探究学習

総合型選抜入試を事例とともに解説。AOとの違い、探究学習との関係も

この記事では、総合型選抜入試について解説します。
探究入試とのつながりまで解説するので、ぜひ探究学習の動機づけにも役立ててください。

これからの社会に必要な能力・資質を育むために、2022年度から高校で探究学習が必須となりました。「探究力」の開発は大学でも同様の課題です。むしろより社会に近い大学でこそ、取り組みが急務であると言えるかもしれません。

「探究力」育成の試みは高校から大学、企業と、「探究の必修化」や「高大連携」などさまざまな形ですでに実践されています。全体を見渡すこんな感じです(取り組みは一例です)。

高等学校探究学習の必修化
高校から大学へ
(高大接続)
高大連携(大学による高校生への探究支援など)
★総合型選抜入試の増加(この記事で解説します)★
大学PBL型・探究型の授業の増加(こちらの記事で解説しています)
企業採用試験における探究力評価
ここでは、高校から大学への接続において重要となる「総合型選抜入試」について詳しく解説します。

目次
総合型選抜入試とは?
AO入試との違い
近年総合型選抜入試は増加傾向にある?
総合型選抜はどの時期から始まる?
併願できる?
対策のポイントは?
・学びたいテーマについて探究を深めること
・早めに志望校を検討しておくこと
総合型選抜を行なっている大学
1.関西学院大学「探究評価型入学試験」
2.奈良女子大学「探究力入試Q」
3.桜美林大学「探究入試Spiral」
4.工学院大学「探究成果活用型選抜」
5. 大阪樟蔭女子大学「探究学習評価型入試」
まとめ

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総合型選抜入試とは

総合型選抜入試とは、従来の学力試験だけではなく、小論文や面接、プレゼンテーション、グループワークや、高校の探究や課外活動のポートフォリオなどによって、人物や学びへの意欲などを総合的に評価し、大学のアドミッションポリシーに合致する人物を選抜する制度です。これからの時代において総合的な能力が求められることから、総合型選抜を採用する大学が増加しています。

以前はAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていましたが、2021年度入試から、名称と共に中身も変わりました。

アドミッションポリシーとは
大学が掲げる入学してほしい学生像のこと。大学によって掲げているものは様々で、身につけてほしい能力や将来目指してほしい像が書かれていることが多い

AO入試との違い

文部科学省はAO入試から総合型選抜への変更に当たって、以下の点を各大学に求める改善点として挙げています。

AO入試からの変更点
・調査書等の出願書類だけでなく、(1)各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、もしくは(2)「大学入学共通テスト」の少なくともいずれか1つの活用を必須化すること。
・志願者本人の記載する資料(例:活動報告書、入学希望理由書、学修計画書等)を積極的に活用すること。

一番の違いは、何らかの形で学力を測ることが必須になったということです。

学力を問う方法として小論文やプレゼンテーション、口頭試問も定義されています。形式上の選抜方法はAO入試と変わらない大学も多いのですが、より知識がしっかりと問われるようになったケースが多いです。

近年総合型選抜入試は増加傾向にある?

2021年入試からスタートした総合型選抜ですが、すでに国立大学の8割近く、私立大学の9割近くが採用、入学者に占める割合も増加し続けています。

▲引用「大学入学者選抜改革の動向」(文部科学省高等教育局資料より)2023年1月31日

このように増加傾向がある理由には、社会情勢の変化とそれに伴った大学の求める学生像の変化があります。

人口の減少と景気の悪化、またデジタル化の影響で、一人一人が目的意識を持って主体的に行動することが求められるような社会になってきました。これを踏まえ、大学でも将来社会に影響を与えてくれる人材を育成するために大学入学をスタートと捉え、志や夢を追求できる学生を求めているのです。

高校における探究学習と総合型選抜

総合型選抜入試の増加と呼応するように、高校では2022年度から「探究学習」がはじまりました。こちらも、これから社会で活躍するための総合的な力を養う科目です。

実は、総合型選抜入試には、高校での探究成果をもって出願が可能な入試も多くあります。大学入学後も、探究型授業、PBL(プロジェク型学習)を行う大学が増えており、高大接続の観点からも、探究学習は注目されています。

総合型選抜はどの時期から始まる?

総合型選抜の出願開始は、9月1日以降と定められています。
ですが、大学によって実施時期や期間は異なります。9月に始まるところもあれば、12月や年明けに入試日程を設けている大学もあります。

出願前の6月ごろからエントリーする必要のある大学もあるため、早期から志望校を調べておく必要があります。

併願できる?

併願できる大学もありますが、基本的には専願です。
募集要項に専願のみなどと書いてあるので確認する必要があります。

専願になると落ちた場合どうすればいいのか不安になりますよね。ここで落ちてしまっても、一般選抜で再挑戦できます。両方の受験の対策をしなくてはいけない分、負担は大きくなりますが、同じ大学に二度挑戦できるのはメリットでしょう。

また、総合型選抜を複数回実施している大学・学部の場合、一度不合格となっても、再度総合型選抜でチャレンジすることも可能です。

*選抜の仕組みは大学によって異なるため、必ず大学公式サイトを参照し、不明点は大学へ直接確認してください。

対策のポイントは?

総合型選抜の対策の2つのポイントについて解説します。

・学びたいテーマについて探究を深めること
・早めに志望校を検討しておくこと

学びたいテーマについて探究を深めること

一つは学びたいテーマについて探究を深めることです。

総合型選抜では、その大学・学部で何を学びたいのかという根本的な意欲がよく問われます。自分が何に関心があるのか、その背景、それらを踏まえて大学で何をしたいのか。ここをしっかりと言語化しておく必要があります。

早めに志望校を検討しておく

早めに志望校を検討することのメリットは多くあります。
アドミッションポリシーや選抜内容について理解を深め、対策を行うことができます。

早い場合は3年生の6月ごろからエントリーという形で募集が始まります。そこに向けて志望校を選んでおく必要があるため、高校2年生の頃には気になる大学のオープンキャンパスに行き志望校を絞った上で対策を立てる必要があるでしょう。

総合型選抜を行なっている大学三つ

総合型の選抜入試を行っている三つの大学とその入試形式について紹介します。

1.関西学院大学「探究評価型入学試験」
2.奈良女子大学「探究力入試Q」
3.桜美林大学「探究入試Spiral」
4.工学院大学「探究成果活用型選抜」
5. 大阪樟蔭女子大学「探究学習評価型入試」

関西学院大学「探究評価型入学試験」

入試名「探究評価型入学試験」
対象学部文学部、法学部、社会学部、総合政策学部など文系10学部と理学部、工学部など理系学部4学部の計14学部
試験内容一次審査:高校の探究の成果の提出
二次審査:面接やプレゼンテーション
求める学生像高等学校もしくは中等教育学校の教育課程内の授業等において、横断的・総合的な学習や探究的学習を通して能力を高めた生徒
詳細https://www.kwansei.ac.jp/admissions/admissions_tankyu.html

この入学試験では、横断的・総合的な学習や探究的な学習を 通して、自ら課題を発見し、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を持ち、 多様な人々と協働して学ぶことが出来る者を求められています。

試験形式は学部によって差異がある為、詳細はリンク先をご覧ください。

奈良女子大学「探究力入試Q」

入試名「探究力入試Q」
対象学部文学部、理学部、生活環境学部
試験内容高校のときの探究の成果、および、小論文や作文、プレゼンテーション
求める学生像単に答えを出すのではなく、自分で問いを立ててそれを解き明かしていくことが好きなひと
詳細http://koto.nara-wu.ac.jp/nyusi/qnyusi/index.html

奈良女子大学は大学が探究の場であると定義し、その上で探究を自ら行っている人材を募集しています。探究力入試「Q」。この「Q」は、「探究」のキュー、「question」と「quest」のQ です。単に答えを出すのではなく、自分で問いを立ててそれを解き明かしていく。そういうことが好きなひとをこの入試は歓迎しています。

桜美林大学「探究入試Spiral」

入試名「探究入試Spiral」
対象学部リベラルアーツ学郡、ビジネスマネジメント学群、健康福祉学群
試験内容高校の探究の成果の審査、面接
求める学生像今後の社会に必要な探究的な経験を重ねてきた受験生を評価する
詳細https://admissions.obirin.ac.jp/spiral/

東京の私立大学・桜美林大学は2021年度から「探究入試Spiral」を設けています。出願条件は「学内外のコンテストや発表会等」に出場したこと、となっていますが、学内の発表会でもよく、受賞歴も必須ではありません。校内で探究発表会を行ったことがある学生なら、応募しやすい条件といえるでしょう。

4.工学院大学「探究成果活用型選抜」

入試名「探究成果活用型選抜」
対象学部工学部、先端工学部、建築学部、情報学部
試験内容一次選考:高校の「探究活動書類審査」と基礎学力調査(数学・英語)
二次選考:探究活動に関するプレゼンテーションと面接
求める学生像大学進学後も専門分野を学びながら、技術者、研究者を目指す意欲のある方
詳細https://www.kogakuin.ac.jp/admissions/requirement/method/recom/tankyu.html

高校の総合的な学習(探究)の時間帯において課題探究学習の経験者であり、その経験や成果を活かし、大学進学後も専門分野を学びながら、技術者、研究者を目指す意欲のある方が募集対象です。
また、各学科合格者のうち成績優秀者に対して、年間授業料の50%を減免し、年間2回の納付額をそれぞれ減額します。一定水準の成績を収めることで、最大4年間の減免を受けることができます。

5. 大阪樟蔭女子大学「探究学習評価型入試」

入試名「探究学習評価型入試」
対象学部健康栄養学科 管理栄養士専攻以外
試験内容プレゼンテーション形式
求める学生像大学でも探究していく強い意志を持った受験生
詳細https://cheer.osaka-shoin.ac.jp/admissions/inquiry-learning.html

高校3年間の「総合的な探究の時間」の授業を通じて、自分自身がその課題をどのように捉え、考えて行動したのか。何を学び、どのように成長したのか。そして高等学校での学習成果や経験を活かして、入学後にどう活かしていきたいかを「プレゼンテーション形式」で発表します。
探究学習の成果をそのまま活かせることが特徴です。

まとめ

総合型選抜入試についてまとめました。

多くの大学が総合型選抜入試を取り入れています。高校生のうちから探究学習等で自分の興味を追求することで、この入試でも結果につながる可能性があります。

入試形態は大学によって大きく変化するので詳細は一度大学のサイトをご覧ください。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。