STEAMライブラリー

海とともに拓く日本の未来|国立大学法人長崎大学・株式会社日経BP

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

海洋の最先端の研究に取り組む国立大学法人長崎大学(以下、長崎大学)は、海洋に関する基礎知識を修得し、生態系や環境、水産業、エネルギーなど幅広い視座を養うことができるコンテンツ「海とともに拓く日本の未来」を、主にビジネスパーソンに向けて先端・専門メディアを発行する総合出版会社、株式会社日経BPと共同で提供してくださいました。

このコンテンツの魅力や制作の背景について、長崎大学の松井先生に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

松井史郎先生 プロフィール

1990年(株)日経BPに入社。広告の企画営業を経て日経BP環境経営フォーラム(現 日経SG経営フォーラム)事務局長。2012年4月福島県立医科大学へ転職し、広報コミュニケーション室長 特命教授として東日本大震災後の広報活動を担当。2021年4月から長崎大学で副学長(広報担当)広報戦略本部長 教授を務める。

国立大学法人 長崎大学

長崎大学は、2016年4月に海洋エネルギー開発、海洋環境保全・回復ならびに海洋生物資源の持続的利用を同時に可能とする融合研究プラットフォームとして、海洋未来イノベーション機構を設置。 ①海洋産業創出のための産学官連携拠点の形成、②世界をリードする総合的な海洋研究拠点の形成、③海洋産業を担う研究者・技術者の育成を、3本の柱に掲げています。

コンテンツについて

タイトル海とともに拓く日本の未来
学年高校
キーワードSTEAM、探究学習、水産、養殖、環境、気候変動、科学、再生可能エネルギー、ロボティクス、地球温暖化、ICT教育、プラスチック
URLhttps://www.steam-library.go.jp/content/130

このコンテンツの目的

長崎大学のさまざまな分野の研究者による「海洋」に関する研究について学べるコンテンツです。高校生を中心に児童・生徒が海洋に関する基礎知識を修得し、生態系や環境、水産業、エネルギーなど幅広い視座を養うことができます。

なぜ「海洋」?学問の横のつながりを感じてほしい


概要ページより)

(田中)今回、「海洋」をテーマにされた背景を教えていただけますか。

(松井)海がもつ可能性の大きさや、影響力の大きさ、活用の幅の広さなどは、STEAM学習のテーマに適していると考えたからです。海洋という領域では様々な分野の研究や活用が進んでおり、まさに学際的なフィールドです。例えば食料や気候、エネルギー、物流などです。そしてこれは、裏を返せば、海の環境が悪くなれば、いろんなところに影響が出てくるということでもあります。「海洋」は、そこまで含めて俯瞰的に物事を見られる、とても良いテーマなんです。いろんな切り口から興味を持ったところを選んで学べるというのは、海というテーマの魅力ではないでしょうか。

コンテンツを作るときにこだわったところ

(田中)このコンテンツ作りで意識した点やこだわったところはありますか?

(松井)大きく三つあります。身近なところに問題意識を持ってきたこと、動画・研究資料などをまとめたリンク集を制作したこと、わくわくしながら海洋を体感してもらうために、VR動画を入れたことです。コンテンツを作る大学の先生と、それを見る高校生とでは、身に付けている情報量が圧倒的に違います。まとまった学問的体系から、情報を厳選して、わかりやすくかみ砕いて表現するのには苦労しました。その分、参考資料をたくさんつけて、興味がわいた人にはどんどん探究してもらえるようにしました。VRを制作したのは「わくわくする」ことが大きなキーワードだと考えたからです。

(田中)身近な入口から入り、興味を持ったら非常に貴重で膨大な研究や動画がまとめられている資料が用意されていて、探究心がどんどん広がる、非常に良いコンテンツではないかと思います。


▲環境施策で身近になっている「ゴミ」がテーマの一例。ここを起点に、この課題を解決するための技術を紹介している(1コマ目:総論〜水産と海洋のこれから


▲長崎丸の乗船体験のVRと海洋研究設備の説明動画のVRが掲載されている
(関連教材:長崎丸VR乗船体験(マルチアングル)


▲動画・研究資料をまとめたリンク集(日経BP・長崎大学_海洋コマ1_「総論_水産と海洋のこれから」長崎大学提供)

身近な海洋に関するストーリーで導入を

▲ジンベイザメはなぜ光の届かない深海に潜るのか?(3コマ目 海を調べる技術:海と海洋生物の生態を知る

(田中)コンテンツの中で、生徒の興味を引き出すような導入の問いはありますか?

(松井)海が身近な地域であれば、海洋に関わる身近なストーリーと関連させた問いがいいと思います。水産業に関わっている身近な人の話とか、近くの海で獲れる魚の種類は?とか。長崎は実は、水揚げされる魚種の多さが日本一の県なのです。水産業が盛んなこともあって、コンテンツにも入っているのですが、長崎大学では沖合養殖やそれに必要な潮流発電なども行われています。身近な問いから入って、エネルギーなど発展していけるストーリーがあると良いですね。

(田中)なるほど。東京の学校であれば、回転ずしではたくさんの種類の魚が食べられるけど、東京湾では何種類の魚が水揚げされると思う?なども最初の問いとしていいかもしれませんね!

コンテンツから生まれた問いをじっくり探究する時間を

(田中)このコンテンツを使うのに適した時期はありますか?

(松井)このコンテンツを通じて「面白い!」と思ってもらえれば良いと思っていますので、いつ使っていただいてもかまいません。あえていうなら、このコンテンツからは様々な問題提起が得られるようになっていますので、見た後にじっくり探究する時間があるタイミングが良いと思います。

松井先生が探究されていること

(田中)大人も探究するべきだという声がありますが、個人的に探究されていることはありますか?

(松井)コミュニケーションですね。特に、科学の情報を一般の人に理解していただくためには、ただ科学的に正しいというだけでは伝わらないんですね。長崎大学の前に勤務していた福島県立医科大学で、そのことにずっと向き合ってきました。科学者がどんな姿勢で、どんなことを考えて発信しなければならないか、ということは常に模索しています。高校生や大学生とのやり取りの中で学ぶことも多いです。

(田中)最後に、先生や高校生に一言あれば教えてください。

(松井)このコンテンツを通じて海の役割や海のポテンシャルの高さを多角的・多面的に感じていただけたらと思います。学びというよりは海の新しい側面を一つでも発見して、面白いと感じていただけたら嬉しいです。そして興味を持たれたら、ぜひ長崎大学水産学部に来ていただきたいですね(笑)

まとめ

松井先生、本日はありがとうございました。幅広い分野を包括する海洋に関するコンテンツは、横断的な学びに最適です。VRやマイクロプラスチックなど、話題のテーマもたくさん盛り込まれているコンテンツです。ぜひ一度ご覧いただき、授業や探究活動にご活用ください!

>今回紹介したコンテンツ:「海とともに拓く日本の未来