探究学習

探究に最適な学習環境、どう整える?3つの事例を元に解説

探究学習に生徒が意欲的に取り組み、そこでさらに学習を深めていくためには学習環境が適切に整えられている必要があります。

探究学習は自分の教室の外で学習を行う機会が多くなります。例えば、図書館・PCルームの利用、学級や学年の枠を超えてのグループワーク、大人数での発表などです。すべて教室内で完結させることもできますが、校内にそれらの活動を適切に行うための学習環境があるとベターです。

この記事では探究に適した環境を校内に整備した3つの事例を紹介します。自校にあった環境整備の方法の参考にしてください。

各学校でねらいや学習活動が異なるため、一律に同様の環境整備をしてもうまくいかない場合もあります。したがって、学習環境を整える前提として、それについて活発に議論できるワーキンググループ(校内の探究推進委員会といったプロジェクトチームや会議体など)が設けられているとなお良いでしょう。

○目次
学習環境の整備の実践事例
・事例1:総合的な学習の時間に使用することを主目的として余裕教室を整備した例
学級横断、学年横断的な探究にも対応
・事例2:多様な学習活動に応じたオープンスぺースの有効活用の例
活発に意見交換できるワーキンググループが重要
・事例3:学習・情報センターとしての学校図書館の例
まとめ

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学習環境の整備の実践事例

以下三つの整備事例について紹介します。それぞれ、空き教室や既存の場所を学内の場所を総合的な学習の時間用に整備しています。

事例1:総合的な学習の時間に使用することを主目的として余裕教室を整備した例
事例2:多様な学習活動に応じたオープンスペースの有効活用の例
事例3:学習・情報センターとしての学校図書館の例

事例1:総合的な学習の時間に使用することを主目的として余裕教室を整備した例

空き教室を探究の授業に使うことを想定した「多目的室」に整備した事例です。この多目的室の整備は、校内に組織された「総合的な学習の時間推進委員会」が自校の学習内容等を考えデザインしました。

整備にあたっては、以下のような工夫・手配を行いました。

・床カーペット張り
・ICT機器整備のための予算
・一部PCをPC室から移動

上記のための予算を教育委員会から配当された他は、ホワイトボードなど校内にある備品、教材を集める等の工夫がされています。

(図1:K高校空き教室配置例 文部科学省資料 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/08/01/1338358_6.pdf より抜粋)

学級横断、学年横断的な探究にも対応

大人数を収容できるスペースは、学級横断、学年横断的な探究にも対応でき、大人数への講演や、発表などに利用可能です。

例えば、探究のまとめ・表現で人気のあるポスターセッションは会場の設置に時間がかかりますが、このような探究の時間のための専用スペースがあれば会場運営もスムーズに行うことができます。

参考記事
探究学習のまとめ・表現の12パターンを解説

この学校のように空き教室がない学校でも、次の事例で紹介するように、オープンスペースの活用も考えられます。

事例2:多様な学習活動に応じたオープンスぺースの有効活用の例

こちらは各学年2学級の小規模校での事例です。校舎2階・3階の室前にあったオープンスペースを総合の授業用に活用するために整備しています。

普段は部活動などで活用されることが多かった場所を総合的な学習の時間のコーディネーターであった教頭が授業への活用を見込んでこのスペースの活用が提案されました。

この活用については、推進委員会でさまざまなアイデアが出されています。

・無線LANのPCの設置
・外部講師用のデスクの設置
・資料用のブックトラック設置 など

各学年の学習活動の特性を踏まえ、適切にレイアウトを変更しながら活用されています。以下の図2はそのレイアウトの一例です。

(図2:L高校オープンスペース配置例 文部科学省資料 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/08/01/1338358_6.pdf より抜粋)

活発に意見交換できるワーキンググループが重要

ポイントは、校内に総合的な学習の時間の「推進委員会」が組織されており、活発にアイデアを出して意見交換できる体制が整っていたことです。縦割りに縛られないワーキング・グループの存在は学校全体で取り組む必要がある探究学習において重要です。

事例3:学習・情報センターとしての学校図書館の例

調べ学習を効果的に行うために学校図書館を整備した事例です。こちらの高校は大規模校であるため、調べ学習で図書館を活用する際に2学級入れるだけのレイアウトが必要でした。それだけの人数が入れて、調べ学習に活用しやすいレイアウトが検討され、以下のような形になりました。

館内には落ち着いて個別学習ができる「調べ学習・読書スペース」とグループごとの話し合いや作業をするための「グループ学習スペース」を作りました。

(図3:L高校オープンスペース配置例 文部科学省資料 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/08/01/1338358_6.pdf より抜粋)

まとめ

以上、文部科学省の資料から三つの環境整備の事例を紹介させていただきました。これらの事例を見ていると、調べ学習用の設備の整備を積極的に進めている高校が多いようですね。
自校の規模感や学習環境に必要なこと、また自校の活かせそうな機関や環境などを踏まえて、最適な整備を検討してみてください。

*この記事は総合的な学習の時間に関する文部科学省の資料を、探究学習に臨む先生向けにわかりやすく解説したものです。資料をもとに部分的に簡略化、加筆、言い換えなどを行っています。元資料をご覧になりたい方は「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)」第1編第3章-1をご確認ください。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。