探究学習

探究学習を前に進める「声かけ」30パターンと、絶対禁止!NG集

探究で行き詰ってる生徒にどうアドバイスしていいかわからない
生徒がすぐ答えを尋ねてくる。もっと自分で考えて探究してほしいのに・・・

私たち Study Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。

探究が行き詰った時、生徒にどのように声かけすればいいのでしょうか?

この記事では、そんなときに有効な声かけパターンを「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」3つのカテゴリー、30パターンで紹介します。また、逆に探究に水を差してしまうNGパターンも紹介します。

探究学習は、その途中で必ず停滞するときがあります。停滞したことは、先生の指導に問題があるということではなく、当然起こることです。探究が停滞しないことよりも、停滞が起こったときに先生から適切な働きかけをすること、そこで発生する生徒との対話(=コミュニケーション)の方が重要です。それによって探究が前進し、生徒が成長する、それを楽しむ姿勢が先生には求められています。

適切な声かけを知ることで、探究を通じた生徒の成長のヒントになれば幸いです。

この記事の内容
対話的な学びと「声かけ」
教員の役割は「教える」ことだけではない
探究を前に進める声かけ
・良い声かけの前提「教員が生徒をよく観察している」
●主体的な学びに関する声かけ
・振り返りを促す
・自己との関連付けを促す
・目標設定を促す
●対話的な学びに関わる声かけ
・対話を促す
●深い学びに関する声かけ
・思考を促す
・判断を促す
・表現を促す
・問題解決を促す
学びに水をさす?声かけの失敗例4パターン
・NG①導入時点の不適切な声かけ
・NG②生徒への信頼不足が原因の過剰な声かけ
・NG③生徒を放任して声かけが足りない
・NG④内容やタイミングがずれている声かけ
共通の注意ポイント
いい声かけの効能

声かけではなく、ワークで探究を活性化したい方はこちらの記事もどうぞ。
>【難易度別】アクティブ・ラーニング発・探究学習を活性化する実践ワーク集

対話的な学びと「声かけ」

声かけは教員と生徒の対話です。また声かけは、生徒同士の対話を促進する、生徒自身の自己との対話を促進する役割もあります。まず教育現場における「対話」についておさらいしておきましょう。

「対話的な学び」は、新学習指導要領が目指している「質の高い学び」を実現するために重視されている要素のひとつです。「対話的な学び」とは、生徒同士に限らず教職員や学校外の社会の人々、著作物との対話を通して思考を広げたり深めたりすることです。ここでは、学びは必ずしも教員や教科書からの一方向ではなく、当事者同士の多方向的に起きています。

こうした「対話的な学び」が起こりやすいとしてアクティブ・ラーニングや探究学習のような、生徒の主体性や能動性を引き出す授業方法が注目されています。

主体的で対話的な交流は「自分と異なる他者」や「他者と異なる自分」の自覚と、その自覚に基づいて思考や言動を統制したりする能力を育てます。これはメタ認知とも呼ばれ、知識詰め込み型の教育では培いにくいとされています。

こと、探究においては知識を教えることよりも、生徒自身が考えて調べる・答えを見つけることが重要であり、それを促す教員の「声かけ」が大きなポイントになります。

一方で、一方向型の授業に慣れていると、適切な声かけはどういうものなのか?戸惑う方もいらっしゃるでしょう。

声かけを一つ間違えると、生徒のやる気や関心をそいでしまったり、浅い議論で終わったりしかねません。しかし裏を返すと、声かけ次第で状況を好転させられる可能性もあります。

教員の役割は「教える」ことだけではない

「声かけ」を適切に行うためには探究学習における教員の役割を捉えなおす必要があります。以下に教員の8つの役割を挙げました。

教員の8つの役割
● リーダー・講師(一方向的に教える、指導する。伝統的な役割)
● コーチ(コーチングにより自発性を促す)
● ファシリテーター(傾聴し、意見・行動を引き出す)
● メディエーター(生徒同士を仲介し関係を構築・調整する)
● カウンセラー(相談役)
● コメンテーター(必要に応じてコメントする)
● 観察者(観察するがコメントはしない)
● 不在者(その場から物理的にいなくなる)

教員は教科の学習内容を習得させる講師の役割だけでなく、生徒の意見・行動を促すファシリテーター、生徒同士の関係を構築し、ひとりひとりの参加を促すメディエーターの役割も持っています。探究学習においてはこれらの役割がとても重要です。

● ファシリテーター(傾聴し、意見・行動を引き出す)
● メディエーター(生徒同士を仲介し関係を構築・調整する)

では、ファシリテーター、メディエーターとしての教員ができる効果的な声かけはどんなものがあるでしょうか。

参考記事
>「教えない」ファシリテーションが探究学習成功のカギ

探究を前に進める声かけ

良い声かけを行う前提を確認し、探究を前に進める声かけを「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」それぞれの視点から、具体的に紹介します。ぜひ、どのようなシーンで使えるか、探究授業の場を想定してお読みいただければと思います。

良い声かけの前提「教員が生徒をよく観察している」

教科の学習では、教えることや生徒の理解をどこまで進めればよいのかが明確です。宿題の正答率やペーパーテストで理解の進捗を見極めることもできます。

しかし、探究では場合によっては一人一人が違うテーマを持ち、取り組み方や進度もバラバラです。

だからこそ教科の学習以上に、生徒がいま何に悩んでいるのか?どこで行き詰っているのか?なにがボトルネックになっているのか?をよく観察し、それに対し適切な声かけをすることが求められます。もちろん、それを確認するための声かけも必要です。

主体的な学びに関する声かけ

主体性を引き出す声かけ例です。探究テーマ・課題を探すとき、リフレクションを行うときなどに特に使用することが多いでしょう。

振り返りを促す

深く考える なぜですか
どうしてですか
もっと詳しく説明できますか
再確認する どうしたからできましたか
なぜできなかったのでしょうか
学びを振り返る ~から何が学べましたか
良かった点・改善すべき点をあげてみましょう
自分が使った知識、技術、感情にはどのようなものがありましたか
自分が新たに習得した知識、技術、感情にはどのようなものがありましたか
次につなげる これを今後どのように活かしていきますか
次同じような時にはどますか

自己との関連付けを促す

自己との関連付けを行う ~はあなたとどんな関係がありますか
これは日常の出来事とどう関係していますか
どの問題が身近に感じられますか、なぜそう思いますか

目標設定を促す

目標を設定する ゴールは何でしょうか
見通しを立てる どのように進めていけばよいと思いますか

対話的な学びに関する声かけ

ディスカッションやブレインストーミングといったグループワークも探究で活用される機会が多いと思います。対話の前、対話を深めるための声かけです。また、対話においては満場一致の意見にいたる必要は必ずしもありません。考えを表現し合い、お互いの話を聞くっ姿勢を養うことも重要です。

また、議論になっても人格攻撃にならないよう、意見は否定しても、個人を否定したりするものでは決してない、ということを伝えることが、生徒が安心して対話できることにつながります。

対話を促す

前提を確認する いつ・どこで・誰となにをしましたか
あなたの役割はなんでしたか
なにが完成しましたか
対話・議論する 近くの人と確認し合ってみましょう
思考を深める 今聞いたことについてどう思いますか
どのように賛成ですか、反対ですか
多面的に考える ~さんの意見に付け足しはありますか
他に似たような結論や考えが思い浮かびますか
反対陣を納得させるとしたら、どうしたらよいでしょうか、

深い学びに関する声かけ

視点が自分から他者へ広がり、モノの見方や考え方が変化することを深い学びと言います。まず自分で思考することを促し、他者との対話のための表現や解決策を導くことを促す声かけです。

思考を促す

事象を捉える ~から何が読み取れますか
解釈する ~から何がわかりますか
予想する ~はどうなると思いますか
考えを広げる ~から気づいたことはありますか
比較する ~はそのように分けられますか
関係を見つける ~はどのような関係がありますか
理由を見つける どうして~になると思いますか
どうしてそう判断・結論づけしたのです
なぜ別の判断・結論に至らなかったのですか
まとめる ~をまとめるとどうなりますか
多面的にとらえる もし~ならどうなると思いますか
どんなときでもそう判断・結論づけられるのでしょうか
ほかの可能性は考えられますか
どの考え方が最も理にかなっていますか、なぜそう思いますか
他者と関連付ける 授業以外の学校での活動または社会や卒業後など、どのような場面でこれは使えそうですか

判断を促す

選択する ~なのはどちらですか
決定する あなたの考えは何ですか
検証する 結果はどうなりましたか

表現を促す

文字に表す ~について考えたことを書いてみましょう
図/絵に表す ~について考えたことを図/絵にしてみましょう
言葉に表す ~について考えたことを言葉で伝えてみましょう
身体で表す ~について考えたことを身体で表現してみましょう

問題解決を促す

問題を発見する 何が問題になっていますか、何を解決しますか
方略を立てる どういう流れで考えていけばよいですか
問題を解決する どうしたら解決することができますか

学びに水をさす?声かけの失敗例4パターン

探究に有効な声かけ例を紹介しました。ここからが、逆に学びを促すどころか水をさしてしまう声かけを、4パターンに分けて紹介します。

NG①導入時点の不適切な声かけ
NG②生徒への信頼不足が原因の過剰な声かけ
NG③生徒を放任して声かけが足りない
NG④内容やタイミングがずれている声かけ

NG①導入時点の不適切な声かけ

これは学習内容や活動を導入するときに適切な声かけができず、生徒を置いてけぼりにしているケースです。

学習活動を選択した意図や完成予想図を伝えられていない
具体的な学習目標を明確に伝えられていない
最初から多すぎる指示を出し、活動を複雑にする

これは、丁寧かつ簡潔な導入を心がけることで防ぐことができます。学習のゴール地点がわかっている教員と違い、生徒はどこに向かっているかが理解しにくいため、導入で情報が不足すると不安になりやすくなります。

丁寧に説明する、最初から多くの指示を与えすぎない、分からないことは質問していいことを伝えて安心させるなどの配慮が必要でしょう。

生徒に伝えるべき情報が伝えられないパターンは、そもそも授業の設計時のミスマッチ(生徒の学習レベルと取り組む課題の乖離)が原因になっている場合があります。生徒の学習レベルに合わせた授業設定を行うことが大前提です。

NG②生徒への信頼不足が原因の過剰な声かけ

これは教員が話しすぎて、過剰な介入になっているケースです。学びにつまづきや停滞はつきものです。乗り越えようとする生徒の力を信頼し、少しずつ任せてみることで生徒の自主性や主体性を促すことができます。

すぐに結論・回答を解説してしまう
生徒に説明させず、教員ばかりが説明している
沈黙を恐れて話しすぎる

すぐに回答がもらえると感じると、生徒は自分で考えることをしなくなる恐れがあります。また生徒に説明させることは、「教え合い」の効果のように、思考の整理になり、深い理解につながります。教えることも重要ですが、「考えさせる」声かけも同じくらい重要です。

NG③生徒を放任して声かけが足りない

逆に、これは教員の介入が足りていないケースです。「主体的な学び」を促す名目で、生徒が必要としている指導を怠ってしまうのは本末転倒です。

活動中、巡回せずに同じ場所から観察しているだけ
よく話す生徒に仕切りを頼り切って声かけをしない
生徒からの自己申告に対して質問せず、鵜呑みにする
活動の振り返り(リフレクション)や総括を促さない

生徒が黙って作業していても、考えているとは限りません。過剰な介入もNGですが、適度に声をかけて質問する、確認するなどの声かけは必要です。

また、生徒自身で振り返りを行うリフレクションは、自分自身で自己に声かけする(問う)ことを促し、自ら考えることを促進します。

NG④内容やタイミングがずれている声かけ

即時的なフィードバックを得られるのが対話的な学びのいいところですが、その内容やタイミングがずれていると効果は半減します。

自分が辱められていると感じてしまう声かけ
多様な価値観を認めない、特定の価値観を押し付けるような声かけ
間違いを指摘・修正するときにしか声かけしない
すぐに声かけせず、タイミングが遅い

生徒の名誉を傷つけてしまったり、頭ごなしに否定するような声かけは、もちろん問題外ですが、知らず知らずのうちに行ってしまう場合もあります。なにか問題を指摘する場合でも、あくまで問題となった行為・行動を指摘し、人格を傷つけない態度や言い方を徹底することが必要です。

また原則、すぐにフィードバックを行うことが大切です。時間がたつと忘れてしまったり、素直に受け取れなくなってしまう場合があります。

共通の注意ポイント

全体を通して意識するポイントです。

個別やグループの活動中、教員は教室を巡回しながら生徒の様子を観察する
生徒の発言を傾聴する
生徒の発言を復唱したり、言い換えたりする
生徒の行動や努力に気づき言葉にする
特定の生徒や思想を茶化さない
発言の少ない生徒を引き入れる
異なる意見や視点を歓迎する
なるべく即時フィードバックを心がける
大事な発言は全体共有する
生徒の間違いを指摘するときは、正しく行っていることもセットで伝える

ここに挙げた例は、教室だけでなく大人になってからも活用できる、対話・学習・問題解決のテクニックです。

理想は、これらを生徒自身が扱えるようになること。そのためにも、先生がまず使いこなせることが重要です。

いい声かけの効能

生徒は、多方向的な対話を通じて思考を広げたり深めたりすると同時に、メタ認知も向上させています。その機会を作り、生徒の成長を支援するのは教員としてのやりがいでもあり腕の見せどころです。

やればやるほど、どこまでを生徒同士にまかせて、どこから教員が踏み込むべきか、あるいは手を引くべきかの感覚がつかめてくるはずです。生徒との対話とフィードバックを通じて教員自身も学び続けているというわけです。

教員も生徒も、対話や議論に慣れないうちは難しいと感じるかもしれません。しかし、試してみないと始まりません。続けないと改善はしません。この記事が少しでもヒントになれば嬉しいです。

類似記事
>【難易度別】アクティブ・ラーニング発・探究学習を活性化する実践ワーク集

参考文献
“In-Class and Worksheet Activities”. Carl Wieman Science Education Initiative. https://cwsei.ubc.ca/resources/instructor/inclass, (accessed 2022-02-25).
Chesser, Lisa. “Student-Driven Learning: 50 challenging questions to ask your students.”. InformED. 2014-05-25. https://www.opencolleges.edu.au/informed/features/student-driven-learning/, (参照 2022-02-25).
秋田喜代美. 教室談話を通したメタ認知機能の育成. Japanese Psychological Review. 2007, 50(3), p.285-296. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/50/3/50_285/_pdf/-char/ja, (参照 2022-02-25).
佐藤浩章編. 高校教員のための探究学習入門: 問いからはじめる7つのステップ. ナカニシヤ出版, 2021.
メタ認知的声掛け 森本康彦(2017) 次世代eポートフォリオシステムによる学習評価支援のための自己対話による学びの振り返り促進と成長の見える化モデル, 日本教育工学会 第33階全国大会157-158)

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この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。