2022年から高校で必修になることで何かと話題の探究学習。
しかし探究は、日本だけで話題になっているわけではなく、すでに世界で実践されているメジャーな教育方法です。英語で探究学習は「Inquiry Based Learning」といいます。
この記事では海外での探究学習はどのようなものとされているのか、探究のプロセス、探究の種類と、日本の探究学習との違いをまとめました。
この記事で解説すること
・日本語の「探究」の意味
・英語の「探究」= 「Inquiry」の意味
・英語圏のInquiry-Based Learningの意味
・探究学習(Inquiry-based Learning)はどういうもの?
・探究は好奇心を活性化すること
・探究4つのプロセス
・自由度に基づく探究学習(Inquiry-based Learning)4つの段階
・一斉探究ーーStructured Inquiry
・管理探究ーーControlled Inquiry
・指導付き探究ーーGuided Inquiry
・自由探究ーーFree Inquiry
・日本の探究学習との違い
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探究学習は英語で「Inquiry Based Learning」
日本語の「探究」の意味
そもそも、日本語での「探究学習」は何を指すのでしょうか。耳にすることが増えましたが、人によって意外と定義にばらつきがあるのではないでしょうか。まず「探究」とは、「物事の意義・本質などをさぐって見きわめようとすること」です(参照:Goo辞書)。
似たことばで間違えやすいのは、一文字違いの「探求」です。探求には「ものを得ようとしてさがし求めること。さがし出して手に入れようとすること」という意味があります。
宝物や失くしものを求める「探求」は、物事の本質にたどりつくための「探究」とは似て非なるものです。
まとめると、「探究」とは未知の物事を明らかにするために観察したり調査したり調べたり考えたりして、事実・真理・意義・本質を明らかにする行為です。また、そのための最良のやり方を探す行為を指すこともあります。
つまり生徒にとっての「探究学習」とは、探究に必要な知識や技能を習得することでもあり、探究を通して未知の物事について学ぶことでもあります。
最新の高等学校学習指導要領でも「探究の過程を総合的な探究の時間の本質と捉え、中心に据える」と書かれています。その過程をたどる生徒のあるべき姿は以下の図に表わされています。
出典:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編
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英語の「探究」= 「Inquiry」の意味
つぎに、goo辞書の和英検索で「探究」に対応する英単語を調べると「inquiry」と出てきました。Inquiryにはいくつかの意味がありますが、教育や研究の文脈では「事実[情報、知識]を求めること、調査、探究、研究」を指すようです。
日本語では、「探究」とは「未知の物事を明らかにするために観察したり調査したり調べたり考えたりして、事実・真理・意義・本質を明らかにする行為」であるとしました。
英語でも日本語でも、辞書の意味においては「探究」の意味はそう変わらないようです。
英語圏のInquiry-Based Learningの意味
では「探究学習」は英語でなんというのでしょうか。同様に調べると「Inquiry-based learning」というそうです。(イギリス英語圏ではEnquiry-based learningといい、同じ意味で使われます)
Basedは「基づく」、learningは「学習」ですので、全部合わせると「探究に基づいた学習」が直訳にあたります。
ちなみに日本でも導入が進んでいる「国際バカロレア」(IB)という国際的なカリキュラムがあります。IBでは生徒が目指す「学習者像」を掲げており、その特徴のひとつに「探究する人(英語:Inquirerers)」が含まれています。
世界的な教育の流れとして「探究」と「学習」はもはや切り離せない関係として語られています。
参考資料:IBの学習者像
参考資料:IB learner profile
探究学習(Inquiry-based Learning)はどういうもの?
英語圏の教育現場ではどのように探究学習を展開しているのか「探究学習とは一体なんなのか?(原題:What the Heck Is Inquiry-Based Learning?)」という記事を参考に考察します。
探究は好奇心を活性化すること
これまで「探究」の言葉の定義でも見てきたように、探究学習は問いや課題から始まるという考え方が一般的です。ところが、それでは不十分だそうです。
というのも、問いも課題も生徒の「好奇心」を起点にして始まるからです。「好奇心」こそが探究の出発点であり、推進力でもあります。
「新しいことを学ぶ」「今までと違うものの見方をする」「新しいやり方を考える」ーーこうしたことが生徒にとって楽しくてエキサイティングだと感じられる環境づくりやアプローチが先生の腕の見せどころです。
生徒が「この問いに答えたくてたまらない」と思えるように、生来の好奇心を効果的に刺激することがその後の探究プロセスの進めやすさにもつながります。
探究4つのプロセス
好奇心を出発点にした探究学習プロセスは、つぎの4つの段階をたどります。
およそ文科省の図に沿っていますね。
このように段階にわけると単純なプロセスに見えますが、実際にはすごく複雑なことが起きています。たとえば質問を立てる、観察する、調査をする、実験方法を考える、データ収集のための器具を考案・製作する、データを収集、分析、解釈する、考えられる説明をまとめる、将来の研究のための予測を立てる、などが同時進行で行ったり来たりしながら進んでいきます。
自由度に基づく探究学習(Inquiry-based Learning)4つの段階
当然ながら、生徒には最初から探究に必要なスキルや経験が備わっているとは限りません。
また、生徒によってもできることにばらつきがあります。
そこで参考になるのが、「自由度」に基づく探究学習の捉え方です。
「探究型学習を授業に取り入れる(原題:Bringing Inquiry-Based Learning Into Your Class)」という記事を書いたTrevor MacKenzieさんは、生徒に与えられた自由度別に探究学習を4つに分けて説明します。
一斉探究ーーStructured Inquiry
一斉探究は、探究学習の入門編のような形態です。先生の指示に従って、クラス全員で一つの問いに取り組みます。問いも、問いに答えるために参照するリソースや発表方法は先生が決めます。生徒個人の自由度は低いですが、探究プロセスを全員でたどることができます。
管理探究ーーControlled Inquiry
管理探究では、少しだけ生徒の自由度が増えます。先生が設定する問いや参照リソースの中で生徒は探究プロセスを練習します。
指導付き探究ーーGuided Inquiry
さらに自由度が増します。先生が問いを設定しますが、生徒自身で答える方法や参照リソース、さらに発表方法を考えます。
自由探究ーーFree Inquiry
自由探究は、探究学習のなかでも一番自由で上級向けの形態です。生徒は自分で問いを立て、調査し、発表します。ここまでくると、生徒が自身の学習を主体的に設計して実行しているといえます。
このように、「探究学習」と一口にいっても先生がどこまで管理するか、生徒の自由度はどのくらいか、ということによって実態も結果も大きく異なります。
MacKenzieさんは、水泳の初心者がプールの浅いところから水や泳ぎに慣れていって最後には深いところに行けるのと同じように、探究学習も入門編の一斉探究から始めて自由探究を目指すべきといいます。
一斉探究、管理探究、指導付き探究、自由探究という順を追った進め方は、学習の足場がけ(scaffolding)の一例です。先生は各段階で最低限習得すべき知識や技能を生徒に引き継ぎ、学習者としての裁量を徐々に生徒に譲渡していきます。
この考え方は、日本の学校でも適用できる考え方ではないでしょうか。自由探究は理想的な最終形態です。それだけに高次的な思考力や探究スキルが要求されます。いきなり目指すのではなく、一斉探究から少しずつ足場を外していくやり方で、生徒のスキルや思考力や経験を育てていくのが得策です。
日本の探究学習との違い
ここまで、海外の探究学習を見てきました。では、日本の探究学習の特徴はどうでしょうか。それは一回の探究学習で完結させず、それが次の探究へつながっていくという「探究サイクル」を重視していることです。学習指導要領には次のようにあります。
生徒は,①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,②そこにある具体的な問題について情報を収集し,③その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。
*強調は編集部
引用:1 総合的な探究の時間の特質に応じた学習の在り方(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)
「更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく」というところがポイントです。図でもらせん状のイラストで表されています。一つの探究で完結するわけではなく、そこから新しい好奇心や問題意識が生まれ、次の探究へ合点的につながっていく、その学習の連なり「探究のサイクル」を重視しています。
これは、VUCAと呼ばれる不安定な時代において、与えられた問いの答えを探すのではなく自ら問題を発見・設定して、答えを作っていく、つまり探究し続ける能動的な学修者像を想定しているためです。
少し前から日本ではアクティブ・ラーニングの導入が叫ばれてきました。アクティブラーニングの目的は能動的学修者(アクティブラーナー)を育てることです。アクティブラーニングの発展形である探究学習は、一つの学びで完結せず「探究のサイクル」を回し続ける人材の育成を目指している点で特徴的だといえるでしょう。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。