探究学習

視覚障がい者も健常者も当たり前に混ざり合う社会を

 

 

人間は五感による知覚の割合として80%以上の情報を視覚から得ていると言われるほど、圧倒的に目に頼っています。株式会社Criacao(クリアソン)はブラインドサッカーによる研修プログラムを通じて、目の不自由さを体験し、ブラインドサッカー(パラスポーツ:5人制サッカー)の普及に取り組んでおられます。

株式会社Criacaoより剣持様をお招きし、ブラインドサッカーを通して多様性について考えてみたいと思います。

 

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プロフィール

剣持 雅俊 様

株式会社Criacao 取締役COO・創業メンバー

2013年株式会社Criacaoを創業、経営全般、新規開拓、研修事業を統括するとともに、サッカークラブCriacao Shinjukuプレイヤー#22

2016年10月よりNPO法人日本ブラインドサッカー協会 ダイバーシティ事業部 事業部長を兼務。Criacao以前は外資系ヘッドハンティングファームに新卒入社。人材コンサルティング及び、2011年よりチームマネジメントも経験。

中央大学卒、桐蔭学園高等学校サッカー部時代に神奈川県選抜として国体出場

 

 

 

ブラインドサッカーを支援する理由

渡辺
渡辺
本日はお忙しい中ありがとうございます。 はじめに、視覚において不自由でない剣持さんが、ブラインドサッカーに携わることになったきっかけや活動の理由についてお聞かせいただけますでしょうか?

剣持 様
剣持 様
小学生の時にJリーグが始まりプロ選手に憧れサッカーを始めました。しかし、中学、高校ではサッカーを楽しむことよりも、勝つことを第一に取り組むようになり、大学に入るタイミングで一度スポーツからは離れました。 それでも、再度スポーツに関わるようになり、スポーツの価値で世の中を豊かにすることを理念とし、8年前に株式会社Criacaoを創業しました。その事業の一つであるサッカークラブCriacao Shinjukuのプレーヤー兼会社役員として人生の大半をサッカーに携わってきました。 起業をするタイミングで、ブラインドサッカーの体験会に参加させていただき、協会の理念や目の障がいについて知る機会がありました。目の不自由な方の生活、ブラインドサッカーのために、何か力になれないかと思い活動しています。

渡辺
渡辺
目の不自由な方は日本にどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

剣持 様
剣持 様
日本には約30万人強の人が視覚障がいによる身体障害者手帳を持っています。視覚障がいがあるものの障害者手帳を持っていない方を含めると、より多くの人が目の不自由を抱えて生活していると推測されます。

渡辺
渡辺
そんなにいらっしゃるとは想像以上に多い印象を持ちました。また、日本だけですと約30万人というマイノリティですが、世界規模で考えた場合に相当な人数が目の不自由さを抱えて暮らしていることになりますね。

剣持 様
剣持 様
WHOの調査によると、目の不自由さを抱えて暮らしている人が世界全体で数億人以上と言われています。最近の調査では20億人という数字も出ています(*1)。さらに、その半分以上の人達は予防できる情報がない、もしくはお金が無く治療を受けられない状況に置かれています。 視覚が奪われてしまうことで働くことができないことは、本人や家族の生活だけでなく、社会的な面から見ても大きな損失です。

渡辺
渡辺
予防し生活水準を長く保つことできたら、本人にとっても社会全体にとっても良いことですね。

剣持 様
剣持 様
日本の医療水準であれば治療可能な目の病気でも、不自由な暮らしを余儀なく送っている人が世界には大勢います。 ブラインドサッカーを通じて、目の障がいについてニュースに取り上げられたり、注目されるようになることで、より多くの人がこの問題に関心を持ってもらえるようになれば、と考えています。

 

日本全国のお子さん2万人がブラインドサッカーを体験

渡辺
渡辺
日本ブラインドサッカー協会の理念や活動についてお伺いできますでしょうか?ブラインドサッカーの認知度向上、普及に向けてどのような活動をされているのでしょうか?

剣持 様
剣持 様
日本ブラインドサッカー協会の理念はブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者も健常者も当たり前に混ざり合う社会を実現することです。 視覚障がいは後天的な病気、加齢により誰にでも起こりうる症状です。しかしながら、視覚障がい者とどのように接したら良いかわからない、という気持ちをお持ちになる方も多くいると思います。

渡辺
渡辺
そうですね、駅のホームや階段、信号のある交差点で声をかけてよいのか、迷ったことがあります。

剣持 様
剣持 様
気持ちはサポートしたいのにどうして良いかわからない、という声は少なくありません。 協会ではブラインドサッカーの選手、自治体と連携して全国の小中学校への出張授業を年間500件以上、延べ2万人の生徒さんにブラインドサッカーを通じたダイバーシティを学ぶプログラムに参加いただいています。

渡辺
渡辺
年間2万人とはすごい人数ですね。

©JBFA 

 

渡辺
渡辺
参加した生徒の皆さんはブラインドサッカー選手との交流でどのような反応を見せますか?

剣持 様
剣持 様
授業前や最初の頃は知らないからこその先入観があります。目が不自由で可哀想、少し怖い、といった感情でこれこそが壁になります。

渡辺
渡辺
目の不自由さに限らず、無知が先入観や思い込みを生じてしまうのはあることだと思います。しかも、それを自覚できていないことも少なくない気がします。

剣持 様
剣持 様
そうかもしれません。参加した生徒はブラインドサッカーを体験して、選手の凄いプレーに触れたり、自分自身が体験すること、時には一緒に給食を食べて交流が進むにつれて、怖さがなくなり、自分ができるサポートを考えるようになります。 徐々に子どもの優しさが引き出されて、最初の見えない壁が次第に無くなっていきます。スポーツを通じて、笑顔で障がいと出会えることで子供達の考え方も変わってきます。 目が不自由でもこれはできる、ここは困っている、と周りが理解できれば、声かけやサポートもどうすれば良いか相手の立場がわかるようになります。子どもたちが見せる一連の変化に少しでも社会が良くなることに貢献できている気持ちになれます。知ること、体験することが変化になります。

渡辺
渡辺
体験が変化、成長を生む、というのはそのとおりだと思います。百聞は一見にしかず、と言いますが、体験することは聞く見るをはるかに凌ぐ学習になります。

©JBFA 

 

 

熱中できるものがある人生は幸せ

渡辺
渡辺
教育も探究学習が取り入れられつつあります。教科書の問題を解くだけでなく、社会の課題をテーマにして調べたり、習った知識を組み合わせたり、最後に自身がやったこと発表する取り組みです。問いと解答が予め与えられていない点が楽しくもあり、同時に大変で難しいとも言えます。 学ぶには「理解する」「計算する」「調べる」「推測する」「論理づけする」「伝える」など様々なスキルが関わってきます。ブラインドサッカーをはじめスポーツ、探究学習を通じてスキルを養うことはもちろん、お子さん自身の興味や関心について理解する、将来の進路について考える機会になるかと思います。

剣持 様
剣持 様
もしかすると、子供達も頭では理解できている。差別と区別の違いや、当たり前に混ざり合うことの大切さも。でも自分自身が体験してみるまで、当事者からの言葉を聞くことで理屈ではなく感じて理解できることも多くあると思っています。

渡辺
渡辺
今日から駅のホームドアの設置状況が気になりそうです。もしも家族や友達が目の不自由だったならば、出かける際の安全にもっと関心を持っていただろうと思います。「カラーユニバーサルデザイン(*2)」も街の随所に取り入れられて広がっています。

剣持 様
剣持 様
私の場合も、もともとは好きでやっていたサッカーが土台としてあって、そこに目の不自由さという社会課題を知り、二つが組み合わさる舞台がブラインドサッカーでした。 別にスポーツでなくても、社会貢献でなくても良いと思います。人生は試行錯誤の連続であって順風満帆にはいきません。 好きと好奇心を大切にして、少しの勇気を出して一歩を踏み出してみてください。一生懸命やってみると、きっと熱中できるものが見つかります。熱中できるものがあるというのは幸せです。

渡辺
渡辺
本日は貴重なお話し、ありがとうございました!

 

 

*1 WHO

*2 カラーユニバーサルデザイン:多様な色覚に配慮して、多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方 

 

 

ブラインドサッカーはユニバーサルスポーツ

ブラインドサッカーは、正式名称「5人制サッカー」といい、東京パラリンピックの競技種目です(以後、5人制サッカーを用います)」。サッカー、フットサル経験はあれど、5人制サッカーについてはあまりご存知ない方も多いのではないでしょうか。

実は5人制サッカーは、「目の不自由な方もそうでない方も老若男女が一緒に同じルールで楽しめるユニバーサルスポーツ」なのです。国際大会には制限がありますが、国内大会では目の不自由でない方もアイマスクを身に着けて出場することができ、実際に目の不自由でない選手が参加されています。5人制サッカーでは、障がい者も健常者も同じルール同じフィールドでプレーすることが当たり前になっています。

©JBFA

 

音と声がけがチームワーク

視界が遮られた中でいったいどうやって足でボールを扱うのか?と疑問だと思います。5人制サッカーは「音と声がけ」が勝負を分けるスポーツです。まず、5人制サッカーのボールは転がると「シャカシャカ」と音が鳴るボールを使用し、プレーヤーはその音を基にボールの動きを追います。

声がけについては、プレーヤーとは別に3名の声がプレーをサポートします。1人目は「ガイド(コーラー)」です。ガイドは敵陣ゴールの裏側に立って主に敵陣でのオフェンス時に声がけしてプレーヤーをサポートします。

2人目はキーパーです。フィールドプレーヤーはアイマスクを身に着けて視覚をシャットアウトしていますが、唯一キーパーは晴眼者もしくは弱視者が担い、フィールドプレーヤーに向けて主に守備の声がけをします。また、キーパーはゴールスローを通じて攻撃の起点の役割を担っています。

3人目は監督です。監督は選手交代だけでなく、フィールド横ラインの外側からフィールド中央部のプレーを声がけでサポートします。その他フィールドプレーヤー同士の声がけも含めて、5人制サッカーは音、声がけを通じたチームワークを頼りにゴールを目指すスポーツです。

 

 

東京2020パラリンピック 日本代表戦のスケジュール

8月29日(日)日本vsフランス 試合開始 9:00~

8月30日(月)ブラジルvs日本 試合開始 11:30~

8月31日(火)日本vs中国 試合開始 9:00~

※いずれもNHKにて放送予定です。最新の情報は放送局のホームページにてご確認ください。

 

 


 

 

渡辺康雄(インタビュワー) 

株式会社Study Valley ビジネスアナリスト

2006年シティグループ証券株式会社に新卒入社。業務本部にて社内外の日本株決済プロジェクトを主導。2015年より1年を超える育児休業を取得し、育児に奮闘しながら並行してMBAを修了。

主夫生活を経て、2021年より株式会社Study Valley にて「STEAMライブラリー 未来の教室」運営及びメディアに従事。上智大学理工学部卒、IEビジネススクール|シンガポールマネジメント大学 Joint MBA修了 

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代表:田中
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。