STEAMライブラリー

おしゃべり病理医のMEdit Lab -医学にまつわるココロ・カラダ・コトバワーク|編集工学研究所×順天堂大学

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

株式会社編集工学研究所(以下、編集工学)は、「生命に学ぶ・歴史を展く・文化と遊ぶ」をスローガンに、社会のさまざまな事象に編集工学を応用し、新たな価値を生み出すことを研究しています。編集工学の基礎研究および大学の図書空間や企業研修、コンサルティングでの応用、インターネットで思考の方法である「編集術」を学ぶイシス編集学校の運営など、幅広い事業を手がけています。

昨年に引き続き、順天堂大学との共同制作で、身近なテーマと医学を重ねて学ぶ「MEdit Lab」の第二弾をご提供いただきました。第一線で活躍する小児科医の山髙篤行先生や、ラグビー元日本代表の福岡堅樹さんなど、豪華なゲストを招き、「カラダ」「ココロ」「コトバ」と医学のつながりを学ぶコンテンツです。

このコンテンツの使い方や込められた想いについて、編集工学の吉村様と順天堂大学の小倉様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

目次
第一弾では、遊んで学べる「ウイルスカードバトル」が中高生にヒット!
教科を超えて広がる学び。「カラダ」「ココロ」「コトバ」×医学。
コンセプトは「give・find・make」。これからの時代に必要な、問いをつくる力とは?
ポイントは「日常での気づき」と「疑問の促し」
MEdit Labで高大産学連携へ。新サイトは夏にオープン!

吉村堅樹様 プロフィール

イシス編集学校 学林局林頭
編集工学研究所 執行役員、イシス編集学校 学林局 林頭。奈良県の平城京遷都1300年記念関連プロジェクト、帝京大学共読プロジェクト、千夜千冊編集業務などを手がけたほか、編集力養成プログラムの開発、ハイパー・エディティング・プラットフォーム[AIDA]の講座ディレクター、ISISフェスタなどのイベントプロデュースに携わる。『インタースコア』(春秋社)、『情報の歴史21』(編集工学研究所)の書籍編集責任、webメディア「遊刊エディスト」編集長。現在はpod castで「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」を配信中。小倉先生(以下、同じ)と共に、経済産業省STEAMライブラリーの学習コンテンツ「おしゃべり病理医のMEdit Labo」制作にも携わる。

小倉加奈子様 プロフィール

順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授、病理診断科長
2006年順天堂大学大学院博士課程修了。医学博士。病理専門医、臨床検査専門医。NPO法人「病理診断の総合力を向上させる会」のプロジェクトリーダー・理事。病理医や病理診断の認知度を上げる広報活動として、中高生を対象とした病理診断体験セミナーやチーム医療セミナーなどを開催し、病理診断の面白さを伝えるとともに、ふだんの学校生活と医学をつなげるような教育活動を精力的に行っている。プライベートは(大学1年と中学3年の)2児の母。松岡正剛氏が校長を務めるイシス編集学校の師範としての指導の経験を活かし、医療と教育をつなぐ活動を展開している。2020年からは経済産業省主導のSTEAMライブラリーに参画し、教育コンテンツ「おしゃべり病理医のMEdit Lab」を制作。

株式会社編集工学研究所

「生命に学ぶ・歴史を展く・文化と遊ぶ」を標榜し、古今東西のあらゆる人文知を関係づけ、新たな価値を創出する研究と実践、応用を続けている。方法日本、物語工学、編集術をネットで学べるイシス編集学校を2000年から運営中。所長は編集工学者・松岡正剛。

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コンテンツについて

タイトルおしゃべり病理医のMEdit Lab -医学にまつわるココロ・カラダ・コトバワーク
学年中学、高校
キーワード医学、診断、キャリア教育、医学部志望、心理
URLhttps://www.steam-library.go.jp/content/110

概要

今回のテーマは「コトバ」「カラダ」「ココロ」です。ちょうど思春期まっ只中のみなさんには、この3つはなんだか”ざわざわ”してくるホットワードなのではないでしょうか。実はここには「人間とは何か?」「コミュニケーションとは何か?」という、うんと広くて深い根源的な問いすらひそんでいます。

第一弾では、遊んで学べる「ウイルスカードバトル」が中高生にヒット!

(田中)皆様には昨年もコンテンツをご提供いただきました(『おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学Medicine×編集Editで世界を読む』)。実際に昨年のコンテンツを高校で使って実証されたそうですが、いかがでしたか。

(小倉)新型コロナウイルスの影響もあったので、オンラインや対面を組み替えながら、昨年、2021年の5月から8月あたりまでの間に、6回ほど実証を行いました。

実証では、「MEditウイルスバトル」という、ウイルス対ヒトの対戦型カードゲームを実施し、すごく盛り上がりました。生徒さんは、そこまでに至るコマを事前学習して、ウイルスの種類や、免疫機能について学習していただいていました。ゲームは「RNAウイルスだからこのお薬が使えない」など現実のことがルールに反映されていて、ゲームが事前学習の実践編になるんです。そこで学びがぐっと深くなります。

▲「MEditウイルスバトル」に出てくる、ウイルスチームのカード。(5コマ目:ガチンコ病理医ウイルスバトル(医学×バイオ vol.3)より)

(小倉)また、実施後にアンケートを取り、「どのようなことに興味を持ったか」、「このカードゲームにどんなルールを付け加えたらもっと面白くなると思うか」について質問しました。すると、感想やルールの改良だけでなく、「次はこういうことを知りたい」など非常に高いレベルの回答がたくさん挙がりました。こうしたことから、この教材を通してどれだけ興味を増やせるか、という意味では「MEditウイルスバトル」はとても成果があると実感できました。

(田中)なるほど。ゲーム感覚で学びを深められるのは良いですね。

教科を超えて広がる学び。「カラダ」「ココロ」「コトバ」×医学。

▲豪華なゲストが登場する今年度のコンテンツ。(4コマ目:日本を代表する小児外科医と元ラグビー選手登場!!  アーティストな俺たちのダンドリダントツ(カラダワーク1)より)

(田中)今年度も新たなコンテンツをご提供いただきましたが、昨年よりも発展させた部分はございますか?

(小倉)今回は「カラダ」「ココロ」「コトバ」というテーマに分け、どんな場所でもどんな授業の中でも取り組めるというコンセプトにしました。昨年のコンテンツでは、歴史と医学を掛け合わせる、読書と医学を掛け合わせる、といった形だったため、「社会の授業でやってみよう」「国語の授業でやってみよう」と学校の授業と組み合わせやすくなっていました。今回は、どんな方向にも興味が広げられるようなコンテンツにしていて、あえて教科との掛け合わせはしていません。

生徒は、目当てがある程度推測できると、先生が求める回答を先回りして考えてしまう傾向があります。だから、あえて「教科」といったわかりやすさを前面に出さず、テーマに自然に関心が向くような教材にしました。

(吉村)あとは、今回は対談形式にしたということが一番大きな変更ですね。前回は小倉先生がレクチャーする形で、より授業に近い形でした。一方、今回はゲストとの対談形式のため、学生の皆さんにとって、さまざまな医療やラグビーというスポーツを通じて人生の先輩から学ぶ、という感じに近いと思います。これからの人生をどう生きていくのかを、より考えさせられる内容になっています。

コンセプトは「give・find・make」。これからの時代に必要な、問いをつくる力とは?

(田中)コンテンツを制作する上で、どのようなことを意識されましたか。

(吉村)問題の「give・find・make」という考え方を意識しています。「give」は問題を与えられるということです。その次の段階が自分で問題を見つける「find」、最後は問題やお題を自分で作ることができる「make」です。今の教育は、問題を与えられる「give」がほとんどだと思います。MEdit Labでは、次の「find」の段階に進んでほしいと考え、「このテーマの中で私にはこういう問題が見つかった」と感じてもらえるような教材にしました。その背景には「これからの日本人が、組織や行政に依存しない自立した人間になってもらいたい」という想いがあります。

(田中)面白い考え方ですね。このコンテンツも、見るだけでは「give」で終わってしまいますが、「find」や「make」をするにはどのようなことを行えば良いでしょうか。

(吉村)与えられた問い以外に、自分なりにお題を設定することですね。例えば、イシス編集学校では、「コップは何に使えるか」というお題が最初に出題されます。普通は、誰もが思いつく、「水が飲めます」とか「牛乳が飲めます」とか「花瓶になります」という回答で終わってしまいます。でも、「こどもが使えばどうなるか」とか、「器でない使い方をしてみたら」といったお題を自分で設定すれば、音を鳴らせるとか、割って喧嘩するとか(笑)、どんどんアイデアが増えていきます。「もっと面白くするにはどうしたらいいんだろう?」という自分なりのお題を持てるようになるというのが、私たちが意識しているところですね。

(田中)面白いですね。そのように考えを様々な方向に発散させるには、心理的安全性が担保されていることも重要なのではないかと思いました。

(小倉)その通りだと思います。みんな「平均」にいることが安全だと思うから、周りの目があると、あまり突飛なことを言っていじめられたらどうしようとか、萎縮してしまう場合もありますね。だから、個人でこの動画を視聴して、こっそり楽しんでくれても良いんじゃないかとも思っています。

ポイントは「日常での気づき」と「疑問の促し」

(田中)学校の先生がコンテンツを使う際に、生徒に伝えると良いことや、意識することはございますか。

(小倉)「色々なQ(疑問)を自分の中でどれだけ出していけるか」ということを考えるワークですよ、とお伝えいただければと思います。生徒さんは、「教材でこれを学びます」という「これ」が最初にあると、この後には調べ学習が来て、皆でディスカッションして解決策を書くんだよねと、学びのプロセスがもう見えてしまうんですよね。

(田中)しかも先生が期待するアウトプットはこの辺かな、みたいな。

(小倉)そうです。テーマありきではなく、そのテーマを情報としてインプットしながら、色んな疑問を逆に自分から出していくことを促せたら良いと思っています。

(田中)なるほど。発散力を育むんですね。

(小倉)あとはもう一つは、何気なく過ごしている日々の中から気づきを得る、ということもテーマに置いているので、そこを意識していただきたいです。生徒さんも朝学校に行くまでとか、勉強でも何でも、何気なくルーチンにしているプロセスがあると思うのですが、それをあらためて振り返る機会はあまりないと思います。「何をやらなきゃいけないか」には関心が向くけれど、「どうやるか」というところは関心が向きにくいのではないでしょうか。

だから、見方を変えるということがポイントなんです。例えば、ラグビー元日本代表の福岡堅樹さんに試合当日までどのように準備しているかとか、小児外科医の山髙篤行先生に難症例の手術に向かう際はどう準備していくのか、というようなことを聞いて、それを追体験するようなワークがあります。そういうワークを通じて、何気なく行っている自分の日々の行いの見方が変わり、そこから気づきを得ることができます。

MEdit Labで高大産学連携へ。新サイトは夏にオープン!

(田中)最近探究されていることや、問題を「find」や「make」されたことは何かありますか。

(小倉)これからどうSTEAM教育をうまく使って高大産学連携できるかということを考えています。「大学は研究力をつけなさい」と言われていますが、研究は「find」「make」しかなく、自分で問題を見つけないと研究はスタートできません。高校まで「give」でしか問題に取り組んでこなかった学生は苦労します。だから、受験生や大学1年生あたりに、もうちょっと「find」とか「make」のアプローチを教えていかないと変わらないと思います。

(田中)高校生にも大学生にもSTEAM教育が必要ですね。

(小倉)そうなんです。今、大学の中で「STEAM教育研究会」を発足しようと動いていて、夏にサイトもオープンします。そこでは、我々が作ったSTEAMライブラリーのコンテンツを利用できたり、教材を使ってくれる先生方や生徒さんがつながれる仕組みを作る予定です。関心を寄せていただける高校の先生方がおられたら、こちらから色々な情報配信ができると思いますので、よろしくお願いいたします。

まとめ

私たちの日常にある身体や心、言葉を医療と繋げて思考を深めることや、さまざまなことに応用できる新たな気づき、方法の発見を得ることのできるコンテンツです。

何気ないものから問題・課題を自分で「find」する力や、自らテーマを作る「make」の力を伸ばすことができます。ぜひご活用ください。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。