この記事ではアクティブラーニングと探究学習の違いや共通点について解説、アクティブラーニングの先行事例が探究学習に生かせることなどを紹介します。
この記事の内容
・アクティブラーニングとは
・探究学習とは
・共通点は「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指すこと
・「主体的」における違い:探究は自分にとって意味ある課題を解決する資質・能力を重視
・「対話的」における違い:探究は「まとめ・発表」があり、より対話性を重視
・「深い学び」における違い:探究は学びのサイクルを重視
・探究学習の基礎はアクティブラーニング
・探究学習を成功させるにはアクティブラーニングの先行事例を見よう
・探究学習の先行事例もまとめました
「主体的・対話的で深い学び」。これは小学校から高校まで、学校教育で実現すべき大テーマです。
「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、教育現場では約10年前から「アクティブラーニング」の取り組みが始まりました。研修を受けたり、実際に学校で取り組まれたりしている先生も多いかと思います。
2022年から高校で必修になる探究学習は、「主体的・対話的で深い学び」を推進する大きな流れの上にあり、すでに取り組まれているアクティブラーニングの発展形であり、一つの到達点ともいえる学習です。
アクティブラーニングを実施している先生は、その経験やノウハウが生かせます。いままでの取り組みの延長線上に探究学習があると思ってください。
また、アクティブラーニングにはそれほど熱心ではなかった、という先生方も安心してください。これまでのアクティブラーニングの成功例や失敗事例が、探究学習の実施にとても参考になります。
それでは、アクティブラーニングと探究学習について詳しく見ていきましょう。
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アクティブラーニングと探究学習の共通点と違い
アクティブラーニングとは
アクティブラーニングは学習者が能動的に参加できるような学習方法の総称です。グループワークやディスカッションやディベート、教え合い、表現活動(発表、作品作りなど)といった様々な方法があります。
アクティブラーニングの目的は、一言でいえばアクティブラーナー(能動的学修者)を育成することです。
能動的に行動できる生徒を育てるために、単に授業のメソッドとしてのアクティブラーニングにとどまらず、学級経営としても、生徒が積極的に発言したり、先生や学校に対して意見を言いやすい雰囲気づくりや仕組みづくり(例えばアンケートを取るなど)を行っている先生もいます。授業の内外で生徒が能動的に学習・行動していくことによって、生徒をアクティブラーナーに育てることがねらいです。
そしてその先には「主体的・対話的で深い学び」の実現があります。
探究学習とは
探究学習が2022年から高校で必修になります。「総合的な探究の時間」と、「理数探究」「世界史探究」「地理探究」「古典探究」など教科の中で行われるものがあります。
探究学習は「①課題の設定」「②情報の収集」「③整理・分析」「④まとめ・表現」という学びのサイクルを繰り返すプロセス通じて、生徒たちが自分の生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成することが目的です。
もちろんこれは「主体的・対話的で深い学び」の考え方に基づいています。
共通点は「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指すこと
アクティブラーニングと探究学習の共通の目的は「主体的・対話的で深い学び」の実現です。
ぞれぞれの共通点と違いがわかるように、もう少し詳しく見ていきます。
「主体的」における違い:探究は自分にとって意味ある課題を解決する資質・能力を重視
アクティブラーニング、探究学習はともに「主体性」を重視しますが、探究学習では「自分にとって意味ある課題を解決する資質・能力」育成までを目指します。
アクティブラーニングでは主体的に問題を発見して、能動的に学ぶ姿勢の育成を目指します。
生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。(中略)
学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である(平成24年8月中教審答申(質的転換答申))
探究学習では、主体的に学習するだけではなく一歩進んで、「自分にとって意味のある課題」を発見して解決していく「資質・能力」を育成することが目指されています。
探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す(指導要領『総合的な探究の時間』:平成30年告示)。
「対話的」における違い:探究は「まとめ・発表」があり、より対話性を重視
探究学習では「まとめ・発表」が必須のプロセスであり、より学習の対話性が重視されています。
アクティブラーニングではグループワークやフディスカッションがよく行われます。それらと通じて生徒たちは「意見や価値観の違う人とディスカッションすることがなぜ必要なのか」という「対話(コミュニケーション)の重要性を学びます。また、先生の授業を聞くだけの受動的な学びより、仲間と積極的に意見を交わして学び合う方が、より深く学べることなどを知っていきます。
探究学習でもグループワークやフィールドワークがしばしば行われます。
探究学習ではそれらに加えて「まとめ・発表」が必須のプロセスとして組み込まれています。自分やグループが探究したことを他の生徒や、時には教室外、地域や企業の協力者に向けて発表し、多様なフィードバックを得ることで、より対話的な学びが実現されることになります。
「深い学び」における違い:探究は学びのサイクルを重視
「深い学び」という観点ではどうでしょうか。探究では、一つの探究が次の探究へつながっていく、学びの「サイクル」が強調されています。
まず、アクティブラーニングの「深い学び」に関する記載はこちら。
アクティブラーニングは各教科の「見方・考え方」を働かせて、知識の関連付け、情報の精査、問題発見・解決、思いや考えを基に創造したりすることへ向かう「深い学び」を目指しています(参考:主体的・対話的で深い学びの実現 (『アクティブ・ラーニング』の視点からの授業改善)について(平成29年度:文科省説明資料))。
探究学習も、
「各教科で身に付けた『知識及び技能』を関連付けて概念化し、『思考力、判断力、表現力等』など汎用的な能力を育成する(高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説)」
と非常に似た表現になっており、目指すところは同じといえるでしょう。
探究学習ではさらに、一つの探究が次の探究へつながり、探究のサイクルが発展的に繰り返されることを強調しています。
また新たな課題を見付け、更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。要するに探究とは、物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのことである(指導要領解説『総合的な探究の時間』:平成30年告示)。
探究学習が育成を目指すのは、「探究し続けるアクティブラーナー」だともいえるでしょう。
探究学習の基礎はアクティブラーニング
ここまで見てきたように、これまでアクティブラーニングが育成を目指してきた能力・資質は、探究学習の基礎になるものです。
2つは別のもので、探究学習という全く新しいものが始まるわけではありません。探究学習は、これまでアクティブラーニングで行われてきたグループワークやディスカッション、表現活動などを総合的に駆使しておこなう、アクティブラーニングの発展形、一つの到達点といえます。
探究学習を成功させるにはアクティブラーニングの先行事例を見よう
それでは、探究学習を成功させるにはどうすればいいでしょうか?
それには、探究学習はもちろん、アクティブラーニングの先行事例が参考になります。
すでに数年前から探究学習に熱心に取り組んでいる高校もあり、そのような学校の先行事例はもちろん参考になります。
探究学習以上に事例が豊富なのは、アクティブラーニングです。今まで見てきたように、アクティブラーニングは探究学習と非常に共通点が多いので、その成功事例や失敗事例は探究学習導入に大いに参考になります。
アクティブラーニングは程度の差はあるものの、多くの高校で実施されています。2016年以降、90.4%の高校が「アクティブラーニング型授業」を導入しているとの調査結果もあります(「高校教育改革に関する調査2018」リクルート進学総研調べ)。
グループワークや情報収集、表現など探究学習とも共通する多くの取り組みに関する指導案やノウハウがこれから探究学習をはじめる先生の助けになるでしょう。
探究学習の先行事例
探究学習の先行事例もあります。以下の記事にまとめておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
アクティブラーニングと探究学習の違いや共通点について見てきました。ともに「主体的・対話的で深い学び」を共通の目標としていること、探究学習はアクティブラーニングの発展形であり一つの到達点であること、豊富なアクティブラーニングの先行事例が探究学習にも生かせることがおわかりいただけたと思います。
これから探究学習に取り組まれるにあたって、不安やご心配を感じていらっしゃる先生方は、ご自身や学校にあるアクティブラーニングのノウハウを棚卸したり、先行事例を探してみることなどから始めてみてはいかがでしょうか。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。