探究学習

探究学習の評価方法を紹介。特徴、メリット・デメリットも

探究学習に取り組むにあたって「評価方法をどうするのか?」という悩みはつきものです。

探究学習はその性質上、教科学習のようにペーパーテストのみで評価することは適切ではありません。ではどう評価すればよいのか。

この記事では、探究学習の評価でよく使われるポートフォリオ評価、その中でもポピュラーなパフォーマンス評価、評価基準を可視化するルーブリック、そして自己評価・他者評価について解説します。

それぞれの評価の特徴、メリットとデメリットについて紹介しますので、評価作成の参考にしてみてくださいね。

探究学習の評価のポイント

まず指導要領を参考に、探究学習における評価の、全体のポイントを押さえておきましょう。

探究学習の評価は「生徒にどのような力が身に付いたか」を的確に捉え、教師が指導の改善を図るとともに、生徒自らも学びを振り返って次の学びに向かうために重要とされています。

そのために、以下の3つのポイントが重視されています。

1.信頼される評価の方法であること
2.多面的な評価の方法であること
3.学習状況の過程を評価する方法であること

1.信頼される評価

探究学習を点数で明確に評価することは困難です。ペーパーテストがそぐわないので、あとで紹介する「パフォーマンス評価」を行うことが多いのですが、これに関しては評価者(主に教員)の見方次第、つまり主観によって評価がブレる恐れがあります。

よって、あらかじめ評価の観点や基準を定めておく必要があります。

これには、教員が設定する場合、学校で定めた「目指すべき生徒像」「探究学習で育成するコンピテンシー」などをもとに作成する場合、国際バカロレア(International Baccalauréat)などを外部の基準を参考に決める場合、などがあります。

ポイントは、評価者が変わっても評価が著しくブレることがなく、同じ評価ができる明確な基準を定めることです。

このことが「信頼される評価」につながります。

2.多面的な評価

探究学習の評価では、複数の評価者や評価方法を組み合わせるなどして、生徒の成長を多面的に捉えることが重要です。

1つの成果物だけで評価するのではなく、プレゼンテーションやポスターなどの制作物、レポートやディスカッションの記録など、様々な観点から評価することが適切な評価につながります。

さらに、その評価者も教師だけでなく、生徒自身やクラスメイト、場合によっては保護者や地域の方たちなど第三者の人に参加してもらうことも、より多面的な評価に近づくために有効です。

3.学習状況の過程を評価する

繰り返しになりますが、探究学習では最終成果物だけを評価することは適切ではありません。探究の過程を評価するため、そして成果に向かって適切なフィードバックを行うためにも、評価のタイミングを複数回設け、学習状況を振り返られるようにすることが大切です。

ポートフォリオ評価

探究学習で最もよく使われるのが「ポートフォリオ評価」です。

探究学習におけるポートフォリオとは「生徒の作品、自己評価の記録、教師の指導と評価の記録などを系統的に蓄積していくもの」を指します。

探究学習のポートフォリオ評価でよく評価対象とされるものには、下記のようなものがあります。

• 資料集(探究の過程で収集した資料や、それをまとめたスクラップ帳、取材記録など)
• 研究論文(生徒が作成した作文、レポートなども含む)
• 評価記録(自己評価や教員による評価)
• 発表用資料(模造紙の発表資料、パワーポイント、企業への提案資料、など)
• 活動そのもの(フィールドワーク、ディスカッション、プレゼンテーションなど)

*これらはいずれも「パフォーマンス課題」と呼ばれる

上記のような課題は、取り組むのに複雑な知識やスキルを使いこなすことが求められるので「パフォーマンス課題」と呼ばれます。

なお、選択式テストや穴埋め式テストのような課題は、パフォーマンス課題ではありませんが、ポートフォリオに含めて評価する場合もあります。

ポートフォリオ評価とは「ポートフォリオづくりを通して、学習者が自らの学習のあり方について自己評価することを促すとともに、教師も学習者の学習活動と自らの教育活動を評価するアプローチ」といわれます。

ポートフォリオ評価を行うメリットは「生徒と教員が現時点での学習の到達点や、これからの課題をともに確認し、共有できること」、「従来の学力の範疇にとどまらない『資質・能力』を評価できること」、「ポートフォリオを試行錯誤しながら作成する過程で生徒が成長していくこと」です。

逆にデメリットとしては、個別の達成評価ゆえ、点数化することが困難だという事が挙げられます。

ポートフォリオ評価
メリット①:生徒の学習成果をリアルタイムで確認・共有できるる
メリット②:従来の学力の範疇にとどまらない「資質・能力」を評価できる
メリット③:作成プロセスで生徒が成長する
デメリット:個別の達成評価ゆえ、点数化することが困難

パフォーマンス評価とは

探究学習でよく評価対象となる「資料集、研究論文、評価記録、発表用資料、活動そのもの」などは、取り組むのに複雑な知識やスキルを使いこなすことが求められる「パフォーマンス課題」と呼ばれます。

従来の教科学習では知識の定着度や理解力を測るために、一問一答形式のペーパーテストを用いて評価を行ってきました。テストの問題は当日まで公開されず、決められた時間内にどれだけ正解できるかが評価につながります。

それに対しパフォーマンス評価とは、事前に目標設定されたパフォーマンス課題を達成するために必要な知識や能力を評価するものです。

パフォーマンス課題、どう作る?

では「パフォーマンス課題」はどのように作ればいいのでしょうか。

パフォーマンス課題を作る際には、その教科や単元における「本質的な問い」と「永続的な理解」という2つの基本概念を明確にすることが重要です。

「本質的な問い」とは、その教科や単元の中核に位置する問いであると同時に、生活との関連から学習の意義が見えてくるような問いです。これは、探究学習における課題設定のあとにつくる「答えのない問い」「答えに至る道筋が無数にあるような問い」だと思ってもらえば結構です。具体的には、「~とは何か?」や「~するにはどうすればよいか?」という形式をとります。

「永続的な理解」とは、身につけた能力を再現し続けることが継続的にできるための理解のことです。取り組むことで「永続的な理解」に近づけるパフォーマンス課題が、よい課題といえるでしょう。

この「本質的な問い」と「永続的な理解」を考慮したパフォーマンス課題を作り上げることが重要となります。

本質的な問いの例▼
歴史上の事件や出来事は、同時代の芸術作品にどのような影響を与えるのか?

パフォーマンス課題の例▼
ピカソの「ゲルニカ」を、プレゼンターとして、当時の世界史上の状況を踏まえて解説する

期待する永続的な理解の例▼
芸術作品といった身近なものの背景にある、より大きな社会的、政治的な影響を考察できる力

では、パフォーマンス評価の種類を見ていきます。ここでは代表的なポートフォリオ評価とルーブリック評価を紹介します。

ルーブリック評価

ここまでは「ポートフォリオ評価」、その中でも探究学習でよく使われる「パフォーマンス評価」を見てきました。

では、生徒が作った「ポートフォリオ」を、具体的にどう評価すればいいのでしょうか?

ここでは、ポートフォリオの評価に使える「ルーブリック評価」を紹介します。生徒の学習到達状況を、ルーブリック表を用いて測定する評価法です。

ルーブリック表とは、評価する項目を縦に並べ、横には評価の基準の値を書いた表のことをいいます。これを見ると、評価全体の中で、自分が現在どこに位置するかを一目で確認できます。企業の人事評価にも活用されているポピュラーな評価方法です。

ルーブリックの例(関西大学

そのため、生徒自身も自分の現在の立ち位置を把握した上で、より高い次元を目指すための手立てがはっきりと分かるというメリットがあります。

また評価について教員・生徒だけでなく、保護者など学校外の人と容易に共有できることも、ルーブリックの優れた点です。

一方で、評価項目を決め、段階的に評価基準(記述語と言います)を作成するために手間がかかるというデメリットもあります。

さらに評価基準を言語化するには、相応の鑑識眼を必要とし、必要に応じて記述語を練り直すなど柔軟な対応が必要です。

ルーブリック評価
メリット①:評価全体の中で、自分が現在どこに位置するかを一目で確認できる
メリット②:評価の共有がかんたん
デメリット:評価項目や評価基準の作成に手間がかかる

評価の主体による分類

評価は、誰か評価するのかという評価主体によって「自己評価」と「他者評価」に分けられます。

探究学習では、「多角的な評価」を重視するため、学習の成果とともに探究過程を評価することがポイントです。しかし評価方法として一般的である「教員による他者評価」だけでは評価が偏る可能性もあります。またどうしても目が行き届かないこともあります。

そのようなときには、可視化されにくい生徒の感情や価値観の変化などを記録できる自己評価も有効です。また他者評価でも教員だけではなく生徒同士で行うピア評価などのバリエーションもあります。

必要に応じてこれらを組み合わせることで、より適切な評価に近づくことができます。

自己評価

自己評価とは、生徒自身で行う評価のことです。

自己評価では他者からは見えない感情や価値などについても記録することができるメリットがあります。

しかし、自己評価は生徒の性格や問題意識、成長度合いによって評価が左右されるというデメリットもあります。

能力が高くないものの実際よりも過大評価してしまったり、自信のなさから過小評価してしまったりと、正当な評価ができるとは限りません。

そこで、自己評価の際にはルーブリックなどを用いて評価基準を具体的に示しておけば、生徒も安心して自己評価を行うことができます。

また探究学習の終了時に、次に紹介する「リフレクション」によって自己評価自体の振り返りを行わせることで、生徒自身が自分の変化や成長を感じられるというメリットもあります。

自己評価ツール「リフレクション」

リフレクションとは日本語に訳すと「振り返り」です。その名の通り学習の過程や、終了後に生徒が「振り返り」を行うことです。

リフレクションの形式に特に決まりはありませんが、「何をしたか」「何を感じたか」「本当はどうしたかったか」などいくつかの項目に箇条書きや文章で記述を行います。

リフクションには以下のような効果があります。

リフレクションの効果
・振り返ることで新たな気づきを得る
・漠然とした不安を言葉にすることで解消する、次の前向きな行動につなげる
・自己を内省することで「メタ認知力」が身に付く

リフレクションの記録もパフォーマンス評価の一つの材料になりえます。評価対象にしないとしても、生徒にとっては自己を内省する貴重な時間となるでしょう。

他者評価

他者評価は自己以外の他者による評価のことです。他者評価は教員によるものが一般的ですが、教員以外にも、他の生徒や探究学習に関わってくれた関係者も他者評価の一部を担うことができます。

ピア評価(相互評価)

ピア評価とは相互評価ともいいます。学校の現場においては主に生徒同士で評価し合うことを指します。

グループワークでのディスカッションへの参加度合いや、フィールドワーク中のグループへの貢献など、評価したいけれど教員の目がどうしても行き届かないところってありますよね。

ピア評価を取り入れることで、そういった教員目線では気づけない生徒の言動を評価できます。

また、評価を行う生徒にとっても思いやりを持って友達をサポートし、アドバイスをする力が養われます。

懸念としては、生徒がお互いのことを気遣って無難な評価しかできなかったり、指摘に対して傷ついてしまったり、口裏を合わせて高い評価をつけ合ってしまう、といったことが挙げられます。

適切な評価を行う、また生徒の心をケアするために、以下のような対策が考えられます。

・評価基準を明確にする
・評価対象はあくまで行動や成果であり、人格ではないということを周知する
・ピア評価は成績に含めない

また、最初からスムーズにピア評価が行えない場合もあります。その場合は生徒がピア評価に慣れるまで複数回行うことも必要でしょう。

ピア評価は評価そのものの価値以上に、「メタ認知力」や「批判的思考」を養うのに最適なトレーニングでもあります。生徒の学習段階に応じて取り入れることも検討してみてはいかがでしょうか。

教室外の人による評価

ここで言う教室外の人とは、他クラスの生徒や教員、保護者、地域の協力者の方などを指します。

教室外の人による評価を行うことで、より客観的、多角的な評価を行うことができます。

教室外の人の評価には、担当教員のように評価基準をよく理解した上で継続的に評価することは難しいなどのデメリットもあります。

したがって、成績のための評価に利用するというよりは、探究の成果発表に参加してもらってフィードバックをもらう、専門家の見地から特定のパフォーマンスに関しての評価をもらう、などの関わり方の工夫が必要です。

まとめ

今回は、探究学習で使われる評価方法について紹介しました。

・ポートフォリオ評価
・パフォーマンス評価
・ルーブリック評価
・自己評価
・他者評価

今回紹介した評価方法の特徴、メリット・デメリットを理解した上で適切な評価方法を選ぶ
参考にしていただければ幸いです。

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参考:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編 第10章 第1節 学習評価の充実より