生徒の多様な探究テーマ、どうサポートする?専門外の分野でも指導できる3つのコツ
探究学習の現場で、多くの教員が直面する悩みがあります。それは、「生徒の探究テーマが自分の専門分野と全く違う」という問題です。例えば、国語科の教員が「AIと倫理」について探究する生徒を指導したり、体育科の教員が「地域の歴史」を調べる生徒をサポートしたりする場面が日常的に起こっています。本記事では、専門外の分野でも生徒の探究を効果的に支援できる3つのコツと、具体的な指導方法について詳しく解説します。

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なぜ教員は「専門外」に不安を感じるのか
教員が専門外の分野での指導に不安を感じるのには、いくつかの理由があります。
「正しい答え」を教えなければという責任感
従来の教科指導では、教員は「正確な知識を伝える」ことが求められてきました。しかし、探究学習では生徒のテーマが多岐にわたるため、すべての分野で専門的な知識を持つことは不可能です。この「知らないことを指導する」という状況に、多くの教員が戸惑いを感じています。
生徒からの期待とプレッシャー
生徒は教員を「何でも知っている存在」として見がちです。「先生なら答えを知っているはず」という期待に応えられないことへの不安が、指導を難しくしています。
評価の公平性への懸念
専門外の分野では、探究の質を適切に評価できるかという不安もあります。自分が詳しくない分野で、生徒の努力や成果を公平に評価できるのか、という疑問は多くの教員が抱えています。
発想の転換:「教える」から「共に学ぶ」へ
しかし、ここで重要なのは発想の転換です。探究学習において教員に求められるのは、「答えを教える専門家」ではなく「学びを支援するファシリテーター」としての役割です。
探究学習の本質を理解する
探究学習の目的は、特定の知識を習得することではありません。自ら問いを立て、情報を収集・分析し、考察する力を育むことが本質です。この観点から見れば、教員が専門知識を持っていなくても、探究のプロセスを支援することは十分可能なのです。
「知らない」を強みに変える
むしろ、教員が専門外であることは、生徒と同じ目線で疑問を持ち、一緒に探究できるというメリットにもなります。「先生も知らないから、一緒に調べてみよう」という姿勢は、生徒にとって大きな励みになります。
専門外でも効果的に指導できる3つのコツ
では、具体的にどのような方法で専門外の分野でも効果的な指導ができるのでしょうか。実践的な3つのコツを紹介します。
コツ1:「問い」の質を高めることに集中する
専門知識がなくても、良い問いを立てる支援はできます。むしろ、専門外だからこそ、素朴で本質的な問いを投げかけることができるのです。
効果的な問いかけの例:
- 「なぜそのテーマに興味を持ったの?」
- 「その問題の背景には何があると思う?」
- 「もし〇〇だったらどうなるだろう?」
- 「別の視点から見るとどう見える?」
- 「その仮説を検証するにはどんな方法がある?」
問いを深める技法:
1. 5W1Hの活用
What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Why(なぜ)、How(どのように)を使って、生徒の考えを多角的に掘り下げます。
2. 「なぜ」を5回繰り返す
トヨタの改善手法として有名な「なぜなぜ分析」を活用し、問題の本質に迫ります。
3. 逆説的な問いかけ
「もし〇〇でなかったら?」「反対の立場から見たら?」など、逆の視点から考えさせます。
コツ2:探究の「プロセス」をマネジメントする
専門知識がなくても、探究活動の進め方については指導できます。プロジェクトマネジメントの視点から、生徒の活動を支援しましょう。
プロセス管理の具体的方法:
1. スケジュール管理
- 全体計画の作成支援
- マイルストーンの設定
- 進捗確認と調整
- 締切を意識した活動計画
2. 情報整理の支援
- 情報カードの作成方法
- マインドマップの活用
- KJ法による情報の分類
- 論点整理のフレームワーク提供
3. 研究手法の基本指導
- 文献調査の方法
- インタビューの準備と実施
- アンケート作成の基本
- データの整理と分析方法
4. 記録と振り返りの習慣化
- 探究ノートの書き方指導
- 定期的な振り返りセッション
- 失敗から学ぶ姿勢の育成
- 次のアクションの明確化
コツ3:適切なリソースへ「つなぐ」役割を果たす
自分が専門知識を持っていなくても、適切な情報源や専門家につなぐことはできます。教員はコーディネーターとしての役割を果たしましょう。
リソースへのつなぎ方:
1. 校内リソースの活用
- 他教科の教員への相談を促す
- 図書室司書との連携
- ICT支援員の活用
- 先輩生徒の経験共有
2. 外部専門家との連携
- 大学教員への質問機会の設定
- 地域の専門家の紹介
- 企業との連携コーディネート
- オンラインでの専門家相談
3. 情報源の見つけ方指導
- 信頼できるWebサイトの見分け方
- 学術論文データベースの使い方
- 公的機関の統計データ活用法
- 専門書の選び方と読み方
4. ネットワークの構築支援
- 同じテーマの生徒同士の交流促進
- 他校との情報交換の機会創出
- 学会や研究会への参加支援
- SNSを活用した情報収集の指導
実践例:専門外分野での指導成功事例
実際に専門外の分野で効果的な指導を行った事例を紹介します。
事例1:英語教員による「地域の伝統工芸」探究支援
英語科のA教員は、地域の伝統工芸について探究する生徒を担当しました。工芸の専門知識はありませんでしたが、以下のアプローチで支援しました:
- 問いの深化:「なぜその工芸品は今も残っているのか」「海外の類似品との違いは何か」など、本質的な問いを投げかけた
- プロセス管理:職人へのインタビュー計画、工房見学の段取り、記録方法などを指導
- リソース活用:地域の工芸組合、博物館学芸員、美術科教員との連携をコーディネート
結果として、生徒は伝統工芸の価値を国際的な視点から考察する優れた探究成果をまとめることができました。
事例2:数学教員による「音楽と感情」探究支援
数学科のB教員は、音楽が人の感情に与える影響について探究する生徒を指導しました:
- 問いの構造化:感情を測定可能な指標に落とし込む方法を一緒に考えた
- 研究手法の提案:アンケート設計、データ分析方法など、数学的なアプローチを提案
- 専門家への橋渡し:音楽科教員、心理学の大学教員との連携を支援
音楽の専門知識はなくても、研究方法論の観点から有効な支援ができました。
教員自身の成長機会として捉える
専門外の分野での指導は、実は教員自身にとっても大きな成長機会です。
新たな知識との出会い
生徒と一緒に学ぶことで、自分の知識の幅が広がります。これは教員としての総合力向上につながります。
指導スキルの向上
知識を教えるのではなく、学び方を支援するスキルが身につきます。これは、どの教科でも活用できる汎用的な能力です。
生徒との新たな関係性
「教える-教えられる」という上下関係から、「共に学ぶ」という水平的な関係へ。これにより、生徒との信頼関係がより深まります。
Study Valley TimeTactで専門外指導をサポート
専門外の分野での指導を効果的に行うには、適切なツールの活用が重要です。Study Valley TimeTactは、教員の専門外指導を強力にサポートします。
AI による指導アドバイス機能
生徒の探究テーマを入力すると、AIが適切な問いかけや指導方法を提案。専門知識がなくても、効果的な指導が可能になります。
専門家マッチング機能
全国の大学教員や企業の専門家とつながり、生徒の探究テーマに合った専門家を簡単に見つけられます。オンラインでの相談も可能です。
指導事例データベース
他校の教員による専門外指導の成功事例を共有。似たテーマでの指導方法を参考にできます。
探究プロセス管理ツール
生徒の探究活動の進捗を可視化し、適切なタイミングでの介入をサポート。専門知識がなくても、プロセス管理が容易になります。
まとめ:専門外こそ、真の探究指導ができる
生徒の多様な探究テーマに対応することは、確かに挑戦的です。しかし、専門外だからこそできる指導があるということを忘れてはいけません。
重要なのは、すべてを知っている専門家として振る舞うことではなく、生徒と共に学び、考え、探究する姿勢を示すことです。問いを深め、プロセスを支援し、適切なリソースにつなぐ。この3つのコツを実践することで、どんなテーマでも効果的な探究指導が可能になります。
Study Valley TimeTactのようなツールを活用しながら、教員自身も成長する機会として専門外の指導を楽しむ。そんな姿勢が、生徒の探究心をさらに刺激し、より深い学びへと導くのです。「知らない」を恐れず、「共に学ぶ」を楽しむ。それが、これからの探究指導に求められる教員の姿なのです。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。