STEAMライブラリー

あの名作童話を探究する!「STEAM化ごんぎつね」|関西大学初等部

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

関西大学初等部は、2010年開校の私立小学校です。「感じ・考え・挑戦することができる子ども」の育成を目指しており、「なぜ学ぶのか」という目的意識を持たせることを大切にした教育実践が特徴です。

今回ご提供いただいたのは、小学4年生の国語で学習する「ごんぎつね」をテーマにしたコンテンツです。よく知られる「ごんぎつね」を「STEAM」の観点で読み直し、新たな問いや発見を得ることで、学びを深めることができます。

このコンテンツの使い方や込められた想いについて、関西大学初等部の堀様と松本様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

堀力斗様 プロフィール

関西大学初等部ミューズ学習主任。昨年度まで情報教育主任を務める。1年生から6年生までの1人1台環境を整備し、先進的で創造的な取り組みを学校を挙げて展開。思考力×創造性を発揮できる言語活動をゴールにした国語の単元作りを大切に実践を重ねてきた。子どもたちがいかに学びを継続するのかについて研究している。大阪大学医学系研究科保健学専攻博士後期課程に在学中。

 

松本京子様 プロフィール

関西大学初等部研究主任。子どもを主体とし、思考を楽しむことを通して国語の力を育む授業づくりを中核にして実践を重ねてきた。『汎用的能力を高める アクティブラーニング サポートワーク』2015、『読解力を育てる 小学校国語 定番教材の発問モデル 説明文編』2015、『国語科教育の基礎基本 教え方・学び方ポイントシート「❷話すこと・聞くこと 書くこと」編』2021(いずれも井上一郎編著、明治図書)などを分担執筆。

関西大学初等部

2010年に開校した、大阪府高槻市の私立小学校です。初等部のある高槻ミューズキャンパスには、中等部・高等部も併設されており、それらと連携した12年一貫教育を行っています。自らの問いを追究・解決する学びを軸に、「感じ・考え・挑戦することができる子ども」の育成を目指しています。

コンテンツについて

タイトル 初級編 STEAM化ごんぎつね
学年 小4〜6、中学、高校
キーワード 教科横断、探究的な学び、仮説演繹、論理的思考、批判的思考
URL https://www.steam-library.go.jp/content/137

概要

小学4年生の国語で学習する「ごんぎつね」では、さまざまな動植物や、昔の道具や風景が描かれています。動植物や昔の道具や風景を知り、結びつけながら「ごんぎつね」を再度読んで「疑問を持つ、考える、調べる、調べた結果から、また考える」を繰り返し、「ごんぎつね」を学んだ人も、教える人も、『STEAM化』しながら総合学習や探究として、広く深い学びや学び直しをしてほしいと願っています。

タイトル 中・上級編 STEAM化ごんぎつね
学年 小4〜6、中学、高校
キーワード 教科横断、探究的な学び、仮説演繹、論理的思考、批判的思考
URL https://www.steam-library.go.jp/content/136

概要

中級・上級編です。よりSTEAM化した学びをしたい・知りたい方向けです。
初級編の内容に加え、より学術的な内容になっています。
・ごんぎつねの心情理解を、心理学で解釈するとどうなるのか
・ホンドギツネの生態を、学術的・深い観察からどのように解釈するか
「ごんぎつね」と学術の関わりについて、探究してください。

タイトル 特別編 STEAM化ごんぎつね
学年 中学、高校
キーワード 教科横断、探究的な学び、仮説演繹、論理的思考、批判的思考
URL https://www.steam-library.go.jp/content/135

概要

教員・授業者向けコンテンツです。小学校・中学校、大学における実践事例です。
1)文学作品内で児童生徒が個別に感じた疑問を調べ、考え、「ワクワク」しながら読解する機会を創出します。
2)学校図書館など利用の既存の学習方法に加え、GIGAスクール構想で整備された情報ネットワークと児童生徒の個人端末を活用した「調べ学習」により、自らが見出した「知識」の増加と、知識と知識が繋がる「ワクワク」の機会を創出します。
3)仮説演繹のプロセスを通じて、論理的思考力・批判的思考力(クリティカルシンキング)をしながら、文章を読解する技能を習得します。

なぜ「ごんぎつね」をテーマに選んだのか


(田中)「ごんぎつね」をテーマにコンテンツを作られた背景は何でしょうか?

(堀)個人的な興味が一番最初のきっかけです。あるとき「ごんぎつね」について会話していて、「実はラストシーンには非常に疑問がある」という話になりました。そこで、「本当に兵十は火縄銃を打ったのか」「ごんは死んだんだろうか」というのを、一文ずつ精読して考えてみました。そうしたら、「実は、ごんは死んでいないのではないか?」というような問いも含めて、たくさん新たな問いが生まれる場面があったんです。

ごんぎつねのような国民的教材で、「みんながそう思っていたことが、実は違うんじゃない?」という問いが生まれると、非常に面白いのではないかと思い、今回コンテンツ化に至りました。

「ごんぎつね」のあらすじ
いたずら好きの狐「ごん」は、兵十という青年が母親のために獲った鰻を逃してしまう。しかし、兵十の母親が亡くなったと知ったごんは、自分のせいで兵十の母親がうなぎを食べられずに死んだと考え、いたずらを後悔する。そこで、ごんは償いのために、栗やキノコをこっそりと兵十の家に置いていくようになった。しかし兵十は、ごんがいたずらをしに来たと思い、火縄銃でごんを撃ってしまった。ごんに駆け寄った兵十は、栗を届けてくれたのはごんだったと気づく。栗を届けたのはごんなのかと尋ねると、ごんはぐったりと目をつぶったままうなずいた。

コンテンツを作る際に意識したこと


▲多様な視点から「ごんぎつね」について考えることができる。(初級編6コマ目:「ごんぎつね」と食 より)

(田中)コンテンツを作る際には、どのようなことを意識されましたか?

(堀)なるべく答えを示さないことを意識しました。教材を多角的に読む中で、「ワクワク」が前提として必要だと思いましたので、子供たちの好奇心を引き立てるように表現することを意識しまいた。

コンテンツを使用した授業の様子

(田中)松本先生のクラスでは、このコンテンツを実際に使われたとお聞きしました。

(堀)どちらかというと、実践事例がコンテンツになったという感じですね。コンテンツに入れる要素を授業でやってみて、「いける!」となったものをコンテンツ化したんです。だから、中級編のシンキングツールを使う部分は、全て松本先生のクラスで行った内容です。


▲中上級編に出てくるシンキングツールの一例。(中上級編1コマ目:中級編「STEAM化ごんぎつね」と「思考ツール」の使い方 資料(学習者用)より)

(田中)松本先生は「ごんぎつね」をテーマに授業をされてみていかがでしたか?

(松本)最初は、「ごんぎつね」の新たな捉え方に抵抗がなかったわけではありません。国語教師なので、文学の読み方を否定するのではないかと思いました。実際にやる中で、子ども達も「ごん」は死んだものだと習っているから、「え、そんな読み方して良いの?」から始まったんです。

でも、「外国では狸寝入りのことを“fox sleep”って言うんだよ」と話をするだけで、子どもたちの目の色が本当に変わってきて。算数はできるけど国語は苦手という子も、ものすごく乗ってくれました。何も指導してなくても、子どもが勝手に自分の問いを追求する姿を見ることができて、とても楽しかったです。

(田中)面白いですね。fox sleepの話のように、国語が苦手な子どもたちが興味を引かれた問いは他にありましたか?

(松本)「そもそもお城はどこにあるんだろう?」「お城からごんの住んでいるところまではどれぐらいの距離だったんだろう?」といった問いです。算数が得意な子は、数値に関するところに自分で問いを見出してやっていました。

コンテンツの使い方


▲ご提供いただいた3種類のコンテンツ(初級編、中・上級編、特別編

(田中)今回3つのコンテンツがありますが、コンテンツを使うタイミングや、3つの使い分けについて教えてください。

(堀)問いを見つけていく段階の初級編が小学生向けというイメージです。「ごんぎつね」を既に読んでいる、小学校5、6年生くらいですね。初級編は、「ごんぎつね」をもう一度読んでみて、「問いを見つけて自分なりに調べてみよう」という形で完結する内容です。

中級編は、シンキングツールを使いながらアウトプットのところまでサポートします。上級編は高校生や大学生でも良いくらいの内容で、自分で問いを見つけてどんなアプローチをするか、どんな情報を収集するかまで考えます。

全てを使うというよりは、発達段階に合わせて一つを選んでやっていただくというイメージが強いです。

(田中)なるほど。初級編であれば比較的どんなクラスでも活用できそうですね。

(堀)そうですね。また、特別編は先生方が参考にするための内容となっています。本校や同志社中学校さんの事例などを見て、教員側がコンテンツを使う際の見通しを持てるようになっています。


▲特別編では、関西大学初等部で授業を行った様子を見ることができる。(特別編2コマ目:【小学校】STEAM化ごんぎつねの実践 より)

先生方にも役立つコンテンツ

(堀)この教材を一番やってほしいのは、実は先生方なのではないかと考えています。私たちが受けた教育と今の教育は全然違いますよね。しかし、私もそうですが、先生方は自分が受けたのと同じ教育をすることが多いと思います。その思考の凝り固まりに気づくきっかけの一つに、このコンテンツがなれば良いなと思っています。

誰もが知っていて、誰もがほぼ同じ教えられ方をした「ごんぎつね」を新たな視点で捉えることで、「自分が教えられた通りの教え方をしていたな」という気づきに繋がれば嬉しいです。

コンテンツを使う際のアドバイス


▲思考ツールから、発想の広げ方を学ぶことができる。(中上級編1コマ目:中級編「STEAM化ごんぎつね」と「思考ツール」の使い方 より)

(田中)このコンテンツを使う先生方に向けて、アドバイスはございますか?

(松本)物ごとを色々な視点な視点で見ることを伝えることが大切です。「ごんぎつね」は一度習って、みんな、ごんは死んだと思い込んでいるからこそ、「火縄銃って本当にごんに当たってたと思う?」などと問いかけると、子供たちは視点が変わって「えっ!?」と驚くはずです。

私は「ごんぎつね」の後に「蜘蛛の糸」でも同様の授業を行いましたが、子ども達には既に「色々な視点」を持っているので、初読でも様々な疑問が出て「調べたい」に繋がりました。視点を持つことを大事にしたら、あとは自然と調べ学習に繋がっていくと思います。

(田中)なるほど。子どもたちの視点を養うには、どのように指導することが大切ですか?

(松本)曖昧な指示をしないようにしています。例えば、国語で比較を行う際、ただ「比べましょう」と言うのではなく、「比べた先に何があるのか」「比べるとはどういうことか」についても伝えています。こうした指導をしているので、本校の児童は考え方やアウトプットの仕方が中高生に負けないくらい鍛えられています。

(田中)なるほど。先生の側が、指導する内容の意義をきちんと理解して伝えることが重要なんですね。


(堀)私が先生方にお伝えしたいことは二つあります。一つは、このコンテンツが「ごんぎつね」の世界観を壊したり、従来の読みを否定するわけではないということです。そうではなく、どのような教材でも、自由に解釈する余地を認めてあげることがねらいです。

色々な視点で読むと、読みが深まります。例えば兵十がうなぎを取っているときの水温がわかれば、「こんなに冷たい温度の中で頑張っていたのか。それだけウナギを食べさせたかったんだ」と、プラスアルファの読み取りになるのではないでしょうか。

二つ目は、子どもたちの読みを否定しないことです。「こういう視点から見てこんな風に考えたんだ、良いね」と反応し、子どもたちの心理的安全性を確保してほしいです。考えが深まっていないところには、「もっとここを調べてみたらどう?」などと言ってあげるだけです。何かを教えるというよりは背中を押す、促してあげるイメージでやってみてください。

STEAMの授業を行うために役立つもの


(田中)ちなみに、皆様がSTEAMや探究を指導するために役立った本などはございますか?

(堀)浅野大介さんの本がおすすめです(『教育DXで「未来の教室」をつくろう―GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか』学陽書房)。STEAMや探究学習については様々な定義がありますが、この本が提示しているものや学習のサイクルはとてもわかりやすいです。

(田中)実践事例もたくさん書かれていますし、イメージが湧きやすいですよね。

(堀)あとは、STEAMライブラリーで色々な事例を見ることもしました。今後はSTEAMライブラリーの中に、先生方がSTEAMのイメージを掴むための情報集とかあったら面白そうですね。

お二人が探究していること


(田中)堀先生と松本先生が今探究されてることはございますか?

(松本)STEAM化「ごんぎつね」をきっかけに、国語の新しい教授法を探究したいと思っています。文学にどっぷりはまるのも良いですが、今回のSTEAM化のような形で作品を読む方法も面白いと感じています。

研修の際、詩を読んでイメージマップを作成する経験をしました。でも、子どもには「発想を広げて」と言いながら、私は全然広がらなかったんですよ(笑)。だから、私達大人が考えを広げる必要があると思うので、これからの時代に合わせた国語教育ができるように探究していきたいです。

(田中)面白いですね。子どもの探究をサポートする大人こそ、柔軟な発想を持つことが大切ですよね。堀先生はいかがでしょうか。

(堀)私は学習科学について探究しています。何かを学ぶ際には、「なぜ?」と強く感じたことが問いになり、その問いをどう解決するかを考えていきます。そのサイクルを回すには、対象と自分がどのような関係を結ぶと良いのか、その仕組みを探究しています。

まとめ

関西大学初等部の堀様、松本様に、「ごんぎつね」がテーマのコンテンツについてお聞きしました。

誰もが知る物語だからこそ、新たな視点で読み直すことで得られる気づきは大きいのではないでしょうか。子どもたちの視点を養う上ではもちろん、先生方が見方を広げるためにも効果的なコンテンツです。ぜひご活用ください。

今回紹介したコンテンツはこちら
>初級編 STEAM化ごんぎつね
>中上級編 STEAM化ごんぎつね
>特別編 STEAM化ごんぎつね