踏み込んだ議論ができます。

(渡辺)
MBAをはじめ、海外大学院やグローバルビジネスでは発言することで舞台に上がること、クラスに貢献することが必須だろうと思います。座っているだけなら貢献していない、と言われることすらあります。「あなたの意見は? 賛成、それとも反対?」と自身の考えを示すことが求められます。この「常に当事者として考える」環境により成長できると言っても過言ではありません。

その一方で、自信が持てなかったり、少し恥ずかしかったりして発言できなかったり、質問することを躊躇してしまう経験は多くの方が一度はあるのではないでしょうか。その点、オンライン授業では皆の前で発言するわけでないので恥ずかしさもあまり感じませんし、一人一人が平等に発言する環境を整えられるのはそのとおりです。

(飯野様)
3つ目は学びがより実践的になったことです。
Global online MBAの学生は多くが仕事をしながらIEで学ぶという二足の草鞋を履く生活を送っています。学ぶと働くを両立することは、学校で学んだことを即仕事で実践できるということです。

従来はインターンや卒業してからMBAの学びを実践するという1年~2年のブランクがありましたが、Global online MBAの学生は学んだことをすぐに活用しています。

(渡辺)
当社Study Valleyも社会で働くことと学校で学ぶことを近接に捉えるアプローチを持っています。10代の頃から自身で課題を設定し、探究し、その課題のプロフェッショナルから直接フィードバックをもらい、さらに学習していくサイクルです。このアプローチにより、学ぶことが将来役に立つことを具体的にイメージしやすくなると同時に、生徒の好奇心を刺激しやすくなると考えています。

(飯野様)
仕事をしながら学ぶというのは決して容易いものではありません。MBAは企業幹部や起業家を育成する専門職大学院ですから、カリキュラムは質・量ともにハードルは高いです。どの学生も両立に苦労していますが、学んだことがより時間をかけずにキャリアアップ、またはキャリアチェンジにつながることは大きなメリットです。中には、育児をしながらキャリアアップを目指して入学する学生も少数ながらいます。

(渡辺)
私がまさにそうでした。入学した月に第一子が生まれまして、生後2ヶ月から育児休業を取得して、育児と学生の二足のわらじ生活を1年続けました。毎日8時間を育児家事、10時間を学生というある意味で規則的な生活でした。私の出来が良くなかったからですが、パートタイムプログラムと聞いて想像する学習量よりもはるかに大変で苦労した記憶が多いです。

お話を伺っていますと、もはやオンライン授業は対面授業の代替ではなく、オンラインであることが強みになっていると映ります。「対面vsオンライン」という一義的な構図なのではなく、対面とオンラインそれぞれ長所があり、どちらにしてもその特長を活かすための環境作りと運用が鍵を握っているように感じます。

IEにおいては“WOW ROOM”や”ONLINE FORUM”といったテクノロジーを具現化した場所を用意するだけでなく、教員の方々が工夫されていたりと学生が参加しやすいように設計されている。

(飯野様)
はい、どちらにも一長一短があり、いずれにせよハード面の整備と実践というソフトの両輪が大切になります。最初から全て完璧にできたわけではなく、最初の導入からハードソフト両面の改善を重ねていく中で、学びの広さと深さの両面を実現できるようになってきています。

 

IEが育む起業家精神とは

(渡辺)
より広く、そしてより深く学ぶことは、日本の学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」「総合的な探究の時間」に通じる部分も多いように映ります。

探究学習は日本の教育現場においても確実に広がっていて、この春“未来の学校 STEAM ライブラリー”が公開されました。これは経済産業省の「未来の教室」プロジェクトが開発した、小中高における探究学習で活用可能なデジタルライブラリーで、当社はプラットフォーム構築事業者として探究学習、STEAM教育をサポートしています。

(飯野様)
日本でもそのような取り組みがあるのはとても良いことだと思います。クラスメートとの議論を通じて、自分とは異なる視点で物事を捉えたり、異なる意見がチーム内で挙がった場合にどのように判断するのか、など一人でと学ぶだけでは経験できないことも数多くあります。

また、主体的な学びとは、教育を与えられるものではなく、自ら考えるもの、つまり起点が自身の興味や関心となる取り組みも大事だと思います。高校までは時間割があり、一部が選択科目となっていることが多いと思いますが、大学からは専攻や履修科目は基本的に学生自身が選択するものですから、自分で決めて実行する訓練を積むこと自体が成長機会です。

(渡辺)
問題と正解が予めあるもの、という環境に慣れていると、この「自ら決める」作業は最初は難しく感じる生徒もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、主体性と探究心を育むアプローチは変化が激しい時代を生きる上で必要なものだろうと思います。

IEと言えば「起業家精神」が有名ですが、「起業」はある意味で「学習」と「主体性」がうまく融合して発展した行き着く先の一つとも言えます。「IEにおける起業家精神とは?」、その思考や姿勢についてはこのメディアの読者にとっても示唆に富むものではないかと思います。最後にこの点を伺えますでしょうか?

(飯野様)
IEは学生たちにイントラプレナーや起業家として社会やエコシステムの成長に寄与するよう奨励しています。その為に、私達は新しい考え方を支持し、学生が創造性を発揮し未知の領域に踏み込めるよう革新的な環境を作っています。IEのリソースを用い、トレーニングを受けた学生は、新しい取り組みを強く勧められます。

起業家精神とは、単なるキャリアパスではなく、心のあり方でもあります。新しい課題に取り組み、あらゆる機会に市場の可能性を見出そうとする意欲なのです。IEでは、多様な人々が集うキャンパス環境が、起業家精神の成長を促します。

最先端の設備、ワールドクラスの教授陣、ダイナミックなスタートアップ・アクセラレーターを利用することで、学生は実社会で通用する最先端のスキルやテクニックを身につけることができます。IEでは個人的にもキャリア的にも幅広く成長できる最適な環境を整えており、学生はどのような起業のチャンスが訪れてもそれをつかむことができるのです。

(渡辺)
本日は貴重なお話、ありがとうございました!

 

 


 

 

渡辺康雄(インタビュワー) 

株式会社Study Valley ビジネスアナリスト

2006年シティグループ証券株式会社に新卒入社。業務本部にて社内外の日本株決済プロジェクトを主導。2015年より1年を超える育児休業を取得し、育児に奮闘しながら並行してMBAを修了。

主夫生活を経て、2021年より株式会社Study Valley にて「STEAMライブラリー 未来の教室」運営及びメディアに従事。上智大学理工学部卒、IEビジネススクール|シンガポールマネジメント大学 Joint MBA修了 

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。