STEAMライブラリー

テクノロジーを通じた災害の課題解決|株式会社ベネッセコーポレーション

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)は、ベネッセグループの中で主に教育・生活事業を担う企業です。「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」といった多くの人々に利用される教材や、「進研模試」に代表される学校向けサービスを手掛けています。

ベネッセは、生徒が主役となり、テクノロジーを活用して災害の課題解決を考えるコンテンツをSTEAMライブラリーで提供しています。

このコンテンツの使い方や込められた想いについて、ベネッセの芦野様と宮様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

芦野 恒輔様 プロフィール

2009年度にベネッセコーポレーションに入社し、以降一貫して学校教育の支援に従事。2015年度から2年間、SGH指定校を中心に探究的な学びの支援を行う。2019年度に、教育データ利活用を推進するための『教育データハッカソン』を開催。2020年度より、経済産業省「『未来の教室』実証事業」の担当も兼ね、STEAMの学びを実践するためのコンテンツ開発を行う。また全国の学校の先生とともに学校革新を行うための『生徒の気づきと学びを最大化するPJ』も運営。2021年度より福井県立大野高校ICTアドバイザー。

宮 和樹様 プロフィール

2013年にベネッセコーポレーション入社。中学・高校向けのアセスメント・教材の企画・編集を経て,現在はSTEAM教育などの新しい教育分野の調査研究,中学・高校でのロボットプログラミング講座実践,および情報活用能力を育成・測定する教材の企画編集に従事している。

株式会社ベネッセコーポレーション

「よく生きる」を理念に掲げるベネッセホールディングスのグループ会社です。教育・生活事業を中心に担い、「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」の国内会員数は272万人に上ります。DXにも力を入れており、進研ゼミでのタブレット活用や、勉強SNSの開発も行っています。

コンテンツについて

タイトル テクノロジーを通じた災害の課題解決
学年 高校
キーワード テクノロジー、ロボット、災害、防災、探究
URL https://www.steam-library.go.jp/content/1

概要

近年、10年に1度と言われる災害が、毎年のように起こっています。一人一人が防災・減災の意識を高め、そのための活動に取り組むことがますます重要となっています。このような中、多くの学校・生徒が防災教育に取り組んでいますが、往々にして避難訓練のような「非常時を想定した疑似演習」になりがちです。そこで、本プログラムは、生徒自らが主役となってテクノロジーを活用し、災害の課題解決を考えられるようにしました。

リニューアルによりパワーアップしたコンテンツ

(田中)STEAMライブラリーは2022年3月にリニューアルオープンし、既存コンテンツの更新が行われました。昨年と比べて、コンテンツはどのようにパワーアップしたのでしょうか。

(芦野)大きく二つあって、一つは児童生徒の皆さん向けにモデルワークシートを用意したことです。「こんな風に自由に発散して良いんだよ」という、色々なパターンのアウトプット例をできる限りバリエーション豊かに用意しました。言葉で「正解なんかないんだよ」と伝えても、やはり生徒は横を見て他の生徒の正解を探ってしまいがちです。このため、先に取り組んだ中高生がアイデアを発散させていることを見せたいということで、色々なアウトプット例を載せました。

もう一つが、主に先生側に向けて、実際にコンテンツを活用された学校の取材記事を載せました。STEAMについて現場の先生方と意見交換をすると、「取り組んでみたいが、実際のイメージが湧かない」ということをよく課題としてお聞きするので、ではどんなイメージかというのを記事でお伝えしています。今回は新潟県の新潟市立葛塚中学校がこの授業に取り組まれた様子を取り上げ、生徒はどのように感じたのか、何を大事に取り組んだのかといったことを含めた取材記事を載せました。

コンテンツの効果

(田中)実際に学校でコンテンツを使ってみていかがでしたか?

(宮)この教材が目的とする「防災への関心を高める」というところに、きちんと効果があることが確かめられました。私も今年授業実践を行い、検証を実施しました。授業を始める前と全ての講座が終わった後に同じ質問をして、意識に差が生まれるかを検証しました。質問したのは、防災について興味があるかと、STEAM学習に興味があるかです。検証した結果、防災への関心がしっかり高まったという結果が出ました。

(田中)なるほど、素晴らしいですね。どのような生徒の変化から、興味関心が湧いたことを測定されたのか具体的に教えていただけますか。

(宮)二つの学校で実践し、両校とも「『防災』とは何か、説明ができますか?」という項目が講座後に上昇しました。「『STEAM教育』について、関心がありますか?」という項目も片方の学校で大きく上がりました。

(田中)自由記述の項目もあるんですよね。そちらではどのような変化が見られましたか。

(宮)「『STEAM教育』における学びとは、どんな学びだと思いますか?」という項目は、講座後になると「実社会の問題発見や解決に活きるような教科横断的な学習」という考えになっています。講座前ではテクノロジーや化学など、一つの科目のようなイメージがあったので、そこが変わったと言えます。

「『防災』について、あなたのイメージを自由に記述してください」という項目を見ると、講座前では「災害時に自分の身を守るための対策と取るべき行動」などと書いてあります。講座後では、「過去から学ぶ」とか「災害を未然に防ぐ」という記述になっています。実践の前後で、防災について「起きてしまった災害から身を守る」というイメージから、「災害が起きる前に対策を講じることが防災なのだ」と意識が変わってきたのではないかと考えています。

文脈のある学びでこそコンテンツが活きる

(田中)他に実践を通して気づいた点はございますか?

(芦野)ただコンテンツに取り組むのではなく、学びの狙いを何にするかがすごく重要だと思います。先ほど挙げた葛塚中学校では、生徒の授業への満足度が高かったんです。先生方にその要因を伺うと、このコンテンツのねらいをどうするか、カリキュラム上どこに位置付けるかをしっかり計画したからではないかと仰っていました。また、事前準備も十分にされていました。例えば葛塚中学校の体育館は避難所に指定されてますが、災害が起きて地域の住民が集まるとぎゅうぎゅうで、避難物資も足りないということが事前学習でわかっていました。こうした準備があった中で、このコンテンツを使ったから、満足度の高い授業になったと考えます。いきなり文脈なしにコンテンツを与えて良い学びになるかというと、そうはならないんじゃないかな、というのは強く感じています。

(宮)私が実践した都内の私立高校は、色々な地域から生徒が通ってきている学校でした。その前提がある上で地域の防災を考えることをテーマにし、コンテンツを活用しつつ、学校の最寄り駅にある商店街の方々と連携し、防災訓練を企画することまで取り組まれていました。このような形で、各学校の状況や生徒が考えていることに合わせてアレンジすることでコンテンツが活きるし、本当の深い学びに繋がるのではないかなと、実践の中で思いました。

(田中)なるほど。コンテンツさえ流せば良いという見方もありますが、目的があり、背景があり、その手段としてのベネッセさんのコンテンツという位置づけにしないと、「これ何でやっているんだっけ」となってしまいますね。

▲自分の地域について考えるコマがあり、地域に目を向けながら防災学習ができる。(2コマ目:自分が住む地域の防災の課題を調べようより)

コンテンツを使うタイミング

(田中)このコンテンツは、いつ頃使うのが良いでしょうか?

(芦野)防災教育や避難訓練のような行事に紐づけてもらうのが一番良いと思います。こうした行事は前年踏襲になりがちですが、地域の今の防災状況はどうなっているのか、何が問題なのか、避難訓練をして何が課題だと感じたかなど、様々な発展ができると思います。だから、行事のタイミングは各校で違うと思いますが、防災教育や避難訓練に関連づけて活用いただきたいです。

想定外の学びを見取ることが大切

(田中)ベネッセさんのコンテンツを拝見して、評価の話があまり入っていないと感じました。学校で実践する中で、評価の話題は挙がらなかったのでしょうか。

(芦野)挙がりましたが、優先順位を上げなかった、というのが正しいお伝えになります。基本的に、『総合的な探究の時間』での定量的な評価は適切ではないこと、加えて評価基準があることによって学びが進む反面、学びが規定されてしまう面も大きいという理由からです。STEAMの学びだからこそ、コンテンツ制作者あるいは教員が想定していなかった学び、評価基準外の学びを見取ることの方が大事だと思うので、評価基準やルーブリックを作る優先順位は上げませんでした。ただし、毎単元の振り返りはワークシートに入れています。ですので、生徒にどのような成長や変容、気付きがあったのかは、生徒同士で振り返ったり、先生方が見取れるように設計しています。

▲各コマのワークシートの最後に、振り返り欄が設けられている。(2コマ目:自分が住む地域の防災の課題を調べよう 資料(学習者用)より)

(宮)先生が大上段から行動変容を見取ってメモするのではなく、あくまで学んでいる生徒自身が、これを通じて何を考えたかとか、自分の中で何が変わったかを振り返り欄に書いて、それを見て先生が判断することを想定しています。単にルーブリックを見て丸をつけて終わりではないので、先生は大変だと思いますが、学びの本質はそっちだよねということでそのようにしています。

(田中)なるほど。ルーブリックを作ろうとする先生方も多いので、今のお話は新鮮ですね。

(芦野)目安としてルーブリックを作ることはもちろん重要と思います。ただ、ルーブリックからあふれるものも必ずあるので、そこにも目を配る必要があると思っています。

探究について感じること

(田中)子どもの探究をサポートする大人も、探究する必要があるとよく言われます。お二人には、お仕事以外で何か探究されているものはありますか。

(芦野)「探究している」って日常であまり考えたことはないですが…。今、「探究する」というものが無理に切り取られすぎだと思うんです。「探究しよう」「探究学習しなきゃ」みたいになりすぎている感じがしますが、自然にやれば良いと思うんですよね。

(田中)「探究」と改めて言わなくても良いだろうということですね。

(芦野)そうです。自分なりに違和感を持ったことに素直になるということが、僕は探究のスタートだと思っています。「おや?」とか「うん?違くない?」など。そこから「うーん」って考えて、「こう思うんだけど」って相手にぶつけて、相手も「でもこうじゃないですか」と言って対話をして、こうなのかなと結論付けるのって探究的だと思うんですよね。

(宮)芦野さんと同感です。「探究」と言うと大げさですが、要するに自分で好奇心が働いて何か調べてみるとか、何かに没頭するみたいな話だと思うんですよね。だから趣味だって探究だと思いますよ。サッカー部だったらサッカーうまくなるために色々やるわけで。練習したり試合のビデオを見たり、プロの試合の録画を見たりとかして。それを自分に活かしたら探究じゃないですか。だから、全く探究していない人はいない気がします。

探究学習やSTEAM教育には、他者尊重の姿勢が必要

(芦野)今の話から言えるのは、探究やSTEAMの学びは、他者尊重がないと成り立たないということではないでしょうか。先ほどのような展開でいきなり生徒が意見を言ってきた時に、「何言ってるんだ」じゃなくて、「面白いじゃん」とか「へえそうなの」って言えるのが一番良いと思います。それがない中で、例えば学校で「成果物の質が低い」とか、「これじゃあお遊びだよ」みたいになってしまうと難しいと思います。

(田中)確かにそうですね。

(芦野)そういえば,,,私が今探究しているのは、探究学習を将来にどう活かすと良いのかということです。「入試のための探究ではない」ということもよく言われますが、一生懸命やっている生徒ほど、探究を進路に活かせたら良いと思っています。この矛盾を何とかできないかなと考えています。

まとめ

今回のインタビューでは、コンテンツの内容に関するお話に加え、探究学習で大切にすべきことや、探究的な学びとは何かについても伺うことができました。

想定外の生徒の学びに注目したり、学校のカリキュラムにおけるコンテンツの位置付けを検討したりすることで、コンテンツを使った学びを深めることができます。このことを踏まえ、コンテンツを有効に活用してみてください。

>テクノロジーを通じた災害の課題解決(株式会社ベネッセコーポレーション)

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ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。