近年「社会に開かれた学校」が学校現場で重視され、企業と高校生が積極的に関わる動きが加速しています。特に企業と高校生がコラボする形として多いのが、商品開発を共同で行うケースです。
本記事では高校生と企業が商品開発しやすい商品とは何か、事例、商品開発までのロードマップを解説していきます。
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企業と高校生が商品開発しやすい商品
企業と高校生の商品開発を企画する際に大切なのは「どんな商品を共に開発するか」です。「その商品を作ることでどんなメリット・デメリットがあるのか?」「その商品は実現可能なのか?」ということを考えなければなりません。特に後者は高校生の実態を掴めなければ判断が難しい部分です。
そこで本記事では、実際にどのような商品が共同して開発しやすいのかを具体的に挙げるので参考にしましょう。
1.食品開発
企業と高校生の商品開発で最も多く取り組まれているのが食品開発です。他の商品と比べ、食品の良し悪しは生徒も判断がしやすいこと、さらには発想から実現までのステップが比較的簡単なことから高校生が関与しやすく、全国で多く取り組まれています。
また、高校生ならではの発想や、地域がらなど、食品にはさまざまな特徴が反映できるため人気の高い商品開発の形態です。
注意点としては、高校生からさまざまな発想が出るものの、商品として利益を出すことができるのか、実現可能性とのバランスを取る必要があるということです。
2.商品のパッケージデザイン
企業と高校生が商品開発をするにあたり、商品のパッケージデザインは最も簡単な方法と言っても過言ではないでしょう。商品に対して専門性が高くない高校生にとっては商品の中身を開発するよりもハードルが低く、生徒が参加しやすいでしょう。また、商品のクオリティーも企業側が担保すれば良いのでかかる工数が少ないのが特徴です。
注意点としては、高校生に「どのようにデザインしてもらうか」また、「そのデザインをどのように活用するか」です。通常、高校生はパッケージのデザインをしたことはないのでパッケージデザインと紙へのデザインをどのように繋ぐかがポイントとなります。
例えば、デザインするパッケージがお菓子の箱だった場合、その展開図を印刷し、生徒に紙ベースでデザインを依頼し、デザイナーに修正をかけてもらうといった作業が必要です。
3.メニュー開発
多くの企業が高校生と商品開発する中、飲食店などで多いのがメニューの開発です。パッケージのデザインと比較すると、必要なミーティングの数が多く、工数はかかる分、より深い関係性のもと商品開発をすることができます。
多くの場合、高校生がメニューの案を出し、それを企業とブラッシュアップし、実際の調理は企業が行います。この形態の商品開発では、高校生のフレッシュな意見を取り入れつつ、企業の技術で新メニューを実現することができます。
注意点としては、高校生のフレッシュな意見は尊重しつつ、実現可能性を企業が伝える必要があり、そのバランスをとりながら活動をすることです。
4.アイテムのデザイン
アイテムのデザインも企業と高校生が商品開発しやすい商品の一つです。メニューの開発と同様に、必要なミーティングの数が多く、工数はかかる分、より深い関係性のもと商品開発をすることができます。
多くの場合、高校生がアイテムのアイデアを提案し、それを企業とブラッシュアップ、実際の製造は企業が行います。この形態の商品開発では、メニュー開発同様、高校生のフレッシュな意見を取り入れつつ、企業の技術で新新アイテムを実現することができます。
こちらの場合も、注意点として、高校生のフレッシュな意見は尊重しつつ、実現可能性を企業が伝えることが必要で、そのバランスをとることを重視しましょう。
企業と高校生の多様な商品開発事例【11選】!!
企業と高校生の商品開発の中で、やはり事例が一番多いのが、食品の商品開発です。本記事ではその事例を11選紹介します。実際に、どのように商品開発がなされているかをみていきましょう。
1.企業と高校生による「食品開発」の事例
企業と高校生による食品開発では地域の特徴を活かした商品が多く開発されています。ここでは4選事例を紹介します。
事例1:株式会社ふ~でゅ~す
株式会社ふ~でゅ~すは地元の栃木県立足利清風高校と連携し、さまざまなコラボ商品を開発、販売しています。
株式会社ふ~でゅ~すの特徴である「手作り・小ロット製造」を活かし、2019年春から高校生との商品開発を進めています。「さつまレモン」「りんごのコンポート」「みそに大こん」など、さまざまな商品が開発され、実際に地元の施設にて販売されました。
引用元:地域の皆さまとの商品開発
事例2:川中醤油株式会社
川中醤油株式会社は、地元広島県立広島商業高校とコラボし、商品開発を行いました。この商品開発では、地元高校生の「醤油は調味料の中でも地域性が強く、地域の食文化に根付き、食文化を担っている」という考えから実現しました。川中醤油としても「醤油離れ」を危惧しており、両者の思いが合致し、商品開発に至りました。
商品開発にあたっては、高校生をターゲットにアンケートによる実態調査をし、コンセプトを明確にし、試作改良し、販売に至りました。
商品開発後、高校生は試食提供活動などを行い、地元スーパーや生協にも扱いが広がり、これまでに1万本以上の出荷につながりました。
引用元:【とろ~り梅しょうゆ200ml】つけておいしい、かけておいしい
事例3:なしの店ビルネ・ラーデン
なしの店ビルネ・ラーデンは地元の広島県立世羅高等学校とコラボし、商品開発を行いました。世羅高校は全国屈指の駅伝強豪校でありその特徴を活かし、生徒と共に共同開発を行いました。
開発された商品は「世羅っとした梨 ランニングウォーター」というスポーツドリンクで、テレビ番組にも特集されました。
引用元:なしの店ビルネ・ラーデン
事例4:NPO法人とうもんの会
NPO法人とうもんの会は掛川市の地元、横須賀高校、地元菓子店「たこ満」と共に商品開発しました。とうもんの会の「小麦が高騰している中、地元のお米を使った商品開発ができないか?」と言う問いのもと、高校生がアイデアを出し、「米粉のサツマイモシュークリーム」が販売されました。
引用元:NPO法人とうもんの会
2.企業と高校生による商品の「パッケージデザイン」の事例
続いて、企業と高校生にって開発された商品のパッケージデザインについて2つ事例を紹介します。パッケージデザインは高校生にとって参加しやすい形の商品開発であり、両者の負担が少ないことが特徴です。
事例5:ツジセイ製菓
香川県のお土産菓子メーカーツジセイ製菓株式会社は、自社で「香川の新土産を生み出す”産学官連携プロジェクト」を企画し、地元香川の高松商業高校と商品開発し、「香川の美味しい苺『さぬきひめ』をもっと全国の人に知って欲しい!味わってほしい!」という想いのもとさぬきひめの雫を商品開発しました。
引用元:産学官連携企画 高松商業高校コラボ“さぬきひめの雫”
事例6:大正製薬
大正製薬は高校生とコラボし、『若年層に受け入れられるリポビタンDパッケージ』を商品化しました。慶應義塾高校(神奈川)、柳川高校(福岡)、成蹊高校(東京)の3校が参加し、各校内で複数の班に分かれ、デザインしたパッケージのプレゼン大会が行いました。
この活動は各校内の探究学習や卒業研究にも活用されました。
3.企業と高校生による「メニュー開発」の事例
続いて、企業と高校生にって開発された商品のメニュー開発について4つ事例を紹介します。食品開発とにている部分もありますが、基本的に商品のレシピや製造過程は企業が主体で考えるため、クオリティーの担保ができるのが特徴です。
事例7:ローソン沖縄
ローソン沖縄は、沖縄県内の高校からレシピを募集、審査のもと、優れたアイデアを提案したチームでプレゼンを行う「ローソン沖縄×沖縄県商業高校商品開発プロジェクト!」を行いました。優秀チームのレシピをローソン沖縄が会議、試作を重ね販売しました。
第8回の大会では沖縄県内から134件のレシピが応募され、審査を勝ち抜いた6校8チームによるプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションの結果、グランプリ、準グランプリ、特別賞の3チームのアイデアが実際に商品開発されました。
引用元:第8回ローソン沖縄×沖縄県商業高校商品開発プロジェクト!
事例8:株式会社大戸屋
定食チェーン「大戸屋ごはん処」を全国に展開している株式会社大戸屋は、NPOカタリバのサポートのもと、福島県立ふたば未来学園高校の生徒と、実際に店舗で販売するメニューを開発する「子どもの学び応援プロジェクト」に取り組みました。
「高校生のアイデアをどのようにメニュー化するのか?」アイデア段階から実現までを企業と高校生がディスカッションを重ね、商品開発にあたりました。
事例9:株式会社ポポラマーマ
本事例は商品の販売段階には至っておりませんが、大きな規模の商品開発であるため紹介します。ゆであげ生パスタ専門店「ポポラマーマ」を展開する株式会社ポポラマーマは弊社株式会社Study Valleyのサポートのもと、東京都立篠崎高等学校と探究学習として商品開発に取り組みました。この商品開発では、江戸川区の地域課題に取り組み、新たな魅力創生につながるオリジナルプラン作成を目指す、地域探究を行いました。
商品開発をする中で、株式会社ポポラマーマが専門家としての目線からフィードバックを行ったり、生徒とディスカッションをする中で、さまざまなアイデアを生む事ができました。探究学習の中で以下のようなテーマが課題として生まれ、最終的に成果発表会にて商品開発の成果が発表されました。
①生パスタを使った新メニュー開発
②時と場所を鑑みた広告宣伝アイディア
③食材ロスを減らすアイディア
事例10:コンビニ各社が行った高校生との商品開発
上記のローソンだけではなく、大手コンビニ各社はさまざまな高校生とのコラボ商品を開発しています。以下の表に商品名をまとめたので参考にしましょう。
会社 | 高校名 | 商品名 |
セブンイレブン | 留萌千望高校 | にしんそぼろ御飯 |
磯城野高校 | 近畿まほろば総体記念元気に応援弁当 | |
岡山南高校 | 味飯&チキン竜田弁当 | |
ローソン | 福岡農業高校 | みかんDEパン、合格する梅(パイ) |
高鍋農業高校 | ラクミメロンパン | |
三沢商業高校 | わんどのカレー | |
中部農林高校 | ドラゴンフルーツDEパン | |
ファミリーマート | 宇都宮短大附属高校 | たまり漬けおむすび、県産豚のピリ辛豚焼肉丼 |
出雲商業高校 | ぜんざい風ミルクプリン・シュークリーム | |
太田市立商業高校 | 君と羊と馬とグミ | |
サークルKサンクス | 盛岡農業高校 | う米(まい)パン |
岡崎商業高校 | おかざきカレー、蒲郡みパンなど | |
神戸山手女子高校 | メロンパンクリームサンドなど | |
富山商業高校 | いちじくのホイップパン、富山むすびなど | |
小松島西高校 | 苺ミックスジャム&芋あんの2色パンなど | |
愛知商業高校 | ちぎれるデニッシュメロンパン | |
知立高校 | 米粉を使って米の形をしたカレーパン | |
鹿屋農業高校 | 愛ガモ弁当、じゃがいもごろっとカレーなど | |
秋田商業高校 | とろ〜りチーズのオムカリー | |
相可高校 | お父さんがんばって弁当、中華弁当など | |
八代農業高校 | 八代農高おにぎり、和♡オムライス | |
新発田商業高校 | 新発田産アスパラの和風パスタなど |
引用元:朝日新聞
4.企業と高校生による「アイテムのデザイン」の事例
続いて、企業と高校生にって開発された「アイテムのデザイン」について株式会社キンクジムの事例を紹介します。この事例は企業と高校生の持つ長所が非常にうまく噛み合い商品開発が進んでいるので参考にしてみましょう。
事例11:株式会社キングジム
株式会社キングジムは高木学園女子高校(現在の英理女子学院高校)と商品開発を行い「使いやすい長さに切った、あたらしい形のマスキングテープとシール『KITTA』」を発売しました。
この商品開発は以下のような流れで行われました
- 社員と高校生が「普段使っている文房具の不安点」について話し合い、3つアイデアに絞りブラッシュアップ
- 3つの案ごとにチームを作り、市場調査、校内アンケートなどでアイデアを具体化
- 調査、アンケートをもとに高校生がキングジム開発社員にプレゼン、具体的な商品が決定
- 高校生の実体験のもと、商品アイデアを具体化
- 商品のPRについてキングジム社員から講義、他者HPなどを研究しながらKITTAの魅力が伝わるHPについて考える
- KITTA発表
引用元:株式会社キングジム
企業担当者必見!高校とコラボして商品開発するまでのロードマップ
近年学校現場では「社会に開かれた学校」の実現に向け、さまざまな取り組みがなされています。特に必修科目「総合的な探究の時間」では、地元企業との連携をする動きが活発です。また、学校教育の基礎となる学習指導要領の商業編において、近年の改訂で新たな単元「商品開発」が新設されました。
これらにより多くの学校・企業による商品開発が活発に行われています。
そこで、本記事では学校とコラボして商品開発するまでのロードマップを解説するので参考にしましょう。
①商品開発の目的を明確にする
高校生との商品開発を計画する上で最初のステップは目的を商品開発の目的を明確にすることです。
高校生との商品開発は通常の商品開発とは違い、高校生を巻き込む分、コストやクオリティーなどさまざまな懸念事項があります。その懸念事項を抱えた上で、それ以上の効果を感じられるような目的を設定しましょう。「なぜ高校生とコラボする必要があるのか?」「コラボする方法は商品開発で良いのか?」といった視点で検討すると良いでしょう。
高校生との商品開発で考えられるメリット
- 宣伝効果
高校生自らが進んで販促に関わる場合が多く、宣伝効果が期待できる - 教育CSRにつながる
商品開発として生徒に学びの機会を提供することで教育CSRにつながる - 新たな視点が得られる
高校生が持つ新しい価値観や流行を商品に取り入れることができます
※教育CSRについての詳細は教育CSRとは?メリット、取り組む際のポイント、事例を踏まえて解説!をチェックしましょう。
②商品開発の内容を決める
目的が決まった後に、商品開発の内容を決定しましょう。高校生と商品開発する上では、商品開発のどこのプロセスに関わってもらうかが重要になります。
例えばお菓子の商品開発の場合、レシピを共同で開発するのか、商品のパッケージをデザインしてもらうのかによって内容が大きく異なります。
高校生は知識的にも時間的にも限られた中で商品開発を進めます。どこに関わってもらうのが目的達成に向けた最善策なのかを考える必要があるでしょう。
③コラボを募集する
①,②が完了後、商品開発のコラボを募集しましょう。
募集の方法としては主に以下の5つの方法が考えられます。
募集方法 | 特徴 |
1.自社で募集する | 自社のHPやSNSで広く募集をかける方法。多くの応募者を集め、企業の課題を直接解決するアイデアを得やすいが、コストがかかる。 |
2.コラボ先を探している学校に問い合わせる | 地域の高校や商業高校団体に直接問い合わせてコラボ相手を見つける方法。高校側の意欲が高い反面、企業の意図が通りにくいことがある。 |
3.探究活動としてコラボする | 高校の探究活動に企業が協力する方法。生徒の主体性が高く創造的な解決策が期待できるが、企業のニーズとずれる可能性がある。 |
4.高校生とコラボするインターンシップを開催する | 課題解決型インターンシップを通じて高校生とコラボする方法。企業の課題解決に直結するが、費用や人件費のコストがかかる。 |
5.職場体験としてコラボするプログラムを作る | 地元の高校と連携して職場体験プログラムを実施。地域との関係強化が図れるが、キャリア教育が主目的で柔軟なコラボが難しい。 |
これらの詳細については【事例あり】企業と高校生がコラボする方法とは?募集方法を解説!をチェックしましょう。
高校生✖︎企業でより良い商品開発をするには
高校生と企業でより良い商品開発をするには、まず双方の目的を明確にし、双方のできることを考え、作る商品を決めることが重要でした。
事例にもあるように、多くの場合食品開発のように、高校生でもチャレンジしやすいものが商品開発しやすいでしょう。また、商品開発のどの部分でコラボするのかも大切です。例えばツジセイ製菓のようにパッケージデザインでコラボしたり、川中醤油のようにレシピの段階でコラボするなど様々です。
本記事を参考に、貴社、貴校に合った商品開発を進めていきましょう。
【高校の探究担当の先生へ】
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【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。