探究学習

【高校指導要領】総合的な探究の時間のポイントを解説。総合学習との違いも

この記事では2022年から高校で必修となる「総合的な探究の時間(探究学習)」について、学習指導要領のポイントを解説します。

「総合的な学習の時間(総合学習)」との違いを踏まえて解説しますので、2つの学習の違いを知りたい人にも読んでいただきたい記事です。

最初に、総合的な学習の時間との、目標や計画における違い比較を通じて「探究学習」で重視されているポイントを以下の観点から解説します。

比較する指導要領の項目
● 目標
● 各学校において定める目標及び内容
● 指導計画の作成と内容の取扱い

「探究学習」に特徴的な観点
● 自己と関連づけられた課題
● 社会との接続
● 横断的な学び
● 4プロセスの明示
● 探究サイクルの重視

「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」との違いですが、変わった点はほとんどが文言の追加となっています。

「総合的な学習の時間」の発展形が「総合的な探究の時間」なので当然と言えば当然ですね。以下では、指導要領に追加された点を中心に紹介、解説していきます。

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目標の違い

まず「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」で何が変わったのか、その点を見ていきましょう。

最も重要である「目標」の違いから見ていきます。

求められる学習がより高次なものへ変化

一言でいうと、求められる学習がより高次なものへと変化しています。
言い換えると、自己のことをメタ的、内省的に捉えている生徒が学習者としてイメージされているといってもいいかもしれません。

新しい指導要領の主な追加点を下記にまとめました(編集部によって要点をまとめています。詳細は原文をお読みください。原文は章末に掲載)。

「探究学習」になって追加された点(要約)
● 探究の過程を通じて、生徒が探究の意義や価値そのものを理解することを目指すこと
● 探究の問いは実社会や実生活と自己との関わりから見出すこと
● 4つのプロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)を経ること
● 新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養うこと

4つのプロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)を明示

探究を進めるための4つのプロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)を明示しています。これらは資質・能力の育成でも具体的に取り上げられます。

自己と関連づけられた課題、社会との接続が強調されている

探究する「問い」について、総合的な学習の時間では「学習を通じて自己の在り方生き方を考える」となっていました。学習が手段で、自己について考えることが目的です。

総合的な探究の時間では、「実社会や実生活と自己との関わりから見出」した問いに取り組み「新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養うこと」を目指しています。

学習が手段であることには変わりありませんが、その時点で自己をメタ的、内省的に捉えていることが前提となっています。そして新しい価値創造、よりよい社会の実現を養う態度を育成するという、より高次な目的となっています。

「目的」の原文比較

引用:高等学校学習指導要領比較対照表【総合的な探究の時間】

総合的な探究の時間(平成30年告示)

第1目標
探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自
己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質
・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究の過程において,課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け,
課題に関わる概念を形成し,探究の意義や価値を理解するようにする。
(2) 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,
情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,
新たな価値を創造し,よりよい社会を実現しようとする態度を養う。

総合的な学習の時間(平成21年告示)

第1 目 標
横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,
主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにする。

各学校において定める目標及び内容

次に「各学校において定める目標及び内容」について見ていきます。

具体性が求められる

まず、探究学習を通じて育成を目指す資質・能力について、かなり具体的に示すことを求めるようになりました。

社会との接続を重視

また、課題について「現代的な諸問題」追加されていたり、資質・能力に関して「社会の中で生きて働く」という言葉が入っていたりと、ここでも「社会との接続」が意識されていることが伺えます。

横断的な学び

そして「他の教科との関連」「地域や社会との関わり」「教科・科目等を越えた全ての学習の基盤」のような記述からわかるように、より「横断的な学び」となることが求められるようになりました。

横断的な学びを担任の先生一人で実現する事は困難です。そのためには、学校を挙げた協力体制が不可欠。また、地域や外部講師・外部組織と連携することなども検討した方がいいかもしれません。

新しい指導要領の主な追加点を下記にまとめました(編集部によって要点をまとめています。詳細は原文をお読みください。原文は章末に掲載)。

「探究学習」になって追加された点(要約)
● 学校の目標を踏まえて、育成を目指す資質・能力を示すこと
● 他の教科との関連を重視すること
● 地域や社会との関わりを重視すること
● 探究課題とそれを通して育成を目指す資質・能力を示すこと
● 探究課題について、国際理解、情報、環境、福祉・健康など加えて「現代的な諸課題に対応する」を追加
● 育成を目指す知識及び技能は、社会の中で生きて働くものであること
● 育成を目指す思考力、判断力、表現力等は4つのプロセスを通じて発揮され、未知の状況でも活用されるものであること
● 育成を目指す資質・能力は教科・科目等を越えた全ての学習の基盤となるものであること

各学校において定める目標及び内容の比較

引用:高等学校学習指導要領比較対照表【総合的な探究の時間】

総合的な探究の時間(平成30年告示)

第2 各学校において定める目標及び内容
1 目 標
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な探究の時間の目標を定める。
2 内 容
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な探究の時間の内容を定める。
3 各学校において定める目標及び内容の取扱い各学校において定める目標及び内容の設定に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 各学校において定める目標については,各学校における教育目標を踏まえ,総合的な探究の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すこと。(2) 各学校において定める目標及び内容については,他教科等の目標及び内容との違いに留意しつつ,他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視すること。
(3) 各学校において定める目標及び内容については,地域や社会との関わりを重視すること。
(4) 各学校において定める内容については,目標を実現するにふさわしい探究課題,探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力を示すこと。
(5) 目標を実現するにふさわしい探究課題については,地域や学校の実態,生徒の特性等に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の進路に関する課題などを踏まえて設定すること。
(6) 探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力については,次の事項に配慮すること。
ア 知識及び技能については,他教科等及び総合的な探究の時間で習得する知識及び技能が相互に関連付けられ,社会の中で生きて働くものとして形成されるようにすること。
イ 思考力,判断力,表現力等については,課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現などの探究の過程において発揮され,未知の状況において活用できるものとして身に付けられるようにすること。
ウ 学びに向かう力,人間性等については,自分自身に関すること及び他者や社会との関わりに関することの両方の視点を踏まえること。
(7) 目標を実現するにふさわしい探究課題及び探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力については,教科・科目等を越えた全ての学習の基盤となる資質・能力が育まれ,活用されるものとなるよう配慮すること。

総合的な学習の時間(平成21年告示)

第2 各学校において定める目標及び内容
1目標
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の目標を定める。
2内容
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な学習の時間の内容を定める。
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 全体計画及び年間指導計画の作成に当たっては,学校における全教育活動との関連の下に,目標及び内容,育てようとする資質や能力及び態度,学習活動,指導方法や指導体制,学習の評価の計画などを示すこと。
(2) 地域や学校,生徒の実態等に応じて,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習,探究的な学習,生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うこと。
(3) 第2の各学校において定める目標及び内容については,日常生活や社会とのかかわりを重視すること。
(4) 育てようとする資質や能力及び態度については,例えば,学習方法に関すること,自分自身に関すること,他者や社会とのかかわりに関することなどの視点を踏まえること。
(5) 学習活動については,地域や学校の特色,生徒の特性等に応じて,例えば国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動,生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について知識や技能の深化,総合化を図る学習活動,自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動などを行うこと。
(6) 各教科・科目及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的に働くようにすること。
(7) 各教科・科目及び特別活動の目標及び内容との違いに留意しつつ,第1の目標並びに第2の各学校において定める目標及び内容を踏まえた適切な学習活動を行うこと。
(8) 各学校における総合的な学習の時間の名称については,各学校において適切に定めること。
(9) 総合学科においては,総合的な学習の時間の学習活動として,原則として生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について知識や技能の深化,総合化を図る学習活動を含むこと。
2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 第2の各学校において定める目標及び内容に基づき,生徒の学習状況に応じて教師が適切な指導を行うこと。
(2) 問題の解決や探究活動の過程においては,他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や,言語により分析し,まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにすること。
(3) 自然体験や就業体験活動,ボランティア活動などの社会体験,ものづくり,生産活動などの体験活動,観察・実験・実習,調査・研究,発表や討論などの学習活動を積極的に取り入れること。
(4) 体験活動については,第1の目標並びに第2の各学校において定める目標及び内容を踏まえ,問題の解決や探究活動の過程に適切に位置付けること。
(5) グループ学習や個人研究などの多様な学習形態,地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制について工夫を行うこと。
(6) 学校図書館の活用,他の学校との連携,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携,地域の教材や学習環境の積極的な活用などの工夫を行うこと。

指導計画の作成と内容の取扱い

次に「指導計画の作成と内容の取扱い」について見ていきます。こちらも多くの項目が追加されています。

目を引くところとしては、「主体的・対話的で深い学び」の実現を図る、ということが明記されている点、ICT活用の流れを汲んでか、情報や情報手段の活用について追加された点、障がいのある生徒への配慮が明記された点でしょうか。

4つのプロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)についての具体的な記述も見られます。

新しい指導要領の主な追加点を下記にまとめました(編集部によって要点をまとめています。詳細は原文をお読みください。原文は章末に掲載)。

「探究学習」になって追加された点(要約)
● 「主体的・対話的で深い学び」の実現を図ること
● 探究の見方・考え方を働かせること
● 創意工夫を生かした教育の充実を図ること。具体的には、以下
○ 教科・科目等の枠を超えた横断的・総合的な学習を行う
○ 生徒の興味・関心等に基づく学習を行う
● 探究課題には生徒の多様な課題に対する意識を生かすこと
● 資質・能力の育成のおいては、言語能力、情報活用能力など全ての学習の基盤となる資質・能力を重視すること
● 障害のある生徒への指導内容や指導方法の工夫を行うこと
● 生徒が自分で課題を発見する過程を重視すること
● 学習過程では、比較、分類、関連付けなどの技法が自在に活用されること
● コンピュータなど情報手段を主体的に選択し活用できるようにすること
● 進路・キャリア探究では自己を理解し、将来の在り方生き方を考えられるよにすること

「指導計画の作成と内容の取扱い」の比較

引用:高等学校学習指導要領比較対照表【総合的な探究の時間】

総合的な探究の時間(平成30年告示)

第2 各学校において定める目標及び内容
1 目 標
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な探究の時間の目標を定める。
2 内 容
各学校においては,第1の目標を踏まえ,各学校の総合的な探究の時間の内容を定める。
3 各学校において定める目標及び内容の取扱い
各学校において定める目標及び内容の設定に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 各学校において定める目標については,各学校における教育目標を踏まえ,総合的な探究の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すこと。
(2) 各学校において定める目標及び内容については,他教科等の目標及び内容との違いに留意しつつ,他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視すること。
(3) 各学校において定める目標及び内容については,地域や社会との関わりを重視すること。
(4) 各学校において定める内容については,目標を実現するにふさわしい探究課題,探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力を示すこと。
(5) 目標を実現するにふさわしい探究課題については,地域や学校の実態,生徒の特性等に応じて,例えば,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域や学校の特色に応じた課題,生徒の興味・関心に基づく課題,職業や自己の進路に関する課題などを踏まえて設定すること。
(6) 探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力については,次の事項に配慮すること。
ア 知識及び技能については,他教科等及び総合的な探究の時間で習得する知識及び技能が相互に関連付けられ,社会の中で生きて働くものとして形成されるようにすること。
イ 思考力,判断力,表現力等については,課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現などの探究の過程において発揮され,未知の状況において活用できるものとして身に付けられるようにすること。
ウ 学びに向かう力,人間性等については,自分自身に関すること及び他者や社会との関わりに関することの両方の視点を踏まえること。
(7) 目標を実現するにふさわしい探究課題及び探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力については,教科・科目等を越えた全ての学習の基盤となる資質・能力が育まれ,活用されるものとなるよう配慮すること。

総合的な学習の時間(平成21年告示)

第3 指導計画の作成と内容の取扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 全体計画及び年間指導計画の作成に当たっては,学校における全教育活動との関連の下に,目標及び内容,育てようとする資質や能力及び態度,学習活動,指導方法や指導体制,学習の評価の計画などを示すこと。
(2) 地域や学校,生徒の実態等に応じて,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習,探究的な学習,生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うこと。
(3) 第2の各学校において定める目標及び内容については,日常生活や社会とのかかわりを重視すること。
(4) 育てようとする資質や能力及び態度については,例えば,学習方法に関すること,自分自身に関すること,他者や社会とのかかわりに関することなどの視点を踏まえること。
(5) 学習活動については,地域や学校の特色,生徒の特性等に応じて,例えば国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動,生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について知識や技能の深化,総合化を図る学習活動,自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動などを行うこと。
(6) 各教科・科目及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的に働くようにすること。
(7) 各教科・科目及び特別活動の目標及び内容との違いに留意しつつ,第1の目標並びに第2の各学校において定める目標及び内容を踏まえた適切な学習活動を行うこと。
(8) 各学校における総合的な学習の時間の名称については,各学校において適切に定めること。
(9) 総合学科においては,総合的な学習の時間の学習活動として,原則として生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について知識や技能の深化,総合化を図る学習活動を含むこと。
2 第2の内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 第2の各学校において定める目標及び内容に基づき,生徒の学習状況に応じて教師が適切な指導を行うこと。
(2) 問題の解決や探究活動の過程においては,他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や,言語により分析し,まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにすること。
(3) 自然体験や就業体験活動,ボランティア活動などの社会体験,ものづくり,生産活動などの体験活動,観察・実験・実習,調査・研究,発表や討論などの学習活動を積極的に取り入れること。
(4) 体験活動については,第1の目標並びに第2の各学校において定める目標及び内容を踏まえ,問題の解決や探究活動の過程に適切に位置付けること。
(5) グループ学習や個人研究などの多様な学習形態,地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制について工夫を行うこと。
(6) 学校図書館の活用,他の学校との連携,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携,地域の教材や学習環境の積極的な活用などの工夫を行うこと。

「探究サイクル」の重視

さて、「総合的な学習」と「総合的な探究」の指導要領の主な違いを見てきました。

● 自己と関連づけられた課題
● 社会との接続
● 4プロセスの明示
● 横断的な学び
● 探究サイクルの重視

という観点の中で「自己と関連づけられた課題」「社会との接続」「4プロセスの明示」「横断的な学び」については、ここまででよくお分かりいただけたのではないかと思います。残る「探究サイクル」について、「4プロセス」についても触れながら解説したいと思います。

探究は4つのプロセス(課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現)で完結すると思われがちですが、指導要領の記述を見ると、それは必ずしも正確ではありません。そこには「探究のサイクルを発展的に繰り返す」とあり、イラストを見ても探究サイクルが繰り返されていくらせん状の発展が強調されていることがわかります。

生徒は,①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,②そこにある具体的な問題について情報を収集し,③その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。要するに探究とは,物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのことである。

*強調は編集部
引用:1 総合的な探究の時間の特質に応じた学習の在り方(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)

探究のイメージ図ではらせんであらわされ「自らの考えや課題が新たに更新され,探究の過程が繰り返される。」と記されています。

ここでは探究学習は一回やれば終わりなのではなく、一つの探究が新しい問題設定へとつながり、次の探究への導入となることを述べています。

サイクルを作るには振り返りが有効

「サイクル」を上手く作るには、学習後に振り返りを行うことも有効です。振り返りには以下のような効果があります。

「振り返り」3つのメリット
「評価」の外側にある成長や伸びしろを自覚できる
学んだ知識・理解・感情などを整理できる
メタ認知力を鍛えられる

特に、学んだことの整理を行うことは、探究の結果、未解決のままの課題や新たに生まれた課題が明確になります。また、学習を終えてメタ認知的に自分を捉えなおしたときに、自分にとっての課題の意味や重要性もより明らかになるでしょう。これらのプロセスが次の探究サイクルへつながるヒントになります。時には、先生のサポートも必要になるでしょう。

学習の状況についての価値付けや方向付け,課題の解決や探究活動が一段落したときの新たな方向性の提示や次の課題の設定なども,必要に応じて教師が行うことが考えられる。

*強調は編集部
引用:第2節 内容の取扱いについての配慮事項(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)

探究学習が一段落したときにそれで満足せず、さらに次の課題へ向かう方向性を示す先生の役割について触れています。ここからも新しい指導要領が「探究サイクル」を強く意識したものであることが分かります。

まとめ

2022年から高校で必修となる「総合的な探究の時間(探究学習)」について解説しました。「総合的な学習の時間(総合学習)」との違いを学習指導要領の以下の章を比較して、

● 目標
● 各学校において定める目標及び内容
● 指導計画の作成と内容の取扱い

「探究学習」に特徴的な観点として下の5つを見出しました。

● 自己と関連づけられた課題
● 社会との接続
● 横断的な学び
● 4プロセスの明示
● 探究サイクルの重視

探究学習を導入・実施する際の参考にしていただければ幸いです。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。