探究学習

キャリア教育とは?定義や目的、育成すべき能力、学校段階ごとのポイントまで徹底解説

キャリア教育って具体的にどういうもの?
小学校、中学校、高校で、それぞれどんなことをすればいいの?

子どもたちが進路を自分で切り拓けるようにするために、キャリア教育が注目されています。キャリア教育は、子どもたちが自立して生きる力を育み、キャリアの形成を促す教育のことです。

キャリア教育は学習指導要領で推奨されていますが、子どもたちからも求められています。株式会社マイナビによると、高校生が求めるのは自分の個性や適性について考える学習です(「キャリア教育は、迷いの多い高校生の人生の指針となるか?教科書がないキャリア教育の意義と課題」)。キャリア教育は、自己理解や社会との関わりを促す機会が豊富であるため、子どもたちのニーズに応えることができます。

子どもたちにも求められているキャリア教育ですが、キャリア教育とはそもそもどのようなものなのでしょうか?この記事では、キャリア教育の定義や重要性など、キャリア教育に関する基本的な情報について解説します。

目次
・キャリア教育とは?
・キャリア教育が重要な理由
・キャリア教育で育成すべき力は何?
・学校段階ごとのキャリア教育のポイント
・海外と比べて日本のキャリア教育は大変?
・まとめ

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キャリア教育とは?

キャリア教育について、中央教育審議会は次のように定義しています。

一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育

ここで言う「キャリア発達」とは、「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」とされています。つまり、キャリア教育は、単に仕事や働くことについて勉強する、というだけではなく、子どもたちが自分らしい生き方を実現するために必要な能力・態度を育む教育であると言えます。

キャリア教育はいつから始める?


キャリア教育は、「幼児期の教育から高等教育にいたるまで体系的に進めることが必要である」とされています。キャリアは若者や子どもの発達段階と深く関わるため、キャリア教育は特定の時期だけではなく、長期的に行うことが求められます。

キャリア教育と職業教育の違い

キャリア教育と似た言葉に「職業教育」があります。職業教育では特定の職業に即した能力を育成するのに対し、キャリア教育はどの職業でも活きる能力を育成するという違いがあります。中央教育審議会は、両者の「育成する力」と「教育活動」の違いについて、次のようにまとめています。

育成する力
・キャリア教育:「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度」
• 職業教育:「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度」

教育活動
• キャリア教育:「普通教育、専門教育を問わず様々な教育活動の中で実施される。職業教育も含まれる。」
• 職業教育:「具体の職業に関する教育を通して行われる。この教育は、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成する上でも、極めて有効である。」

これらの解説から、職業教育はキャリア教育に比べてより具体的な職業に特化した能力を育成する教育だとわかります。一方キャリア教育では、様々な教育活動により、どの職業にも通じる幅広い能力を育成します。キャリア教育の方がより広い教育であり、その中に職業教育が含まれるというイメージです。

例えば、工場で旋盤加工実習を行ったとき、旋盤加工もさることながら、職場におけるマナーや、ルールを守ることの重要性、働く人の職業観を学ぶことなどに重点があるとすれば、それは「キャリア教育」となります。一方、純粋に旋盤加工技術を学ぶことを目的とするなら、それは「職業教育」となります。

キャリア教育と進路指導の違い

もう一つ、キャリア教育に似た教育活動には「進路指導」があります。中央教育審議会によると、進路指導は「どう生きたいか」という長期的な視点で人間形成を目指す教育活動であり、「進路指導のねらいは、キャリア教育の目指すところとほぼ同じ」だとされています。

ただし進路指導は、学習指導要領の上では中学校と高等学校に限定された教育活動です。一方、キャリア教育は「幼児期の教育から高等教育に至るまで」、継続的に行われるものとされています。

したがって、キャリア教育では単に卒業後の進路のみならず、より長期的な将来を見据える必要があります。

引用:高等学校キャリア教育の手引き 第1章第3節 キャリア教育と進路指導

キャリア教育が重要な理由

キャリア教育は、なぜ今重要なのでしょうか。ここからは、以下の3つの理由について解説します。

• 社会で必要な力を身につけるため
• 将来・職業について考えるきっかけにするため
• 将来と学業を結びつけ、学習意欲を高めるため

社会で必要な力を身につけるため

キャリア教育は、社会に出るために必要な力を育成する上でとても重要です。

従来は、企業が企業内研修によって若者の育成を担っていました。しかし、労働時間が長期化する現在では、企業が若者の育成に時間を割く余裕がなくなっています。

したがって、若者が社会に出るまでに基礎的な能力を身につける必要があり、そのための場としてキャリア教育が求められます。

将来・職業について考えるきっかけにするため

将来や職業について考えるきっかけとしても、キャリア教育が重要となります。

現在、高校卒業後に就職する割合は減っている一方、大学・短大へと進学する割合は増えています。このため、将来や職業について考えることが先延ばしされ、高校の時点での検討が不十分だと指摘されています。

しかし、大学に進学する場合でも、将来や職業について考えることはとても大切です。それらを検討せずに大学を選んでも、入学後に学習意欲が湧かなかったり、大学とのミスマッチが生じたりする懸念があります。

このため、キャリア教育を通して「自分がどう生きたいのか」「社会にどう貢献したいのか」を考えることの意義は大きいです。

将来と学業を結びつけ、学習意欲を高めるため

キャリア教育は、将来と学業を結びつける機会にもなります。

日本の15歳は、OECD諸国と比べて「将来に役立つから勉強する」という意識が低いのが現状です。以下の図では、右側の④が「将来に役立つから勉強する」という意識に当たります。過去のデータよりは数値が上がっていますが、依然としてOECD平均よりも低いことがわかります。

▲引用:OECD生徒の学習到達度調査~ 2015 年調査補足資料~(生徒の科学に対する態度・理科の学習環境)

今勉強していることが将来に役立つと思えなければ、学習に向かうモチベーションが下がってしまいます。こうした状況の解決に役立つのが、キャリア教育です。

中央教育審議会によると、キャリア教育は、将来と学業を結び付け、学習意欲を喚起するという役割も果たします。今の学習が将来とどのように繋がるのかを意識する機会としても、キャリア教育は有効です。

キャリア教育で育成すべき力は何?

キャリア教育では、どのような力を育成すれば良いのでしょうか。中央教育審議会は、キャリア教育で育成すべき能力として以下を挙げています。

•基礎的・基本的な知識・技能
→「読み・書き・計算」等の基礎的な能力/税金、社会保険、労働者の権利・義務等の理解
•基礎的・汎用的能力
→分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立のために必要な基盤となる能力
論理的思考力、創造力
→物事を論理的に考え、新たな発想等を考え出す力
• 意欲・態度及び価値観
→学習や学校生活に意欲を持って取り組む態度/個人の内面にあって価値判断の基準となるもの(人生観、社会観、倫理観、勤労観・職業観等)
• 専門的な知識・技能
→仕事を遂行するための専門性

学習の基礎となるような基礎的な能力から、仕事に直結する専門的な知識・技能まで、幅広い能力の育成が求められているとわかります。

基礎的・汎用的能力を構成する4つの能力

また、以上の能力のうち、基礎的・汎用的能力はさらに4つの能力に整理されます。

基礎的・汎用的能力を構成する4つの能力
人間関係形成・社会形成能力
自己理解・自己管理能力
 課題対応能力
キャリアプランニング能力

それぞれの能力について簡単に確認します。

人間関係形成・社会形成能力

多様な立場を理解し、相手の考えを聞いて自分の考えを伝えられる力です。また、自分の役割を果たしながら他者と協働し、今後の社会を積極的に形成する力も含まれます。具体的には、他者の個性を理解する力、コミュニケーション・スキル、チームワークなどが挙げられます。

自己理解・自己管理能力

自分の可能性などについて肯定的に理解しながら主体的に行動し、今後の成長のために進んで学ぼうとする力です。具体的には、自己の役割の理解、前向きに考える力、自己の動機付けなどが挙げられます。

課題対応能力

仕事をする際の様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立てて解決できる力です。具体的には、情報の理解・選択・処理等、本質の理解、課題発見などが挙げられます。

キャリアプランニング能力

「働くこと」の意義を理解し、多様な生き方に関する様々な情報を取捨選択・活用しながらキャリアを形成していく力です。具体的には、学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、将来設計など挙げられます。

学校段階ごとのキャリア教育のポイント

ここからは、各学校段階におけるキャリア教育のポイントについて、中央教育審議会の説明を基に解説します。

小学校におけるキャリア教育のポイント

小学校は、周囲のために働く意義を理解したり、自分の特徴に気づいて良さを伸ばしたりする時期です。

したがって、小学校のキャリア教育では、校内での当番活動や校外の職場見学などを通じて、働くことの意義や自分ができること・したいことについての理解を促すことが重要です。

中学校におけるキャリア教育のポイント

中学校は、自我の芽生えと共に、社会の一員としての役割を自覚し始める時期です。また、進路選択を控え、自分の責任で決定することを求められる時期でもあります。

このため、中学校では、学校の教育活動全体をキャリア教育の視点で行い、しっかりと自らの役割や生き方について考える機会を作ることが大切です。

特に、職場体験活動は、社会の現実を知ることができる重要な機会です。事前に体験先の仕事内容について学習し、事後に自己評価や体験発表を行うことで、体験を充実させることが求められます。

高等学校におけるキャリア教育のポイント

高等学校は、義務教育で培った能力をさらに伸ばし、学校から社会に移る準備として専門性の基礎を育成する段階です。

したがって、社会・職業の現実的な理解を深め、社会にどう参画するかを考える教育活動が求められます。具体的には、卒業生や地域の職業人との対話、就業体験活動等の体験的な学習が重要となります。

小学校~高等学校など校種別の具体的な実践事例はこちら
キャリア教育の実践例・校種別おすすめ7選!必要性、実施方法まで解説!

高等学校におけるキャリア・進路探究の事例はこちら
【解説あり】キャリア・進路の探究学習事例5つを紹介

海外と比べて日本のキャリア教育は大変?

現在の日本にとってキャリア教育は重要であり、効果的な実践が求められます。しかし、日本でキャリア教育を行うのは、海外と比べて難しいという現状もあります。

海外の学校にはキャリアカウンセラーがおり、彼らがキャリアに関する指導を行っています。しかし、専門的なキャリアカウンセラーは日本では馴染みがなく、教員がキャリア教育の責任を負っています。

キャリアカウンセラーが雇われている、または定期的に訪れる学校に通う15歳学生の割合がOECDの調査によりわかっています。それによると、アメリカは82.3%、イギリスは80.3%、ドイツは81.9%、フランスは56.1%となっているのに対し、日本はなんと4.4%であり、79か国中再開という結果でした。

▲引用:教師がキャリア教育まで担当する、日本の学校は世界でも特殊(Newsweek)

これまでに見たように、キャリア教育では多様な能力の育成と幅広い教育活動が求められます。教員だけでキャリア教育を設計するのは負担が大きいため、地域や民間企業の力を借りることも必要でしょう。

総合的な学習、探究の時間を利用する

総合的な学習、探究の時間を利用してキャリア教育を行う事例もあります。総合学習や探究学習では地域や外部機関と連携して「チームとしての学校」で教育を実施することが推奨されています。

「チームとしての学校」
文部科学省は、地域の学習環境を活用し、実社会や実生活の課題を取り上げ、教員以外のメンバーも参画した「チームとしての学校」を提唱している。
【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説より )

外部とうまく連携することは探究的な学びやキャリア教育の効果を高めるとともに、教員の負担軽減というメリットもあります。

総合学習や探究学習の時間、外部の力をうまく活用して、キャリア教育の効果的な実施を検討してみてください。

まとめ

キャリア教育の内容や重要性について解説しました。

キャリア教育では、基礎的な能力から専門的な技能まで、幅広い能力の育成が期待されます。そのためには、学校内外での充実した教育活動を行うことが重要です。外部の力も活用しながら、自校にとって最適なキャリア教育の設計を目指しましょう。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。