探究学習

【先生向け】探究学習について学べる本5選!ニーズ別にまとめました

探究についてしっかり本を読んで勉強したいと思うけど、おすすめの本はなんだろう?

そんな「探究学習についての本を探している先生」のための記事です。

こんな本を紹介

・探究学習のフロントランナーたちの意見・実践を知りたい
・探究学習を理論的に俯瞰したい
・成功している探究の現場、コンピテンシー~授業づくりまでの、具体的なノウハウが知りたい
・海外の探究学習の最先端事例を知りたい
・授業で即使えるワークシートがほしい

これらの疑問・要望に答える5冊を紹介します。それぞれおすすめポイントをまとめていますので、ぜひ本選びの参考にしてみてください。

探究学習のフロントランナーたちの意見・実践を知りたい人におすすめ「探究する教室」

タイトル 探究する教室
著者 授業づくりネットワーク
出版社 学事出版

長年探究学習に取り組むフロントランナーたちの対談・授業レポート・コラム集

探究学習の最前線で活躍するフロントランナーたちの意見や実践例が知りたいという方におすすめの一冊です。

元TCS校長・市川力氏やイエナプランスクールの原田友美氏のコラムなど探究に取り組む16の教育機関、教員、研究者、NPO法人などが寄せた対談、授業レポート、コラムを読むことができます。

冒頭の四者対談では「探究を何のために使うのか」「カリキュラムづくり」「教員のマインドセット」など探究学習を語るうえで外せない、普遍的なテーマや今後の課題について知ることができます(参加者:上智大学教授・奈須正裕氏、一般社団法人こたえのない学校・藤原さと氏、かえつ有明中学高等学校教諭・田中里紗氏、立命館小学校教諭・川本敦氏)

小中高校~定時制まで全国の実践例が豊富

多彩な方々の寄稿で編成されており、小学校(イエナプランスクール大日向小学校など)、中学校(海老名中学校など)、高校(札幌日本大学高等学校など)、マイクロスクール(ラーンネット・グローバルスクールなど)、定時制高校など事例は多岐にわたります。

必ずしも高校の事例ではなくても、探究的な学びを行うためのさまざまな理論や実践例、教材は高校の探究の授業に応用できるものが多いと思います。

多数の事例から探究学習の具体的な実践イメージを掴める

理論だけの本では、なかなか自分の学校での授業イメージを掴むことはできません。事例も限られた事例に触れるだけでは、自分の学校との環境や条件の違いに目がいってしまい、参考にならないと感じることもあるでしょう。

この本のメリットとして、多くの事例のみならず、現場から生まれた理論や、失敗例など幅広い情報が掲載されていることがあります。そのことで、実践例をよりリアルにイメージすることができます。

本書を読むと一言で「探究学習」といってもさまざまな解釈やバリエーションがあり、ひとつの正解があるようなものではないことに気づくと思います。

そんな「探究学習」を少しマクロの視点から俯瞰して、理論的に全体像をとらえたい、という方には次に紹介する本がおすすめです。

探究学習を理論的に俯瞰したい人におすすめ「高校教員のための探究学習入門」

タイトル 高校教員のための探究学習入門(問いからはじめる7つのステップ)
著者 佐藤浩章編著
出版社 ナカニシヤ出版

探究学習をモデル化して理論的に俯瞰するのに最適

「どのようにすれば質の高い探究者を育成することができるのか?」というテーマで書かれた一冊です。

いま探究学習が必要とされる歴史的な流れ、未来に求められるコンピテンシー(行動様式と訳される。『計算ができる』のようなスキルではなく『自律的に活動する』など行動特性や、あり方を表す言葉)についてなど、探究学習の背景的な情報から、具体的な探究学習のデザインについても「7つのステップ」「2つのアプローチ」「4つのレベル」に整理してわかりやすく解説。学校レベルでの探究学習カリキュラムデザイン、クラス単位の授業デザインに必要な理論的指針を与えてくれます。

7つのステップ(目次より抜粋)
・課題を見つける
・問いをつくる
・目標を立てる
・計画を立てる
・問いを探究し答えをつくる
・学びを評価する
・学びを振り返る
*本書では各ステップそれぞれに詳しくポイント解説を行う

定まった定義がない「探究学習」。「探究学習はこうあるべき」という「べき論」は数多く見かけますが、それだけに「探究学習とは?」を一言で説明することが難しい現状があります。

この本では世間で言われるさまざまな「探究学習」の意味をひとつに限定するのではなく、「問いの設定主体から分類する探究学習」「問いの範囲と深さで分類する探究学習」などの指標を用いた広がりのある範囲として説明します。

これにより「探究学習はこうだから、こうしなければならない」ではなく、学校の現状、生徒の学習レベルなどを振り返って、今はこのレベルの探究学習を実施しよう、と適切なレベル感のカリキュラム作成を行うことができます。

グラデーションのある「探究学習」の定義を整理する

例えば「探究学習は生徒自らが問いを立てなければならない」というコメントをよく見かけませんか?しかし現実問題として生徒自身が適切な問いをゼロからたてられるケースはまれです。

多くの学校、特に探究学習に初めて取り組む高校1年生では、課題を先生が指定、もしくはいくつかの選択肢から選ばせる方法をとっていると思います。

では、課題を指定したからといって、課題に対するアプローチがどんなに探究的であっても、これは探究学習ではないのでしょうか?

本書では探究学習を4つのレベルに分けることで探究の概念を整理します。上記のような「先生が問いと答えを用意して、生徒が探究学習の基本原則を学ぶ」形式をレベル1「確認のための探究」としています。

対極にあるのがレベル4「自由な探究」で、生徒が自分で設定した問いを自分のやり方で探究するものとしています。

このように探究学習の全体を俯瞰することで、「探究学習は生徒自らが問いを立てなければならない探究」はレベル4だから、まずはレベル1から始めよう、というように子供たちにとって適切な探究学習を設計することができます。

探究学習の基本書として一冊あると便利

他にも、探究学習をデザインするにあたり必要な各ステップの基本的な概念を豊富な引用文献を踏まえて解説しており、基本書として手元にあると便利な一冊です。

よくある疑問に探究を実践している現場教員が回答するコラムも

理論だけではなく、ポイントとなるテーマでは現役高校教員によるコラム「事例Q&A」も掲載。実際に教育現場で探究に携わっている教員の具体的なアドバイスも知ることができます。

事例Q&A回答者
大前吉史(兵庫県立長田高等学校主幹教諭)
大澤 哲(兵庫県立兵庫高等学校主幹教諭)
山本卓也(福井県立高志高等学校教諭)
高野和樹(福井県立高志高等学校教諭)
中西雅子(清教学園中・高等学校教諭)
山﨑勇気(清教学園中・高等学校教諭)

詳細なカリキュラムをつくるにはやや情報不足?

高校の探究学習デザインに必要な理論を俯瞰することに特化した本書。しかしこの本一冊を読めば、探究学習プログラムがすぐに作れるかというと、それはちょっと難しいかもしれません。

この本を読んでみて、具体的なイメージがわかなければ、次に紹介する、より具体的な実践例が掲載されている「探究する力」などの書籍の参照をおすすめします。

成功している探究の現場、コンピテンシーから授業づくりまでの具体的ノウハウが知りたい人におすすめ「探究する力」

 

タイトル 探究する力(すべての小学生と先生のために)
著者 市川力
出版社 知の探究社

コンピテンシーから子供を夢中にさせる「探究」までをどうつくる?

探究学習のカリキュラム設計において、求めるコンピテンシーから、実際にどのようなテーマを選び、子供たちにどのような問いかけをし、どこへフィールドワークに行って誰に話を聞くのか・・・など具体的な事例を知りたい人は多いと思います。そしてもちろん、子供たちが目を輝かせて探究に夢中になる様子も。

それらを知ることができる好著が「探究する力(すべての小学生と先生のために)」です。東京コミュニティスクール(以下、TCS)元校長で、現在、一般社団法人みつかる+わかる代表理事の市川力氏の著書です。

「小学生のために」とありますが、先に挙げたような、コンピテンシーから探究的な学びを設計する方法、子供たちを夢中にさせるエッセンスが詰まった一冊なので、小学校から高校まで、探究的な学びに関わるすべての先生の参考になると思います。

国際バカロレアの「探究テーマ領域」からヒントを得た探究学習

本書の前半では、TCSが持っている探究カリキュラム「からだに栄養・こころに栄養」「詩人の旅」「信じるカネ」などの6つの探究実践の様子が、子供たちの生き生きとした様子とともに描かれます。

後半では、そのカリキュラムの理論的支柱となる考え方や、コンピテンシーから実践へどう落とし込まれているかの方法論が詳細に書かれています。

市川氏が参考にしているのは国際バカロレア(InternationalBaccalaureate通称:IB)のプライマリー・イヤーズ・プログラム(以下、PYP)。これはIBが目指す学習者像を実現するために、3~12歳までで取り組むべき教科横断型の「探究テーマ領域」を示したもの。

国際バカロレアが目指す学習者像
・探究する人
・知識のある人
・考える人
・コミュニケーションができる人
・信念をもつ人
・心を開く人
・思いやりのある人
・挑戦する人
・バランスのとれた人
・振り返りができる人

6つの教科横断型「探究テーマ領域」
・Who we are
・Where we are in place and time
・How we express ourselves
・How the world works
・How we organize ourselves
・Sharing the planet

これを応用したTCS独自の探究領域から逆算して達成目標、そして具体的なカリキュラムがつくられます。

学校でも「21世紀型スキル」「建学の精神」など抽象度の高いものから評価や授業設計をする場合があると思います。本書では、まさにTCSがIBのPYPをもとに行ったそのプロセスが書かれており、探究学習デザインに役立ちます。

「本質的な問い」で子供たちを惹きつける

本書で目を引くのが「本質的な問い」の使い方です。探究学習において「問い」が重要なことは言うまでもありません。市川氏は実りある探究活動には教員の「問いかけ」がカギを握っており、子供たちが思い付きを越えた視点を獲得するきっかけになる問いが「本質的な問い」であると説明します。

例として以下のような会話を挙げています。

「この石のしましまって変だね!」という子供の問いかけに

「そうだよね、どうしてこんなしましまができたんだろう?」

という「本質的な問い」に「言いかえて」返すことが重要

これを繰り返すことで、子供に本質的な問いが内在化され、自発的に良い問いを発することができるようになるのだといいます。

長年改善を重ねた探究事例が、カリキュラムデザインの参考になる

本書に紹介されている6つの実践例は、TCSが何年もかけて練り上げてきたものです。一見すると、こんなにうまくできない、そんなに練り上げて完成度を高めていく時間はない、と思われるかもしれません。

しかし逆にいうと、TCSでも初めからうまくはいかなかったんだから、実践しながら改善していくのが探究だということでもありますし、コンピテンシーから逆算して設計されたカリキュラムの一つの完成形を見ることで、これからカリキュラム設計するときの具体例として参考になると思います。

筆者・市川力さんは高校の探究学習のアドバイザーも

市川力さんは2021年現在、一般社団法人みつかる+わかる代表理事を務められています。隠岐島前高校(島根県)の探究学習のアドバイザーなどもされており、ここに書かれている探究の本質は、小学生、高校生問わず、通用するということの証明でもあると思います。

この本で取り上げたのはTCSという国内のマイクロスクールの事例でした。逆に、海外の探究学習の現場はどうなっているのでしょうか?そのように考えた方には次の本がおすすめです。

海外の探究学習の最先端を知りたい人におすすめ「『探究』する学びをつくる」

タイトル 「探究」する学びをつくる(社会とつながるプロジェクト型学習)
著者 藤原さと
出版社 平凡社

プロジェクト型学習(PBL)で有名なアメリカの「ハイテックハイ」を紹介

アメリカ・サンディエゴにある公立高校「ハイテックハイ(HIGHTECHHIGH)」で行われているプロジェクト型学習(PBL)の紹介を主軸としながら、探究学習のあるべき姿を考察する一冊です。

経済産業省「未来の教室」事業で、このハイテックハイの教育プログラムを日本に導入した藤原さと氏によって書かれました。

*探究学習の一種としてプロジェクト型学習があります。細かな定義の説明は割愛しますが、探究的な学びという点は共通しています。いったんはほぼ同じものとして読んでいただいてかまいません。

高校探究学習のひとつの理想として語られるハイテックハイが、どのようにして生まれたのか、そこで行われている学習の特徴、具体的なカリキュラム設計の9ステップ、生徒中心の評価方法、学校組織と教員、日本の学校への応用などが本書の内容です。

高校探究学習の一つの理想像

ハイテックハイは公教育とプロジェクト型学習を両立させているのみならず、進学実績もアメリカの平均を大きく上回っています。さらに給与水準は低めにもかかわらず、ここで働きたいという教員が後を絶たないという、アメリカの高校でもひときわ目を引く存在です。それだけに世界中から視察者が絶えません。

「公正」を中心に作られる探究学習

ハイテックハイの特徴の一つは、探究的な学習を「方法論」として捉えるだけではなく、学校の指針である「公正」であることや、「実社会とつながる美しく真正な学び」という「なにを探究すべきか」という目的論にまで踏み込んで実施している点にあります。

「探究的」であればテーマは何でもいいのか、極論すれば、殺人兵器や倫理的に課題のあるクローンベイビーなどといったテーマも探究してよいのか、ということにも一考を促す指針です。

あくまでも探究は社会を幸福にする手段だとすれば、単なる方法論ではなく、常に社会の一員としての自覚を促すハイテックハイの「探究」は、学校としてどういう人物を育てたいかという明確な意志を感じさせるものです。

日本の文部科学省の掲げる「社会に開かれた教育課程」や、「持続可能な社会の創り手を育む教育」にも通じる点であるといえるでしょう。

9つのステップで探究学習を具体的に説明

ハイテックハイの具体的なカリキュラム作成のステップも紹介されています。

ハイテックハイのカリキュラム作成のステップ
1.プロジェクトの開始
2.本質的な問い
3.アイディア出し
4.批評
5.学習スキル・知識・学習態度
6.プロトタイプと修正
7.発表会
8.評価
9.振り返り

特に「発表会」と「評価」に対する考え方は、日本の探究学習の文脈ではあまり強調されないところで、その位置づけや価値に対する考え方は一読に値します。

一方で、いますぐ授業プランを作らなければならない!という時間がない方には次の本をおすすめします。

授業で即使えるワークシートがほしい人におすすめ「現場発!高校『総合探究』ワークを始めよう」

 

タイトル 現場発!高校『総合探究』ワークを始めよう(教室と社会を結ぶ「探究」ワークシート&指導書)
著者 佐藤功 編著
出版社 学事出版

実践から生まれた探究学習のカリキュラムを公開

「探究」指導に対して「自分は不慣れだ」と自認される先生たちへ向けて書かれた本です。副題に「ワークシート&指導書」とあるように、授業で使える資料が添付されています。

本やインターネット記事で探究学習の実践例を見ても、すぐに授業を行うことは難しいですよね。実際の教育現場では本には載っていない教材の準備や、細かい授業時間内の進行スケジュール、外部連携の(煩雑な)手続きなどが存在するからです。

2冊目に紹介した「高校教員のための探究学習入門」は、高校探究学習をいわばマクロの目線から俯瞰するものでした。この本は逆に、探究学習の現場で使えるワークシートや、外部連携の時に使えるテンプレートなどを使い方まで丁寧に紹介する、ミクロからのアプローチで先生を助けてくれます。

すぐに授業で使えるワークシート、教員の問いかけ例、授業の進行表まで掲載

探究の班づくりから、6種のテーマ別ワークシート(SNS/PR動画制作/プラスチックゴミ問題/食品ロスなど)、発表資料のテンプレ、校外学習の手引き、協力者へのお礼状の書き方など、先生向けにはワークごとの指導書などが細かく用意されています。

教員の問いかけ例、授業の時間内訳例まで掲載されているので、授業作りにすぐに役立ちます。

外部連携するためのメールテンプレートも掲載

探究テーマとして人気のある「地域探究」。生徒にとっても身近で自分ごとにしやすく、フィールドワークや取材を行いやすいため学習を深められるというメリットがあります。

しかしそのためには協力してくれる団体や施設、人に連絡を取って、パートナーになってもらう必要があり、ここに負担感を感じる先生もいらっしゃいます。

本書では外部連携のための依頼書のサンプルまで用意しており、外部連携のノウハウがない学校の先生でも取り組みやすくなっています。

これをひな型に、オリジナルの授業を発展させることが望ましい

本書のデメリットをあえて挙げるとすれば、すぐ使えるように具体的に作りこまれているために、教材として自由度がないことです。生徒がやりたいこと、先生が得意とすること、学ばせたい内容などによって、よりよい探究のパターンがあるはずなのに、です。

探究学習にまったく手がかりがない場合は、そのまま使用すればよいと思いますが、これをひな形としてオリジナルの授業に発展させていくことが望ましいでしょう。

まとめ

5つのテーマで探究学習について学べる本を先生のニーズ別に紹介しました。

・探究学習のフロントランナーたちの意見・実践を知りたい
・探究学習を理論的に俯瞰したい
・成功している探究の現場、コンピテンシー~授業づくりまでの、具体的なノウハウが知りたい
・海外の探究学習の最先端事例を知りたい
・授業で即使えるワークシートがほしい

まずは書籍から探究学習を学びたい方はぜひ参考にしてみてください。

さらに専門的、具体的な情報が知りたい方には論文もおすすめです。テーマ別の論文と、論文検索の仕方をまとめています。よろしければこちらもどうぞ。

>>探究学習について書かれた論文11選。カテゴリ別に紹介【調べ方も】