探究学習

探究の成功に不可欠なのは「学校を挙げた協力体制」その理由と実現に必要なことを指導要領をもとに解説

探究学習の担当に指名されたけど、一人で何をしていいかわからない
探究テーマが多岐にわたっていて、自分だけでは適切な指導や評価ができない

私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。

そこで、この記事では探究の成功に「学校を挙げた協力体制」が不可欠な理由と、実現のために必要なことを、指導要領を参照しながら解説します。

この記事で解説すること
学校を挙げた協力体制が不可欠な理由
● 計画・目標を作るため
● 教科横断的な指導や評価を実現するため
● ノウハウを共有・蓄積するため
● 外部連携などの業務の役割分担をするため

学校を挙げた協力体制の実現に必要なこと
● 校長先生のリーダーシップ
● 校内の役割分担

総合学習の指導要領との比較で見えてくる探究学習の特徴には以下の5つがあります。

探究学習の特徴
● 自己と関連づけられた課題
● 社会との接続
● 横断的な学び
● 4プロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)の明示
● 探究サイクルの重視

指導要領の詳しい解説、総合学習との違いについてはこちら
>【高校指導要領】総合的な探究の時間のポイントを解説。総合学習との違いも

総合学習と比べ、内容的にも高度になり、目標についてもより具体的にすることが求められています。

探究の導入にあたっては、1人~数名の担当の先生が指名され、その先生方を中心に進めていらっしゃる学校が多いと思います。

しかし、探究学習の目標を作ること、計画を立てること、実施して指導していくこと、そして改善していくことは、1人~数名の担当者の先生だけでスムーズに実現することは困難です。

業務のボリュームだけではなく、多様な生徒たちの探究テーマの指導や評価においても、教科横断、学年横断的に助け合う仕組みがあることが望ましく、指導要領にも具体的な役割の提案があります。

ではそれら、探究学習の導入、実施に向けた「学校を挙げた協力体制」について具体的に解説していきます。

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学校を挙げた協力体制が不可欠な理由

「学校を挙げた協力体制があればいいのだろうけど、周りの先生もお忙しくてなかなか協力をお願いしにくいところもある」そうお考えの先生もいらっしゃると思います。
そこでまず、あらためて協力体制が不可欠な理由を整理しておきます。まずは周りの先生方にそれを知ってもらうことが最初かもしれません。

以下の4つの理由を解説します。

● 計画・目標を作るため
● 教科横断的な指導や評価を実現するため
● ノウハウを共有・蓄積するため
● 外部連携などの業務の役割分担をするため

計画・目標を作るため

一つ目は、計画・目標を作るためです。新しい探究学習の指導要領では、計画や目標は学校の目標や、他の教科との関連を重視することが挙げられています。

各学校において定める目標については,各学校における教育目標を踏まえ,総合的な探究の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すこと。(2) 各学校において定める目標及び内容については,他教科等の目標及び内容との違いに留意しつつ,他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視すること。

*強調は編集部
引用:第2 各学校において定める目標及び内容

探究学習を通じてどのような資質・能力の育成を目指すのかは、教科を横断して学校内での活発な議論が望まれます。

教科横断的な指導や評価を実現するため

探究学習では、生徒が自らの興味・関心に基づいて探究テーマを選択します(学校が与えるパターンもあり。詳しくは参考記事リンク)。必然的に探究テーマは多岐にわたります。
探究学習の指導を担任の先生が行う場合、そこには先生の専門教科の範疇外の探究テーマも多く含まれることになります。

探究テーマは学校が指定する場合もあります。詳しくは下記記事「1.誰が決めるのか」も参照
>探究学習のテーマ・課題選びに失敗する先生が見落としがちな3つの視点

専門的なアドバイスをしてあげたい場合、教科横断的に先生が指導できる体制があれば、生徒たちはより良い探究学習を行うことができます。

例として、探究学習についてクラスや学年を超えて質問できる時間を設ける、オンラインなどの手段で専門の先生へ質問できる仕組みを作ることなどが挙げられます。

担任の先生が専門教科外の指導が難しいという問題は、評価についても同じことが言えます。汎用的な資質・能力の評価であれば可能かもしれませんが、専門的な観点を入れたい場合は困難になります。ここでも教科横断的な協力体制が必要になります。

ノウハウを共有・蓄積するため

探究学習を継続して実施していくにあたって、ノウハウを共有して蓄積することは重要です。例えば教科学習と探究学習の大きな違いとして、先生の生徒への関わり方の違いがあります。

一方向的に講師として知識を伝達することが多い教科学習と違い、探究学習では先生がファシリテーターとしてサポート役に徹することが多くなります。その際には、「傾聴」「問いかけ」を行うなど、生徒へのアプローチの仕方も変わります。

もし探究の指導や業務に精通している先生がいても、そのノウハウが学校でシェア・蓄積されなければ、その先生が転勤してしまったら学校には何も残らず、またゼロからのスタートになってしまいます。

このようにノウハウをシェアし、業務を属人化させないためにも、学校全体で協力体制を作り定期的に勉強会や情報交換を行うなどの仕組みの構築が望まれます。

外部連携などの業務の役割分担をするため

探究学習では外部との連携を行う場合があります。

前にも触れましたが、探究テーマは多岐にわたるため「専門的なアドバイス」も学校内だけでは対応できない場合もあるでしょう。また、地域探究やキャリア・進路探究では地元企業へ取材したりインターンシップを行うといったことも考えられます。

そのような場合は外部の協力してくれる組織や人に連絡を取り、趣旨を説明し、具体的な連携を計画・実施していくことになります。

このような業務も学校内で役割分担を行い、スムーズに進めることが望まれます。

学校を挙げた協力体制の実現に必要なこと

それでは、具体的にどのような仕事や役割分担が考えられるのでしょうか。

校長先生のリーダーシップ

まず、校長先生のリーダーシップは欠かせません。校長先生に望まれる役割は指導要領には以下のように書かれています。

教師が互いに知恵を出し合ったり,実践上の悩みや課題について気軽に相談し合ったりできる体制づくりや雰囲気づくりも,校長をはじめとする管理職の務めである。

加えて,総合的な探究の時間では,探究の広がりや深まりを促すために,校外の様々な
人や施設,団体等からの支援が欠かせない。また,家庭の理解と協力も必要である。「社
会に開かれた教育課程」の理念の下,校長はリーダーシップを発揮し,自分の学校の総合
的な探究の時間の目標や内容,実施状況について発表する場と機会を定期的に設けたり,
学校だよりやホームページ等により積極的に外部に情報発信したりするなどして,広く理
解と協力を求めることが大切である。

*強調は編集部
引用:第2節 校内組織の整備

まとめると以下のようになります。

● 先生が協力し合える体制づくり・雰囲気づくり
● 校外の人や施設団体からの支援を得る
● 家庭の理解と協力を得る
● 探究学習について発表する場と機会を設ける
● 外部に情報発信して広く理解を求める

先生同士の縦横のつながり、さらに家庭も含めた学校外との連携には校長先生の力が不可欠です。

校内の役割分担

校内の協力体制を円滑に進めるためには、役割分担も必要です。指導要領には校内の役割分担について、以下のような例を挙げています。

● 副校長,教頭:運営体制の整備,外部との日常的な連携・協力体制の構築
● 教務主任:各種計画の作成と評価,日課表の調整,指導の分担と調整
● 研究担当:研修計画の立案,校内研究の実施
● 学年主任:学年内の連絡・調整,研修,相談
● 進路指導主事:職業選択や進路選択にかかわること
● 学科主任:学科内の連絡・調整,研修,相談
● 農場長:農業に関する実習や実習地,実習設備にかかわること

次に,各学校において位置付ける係や担当が果たす役割について,例示する。

● PTA・同窓会担当:保護者や同窓会への協力依頼及び連絡調整
● 研修担当:研修計画の立案,校内研究の実施
● 総合的な探究の時間推進担当(コーディネーター):総合的な探究の時間の充実
● に向けた方策の企画・運営,研修計画の立案,教師への指導・支援
● 学校図書館司書・司書教諭:必要な図書の整備,生徒及び教師の図書館活用支援
● 地域連携担当:校外の支援者,支援団体との渉外
● 情報担当:情報機器等の整備及び配当
● 養護教諭:学習活動時の健康管理,健康教育に関わること
● 実習助手:実験または実習に関わること
● 事務担当:予算の管理及び執行 など

引用:第2節 校内組織の整備

もちろん、必ずしもすべての役割が必要なわけではありませんし、複数の役割を一人で兼務することもありえます。

まとめ

探究の成功に「学校を挙げた協力体制」が不可欠な理由と、実現のために必要なこと、探究学習の特徴と指導要領をもとに解説してきました。

学校を挙げた協力体制が不可欠な理由
● 計画・目標を作るため
● 教科横断的な指導や評価を実現するため
● ノウハウの共有・蓄積
● 外部との連携などの業務の役割分担

学校を挙げた協力体制の実現に必要なこと
● 校長先生のリーダーシップ
● 校内の役割分担

探究学習の導入・実施は簡単ではありませんが、学校全体で協力しあうことでより良い探究学習が実現できます。探究学習の導入・実施に取り組まれる先生方の参考になれば幸いです。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。