探究学習で情報の収集をさせると、みんなWikipediaとか似たようなサイトから同じような情報ばかりとってきてしまうんだよ。
きちんとした情報収集のやり方のパターンとポイントを網羅的に知りたいな。
私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。
その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。
そこでこの記事では探究学習の情報の収集方法12パターンをまとめました。
探究したい課題や問いに対して、必要な情報を調べて分析し、答えをつくる、そこからまた次の探究テーマが生まれる。このサイクルを繰り返すことが探究です。
情報収集は単なる作業ではない
適切な方法で必要な情報をいち早く収集することは、探究のサイクルにとって非常に重要です。情報の収集は「課題設定」や、「整理・分析」「まとめ・表現」と違い、作業的な要素が強いと思われがちです。たしかに本を読む、ネット検索するなどは作業的です。
実は思考力・判断力が求められる情報収集
しかし、「アンケート」や「インタビュー」など、入念な準備をしなければ欲しい情報が取れない、情報が偏るなど思考力・判断力が求められるものもあります。
そのために、どのような方法があって、どんなポイントがあるのかを、まずは網羅的に知っておくことが必要です。
この記事で情報の収集のパターンとポイントを把握して、生徒が効率よく、良い情報を集められるようにサポートしてあげてください。
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探究学習の情報の収集12パターン
①アンケート調査
複数の人から情報となる意見を集めるときに用いられる方法です。簡単に回答できる質問を用意すれば、多くの情報が集められます。
ポイント
アンケートは質問する相手や質問の仕方により返ってくる回答に差が出るため、「どのような人を対象にアンケートを取るか」をしっかりと計画しておきましょう。そして質問は長くなり過ぎず、短時間で答えられる項目で揃えるのがポイントです。
じっくりとアンケート時間を設けるときは、簡単な質問から徐々に意見を問う内容に変えていくと回答者が答えやすいアンケートになります。
WebサービスやSNSの有効活用を。ただしリスクも検討
Googleフォームなど無料で使えるWebアンケートサービスもあります。これらのサービスやSNSを有効に使えば全国から回答を得ることも可能ですSNSの使用についてはイタズラや悪ふざけの回答が入るリスクもあります。利用する際にはメリットとリスクを検討する必要があります。
②フリップボード
相手に時間を取らせず、回答をもらいやすい情報収集の方法です。フリップボードを持ちながら口頭でも説明ができるので、相手に質問内容が伝わりやすくなります。
ポイント
フリップボードを使用する際は、聞きたいことはシンプルにして相手が答えやすい質問を用意しましょう。
また回答に応じてシールを貼ってもらうなど、集計表としての機能も兼ね揃えたフリップボードを作成すれば、あとで情報をまとめやすくなります。使いやすさも視野に入れながら作成するのがポイントです。
③インタビュー
専門家や有識者など豊富な知識を持った人から、直接情報を得ることができる方法です。質問項目を準備し、特定の相手と約束を取り付ける必要があるので、入念な事前準備が必要となります。
ポイント
インタビューでは、話を上手に進めるためにも生徒自身が「なぜ今回インタビューしたいのか」を説明できるようしておくことが大切です。
場当たり的な質問にならないよう、インタビューの要点をまとめたメモを事前に作成しておきましょう。
基本的にインタビューは生徒主導で行うものですが、先生のフォローも必要です。訪問先へ趣旨を伝え、当日インタビューがスムーズに進むよう段取りをつけましょう。
④電話
短期間で様々な立場の人から情報を収集できる方法です。顔が見えないので、言葉で上手に伝えられるように指導を行う必要があります。
ポイント
電話での情報収集は、目的を明確にしておくことで道筋立てて話がしやすくなります。また当日の会話の流れを予測して、どのような回答をもらっても次の質問ができるように用意しておきましょう。
そして電話は相手の顔が見えないので、正しい敬語や言葉遣いなど基本的なマナーを知っておかなければいけません。
⑤電子メール
設定した課題を解決するための情報集めに有効な方法です。「会って話すのが難しいポジションの相手から情報が得やすい」「質問も回答も文字化されているので探究学習でまとめやすい」などのメリットがあります。またインタビューや電話と違い、じっくり文章を考えてから送れることもメリットです。
ポイント
電子メールを使用する際は、相手へ失礼のないように宛先や署名の書き方など一般的なメールのマナーを覚えておきましょう。プライバシー保護の観点から、特定の個人情報を掲載するのはNGです。
電子メールは便利ですがウィルス感染のおそれもあります。知らない相手からのメールは開かないようにしましょう。
⑥図書室や図書館
探究学習で生まれた疑問の多くは、図書室や図書館で解決、またはヒントを得ることが可能です。必要に応じた書籍を検索できるようになれば、効率的に情報収集を進められます。
書籍以外にも、新聞や雑誌からも探究学習に必要な情報収集ができます。
ポイント
ポイントは素早く目的の書籍にたどり着けるようにしておくことです。あらかじめインターネットで題名や作者名、出版社等を調べておけば目的の書籍を探しやすくなります。
また図書館同士の相互貸借ができる場合があるので、積極的に図書館ネットワークを活用してみましょう。
参考記事
探究学習で「図書館」を使いこなそう。学校・地域・大学・国会図書館の利用法とメリットを解説
ネット利用可!国会図書館を探究の情報収集に活用しよう。蔵書数4500万点以上!日本の「知の宝庫」
⑦インターネット
探究学習での情報収集において非常に手軽で便利な手段です。インターネットでの検索方法を理解していれば、膨大な情報の中から必要に応じた情報を入手できます。
ポイント
インターネットは便利さゆえに学習の充実を得にくい、みんなが同じサイトを見て結論が似たり寄ったりになるなどのデメリットもあります。インタビューやフィールドワークといった調査活動と組み合わせるなどの工夫が必要です。
そしてインターネットは情報の信憑性が重要な観点です。情報を集めるときは、主観的な情報が載っている個人のサイトよりも官公庁や企業が出す一次情報などを優先して参考にしましょう。
また発表等で写真やイラストを使う場合は著作権や肖像権に注意しなければいけません。
参考記事
探究学習「情報の収集/整理・分析」に使えるリンク集【無料】
探究学習の情報収集を英語で!高校生でも使える翻訳ツール、海外データベースを紹介
⑧講演会やセミナー
専門家や有識者の体験談や研究の話を聞くことでも課題解決のための情報が得られます。
ポイント
講演会やセミナーでは、今抱えている課題解決にどうつながるのか、常に探究活動に結びつけながら話を聞きましょう。課題意識を持って情報を収集すれば、あとの探究学習にも役立ちます。
外部から講師を呼ぶ場合は、探究学習に関して理解を持った講師を選定することも重要です。話してほしい内容を明確にし、事前に十分な打ち合わせを行いましょう。
⑨フィールドワーク
現地を訪れて探索、採取、取材を行ってリアルな情報を集める方法です。
ポイント
フィールドワークは、持ち帰った後の整理・分析をスムーズに行うため「なぜその場所へ行くのか」「どんな情報を得たいのか」を明確にしておきましょう。
それぞれ探索、採取、取材の視点から考えることが大切です。
またフィールドワークでは映像や音声を記録として残せるように、ICTの機能を最大限活用しましょう。
⑩実験、観察
より確実で客観的な情報が得られる方法です。自分の仮説を裏付けることにも役立ち、説得力を持った発表ができるようになります。
ポイント
初めに何を測定するのかを明確にし、できる範囲の測定方法を考えましょう。
原因と結果について表でまとめると見やすくなり、分析・考察がしやすくなります。また実験、観察は信憑性の高いデータを得るため、何度も繰り返し測定を行い正確な平均値を求めることが重要です。
⑪論文
論文で先行研究を探し、情報収集する方法です。図書館や大学に行かなくてもインターネットで論文を検索することができます。
論文には以下のメリットがあり、うまく活用すると探究が一気に加速します。
また、関連する論文が見つかれば、その論文が参照している書籍や論文を探すなど、芋づる式に関連情報が見つかります。
ポイント
論文は長いものでは100ページを優に超え、文章や実験内容も高度で高校生には興味がある論文すべてに目を通すことは難しい場合もあります。
読み方のコツとして構成を意識して「論文の最初の要約と、最後のまとめを先に読む」ことをおすすめします。
要約とまとめに論文のポイントが書いてありますので、気になる論文の要約とまとめをまず読み、自分の知りたいことが書いてあると思ったら、本文をじっくり読む、という読み方がおすすめです。
⑪実習
「介護実習」「就業体験」のように、生徒自身の体験(見たこと、聞いたこと)を通じて情報を得る方法です。体験を通じて得られた情報は生徒の記憶に残りやすく、実感の伴った情報となります。
ポイント
実習が終わるごとに、その日気づいたことや感じたことなどを細かく記録しておけば後の情報整理に役立ちます。その際は主観的な感想と客観的な事実が混在しないように、分けて記録するのがポイントです。
⑫形式をそろえて情報を集積し蓄積
集めた情報をいつでも活用できるようにする方法です。集めた情報を上手に蓄積できれば、探究学習がしやすくなります。「毎年1年生は地域について探究する」など同じテーマを繰り返し扱う場合は、蓄積した情報を下の学年へ引き継いでいくことで、年を重ねるごとにより充実した探究学習が実現できます。
ポイント
具体的に情報の蓄積は、カードやファイル、PCのフォルダ等の利用が挙げられます。
カードで蓄積する場合は、整理しやすいように「情報収集した人、日時、場所、対象、具体的内容」などを記載しておきましょう。
ファイルはまず時系列ごとに閉じておき、あとで内容ごとに分けるようにすれば情報の整理や再構成がしやすくなります。
PCフォルダは資料の内容ごとにフォルダを作成して分けると、データ共有の際に便利です。
まとめ
情報の収集12パターンを解説しました。
情報の収集12パターン
①アンケート調査
②フリップボード
③インタビュー
④電話
⑤電子メール
⑥図書室や図書館
⑦インターネット
⑧講演会やセミナー
⑨フィールドワーク
⑩実験、観察
⑪実習
⑫形式をそろえて情報を集積し蓄積
「情報収集と言えばICTを使ってインターネット検索しよう」となりがちですが、インタビューや実習など、対面のコミュニケーション、体験を通じてしか得られない情報もたくさんあります。またそれらもICT機器を活用することで有効に展開できます。アナログとデジタルをうまく組み合わせて充実した情報収集を実現しましょう。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。