STEAMライブラリー

「杜のスタジアム」にみる次世代都市づくり|株式会社ナスピア

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材に詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

株式会社ナスピアは、リモート学習、研修として活用できるスマートフォン、タブレット対応の動画や映像を用いた直感的に学べるアプリケーションの開発を中心としたコンテンツの制作を行う会社です。今回は長年のICT分野の知見を生かし、「『杜のスタジアム』にみる次世代都市づくり」というコンテンツを提供いただいています。

このコンテンツの魅力や制作の背景について、株式会社ナスピア取締役の山田様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

山田竜也様 プロフィール

山田竜也様 株式会社ナスピア取締役
大阪教育大学大学院修了。 高校・高等専修学校で非常勤講師として勤務後、「かわべ天文公園」主任研究員などを経て株式会社ナスピアに参加。 甲南大学にて教鞭も執っている。
日本天文学会、日本天文教育普及研究会や宇宙作家クラブにも加入している「宇宙」が得意な教育者。

株式会社ナスピア

株式会社ナスピアは、KNOWLEDGE(ナレッジ=知識)とSPEAR(スピア=槍)を合わせた社名。「楽しみ」「驚き」「意欲」を創造するものづくりによって社会に貢献しようとする会社。設立以来、eラーニング・ウェブサイト・モバイル・展示物・デジタル放送など様々な分野で、「あそびとまなびの両立」(エデュテインメント)を重視したコンテンツの制作を行ってきた。大学での教材コンテンツ制作、NHK Eテレ番組WEBサイト制作など、教育系に特化した開発を行っている。

コンテンツについて

*画像は中学校版ですが、高校版もあります

タイトル 「杜のスタジアム」にみる次世代都市づくり(中学校版、高校版、ワークショップ版)
学年 小4〜6年、中学、高校
キーワード 防災、学際的、探究学習、文化、スポーツ、ハザードマップ など
URL https://www.steam-library.go.jp/content/3
https://www.steam-library.go.jp/content/91
https://www.steam-library.go.jp/content/92

このコンテンツの目的

このコンテンツでは理学、工学、情報、地理、歴史、芸術などの様々な側面から、「東京2020」およびその象徴でもある国立競技場を切り口に、自分たちが住みたい街を実現するために必要なスキルを考え、人々と協働し、新たなものを創出するための能力を築くことを目的としています。

実証事業を踏まえてパワーアップ!先生目線の改修点

実証授業で浮き彫りになった課題

(田中)ナスピアさんは、今回でSTEAMライブラリーのコンテンツ掲載は2年目になりますね。今回は昨年のコンテンツの改修を行なったということですが、改修に至った背景を教えてください。

(山田)昨年のコンテンツを使った実証授業で、様々な課題が浮き彫りになったことがきっかけです。直接学校へ足を運んで見学させていただき、調べ学習の難しさや、問いを自分ごととして捉えさせる難しさを目の当たりにしました。どちらも取っ掛かりとなるようなキーワードや、その先で必要になる補足資料が必要だと感じました。

(田中)オンラインで授業を行なわれていますよね。授業で大変だったことはありましたか?

(山田)ディスカッションの難しさは強く感じました。Zoomなどには慣れているので、動画を流すことは簡単でしたが、その後のブレイクアウトルームに分かれてのディスカッションが難しい。生徒たちが議論するような学び合いに慣れていないので、何を言えばいいのかわからなかったのだと思います。

子どもや先生の使いやすさを考えて行った4つの改修

(田中)それらの課題をふまえてコンテンツを改修されたと思うのですが、どのような点が変わったのか教えてください。

興味が見つけやすいキーワードマップ

▲「キーワードマップ」で興味が見つけやすくなった(高校版コマ1_「国立競技場と都市計画」コマ①参考資料 より)

(山田)大きく4点あり、1点目はキーワードマップを前面に出したことです。調べ学習やディスカッションが難しい理由の1つに、抽象度が高すぎて何をすればいいかわからないことがありました。そこで、いくつかのキーワードの中から自分の興味があるものを選べるように、キーワードマップを作りました。

補足資料の充実

2点目は、補足資料を充実させたことです。キーワードを元に自分の興味のあることについて調べ始めた時に、色々な考え方を示してあげる資料が必要だと考えました。

▲資料も充実(高校版コマ1_「国立競技場と都市計画」コマ①参考資料より)

指導案、ワークシートのセットで授業準備の負担を軽減

3点目は、指導案とワークシートのセットを各コマ2つずつ増やしたことです。1〜10コマを全てやりたい先生もいれば、1コマだけ取り出して使いたい先生もいます。後者の先生のための指導案とワークシートを用意しました。一番手間がかかった部分ではありますが、先生方が使う時のハードルを下げたいと思い作成しました。

テロップが入って動画が見やすくなった

4点目は、動画にテロップを入れて見やすくしたことです。
▲動画の見やすさは児童・生徒の理解度にも影響する(高校版コマ1_「国立競技場と都市計画」動画1 より)

授業への取り入れやすさを考えた指導案とワークシート

高校版コマ4_「建築技術と防災」コマ④ワークシート 参考資料 より

(田中)今年コンテンツ制作するにあたり、工夫したポイントを教えてください。

(山田)それぞれの学校種の先生が使いやすいように、中高でコンテンツを分けたことです。実は動画やワークシートは同じで、指導案だけが違います。それぞれの学習指導要領の内容に合わせているので、先生方にとっては使い勝手が良くなったと思います。

また、新しく作ったワークシートは、範囲を絞って作成した点も、先生方にとって扱いやすくなった点だと思います。例えば、防災のコマでは今までのワークシートでは「自然災害」で一括りにしてワークシートを作成していましたが、新しいワークシートでは「地震」と「水害」に分けました。どのコマも同様に、考えを発散しやすい内容のまま、扱いやすさを意識して範囲を絞っています。あと指導案とワークシートは先生が編集できる様に原本も公開しています。

使い方のコツ

(田中)このコンテンツを使うのにおすすめの時期はありますか。

(山田)ディスカッションがあるので、友達関係ができてからがおすすめです。中高ともに、2年生の2学期くらいが最適だと思います。

(田中)ただでさえディスカッションのような学び方に慣れていないですからね。ディスカッション中に沈黙してしまった場合、どのような声掛けをしたらよいでしょうか。

(山田)生徒の身近なところに落とし込んであげるような声掛けがいいと思います。いろいろな意見を出してほしいといって、ふわっとした質問をすると、答えづらくなってしまうんですよね。だから1つキーワードを与えてあげて、具体化の方向性を示してあげるとよいです。以下のような声かけがおすすめです。

「それは知ってる?」
「それは自分たちの街にあると思う?ないと思う?」
「それは自分たちの街に必要だと思う?」

(田中)抽象的な質問は、答えづらいだけでなく、意見が発散しすぎて先生が収拾をつけるのが大変になるという話も聞きますね。

(山田)そうなんです。そういう時のために、キーワードマップがあるんです。ある程度発散させたいけど収拾はつけたい場合や、何をすればいいかわからない子には、そのキーワードマップから深掘りしていくといいと思います。

(田中)その他に、このコンテンツの使う時のポイントなどはありますか。

(山田)ワークショップ版は3コマありますが、よりレベルが高い学習内容になっています。例えば、アップサイクルをテーマに、家にある捨ててしまうものをデザインし直して、製品や商品にするという内容のコマがあります。デザインを描いたり、実際に商品を作って写真を貼ったりするところまで内容に含まれているので、興味のある子におすすめです

個人的にワークショップ版の1コマ目のSFプロトタイピングは、こだわって作った部分です。SF的な発想を元に未来を描き、そこから逆算して未来までのストーリーを構築していく考え方です。あるべき未来がベースになるので、SDGsともすごく相性が良いんですよ。小説を書いたり、創作したりすることが好きな子や関係する学校・学科の先生に使っていただきたいです。

SFプロトタイピングとは・・・SF的ビジョンを持つことによって未来を想像し、そこに向かって製品や事業開発、組織の変革などを行う手法のこと。

(田中)すごく面白いですね。僕もアイデアの発散力と、そのアイデアにたどり着くための論理構成力が大事だと思っているので、ぜひ会社で取り入れたいです。

▲SFプロトタイピングの例(ワークショップ版コマ1_「国立競技場と都市計画」コマ①参考資料_1 より)

興味を惹く問い「自分たちが住みたい街を考えてみよう」

(田中)このコンテンツに興味を惹かせるような導入の問いはありますか?昨年だと東京オリンピック前だったので興味を惹きやすかったと思うのですが…。

(山田)オリンピックや国立競技場にこだわらず、「自分たちが住みたい街を考えてみよう」という問いがいいと思います。今年はコンテンツの内容にも、国立競技場と関連のない資料などを増やしました。例えば木材建築はその一例で、国立競技場に関わらず木材建築は増えてきているんです。木材でもコンクリートの建物と同程度の強度で建築できたり、断熱性・不燃性の材質や技術が発達してきたりして、オール木材で8階建てのビルを作ろうなんていう話があるくらいです。国立競技場はあくまでもフックになっているだけで、メインの内容にはなっていないので安心してください。

山田さんが探究していること

(田中)最後に山田さんが探究していることについて教えていただけますか。

(山田)大学で教えているコミュニケーションや言語学ですね。かれこれ20年くらい本を読んだり、大学で授業をしたりして、探究し続けています。自分の話を相手に正しく伝えるためには、相手の語彙力に合わせて話すことの重要性を最近講義の中に取り入れました。なんとか資料化ができたので。大学の授業も、探究のプロセスを繰り返すことでスタイルが確立してきたし、ありがたいことに生徒の満足度も高まってきました。

次はSFプロトタイピングの商業化について探究したいですね(笑)

(田中)それ、すごく興味あります!インタビューしながら、僕もたくさん勉強させていただきました。

まとめ

山田様、今回はありがとうございました。

SDGsとも関わりの深い当コンテンツは、学校でも取り上げやすい内容になっています。先生方が使いやすいように指導案やワークシートなど細かい点にまで配慮がされているのは、STEAMライブラリー掲載2年目だからこそ。ぜひ一度ご覧いただき、授業や探究活動にご活用ください!