STEAMライブラリー

「面白い探究」が満載!STEAM CHAOSシリーズ|TOPPAN、SPACE

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

凸版印刷株式会社(以下、凸版)は印刷テクノロジーをベースに幅広い事業に取り組んでいます。今回は株式会社SPACE(以下、スペース)をはじめとする複数企業と連携し、興味の深堀りをテーマにした9つのコンテンツを提供してくださっています。

このコンテンツの魅力や制作の背景について、凸版印刷の岡村様・島守様、スペースの福本様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

岡村杏奈様 プロフィール

地域の事業・広報支援、探究型の教育コンテンツ造成に携わるとともに、教育・社会・人の全てに関わる「都市」のあり方について、社会人大学院にて研究中。

福本理恵様 プロフィール

「異才発掘プロジェクトROCKET」のプロジェクトの立ち上げから運営まで全般を指揮。一人ひとりを生かす個別最適な探究的学びの設計における知見を活かして、SPACEをスタートさせる。

島守開斗様 プロフィール

官公庁のPR、地域創生に関する企画制作ディレクションに従事。サステナビリティのあり方を考えるワークショップの企画など、教育分野における活動を推進中。

凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社は、「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」および「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり幅広い事業活動を展開しています。

近年は、“Digital & Sustainable Transformation”を基本方針として掲げ、経営戦略へSDGs視点を反映させた企業活動を推進し、グローバル市場を視野に「デジタル」と「リアル」を最適に組み合わせた事業を展開しています。

株式会社SPACE

株式会社SPACEは、全ての人たちが生まれながらにして持つ力を「個才」と提唱し、自分らしく開花して、身体的・精神的・社会的にも良好な状態で幸せに生きられるウェルビーイングな社会を目指したシステムづくりに取り組んでいます。主に子供から大人まで、全世代が主体的に探究できる個別最適な教育プログラムの開発を行っています。

コンテンツについて

タイトル エネルギーの宝庫「三宅島」を解剖せよ!
学年 小4〜6、中学、高校
キーワード 防災、SDGs、エネルギー、科学、地震、コロナ、社会、地形、食、ディスカッション
URL https://www.steam-library.go.jp/content/159

このコンテンツの目的

三宅島(東京都)の「火山」をテーマに、火山噴火から何度も再生を繰り返してきた火山の島、三宅島を徹底解剖していきます。島の大地を観察することで、地球生成のプロセスを学ぶことができます。身近な食べ物の実験を通じて火山噴火のメカニズムを体験し、科学的な背景に迫ります。生きている地球、火山の島の自然のエネルギーを体感できる臨場感あふれるシリーズです。

全9つのSTEAM CHAOSシリーズ

STEAM CHAOS(スティームカオス)は9つのテーマから地域の文化や技術にフォーカスして探究するシリーズです。

コンテンツ提供のきっかけは「新しい教育の潮流」

(田中)今回STEAMライブラリーにコンテンツを提供しようと思ったきっかけについてお聞かせください。

(岡村)新しい教育の潮流に目を向ける必要があると考えたためです。公教育のデジタル化を推進する自社部門があるのですが、新しい文脈からも教育にアプローチしたいと考えており、個別最適な学びの探究領域に長けたスペース様とコンテンツを提供するに至りました。

(田中)スペース様はどのような背景で凸版様とご一緒することになったのですか?

(福本)私は以前、東京大学で「異才発掘プロジェクト ROCKET」のプロジェクトリーダーを務め、その時から地域特有の伝統文化や産業があるにもかかわらず、一元化された教育が行われているのがもったいないと感じていました。創業後も、より地域の産業や文化に焦点を当てた教育システムをつくりたいと考えていた中で、全国に展開できる力のある凸版印刷様とご縁があり、共同でコンテンツを開発いたしました。そこで、より地域の産業や文化に焦点を当てた教育をやりたいと考えていた中で、発想を広げる力をお持ちの凸版印刷様とご縁をいただいたのでご一緒させていただきました。

地域の産業や伝統に焦点を当てた理由

▲出雲(島根県)をテーマに、地域の伝統からコミュニティ論、「たたら」と呼ばれる製鉄の科学までを網羅する(『No.6.神様と遊ぼう』2コマ目:神様と交信中!祈ることと祀ること より)

(田中)地域の産業や伝統に焦点を当てたテーマを設定したのはなぜですか?

(岡村)過去・現在・未来という、3つのタイムラインから探究を深められることに魅力を感じたからです。地域の産業や伝統には歴史があり、現代も目に見える形で残っていて、さらには未来に向かうために試行錯誤を繰り返しているものがあります。そこから学ぶことによって、探究の素養が育まれていくのではないかと考えました。

(田中)伝統産業について時間軸から深掘りすることで、教科横断的で実践的な学びが提供できるんですね。その中でこの9つのテーマを選ばれた理由はなんでしたか?

(福本)日本中にある多様な産業・文化をテーマとして扱いたかったので、当初は24テーマの企画を立てたのですが、クオリティにこだわった結果、9テーマに収束しました。地域ぐるみの学びを作ろうと地域のパートナーとともに制作しました。

「お城は物件」?切り口の工夫で子供の興味を喚起

(白亜の城を守れ:3コマ目 殿!この物件はいかがでしょうか?動画1より)

(田中)コンテンツ制作でこだわったところや意識したところはありますか?

(福本)子供に興味を持ってもらえるようなコンテンツ作りを心がけました。地域の方の「これを残したい」という思いを前面に出しても子供たちに響くとは限らないので、伝えたいものは残しつつ、子供が興味や疑問を持つきっかけ「ワクワク」を誘発させるための工夫を随所に散りばめたコンテンツになっています。

(岡村)姫路城のコンテンツでは、歴史から城を捉えるだけではなく、お城を物件として捉えたり、お城の内部の組織を組織論として考えたりと、斬新な光の当て方しているのが面白いと思います。お城の歴史に興味がなかったけれど、建築には興味のあるといった子たちが姫路城に興味を持つきっかけになり、自分ごとに転換することができるのではないかと思います。

(田中)生徒に興味を抱かせるために切り口を工夫されているんですね。膜のコンテンツでこだわったことはありますか?

常識を覆す、膜の力

(島守)地域のコンテンツと同様に、膜というテーマを中心に色々な興味の切り口を散りばめました。膜は至るところにあって、建材にも人体のパーツにもあるんです。そこで、ドームの話やエネルギーの観点を入れ、膜を身近に感じられるようにしました。

(岡村)膜という素材の多面性や、応用力の幅広さに着目していただけると嬉しいです。

学びの広がりを楽しんでほしい

▲エネルギーの宝庫「三宅島」を解剖せよ!:1コマ目 火山島の色の秘密を探れ 動画1

(田中)効果的にコンテンツを使うためのアドバイスはございますか?

(福本)どれも個性的なテーマなので、学校のカリキュラムに組み込むというより、学年や学校で課題意識を持っているテーマを考える際にポイントとして活用するのが良いと思います。今回、9つのテーマのコンテンツを「STEAM CHAOS(スティームカオス)」という世界観で作り上げました。現実社会はとても複雑で、その複雑に絡み合った点と点を繋げていく中にある問いから自由に探究していくというコンセプトで、このように名付けました。だから、教科や学年、教師と生徒という関係さえも飛びを超えた縦横無尽に広がる探究の世界で学びを展開することを楽しんでほしいと思います。

(岡村)コンテンツ同士の繋がりも活用すると面白いです。例えば、三宅島の火山のコンテンツで玄武岩という黒い石について学んだ後に、「黒」に関連して黒みりんのコンテンツを学んでみるといったことが考えられます。連想ゲーム的な楽しみ方ができるんです。

「面白い探究」を突き詰めたコンテンツ群

▲海の環境問題から宇宙で寿司を食べる方法まで魅力的なコンテンツが(No.2『海から受け取る命のバトン』6コマ目:宇宙に魚がいく未来 より)

(田中)柔軟な使い方ができるコンテンツだと思うのですが、コンテンツを使う場面の想定はございますか?

(福本)「STEAM CHAOS」は「学校が地域全体に広がったときに、どんな学びが展開するだろうか?」という視点で作っています。学校の学びの前提を超えて生徒自身が目下抱えている課題意識や、興味を持っている題材を起点に使ってもらいたいと思います。

(岡村)コンテンツの一部だけでも授業内で触れてもらうと嬉しいです。興味の入り口を散りばめているので、見たところから様々に広げられると思います。

(田中)今までの学校の学びを前提にしていないということですが、どのようなイメージでコンテンツを作られたのでしょうか?

(福本) 「面白い探究とは何か」をお見せするパッケージを作ったというイメージです。「人が生きるとは?」という深い哲学的なところまで扱うことを目指してシナリオを作成しました。STEAM CHAOSを支える土台に、私たちはSpirit(スピリット)を込め、知識を獲得するだけではなく、人生の豊かさや幸福に繋がるような道標をそこに創りました。このため、地域の方のインタビューなどから、その人の生き様や心が揺さぶられるメッセージに出逢えるように設計しています。

(岡村)探究は一問一答で成立するものではないため、人によって印象や意見が分かれる視点が、たくさん織り混ざっているところがポイントです。その人の価値観や地域による属性の違いといった多様性が見えてくると思います。

制作者のいちおしコンテンツは?

▲常識を覆す、膜の力:5コマ目 海中でも大活躍! 動画1

(田中)皆様一押しのコンテンツはございますか?

(島守)「常識を覆す、膜の力」の5コマ目の、膜技術の海中での使用方法を紹介するコンテンツがおすすめです。メタンハイドレートというエネルギー資源に関する内容ですが、エネルギーは特に将来の世代の課題を捉えた内容だと思うので、ぜひ見ていただきたいです。また、まだ実験段階にある技術を見られるのも面白いと思います。

(岡村)「たて糸とよこ糸が織りなす宇宙」に登場する、12歳の女の子の発想と行動力に注目していただきたいです。このコンテンツでは、久留米絣(くるめがすり)という絹織物が、12歳の女の子の発想を起点に進化していく過程を紹介しています。

(福本)全てのコンテンツが、SDGsに繋がっています。STEAM CHAOSを入口に、頭ではわかっているけど行動まではいかない問題について、じっくり考え尽くす機会を提供したいですね。そして、どんな小さなことでも行動に移していく人たちが生まれていくことを期待しています。

探究されていること

(田中)ありがとうございます。それでは最後に皆様が探究されていることについてお聞かせください。

(島守)私が探究しているのは料理です。疲れやすい体質なので、栄養をどう効果的に取るかというところから料理に関心を持ちました。おいしさを追求する中で、「だしはなぜ日本で根付いたのか」という歴史的な視点や、さらには医学や生物的な視点まで広げて、料理について深ぼっています。

(岡村)私は社会人大学院に通っていて、都市について探究しています。「学校」や「会社」などの中で新しいことを試みるのは、様々なハードルが存在すると感じています。都市という大きなフィールドで捉えていくと、様々な場所に改革の鍵が散りばめられているのではと、可能性を感じています。

(福本)私は、人の幸福と自己実現について探究しています。色々なことに興味を持つ子供たちを見ていて、彼らが誰にも代われない存在であると強く実感しました。そんな彼ら一人一人が幸福に生きられる環境って何だろうということに興味が湧き、そういう環境をどうすれば教育に実装できるのかについて研究しています。

まとめ

岡村様、福本様、島守様、今回はありがとうございました。

興味を広げることに特化し、地域だけでなく技術についても横断的に学べるコンテンツとなっています。ぜひ活用してみてください!