探究学習

探究学習のデメリットや実施上の5つの課題と解決提案

探究学習は、今後の変化が激しい社会で必要な能力育成を狙い、2022年度から高校で必修化されました。探究学習によって、様々なメリットが期待されています。

一方、学校の現場からは、探究学習の実施において、課題やデメリットも指摘されています。この記事では探究学習の課題やデメリットと、その解決策について解説します。

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探究学習の課題やデメリット5つ

探究学習がスタートして約1年、現場から、以下のような課題やデメリットがよく聞かれます。

①生徒の主体性を引き出すのが難しい
②指導・評価が難しい
③指導計画の作成、遂行が難しい
④推奨される企業や地域連携が困難
⑤多くの時間を割かなければならない

①生徒の主体性を引き出すのが難しい

探究テーマや探究課題、問いの設定においては、生徒の主体性や、自分ごと化が重要とされています。しかし、それを行うのは容易ではありません。主な原因としては以下の2つが挙げられます。

・主体性をもって学ぶことに慣れていない
・役に立たない(受験や進路と無関係)と思われてしまう

与えられた問題を解くだけではなく、生徒自身が問題を発見したり、設定することに慣れていません。これは、そもそも探究学習が重要とされる理由とも重なります。これまで受動的に学ぶことしかしてこなかった生徒たちが、急に主体的に学べと言われて戸惑うのは、当然ともいえるでしょう。

加えて、高校での学びは、大学受験がゴールと認識されやすく、大学受験に役立たない探究学習は、おろそかにされがち、という傾向が、生徒、先生ともにあります。

①の解決方法

解決方法としては、以下のようなことが有用であると考えられます。

・探究を「自分ごと化」するステップを意識して授業を構成する
・探究学習のやる意義を伝える

テーマが自分ごと化されるには、3つの段階があります(認識段階、対象化段階、システム段階)。この仕組みを理解して、授業を構成することが、生徒の主体性を引き出し、自分ごと化することにつながります。また、いきなり高度な探究を実施しようとするのではなく、学習段階に応じた適切なレベルのテーマや、課題の粒度を設定することも重要です。

探究学習を頑張ったからといって、偏差値に直結するわけではありません。よって、将来や進路につながりにくいと思われがちです。しかし、大学・社会に出てからこそ探究的に学ぶ、考える力が役に立ちます。

また、入試の多様性、高大接続の観点から、探究学習の成果を受験に活用できる大学も増加傾向にあり、進路に探究学習の成果を生かす機会は増えてきています。

加えて、小中学校では、総合の時間に熱心に取り組んだ生徒は、教科の成績も上がる傾向が指摘されています。これは調べ学習や、探究的思考が、教科学習にもプラスの働きをしているのではないかと推測されています。

②指導・評価が難しい

探究には、指導や評価が難しいという課題があります。
探究学習は既存の知識・技能を身に付けさせるだけの活動ではありません。生徒一人ひとりに課題の発見・解決をさせつつ、体験活動や協働的な場面を設ける必要があります。

そのため、教師には一人ひとりの学習状況などに合わせた臨機応変な対応が必要です。結果、生徒によって指導を工夫したり、専門外の研究の知識が求められたりと指導の難易度が上がってしまうのです。

また同様に、生徒の学習状況なども異なることから画一的な評価が難しいため、評価も難しくなってしまう背景があります。

②の解決方法

解決方法としては、以下のようなものが挙げられます。

・指導からファシリテートやサポートに役割を転換する
・ルーブリック評価など探究学習に適した評価方法を取り入れる

生徒の学習状況に合わせて、専門性も網羅した指導をすることは実質不可能です。しかし、探究のより重要な役割は、完璧な答えにたどり着くことよりは、そのプロセスが「探究的であること」です。そのため、教員には、懇切丁寧な指導ではなく、ファシリテートやサポートが、より重要な役割ということになります。

また、評価方法に関しては、成果物や調査資料などを総合的に評価する「ポートフォリオ評価」や、複数の能力・資質を段階的に評価する「ルーブリック評価」などが探究に適しているとされています。
類似事例を調べて、どのような評価方法をしているのか知ることも有用かもしれません。

③指導計画の作成、遂行が難しい

探究は十分な指導計画を作るのが難しいのに加えて、計画通りに進めにくいというものがあります。2022年度から本格スタートしたこともあって、先行事例も多くありません。

探究学習は教科書や問題集を時間通り進めるというようなシンプルな流れでは学習できません。体験学習やグループワーク、調査学習など実際に生徒自身が動きながら時間をかけて理解することが求められますし、外部連携を行っていると、必ずしも学校都合だけでスケジュールが進まないということもあり得ます。

そのため、ある程度の可変性や柔軟性を確保することが求められます。

③の解決方法

このような問題の解決方法としては、以下の二つが考えられます。

・余裕を持った計画を立てる
・中長期的な視野を持って計画を立てる

まず一つに、余裕を持った計画を立てることです。探究学習には、アクティブラーニングの要素が多く入ります。ジグソー法をもちいた調べ学習や、グループワーク、グループディスカッション、プレゼンテーションと質疑応答などです。これらの学習に慣れていないクラスでは、予想以上に時間がかかったり、成果物のクオリティが思ったほど高くない、ということが起こりえます。

計画の際には、どこに目標を置くかが重要になりますが、現状を踏まえて現実的な目標を設定することが探究計画においても非常に重要です。高すぎる目標を掲げると、計画の遅れや未達成につながります。

例えば、以下のような事例があります。

・1年生は取り組みやすいテーマ・課題を先生から指定し探究学習の型に慣れる
・2年生では少し進めて、レベルの高い複数のテーマ・課題から生徒に選ばせる
・3年生では自分でテーマ・課題を設定させる

目の前の授業、この学期だけで素晴らしい探究を完結させようとするのではなく、1年や、3年という期間で、どのように探究レベルを深化させていくか、という時間軸をもった学習計画も重要です。

④推奨される企業や地域連携が困難

探究学習は学内だけで完結させるのではなく、学外の専門家や、企業、地域のステークホルダー等と協力・連携し、生の声や活きた課題に触れることが重要とされます。

総合的な探究の時間では,地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用することが期待
されている。(中略)
総合的な探究の時間では,実社会や実生活の事象や現代社会の課題を取り上げるからである。また,この時間では,多様で幅広い学習活動が行われることも期待されている。それは、生徒一人一人の興味・関心に応じた学習活動を実現しようとするからである。
このような学習を実現するためには,教員以外の専門スタッフも参画した「チームとし
ての学校」の実現を通じて,複雑化・多様化した課題の解決に取り組んだり,時間的・精
神的な余裕を確保したりしていくことなどが重要である。
【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説より)

しかし、実際には連携先を探す、協力のあり方を決める、連携しながら探究を進めPDCAを回すことは、時間もかかり、現実的に難しい学校が多いのが現状です。

④の解決方法

外部連携には一般的に、学校内に外部連携担当者やチームを設置し、連携先に求めることを明文化し、地域や企業とコンタクトを取り、ゴールを共有しPDCAを回す・・・というステップがあります。

連携先候補としては地元のステークホルダー以外にも、文科省が公官庁で、総合的な学習の時間に支援を行っている組織をリスト化しており、そこから連絡を取る方法もあります。

それでも、外部連携が校内のリソース的に難しい、という場合には、学校の外部連携を支援しているコーディネーターに依頼する方法もあります。コーディネーターは外部企業とのネットワークを持ち、学校が行いたい探究に合わせて、適切な企業をパートナーとして紹介してくれます。連携に際しては、学校側が企業にしてほしいことと、企業側が提供したいコンテンツとの間に乖離がある場合があります。コーディネーターその調整も含めて、探究に伴走してくれます。

なお、弊社・Study Valleyでも、企業のご紹介を行っております。気になる方はお気軽にお問合せください。
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⑤多くの時間を割かなければならない

最後に、そもそも時間がないという問題について解説します。日本の教員は働きすぎであるとよく言われます。
実際、日本教職員組合の「2021年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」の結果によれば、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教員の1日の残業時間は、平均2時間54分ということがわかりました。

これは、1ヶ月に換算すると96時間44分となり、文科省が残業時間の上限としている月45時間を倍以上超えているばかりか、いわゆる「過労死ライン」と言われる月80時間以上の残業を16時間以上も超えています。

探究学習では資料集めや計画作りが必要であり、手間も時間もかかります。生徒のレベルに合わせた指導計画をたてたり、わかりやすくなるように準備をすれば、ただでさえ教師一人あたりの負担は大きいのにさらに負担が大きくなってしまいます。

⑤の解決方法

解決方法としては、既存の教材を使うなどが挙げられます。
例えばSTEAMライブラリーでは探究学習に使える教材が無料で配布されています。動画教材に加え、教材によっては指導計画や評価項目についても詳細が書かれていたりします。
これらのような完成された教材を使うことで教材を作る手間を減らすことができます。

探究学習を始めたての時期は特に資料集めも膨大な時間がかかると推測されるため、ぜひ活用してみてください。

まとめ

探究学習の課題やデメリットについてまとめました。
課題は決して少なくはありません。しかし、総合的な学習の時間の時代から熱心に探究の取り組んできた学校の事例ありますし、公教育に協力したい企業、高大接続に熱心な大学など、学校に協力したいという組織も増えており、明るい兆しもたくさんあります。

探究学習においてお悩みがあれば弊社もお手伝いできるかと思います。ぜひご相談ください。

弊社・Study Valleyでも、探究学習のコーディネート、企業のご紹介を行っております。気になる方はお気軽にお問合せください。
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ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

田中 悠樹|株式会社StudyValley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社StudyValleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。