探究学習

IoTが実現する世界と、暮らしを支える光の科学|シャープ株式会社×株式会社エイスクール

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

日本のものづくりを牽引するシャープ株式会社(以下、シャープ)と、探究学習を牽引する株式会社a.school(以下、エイスクール)が今年度もタッグを組み、STEAMライブラリーのコンテンツを制作いただきました。

今回ご提供いただいたのは、光やIoT技術による社会の変化について探究するコンテンツです。私たちはそれらの技術によってどのような恩恵を受けており、今後の世界にはどんな可能性があるのかを考えることができます。

IoT(アイオーティー)とは・・・様々なモノ、住宅、車などが、ネットワークを通じて相互に情報交換をする仕組みです。スマートフォンで操作できる家電や、スマートウォッチなどが身近な例です。また、シャープは人工知能「AI」と「IoT」を組み合わせた「AIoT」という概念を提唱しています。

このコンテンツの使い方や込められた想いについて、シャープの藤原様、エイスクールの岩田様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

藤原百合子様 プロフィール

シャープ株式会社 研究開発事業本部 ソリューション事業推進センター ソリューション事業推進室 参事
企業博物館「シャープミュージアム」の展示企画から国賓・来賓対応、人材育成に至るまでの運営全般に従事。来場者の3割が教育関連であることから、歴史、科学、デザインと、ミュージアムに存在する学びの価値を全国に届けたいと考え、STEAMライブラリーコンテンツ制作事業に参画。

岩田拓真様 プロフィール


株式会社エイスクール(a.school)代表兼クリエイティブディレクター
東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務後、2013年に創業。探究学習塾の運営や探究学習コンテンツの開発・普及などを行う。著書に「『勉強しなさい』より『一緒にゲームしない?』」。

シャープ株式会社

1912年に創業した、電気通信機器・電気機器等の製造・販売が主な事業内容の企業です。液晶テレビ「アクオス」や空気清浄機などのプラズマクラスターの搭載商品など、日常生活に欠かせない製品を手掛けています。

株式会社エイスクール

2013年に設立された、探究学習塾を運営する企業です。「没頭したい学びがある、豊かな人生を増やすこと」を目指し、試行錯誤や実践を大切にした新しい学びを創り出しています。探究学習プログラムや教材の開発、探究学習に関する人材育成等も行っています。

コンテンツについて


タイトルIoT技術により未来はどうなる?「IoTが実現する世界 〜イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.4〜」
光の技術は日常のどこにひそんでいる?「暮らしを支える光の科学 〜イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.5〜」
学年中学、高校
キーワード商品企画、社会分析、技術探究、アート制作、メディア学
AI、イノベーション、実験、8K、5G
URLhttps://www.steam-library.go.jp/content/113
https://www.steam-library.go.jp/content/115

概要

IoT技術:暮らしのあらゆるシーンでインターネットの仕組みが活用されるようになりました。AIやIoTに関連する技術の進化によって人々の暮らしや社会がどのように変化してきたのかを捉え、AI×IoT技術に秘められている今後のさらなる可能性を起点にこれからの世界がどうなっていくのかを共に考えます。IoT技術について学ぶ発見パートと、自分で定めたテーマ領域について探究する探究パートに分かれています。

光の技術:光のない世界が考えられないほど、空気と同じくらい当たり前の存在である光。光の性質と、人や社会、自然界との関わりを探求し、光の恩恵を知るとともに、自分なりの新たな光を感じてみてください。光の科学と技術の進化の歴史を辿る発見パートと、自分で定めたテーマ領域について探究する探究パートに分かれています。

昨年度のコンテンツ
技術は世の中をどう変えた?「日本のものづくりの歴史 ~イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.1〜」
自然の知恵を社会にいかすには?「自然から学ぶものづくり ~イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.2〜」
技術の進化の先には何がある?「ディスプレイ技術の発展 ~イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.3〜」

昨年度のインタビュー
失敗さえも面白い!探究を楽しむ「ものづくりニッポン」の研究者が知ってほしいこと ~シャープ株式会社×株式会社エイスクール~

生徒・先生が探究しやすいようにバージョンアップ

▲どのコンテンツも、技術の発展を学ぶ発見パートと、自分で決めたテーマを探究する探究パートに分かれている。(IoT3コマ目:【探究パート】IoTが実現する世界:課題解決・未来構想・技術研究プロジェクト より)

(田中)昨年度もコンテンツをご提供いただきましたが、今年度で変化している点はございますか?

(岩田)生徒や先生方が、探究を進めやすいように工夫しました。生徒向けの工夫としては、探究や実験の具体例・様子を動画に組み込んでいます。先生向けには、探究パートの実験を進める際の、具体的なヒントをより多く示しました。昨年はざっくりとした解説で現場の先生の裁量にお任せする部分も多かったのですが、今回は実験の進め方や道具などを指導案で解説し、より先生が進め方をイメージできるようにしました。


▲指導案では、実験の事前準備や注意について解説している。(光1コマ目:【発見パート①】暮らしを支える「光の技術」・前編 〜身の回りの光の不思議〜 資料(教員用)より)

シャープの研究員のみなさん20名がコンテンツ作りに参加!


▲動画にも研究員の方が登場する。(光2コマ目:【発見パート②】暮らしを支える「光の技術」・後編 〜光を使った最新技術〜 より)

(田中)他に昨年度と比べて変化した点はございますか?

(藤原)昨年度は、遠くにお住まいの方にもシャープミュージアムの内容をお届けしたいというコンセプトだったので、ミュージアムの展示物に沿った内容でした。でも今年度はこれを超えて幅広いコンテンツにするため、シャープの研究員にも20名ほど参加してもらいました。

(田中)20名も研究員の方が参加されたのですね!研究員の方は教材を作った経験があまりないかと思いますが、研究員の方とコンテンツを作る上で意識されたことはございますか?

(藤原)専門領域のことはよくわかっているけれど、それを知らない人にどう伝えるかに苦労する研究員もいたので、そのギャップを埋めることを意識しました。

(岩田)研究員の方とのやり取りは工夫したポイントで、まずは研究員の方から私たちに「光って何?」といったことを講義してもらい、講義から面白いところを見つけていきました。そして、それをどう中高生に伝えるかについて私たちがまとめ、さらにそれを研究員の方にフィードバックしていただきました。研究員の方とコミュニケーションをかなり重ねて、作り上げることができたのは、コンテンツの大きなポイントです。

コンテンツは相互に関連しており、次に繋げやすい


▲昨年度と今年度のコンテンツ(一覧

(田中)昨年度と合わせると5つのコンテンツがありますが、「この順番で見ると良い」というイメージはございますか?

(岩田)面白いと思ったものから見ていただけます。また、どのコンテンツも緩やかにつながっているので、「次これを見てみよう」というのは考えやすいと思います。例えば、光の技術はディスプレイによく使われているので、今年度の光のコンテンツと昨年度のディスプレイの内容は繋げられます。

(藤原)根底にものづくりというスタート地点があって、それがIoTや光など、様々なものに繋がるんだという発展を楽しんでいただくこともできます。

(田中)なるほど。シャープのものづくりの歴史がベースにあり、そこから興味に応じてIoTや光などに分散していくイメージですね。

(岩田)はい。昨年度のコンテンツも含め、最初に発見パートを一通り見ていただくのがおすすめです。先生方にとっても、コンテンツの内容を掴みやすいと思います。その上で、じっくりやってみたい探究パートを探すという流れが良いです。探究パートは、3つの期間(短期・中期・長期)で取り組める3つのプロジェクト(合計9パターン)を用意していて、先生方に自由に組み立てていただけます。


▲探究パートでは、3つのプロジェクトをカスタマイズできる。(光3コマ目:【探究パート】暮らしを支える「光の技術」:製品開発・技術研究・アート制作プロジェクト

使い方によっておすすめの時期は様々

(田中)学期で言うといつ頃使うのが良いでしょうか?

(岩田)発見パートだけ使う場合は、高1の1学期など、早めの時期がおすすめです。プロジェクトをするのではなく、色々なテーマに関する興味を広げるという使い方であれば、早めの時期で良いと思います。一方、探究パートまでしっかりと取り組むのであれば、高1の2学期や3学期、あるいは2年生になってからが良いです。

お二人が探究していること

▲拡散シートを持つ藤原様

(田中)子どもの探究学習を充実させるには、周りの大人も探究することが大切だと思います。お二人が現在探究されていることはございますか?

(藤原)昔から光って面白いなと思っていて、自分であれこれ探究しています。工場を見学して光学シートをもらってきて、実験や工作をします。例えば拡散シートでランプシェードを作ってみました。あとは、プリズムシートって見る角度によって見え方が変わるので、正面から見た時だけ表示される看板を作ってみたこともあります。

光学シートとは・・・光源の光の角度を変えるプリズムシートや光を拡散して面全体を均一化する拡散シートなどがあります。身近なところでは、PCやテレビのディスプレイのバックライトを均一にするためなどに使われています。

(田中)とても探究されていますね!それはプライベートでやられているのですか?

(藤原)はい。家で子どもとやります!それを持ち寄って、仕事仲間と知恵を出し合います。ミュージアムもそうですが、自分が面白いと思ったのを提供する方が、先生も生徒さんも楽しんでいただけます。楽しんでもらうからには、「本当に楽しいよ」と伝えたいから、自分でやっているという感じです。

(田中)藤原さんの語り口調から、相当お好きなのが伝わりました(笑)。

(岩田)コンテンツを作るときも、藤原さんたちがすごく楽しそうな雰囲気でやってくださるので、制作が楽しかったです。ただ教えるというコンテンツではないので、楽しい雰囲気が制作の場にあったのはとても良かったです。

(田中)素敵な制作現場ですね。岩田さんはどんな探究をされていますか?
(岩田)私は、「探究学習の講師の力はどうやって測れるか」ということにすごく関心があります。診断ツールのようなものを作りたいと思っていて、それを設計することにとても燃えています。でもテストっぽくしすぎると、それに答えられるかどうかという限定的な力しか測れません。かといって、探究学習のプロがじっくり観察して測るのはとても大変です。この難しい力をどう測ったら良いか、測れるのか、というところを研究者の方と一緒に議論し始めています。

まとめ

藤原様、岩田様、ありがとうございました。

シャープのものづくりの歴史を基点に、様々な分野へと発展させることができるコンテンツです。楽しい雰囲気の制作現場で作られたからこそ、見る側も楽しめる内容となっています。ぜひご活用ください。