探究学習

「古典探究」とは?行う目的や指導するポイントなどを詳しく解説

2018年に高等学校指導要領が改訂されたことで、「古典探究」が新たに設けられました。
古典探究は、これまでの古典Bをベースとした選択科目となっているのが特徴です。

探究学習自体は2022年からの導入が予定されていて、古典探究についてもこれまでとは異なる指導方法が求められています。

まだまだ情報の少ない古典探究。生徒はもちろん、指導する立場の先生にとっても、本格的に開始される前に理解を深めていきたいと考えているのではないでしょうか。

この記事では、これから古典探究の理解を深めたい先生向けの記事です。できる限りわかりやすく解説するので、ぜひこれからの指導に役立ててください。

目次
古典探究とは
古典探究の目的
・古典で使われる語句を理解する
・国の文化について理解する
・現代との変化を理解する
・先人の考え方について理解する
古典探究で得られる資質と能力
・知識及び技能
・思考力・判断力・表現
古典探究で必要な言語活動
・発表・議論
・朗読
・文章によるまとめ
古典探究の指導ポイント
・古文と漢文どちらも取り上げる
・声に出すように促す
・近代の作品も取り上げる
古典探究事例2選
・清少納言への異なる評価を読んでその背景を探究する
・絵画を利用して伊勢物語を理解する
まとめ

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古典探究とは

古典探究とは、日本の言語文化に対する理解を深める4単位の選択科目です。
平成30年度告示の学習指導要領では、選択科目は「古典探究」のほか「倫理国語」「文学国語」「国語表現」があります。

他の選択科目は「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」などで構成されていますが、古典探究では「読むこと」に焦点を当てているのが特徴です。

古典を通じて、伝統と文化からその重要性を理解し、古典の意義や価値について探究する科目となっています。

参考記事
>【解説あり】古典探究の事例4つを紹介

古典探究の目的

古典探究を学ぶ目的はいくつかありますが、大きく4つに分けることができます。


それぞれについて詳しく見ていきましょう。

古典で使われる語句を理解する

これまでと同じように、古典で使われる語句の意味や使い方を理解するという目的があります。
できるだけ多くの語句を覚えることで、語感を磨くことも可能です。

文全体の構成を理解し、順序を正しく並べる能力も古典探究では期待されています。
また枕詞、掛詞、序詞といった修辞法も古典探究には含まれているため、表現の技法も身につくでしょう。

語句の理解は、従来の学習と共通点が多く似通っているのが特徴です。

国の文化について理解する

古典探究は、国の文化について理解することも目的としています。
古典を読むことで、その時代の人間や社会、自然等に対する捉え方や感じ方を理解できるようになります。

例えば「伊勢物語」や「枕草子」を読めば、平安時代の人間関係や当時の信仰についてなどが理解され、先人たちの考え方に共感できるようになるでしょう。

そして古典を通じて国の文化について理解を深めれば、思考力や想像力が培われます。
古典探究では語句や文法に留まらず、このような文化についても触れる機会があるのです。

現代との変化を理解する

現代との変化を理解するというのも、古典探究の目的の一つです。

古典も日本語であることに間違いはありませんが、長い年月を経て変化を遂げた語句が数多く存在します。

例えば「ありがたし」「あからさまなり」「やがて」「おこなひ」「うつくし」などは、今と違う意味で使われている言葉として有名です。

古典の言葉と現代の言葉を比較し、その変化に関して理解したことを論文にまとめるのも古典探究の学習内容に含まれています。

先人の考え方について理解する

さらに古典探究には、先人の考え方を理解するという目的があります。

当時の人々の宗教や道徳、死生観など今と共通する部分もあれば異なる部分もあるでしょう。
これらの学習を通じて、生徒自身がものの捉え方、感じ方、考え方を見つめ直すことができるようになるのです。

さらに先人の思いに共感、もしくは疑問に感じることが増えるほど思考力や想像力を伸ばすことができます。
古典の作品や文章には、その時代に生きた先人の考え方や感情が詰まっているのです。

古典探究で得られる資質と能力

古典探究では得られる資質と能力が2つあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

知識及び技能

古典探究により知識と技能が身につきます。

現代とは異なる意味の語句や、ほとんど使うことが無くなった言葉などあらゆる言葉について理解を深められます。

技能は古典を読み解く力です。
読み解く力が備われば独特の言葉の響きやリズムを感覚的に受け取れるようになり、描写や表現を味わうことができるでしょう。

知識と技能が培われることで、生徒は古典に対する抵抗がなくなり積極的な姿勢で読み進めることができます。

思考力・判断力・表現力

古典探究をすることで、思考力・判断力・表現力といった3つの力が身につきます。
古典探究では文章を現代語訳するだけに終わらず、文章全体の組み立てや展開方法についても理解を深める必要があるのです。

先生は、生徒に対し読むことの指導以外にも目を向ける必要があります。
思考力・判断力・表現力を培うために古典作品を読み終わったあとの発表や俳句の創作などについても手広くフォローしなければいけません。

古典探究で必要な言語活動

古典探究で必要なのが言語活動です。言語活動には、実際に古典作品を読み上げたり俳句について生徒同士でディスカッションを交わしたりということがあります。


ここでは、古典探究における言語活動について具体的に見ていきましょう。

発表・議論

古典探究では、古典の作品について感じたことや疑問に思ったことなどを発表・議論し合います。また読み比べたことで発見された共通点や相違点などについて意見を交わすこともあるでしょう。

生徒自身が情報収集を行って発表をすれば、学びを他者にアウトプットできるようになります。発表を行ったあとは生徒自身に解釈の振り返りをさせることで、メタ認知を促進させてあげるようにしましょう。

朗読

古典探究では「読むこと」に焦点が当てられているため、朗読が効果的です。声を出して文章を読み進めることでより理解が深まり、古典独特の響きやリズムに親しみやすくなります。

朗読を続ければ、そのときの先人の思いに共感することがあるかもしれません。共感は古典の世界のイメージを広げるために必要不可欠です。

朗読のほか、音読や暗唱なども行えばさらに古典に興味・関心を持てるようになり、自ら学ぼうという姿勢も生まれるでしょう。

文章によるまとめ

声に出すだけでなく、文章によるまとめも古典探究では言語活動として必要な要素です。

先生は、古典探究を通じて気づいたことや考えたことを短い論文にまとめるように生徒へ指導を行いましょう。実際に文字に書き起こしてまとめることで、生徒は達成感を味わうことができ古典に対してさらに親しみを持てるようになります。

文章によるまとめは、資料を参考にする必要があります。資料探しは図書館やインターネット検索のほか、可能であれば情報担当教員や司書教諭への協力を仰ぎましょう。

古典探究の指導ポイント

古典探究で必要な言語活動を紹介しましたが、実際に指導を進めるとなれば何から始めれば良いかわからない先生も多いと思います。

古典探究の指導ポイント
・古文と漢文どちらも取り上げる
・声に出すように促す
・近代の作品も取り上げる

ここでは古典探究における指導ポイントを順に詳しく見ていきましょう。

古文と漢文どちらも取り上げる

古典探究は、古典だけでなく漢文も学習に取り入れるようにしましょう。漢文にも学習に役立つ史伝や詩文など多種多様な作品が数多く存在するからです。

例えば「論語」や「孟子」など、従来の学習で取り上げていた作品などがあります。それぞれの名句、名言は今後生徒たちが社会生活を営む上でためになる知識ばかりです。

どちらか一方に偏ることなく、古典探究の指導では古典と漢文をバランスよく盛り込むようにしましょう。

声に出すように促す

先述のとおり古典探究は音読や朗読、暗唱などで学習効果が高められます。そのため先生は生徒に対して、声に出すように促しましょう。

しかし中には人に聞かれるのが恥ずかしいという理由から、音読に対して消極的な生徒もいます。

そのようなときは、紙やホワイトボードに書いたものを読んでもらうようにしたり、ICT機器を使った発表をしてもらったりするようにしましょう。

先生が声に出しやすい環境づくりに努めることで、生徒は徐々に自信がついてくるようになります。

近代の作品も取り上げる

近代の作品も古典探究に取り入れるよう指導しましょう。古典の範疇からは外れる作品も一部ありますが、比較的読みやすく古典の表現が使われているため、古典に苦手意識を持つ生徒でも読み進められるからです。

近代以降の小説や戯曲をきっかけに、過去の古典作品に対しても興味や関心が持てるようになるかもしれません。近代の作品は、古典探究を始める指導の初期段階に盛り込むと良いでしょう。

古典探究事例2選

清少納言への異なる評価を読んでその背景を探究する

テーマ清少納言、紫式部、十訓抄、紫式部日記
学習期間6時間
実施校名古屋大学教育学部附属高等学校
対象学年2年生

「枕草子」で有名な平安時代の歌人・清少納言に対する、好意的な評価(『十訓抄』)と批判的な評価(『紫式部日記』)のテキストを読み、同じ人物に異なる評価が下された背景を探究した事例です。

単純な古典の読解にとどまらず、有名なテキストにも様々な評価があることや、その背景にある時代状況や政治情勢などに気づくことで、古典への理解を深められています。

詳細:清少納言評を読み比べる : 高校二年生・古典(古文・漢文)の授業実践

絵画を利用して伊勢物語を理解する

テーマ伊勢物語とその文化背景
学習期間8時間
実施校大阪教育大学附属高等学校
対象学年第1学年

図書資料を活用しながらグループで絵画資料を読み解き、「伊勢物語」を絵画の視点からも理解しようとした事例です。

絵画から入ることで親しみやすく、生徒の主体性を喚起する工夫がなされています。
また、生徒が自身で情報収集を行い、さらに班学習による「対話的な学び」と、それを「まとめ・発表」するという、探究学習のプロセスを踏んで、特に重要なアウトプットの機会も設けられている点も魅力です。

詳細:絵画から物語の読みを深めるー『伊勢物語』とその文化的背景ー

 

他の事例や上記の詳細等はぜひこちらの記事を参考にしてください。
【解説あり】古典探究の事例4つを紹介

まとめ

古典探究は文章を現代語訳するという従来の学習方法を残しながら、生徒自身が興味・関心を持てるような内容が盛り込まれている新しい学習方法です。

知識や技能はもちろんのこと、社会に出てからも役に立つ思考力・判断力・表現力を鍛える学習効果としても期待がされています。

そのため苦手意識を持つ生徒に対しても取り組めるよう、今回ご紹介したポイントを参考にしてみてください。

また他の選択科目と異なり、古典探究は「読むこと」に焦点が当てられています。
そのため生徒が声に出して古典作品に親しめるように先生はサポートをしていきましょう。

参考リンク
【国語編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説|文部科学省
新科目「古典探究」への提案~研究成果を授業に生かす~(神徳圭二先生)|EDUPEDIA
高校国語科の探究学習科目「古典探究」とはどのような内容か|ESIBLA

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。